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*&color(red){【三話】『遺書に好かれた男』わらび餅 ◆jlKPI7rooQ} 14 自分:わらび餅 ◆jlKPI7rooQ @転載は禁止[sage] 投稿日:2015/08/29(土) 19:25:42.67 ID:uO4SmEpe0 [7/54] 『遺書に好かれた男』 私が大学生の頃、実際に友人が体験した話です。 その友人のことはAとしておきましょうか、彼は講義にはあまり真面目に出ないタイプの大学生だったのですが、本を読むのは好きだったらしく大学通りの古本屋に立ち寄ってはバイトで稼いだお金を使っていました。 そんな時、彼は普段趣味で読む為ではなく講義のための教科書を中古で買ったそうです。 遅れて講義にやってきた彼は、 「いやー、ぎりぎり間に合った。さっきそこで教科書買ってきたんだよ、よかったよかった」 と言って私の横の席に着いた。 程なくして講義が始まり、流石に一回目の講義だったこともあってか真面目に教科書をぱらぱらと眺めていた。(でも教授の話は全くメモしていなかった) 私は真面目に教授のメモを取っていたのですが、突如横にいたAは「えっ?」と声を上げてページをめくる手を止めた。 何かが本の間に挟まっていたいたようだ。 中古だしそういうこともあるだろう、と私は気にもとめずにメモを取っていたのですがそれからAは何かずっとそわそわしたような様子でした。 いつもどうでもいい講義のときは寝てることが多い彼なのですが、このときはずっとそんな感じでした。 その後、二人で学食で昼食をとっていたのですが、私が何か聞くよりも前に彼がさっきの講義でのことを話し始めた。 「あのさ……さっき買ってきた教科書なんだけど、こんなものが挟まっててさ……」 そうして見せてきたものは、折りたたまれた紙でした。 それだけならばどうと言うことはないのですが、その紙には『遺書』と折りたたまれた表の部分に書かれていたのです。 「うわっ、何だそれ……マジか」 「マジだよ、どうしようこれ、捨てるわけにも行かないよな……いや、それより」 この遺書を書いた人間はまだ生きているのか? ということに私も思い至ったのですが、Aはそれ以上言葉を続けませんでした。 15 名前:わらび餅 ◆jlKPI7rooQ @転載は禁止[sage] 投稿日:2015/08/29(土) 19:26:41.26 ID:uO4SmEpe0 [8/54] 「中読んだ?」 「読んでない……でも、名前とかわかるかもだし開けてみるか」 そういって折りたたまれた遺書を開いたのですが、内容はとてもあっさりしたものだった。 ありきたりな感じで先立つ不孝をお許しください、といったようなことが書いてあったと思う。 しかし、明らかに内容が途中で切れていた、誰が書いたものかわかるような名前は書かれていなかった。 「書きかけっぽいな」 「そうだな……だったら大丈夫だろ」 そう言ってその場は彼と別れたのですが、どうやら後になってあの遺書は捨ててしまったようです。 それから、彼に不思議なことが起こるようになりました。 買った古本に、『遺書』が挟まっていることが何度か続いたそうなのです。 私は流石にお祓いに行くとか、遺書を焚き上げてもらうなどしたほうがいいんじゃないか、とアドバイスをしました。 Aもそれは実践したようなのですが、彼は日に日に体調を悪くしているようでした。 それから一年もしないうちに、Aは友人にも何も告げずに借りていたアパートを引き払って大学も中退してしまいました。 最後に話したとき、彼は青い顔でこんなことを言っていました。 「せめて名前がわかれば……名前がわかればなぁ……そうしたら……」 ぶつぶつとそんなことを言う彼は、どう見ても何かに憑かれているようでした。 Aのその後がどうなったかは他の友人も知りません。 あの遺書は、無念を残したまま自殺した、名前もわからない誰かの言葉だったのでしょうか……。 了

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