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180 自分:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @転載は禁止[] 投稿日:2015/08/30(日) 01:14:47.54 ID:AgCPeYID0 [15/97] 【49話】suu_o◆QfeyGUP37WSw 様 『ごく普通の家が心霊スポットになるまで』 私の母が、高校の途中まで過ごした家の話です。 祖母の趣味は庭いじり。自然の樹木を活かしつつ、四季折々に花が咲くよう工夫を凝らした庭は、とても美しく見応えがあったそうです。 門扉は通りすがりの人にも見えるよう開放し、ご近所さん達が気軽に寛げるようオープンな場所にしていたと聞きました。 ある日のこと、高齢の男性が長いあいだ庭の椅子に腰掛けていたそうです。 体調を心配した祖父が様子を見に行ったところ……男性は庭木を褒め、手入れに感心し、和やかに歓談したのち長居を詫びて帰っていきました。 しかしその方は駅へと向かう道の途中で倒れ、病院に搬送されましたが亡くなってしまったそうです。 ──しばらくして、庭に不可解な現象が起こるようになりました。 植え込みの中に白いモヤのようなものが見える、何か呟いてると言う方が何人も出てきたのです。 祖父母と母には霊感がなく、モヤの気配すら察知出来なかったのですが、分かる方はハッキリと老人の影に見えるらしく……。 そのため霊の噂は先日亡くなられた男性の件と一緒になって、瞬く間に周囲に広まりました。 やがて、庭が面した通りは昼間でも閑散とする一方、夜になると車やバイクで肝試しに人々が訪れるように。 無断の写真撮影に始まり、霊が出た出ないで大騒ぎ。心ないイタズラや、庭木を踏み荒らされることに一家で悩まされました。 もちろん門を閉ざして貼り紙をし、不審な人物を見つけては注意したそうですが、無断で立ち入る人は絶えなかったとのこと。 181 自分:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @転載は禁止[] 投稿日:2015/08/30(日) 01:16:30.86 ID:AgCPeYID0 [16/97] そんな日々が、一ヶ月ほど続いたでしょうか。 昼間祖母が庭にいると、五十代くらいの上品で身なりの良い女性が「お庭を拝見してもいいですか?」と声を掛けてきました。 久々に、霊ではなく庭をと言われて嬉しくなった祖母は、丁寧に説明して回りました。 話を聞き終えた女性は、ここが幼い頃過ごした家に似ていること、植えてある木が同じなことを懐かしそうに語ったそうです。 そして「父が、最後の日をこの場所で過ごせて良かった」と、涙ながらにお礼を言われたと……。 女性が帰るとき入れ違いにに帰宅した母が、彼女と一緒にうっすら白いものがついていくのが見えたと話してくれました。 それ以来モヤの目撃もピタリと途絶え、ようやく心穏やかに暮らせる日が戻ってくるかと思いきや。 心霊現象は収まったにもかかわらず、恐怖体験を期待して集まる人の数はほとんど減りませんでした。 何も起きないと分かれば次第に飽きられるだろう、と一家で考えていたらしいのですが、数人の若者が予想もしなかった行動に出たのです。 今聞くとそれは、『曰く付きの場所で降霊術を行う』という試みでした。 しかし、オカルトとは縁の無い人生を歩んできた祖父に、降霊の儀式が理解出来るはずもなく。 集団で呪文を唱えているさなかに割って入り、中断させてしまったのです。 彼らは術を中途半端にしては霊を怒らせてしまう、きちんと除霊しなければ場に留まって悪影響を及ぼすと粘ったらしいのですが、無理やり追い返したとのこと。 「困ったことが起きるかもしれませんよ」という声に、母だけは強く不安を掻き立てられましたが、祖母の疲れのほうが気になり黙っていたそうです。 182 自分:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @転載は禁止[] 投稿日:2015/08/30(日) 01:17:52.02 ID:AgCPeYID0 [17/97] 異変は、すぐに始まりました。 昼間でも日の光を入れていても家の空気は淀み、絶えず吐き気をもよおす臭いがするようになりました。 物は前触れもなく落ち、家電の誤作動が頻繁に起き、無言電話からはうめき声が。 戸棚や壁の内側からカリカリと爪の音がし、ドアの下方には子供の手形。 夜も、夢のなかで家族を刺したり自殺をしたり。悪夢に目を覚ますと、暗闇のどこかから貫くような視線を感じ、一家を震えあがらせました。 そのうえ肝試しの人たちが、遠慮なしに庭へ入っては恐怖を求めて歩き回るのです。 結局耐えきれなくなって引っ越した……と、当時を思い出したらしい母は、ひどく怯えた顔で私に話してくれました。 なお、誰も住めなくなった家は、今や傷んで半壊状態。 取り壊そうにも霊障がひどく、お祓いしても効果がないとかで、名の知れた心霊スポットになっているそうです。 【了】

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