シェアワールド@霧生ヶ谷市企画部考案課

伝説のアレ

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 伝説のアレ 作者:香月

 

 

 やややや、ちょっと待ってくれ。もう一度聞くぞ。お前は何だ?

「何だも何もない。我は伝説の……」

 いや、やっぱり言うな。何も言うな。正体を明かされてしまったら、俺はさらにどうしていいかわからなくなる。

「わがままな奴だのぅ」

 何を頷いて、いやそれは頷いているのか? まずどこが本体なんだ? というかお前は何なんだ?

「だから、我は伝説の……」

 いや、言うな、言うな、言うな。やめてくれ。うちまで白衣にチェーンソーはゴメンなんだ。ここで迂闊に言っちまったら、それこそ大惨事だ。

「我は強いぞ」

 唐突すぎて意味がわからん。
 
 さあ、物事を整理していこう。まず、お前は何でここにいる? ここは俺の部屋だ。机の上にあるサイコロも、テレビの横にあるグレイテストヒッツも、全て俺が買ったものだ。
 
 最初に行くべきは俺のところではなく、ツキのところだろう?

「ボケ同士では会話がまとまらんでな」

 漬物のくせに変な気を使いやがって。つーか、名前がなくちゃ不便だな。お前、名前はあるか?

「キ……」

 わかった。わかった。俺がつけてやる。お前はそうだな……キム公……よし、チャイナだ。お前はチャイナだ。

「どういう発想をしとるんだおぬしは」

 どこを1と数えていいかわからない奴に言われたくないな。どこが口だ。どれが体なんだ。お前ほど形容しづらい奴もなかなかいないぜ。

「そうだな、あえて言うなら1パックだ。だが、我ほどになると、高いぞ?」

 こら! 俺が何のために正体を明かしていないと思ってる。

「我がどういう容姿かを、あのソフトモヒカンの男が決められなんだからであろう?」

 そうだ、そういうことだ。なんだ、ちゃんとわかってるじゃねぇか。漬物のくせに。

「おぬし、漬物を愚弄するか!」

 あんまり好きじゃないな。お前も好きにはなれそうにない。だから早々に立ち去れ。さっきから臭うんだよ。

「何だと! 我を愛してやまない人間が、世界にどれほどいると思っておる!」

 おい、俺がもし、お前を愛してたらどうなってたと思う? 今頃、お前は腹の中だ。わかるか?

「ぬ、そうであった。仕方ない、許してやろう」

 お前に許してもらう気なんてさらさらない。というかこの会話も無駄すぎるんだよ。

「いつまでも、登場せぬわけにはいかぬだろう」

 なら最初から出て来いよ。そうしてくれれば、俺が亀を探す必要もなかっただろ。

「亀とは、フィラデルフィアか? まだ生きておったか。懐かしいのう。いや、奴の用兵は実に巧みでな」

 用兵?

「ああ。奴の指揮する騎馬隊は精強だった。
 帝の不興をかい、北の地においやられたが、奴はそこで兵と馬を鍛え上げた」

 …………

「奴と我は戦う運命だったのだ。
 我の指揮する騎馬隊は3千、奴は5千。もっとも、我は歩兵と連携するための、3千だったのだが」

 …………

「危なかった時もある。弟とともに、奴の騎馬隊とぶつかった時だ。
 あの時、我らはまだ若かった。対フィラデルフィアに編成した騎馬隊であったのだが」

 …………

「最後は父のおかげで何とか助かったのだが、父がいなければ我は討たれていたであろうな」

 …………

「それからも、度重なる衝突があった。最後は、父が味方の裏切りのせいで戦死し、一応は終結したのだが」

 …………

「だが、奴と我の因縁は、それを終わりを迎えることはなかった」

 長いわ! 
 
 何が用兵だ。亀と漬物が何で戦争してんだよ。お前は楊家軍なのか。それと、騎馬隊ってなんだ。亀のくせに馬か。漬物のくせに馬か。

「お、よく知っておるのう。むぅ、これは致し方ない。もちろん嘘だ」

 腹立つ漬物だな。ていうか、そんな話をどこで知った。

「うむ。用兵は嘘だが、フィラデルフィアと知り合いなのは真実だ。これは、フィラデルフィアから聞いたのだ」

 また……亀のくせにそいつも生意気だな。

「まったくである」

 お前もだよ! 

 いい加減出て行ってくれないか、部屋に臭いが染みついてしまう。そうなったら、誰も部屋に入れられない。あいつの部屋、キムチの臭いすんだよ。なんて言われたら、もう生きていけないだろ。

「その生きていけない臭いを体から発している我はどうなるのか」

 もう焼却処理だな。

「我を焼く? そんな食べ方があるのか?」

 いや、聞いたことないが。んー、焼却? そうだ、その手があったか。

「何だ、悪い顔になっておるぞ」

 ああ、ちょっと待っててくれ。今、コンロか何かを……

「待て待て! おぬし、よもや我を燃やすつもりではるまいな」

 人聞きが悪いな、燃やすんじゃなくて焼くんだよ。さらにおいしくなるかもしれないだろ。

「む、それは。いや、ダメだダメだ! あやうく騙されるところであった。撤退する!」

 あ。て、ええぇ! 飛んだ、漬物が飛んだ!? こら、汁をこぼすな、シミになっちまうだろ!

「これ以上こぼしてほしくなかったら、早々に窓を開けい!」

 く、くそ。しょうがない。

「それでいいのだ。はっはっは、今日は楽しかったぞ。気が向いたら、またきてやろう」

 漬物が高笑いしながら、華麗に空を舞った。名前なくても、不便じゃなかったな。
 

 

 



「という、夢を見たんだ。えへへ」
「夢落ちかよ! しかも何で俺視点で夢を見てるんだよ、お前は!」

 

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