135 名前:猫虫(代理投稿) ◆5G/PPtnDVU @転載は禁止[] 投稿日:2015/08/29(土) 23:52:24.29 ID:rKZkpF2O0 [40/40]
【36話】未帰還 ◆H3nLk5uPzc 様
『呼吸』

私が小学生の頃、曾祖母が亡くなった時の話です。
母方の曾祖母が亡くなったという報せを真夜中に受け、母の実家に急遽帰省する事になりました。
親戚はとても多いのですが私達は親戚の内では近くに住んでいたため私達より早かったのは伯母の家族だけで、母の実家の大きな家にはあまり人が居ませんでした。
両親とともに顔布を掛けられた曾祖母と対面したのですが、恥ずかしながらその頃私はまだ「死」というものを理解しておらず、何故曾祖母の顔を隠すのか分かりませんでした。
その後集まってくる親戚の出迎えなどで家中が忙しくなり、とんでもない話ですが曾祖母の部屋に小学生の私一人しかいないという時間がありました。
なんとなく「今は大人しくしていなければならない」というのは伝わっていたので、悪戯するような事はありませんでしたが。
その時、私は曾祖母の顔に掛けられた布が、曾祖母が呼吸しているかのように上下に動いているのに気付きました。
しかし「死」を理解していない私はその事を特に不思議には思わず、ただ「自分が吸って吐くのと、ひいばあちゃんが吸って吐くのが一緒だな」と考えていました。
そんな不自然な一致や、真夜中だった事から今考えてみると、単にうとうとして夢を見ただけだったのかもしれません。
ただ、戻ってきた両親に「顔布が乱れている、悪戯するな」としこたま怒られて、「自分は悪くない」とかなんとか泣き出してしまったのは覚えています。

最終更新:2016年06月24日 00:04