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*&color(red){【二十五話】『公園の怪異』スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw} 94 名前:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @転載は禁止[sage] 投稿日:2015/08/29(土) 22:40:50.74 ID:WCE2gmw+0 [5/22] 『公園の怪異』  こいつは先日、久々に会った大学時代の友人の話。自分の体験談では無いため、そいつの脚色も多少入っている可能性はあるものの、いつも冗談の好きな彼が この時ばかりは心底嫌そうな表情を浮かべていたのが印象に残っている。  とある春の日の夜、入社した先の歓迎会であまり得意では無い酒をしこたま飲まされた彼は、千鳥足で帰路についていたそうだ。 「むう、駄目だわこれ。そこの児童公園でちょいと酔い覚まししていくかな」  あまり規模の大きくない公園に足を踏み入れて年代物のベンチに腰掛けた彼は、ため息まじりで手に持ったウーロン茶のペットボトルのキャップをキュルッと開ける。  子供たちの歓声に溢れる日中とは異なり、深夜の公園は人っ子一人居ない別世界だ。蛍光管が切れかけてでもいるものか、しきりに明滅を繰り返す街路灯に照ら された遊具をぼんやりと眺めていた彼は、ふと妙な事に気がついた。  主の居ないブランコが、春の生温い夜風の中でかすかに揺れていたそうである。 「あはは。風もないのにブ~ラブラ、か」  酔いのためか若干焦点の定まらぬ視線で、その光景を見やる彼。その時はまだ、彼には笑みをうかべる余裕があったと言う。  そうしてしばらくするうちに、今度はそのブランコの手前にある球形の骨組みに覆われた回転遊具が鈍い擦過音を伴いながら少しずつ回り始めたそうだ。 「あれれ、今度はあの遊具か。シャフトの軸がどうかしてんじゃないの?あんなのに子供が乗って万が一の事でもあったらどうするつもりだよ。全くお役人ってやつは、 何か事が起きなきゃ重い腰上げねえんだから」  独り言を呟きながら、それでもなお状況の不自然さを把握しきれていない彼。最初こそじんわりゆっくりとした回転であったその遊具は、あれよあれよという間にまるで 目に見えぬ何者かが勢いよく漕いでいるかの様に、ギュルギュルと力強く回り始めたものである。 「え?まだ酔ってるのか俺…」  目をこすり、己の頬を平手で勢いよくはたいて見ても、その遊具は自らの回転を止めようとはしなかった。 「ち、ちょっとこれまずいんじゃないの?」  ようやく我に返って不安に駆られ始めた彼は、震える膝に力を込めて腰掛けたベンチから立ち上がった。  その時である。 95 名前:スヴィトリアーク ◆CQ0ZL4vfUw @転載は禁止[sage] 投稿日:2015/08/29(土) 22:42:27.65 ID:WCE2gmw+0 [6/22] 「ギイギイギイ…ガンッ!」  彼の間近で更にいきなり、今度は何か重いものでも地面に叩きつけたかの様な派手な音が響き渡った。 「ひっ!」   プルシェンコのトリプルアクセル並みの回転速度でその音がした方向に首を向けた彼の視線のすぐ先では、これまた誰も乗っていないシーソーが、 通常ではあり得ない勢いで左右交互に上下運動を繰り返し始めているではないか。  不気味な叩音は、地面に敷かれたタイルとシーソーの端を覆う金属部とがぶつかり合って生じるそれであった。 「ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ…」  いつ果てるとも無く、夜の帳が降りた公園に不気味な音を響かせ続けるシーソー。  先ほどまでの酩酊状態はどこへやら、すっかり酔いも覚め切った彼は、叫ぶ事すら忘れて涙目になりながらそのまま転がる様に公園の入口まで 駆けだしたとの事だそうだ。 「ガンガンガンガン!って、ゲッターロボの主題歌みたいだなおい」  無理矢理冷やかした俺の軽口にも、彼は苦々しげな面持ちを崩さない。 「それでね、這々の体でその公園の入口から出かけた時に初めて、一陣の風が園内の木々の枝を揺らしたと思ってくれよな。そしたらさ…」 「うん、それからどうした?」  俺の問いにひと呼吸置いて重い口を開いた彼曰く、 「あのさ、確かに聞いたんだよ俺。耳を塞ぎたくなるくらいうるさい木々のざわめきの中で、ほんのかすかに消え入りそうな女の子の声でひと言、『遊んでよ』って…」 【了】

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