【二十六話】『火で焼けた黒い人』◆pLru64DMbo


97 自分:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @転載は禁止[] 投稿日:2015/08/29(土) 22:47:12.53 ID:uO4SmEpe0 [40/54]
【26話】チッチママ ◆pLru64DMbo 様
『火で焼けた黒い人』

実母の体験談です。
母の実家は昔から地元で有名な大きな農家でした。
母はその末っ子で、母の時代には小さくなっており家族だけになっていました。
大地主の農家の名残で大きな蔵や物置があったそうで、祖父の道楽のガラクタ置場なんかもあったそうです。
母は霊感はなかったのですが、盆と彼岸の時期になると姉妹全員でその日は過ごすようにと言われていたそうです。
ある盆の日に母の持っていた送り火の提灯が突然燃えた事から全てが始まりました。
周囲にいた人たちは騒然となったそうです。7人姉妹の母だけ風もないのに提灯が燃えた事の意味を子供たちだけは知りませんでした。
その日からお守りを持たされ学校の生き返りも必ず姉たちが付き添い、放課後に遊びに行くのも禁止になったそうです。
庭が広かったのでそこで一人で遊んでいると、何か影が見える。
目をこらすとユラユラとゆれて近づいてくる蜃気楼のようだったと。
ただ近づくにつれて「ヴォーヴァー」と小さな音が聞こえてきたそうです。
だんだんとそれが近づいてくるので、母は必死で自宅に戻り祖父に話すと問答無用で塩を頭からかけられ
その足で祖父は外に塩をまきに走って行ったそうです。
次の日に近くの神社で意味のわからぬままにお祓いをされ、数か月は何もなかったそうで皆が安心していました。
母の外出禁止もなくなり友達の家に遊びに行った帰り、とても夕陽が綺麗だったのを覚えているそうです。
帰宅途中のつり橋を渡るときに、急になぜか怖くなってしまったそうです。

98 自分:わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @転載は禁止[] 投稿日:2015/08/29(土) 22:48:09.98 ID:uO4SmEpe0 [41/54]
何度も慣れたつり橋でしたが、その時だけは地獄への道のようで渡ると帰れないと感じてしまい
でも通らないと帰れないと涙目で渡って行きました。
足元がガクガク震え、なんとか掴まってわたっていると、突然に前からユラリとあの黒い影が出たそうです。
その時に母は見ました。女性だったそうですが焼け焦げて髪もなく、目だけ穴が開いてお腹が異様にポッコリしていたそうです。
そして母は気絶しました。夜になっても帰らぬ母を心配して地元の人たちが探してくれて母は橋の手前で発見されました。
母は三日目には目が覚めた様子ですが、ただ「ヴァー」と犬のように泣くだけで目も虚ろで、ひたすら水をガブ飲みしていたそうです。
母は記憶を失っており今でも、その間の記憶はありません。記憶が戻ったのは一週間後だそうです。
母がずっと持っていたお守りがボロボロになっていたそうで、一時は地元でも有名になりました。
あの黒い影の正体はハッキリとはわかりません。家が古いので土地で何かあったのか?あの女性は何者なのか?
ただ母だけは盆に送り火禁止となり、毎年一族で行っていた場所に近づくのを禁止されました。
そして、その子である私も近づくことを禁止されており、今では本家の跡取りだけが行っています。
母は記憶がない間に夢を見たそうです。女性の名前も当時は覚えていたそうです。
なんでも愛人の身分で虐げられ、子ができた途端に捨てられてお腹に子がいるのに自殺した女性らしいです。
そして、その女性を捨てたのは私たちの一族の血筋の者。あくまで夢ですが祖父母はその話をきくと激怒したそうです。
夢の中で最初は怖い顔だった女性も、母が延々と「おかーちゃん」と泣いていると、次第に優しい顔になり
慰めてくれたそうです。最後は彼女の腕にいた赤ん坊を抱かせてくれ、母が「可愛いね」と言うと
「お前は許してやる」と言われ、青い花畑を追い出されたそう。
私の母方の身内の男性はいまだに運がありません。それとどう関係あるのかはわかりませんが
真相を知る祖父母も亡くなりました。私も母の実家に近づくと気分が悪くなるので近づきません


(終)
最終更新:2015年10月31日 01:06