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*咆哮 人類が宇宙へ新しい発見を求めて旅立ち、国家ですらもスペースコロニーへと移転した未来世紀の時代には、ガンダムファイトと呼ばれる世界のリーダーを決める代理戦争が行われてい た。 ガンダムファイトは、コロニー国家間での全面戦争を防ぐためにと考案され、地球をリングとして『ガンダム』と呼ばれる兵器を用いて行われる。 アレンビーも国家の代表としてガンダムに乗り、闘っていた一人である。 まだ17歳の少女ながらも、新体操の動きを取り入れた軍隊式格闘術を駆使する凄腕のファイターだ。 今現在、彼女が置かれている状況はガンダムファイトと似たようなものではある。 ただ違うのは、ガンダムに乗って闘うのではなく生身の人間同士で競い合うということ。 そして、勝ち残った一人しか生き残れない殺し合いだということ―――――― (こんな子どもまで参加させられてるなんて……) アレンビーは一人の少年と共に、広い草原を線路に沿って歩いている。 少年の名前はジョン・コナー。 10歳という幼さにも関わらず、取り乱した様子はない。 つい先ほどアレンビーと出会った時も、自分は殺し合いに乗っていないから協力しようという提案をしてきた。 話を聞いてみると、ターミネーターというロボットに命を狙われ、同じく別のターミネーターに守られていたという。 「襲ってくる奴の方が、規格外の化け物だったけどね」 とジョンは言っていたが、味方のターミネーターのことを語る表情から察するに、かなり頼りになる存在だったことが伺える。 これだけ落ち着いているのも、そのターミネーターが自分を見つけ出して守ってくれると信じているからなのだろうか。 殺し合いの場だというのに、弱音を吐かず歩みを進めている。 (まだ可愛い顔してるのに、ずいぶんとしっかりしてるのね) それにしても、冷静過ぎのように思える。 アレンビーを先導するように目の前を歩くジョンへ視線を向けながら、心中感心しつつも訝しむ。 「あのさ……」 「うん?どうかした?」 そんなことを考えながら歩いていると、不意にジョンが立ち止まり、後ろを歩くアレンビーに話しかけてきた。 「あのノストラダムスってやつは何がしたいんだと思う?」 「何がって……道楽だって言ってたけど……」 「でも、あいつは答えることはできないって言ってた。  遊びならそれが楽しいからで済むはずでしょ?」 そう言われてみればそうである。だが改めて考えてみても、何が目的かなど見当がつかない。 ガンダムファイトのように大規模な戦争を防ぐための手段としてでもなく、こんな殺し合いに多数の人を無理やり参加させるなんて、普通の人間が考えるようなことではない。 見世物として金儲けをするか、本当に道楽だという方が納得できる。 金と変人の欲求というのは、常人が理解できない状況を生み出すものだ。 とにかく、推理するにはまだ情報が足りない。 「ジョンくんは何か心当たりでもあるの?」 「ううん。でもさ、相手の目的が分かれば何か弱点も分かるんじゃないかと思ったんだ……」 そう話すジョンの表情には、どこか不安げな感情が読み取れる。 こんな状況で初めて会った人間だ。おそらく、アレンビーがいくら殺し合いに乗っていないとわかったとしても、多少警戒したまま接していたのだろう。 「大丈夫だって。  あいつが何をしようとしてるかはわかんないけどさ、私が守ってあげるから」 こう見えてもほんとに私強いんだよ、と元気づけるようにジョンへ向かって笑いかける。 これ以上続けても進展はないと思ったのか、ジョンも話題を切り上げて曖昧な笑みを浮かべた。 「ガンダムファイターだっけ?」 「うん、もう一人ドモンていう私よりも強いファイターも参加者にいるよ。  でも絶対にこんなゲームに乗るような人じゃないから安心して」 「ドモン……あった、ドモン・カッシュ」 話を聞きながら名簿を確認してみると、たしかにその名が載っていた。 アレンビーは自分のことを話す時よりも、生き生きとドモン・カッシュのことをジョンに語る。 アレンビーがここまで熱弁するほどなのだからよほど屈強な人物のようだ。 そしてその話す様子から、彼に対する淡い想いを感じることができた。 「それにレインはガンダムのメカニックもしてたから、この首輪を外せるかも」 「首輪を――――うわ!?」 ジョンが持つ名簿を覗き込み、続けてレイン・ミカムラという名を指さす。 本当に外せるものなのかと思い、後ろから覗き込んできているアレンビーへ向くと、女性特有の甘い匂いと共にその顔が至近距離にあったことに驚く。 「ちょ、ちょっと!近いよ!!」 顔を赤らめながら、思わずアレンビーとの距離を取る。 ジョンもそういうことを意識してしまう年齢だ。年上の美女の顔がいきなり至近距離にあれば、狼狽するのは当然といえる。 「あはは。ごめんごめん、もしかして照れてる?」 「ち、違うよ。ちょっと驚いただけさ」 「………」 「……何?」 「ううん、ちょっと安心しただけ」 「??」 目の前であからさまに狼狽えている少年を見ながら、その年相応な反応にアレンビーはどこかほっとした気持ちになった。 いくら落ち着きのある行動を取れていたとしても、やはりまだ子どもなのだ。 これから先、どのようなことになるか予想できないが、自分が彼を守らなくてはとの思いを堅固にする。 「あ、誰か来る」 そんなやり取りをしていた時、向かい合って話していたジョンが、視線の先を指さしながらアレンビーに告げる。 振り返って少年の緊張の眼差しの先を見てみると、たしかに一人の女性がこちらに向かって歩いて来ているのが見えた。 その足取りとただならぬ雰囲気から何かを察したのか、アレンビーは自然とジョンを庇うような位置を取っている。 近くまで来た女性は異様な格好をしており、まるでコミックから出てきたようなその様相は、この異常な状況においてより一層の不気味さを醸し出している。 「私たちは殺し合いをする気は―――」 「ジェットマン、ラディゲ、グレイ。こいつらの居場所に心当たりはあるか?」 「え?……知らない、ここであったのはあなたが二人目だから」 「そうか、ならば貴様らの首輪を貰うとしよう」 「な!!!?」 まずは対話を試みようとしたアレンビーを無視して、一方的に自分の要件を済ませる。 さらに聞き捨てならない言葉が発せられると、危険性を確信したアレンビーがすかさず攻撃に移ったが―――― 「嘘……」 「この程度で私に抗うとはな」 思わず驚愕の声を漏らすアレンビーであったが、それも無理もない。 標的の頭部目がけて放たれた上段蹴りは、相手の不意をつくには十分な速さと威力を備えていたはずだった。 しかし、その攻撃が事も無げに受け止められ、そのまま足を掴み取られてしまったのである。 それもそのはず、彼女が攻撃を仕掛けた相手は裏次元を征服した武装集団、次元戦団バイラムの首領でありバイラムいちの実力者。 見た目は妙齢の女性だが、女帝ジューザといえば部下をもその存在を恐れる女傑なのだ。 「まだまだ!!」 一瞬面食らったアレンビーだったが、すぐさま足を掴まれた腕へ絡みつき関節技を試みる。 「ふん、小賢しいわ」 「がはっ」 ところが、そのままアレンビーもろとも腕を地面へ叩きつけるという荒業へ出る。 衝撃音が鳴り響き、地面に倒れ込み悶えるアレンビー。 すると今度は片手で首を掴み軽々と持ち上げると、満足気に微笑んだ。 「このまま絞め殺してやる」 「あ……ぐ……」 「アレンビーッ!!」 デイパックから取り出した銃を構えて援護しようとするも、ジョンの腕前ではアレンビーに当ててしまう可能性もあり、構えたまま立ち尽くしてしまう。 早くも勝負は決したかに見えたが、ここでこの場にいる誰もが予想していない事態が起こる。 「なんだッ」 ジューザの立っている地面が、いきなり爆発したかのように弾けたのだ。 その際に見せた隙をついてアレンビーは拘束から脱出し、少し離れた場所から様子を窺っている。 「ここはどこだ……」 土煙の上がる地下から現れたのは、中華風の服を着て黄色いバンダナを頭に巻いた男。 まるで迷子のようにキョロキョロと辺りを見回している。 そしてジューザの姿を目にすると、ぎょっとしたような顔をして後ずさる。 「な、なんだてめえは!」 「私の邪魔をしておいて無礼な口まできくとは、そんなに殺してほしいのか?」 「殺すだと?まさかお前、こんな馬鹿げたゲームに乗ってやがるのか」 「ノストラダムスもお前たちも同じよ。私の邪魔をする者は殺す。  お前のでも構わん、そのために首輪のサンプルを貰うぞ」 「うおっ」 ジューザから放たれる拳をなんとかガードするも、その凄まじい威力から、バンダナの男はさらに後ろへ押し出された。 そこへ背後からアレンビーが受け止める。 そして静かにバンダナの男へ向かって話しかける。 「す、すまん。助かった」 「いいえ、気にしないで。私はアレンビー、そっちにいる子はジョン君。  二人とも殺し合いには乗ってない」 「俺は良牙、響良牙だ。俺も殺し合いには乗ってない」 「じゃあ、あいつをどうにかするの協力しない?  正直言って、一人じゃとても敵いそうにないの」 「同感だ、あいつはヤバい」 響良牙とアレンビー・ビアズリー。 二人とも達人といってもいい格闘技術を持っている。 しかしながら、相手も常識破りの怪物だ。 最初のような一方的な展開にはならずとも、決定打を与えることができないまま疲労だけが蓄積していく。 その様子を悔しそうに見つめるジョンは、戦いに向かう際に良牙が投げ捨てたデイパックへ目を向けた。 その中に何か役に立つ支給品があるかもしれない。 そう思い立ち、中を探り始める。 (あった……) 運よく武器になりそうなものを探し当て、見つけた支給品をアレンビーへ渡そうと顔をあげる。 「ぐあっ」 「きゃあっ」 「そろそろ煩わしくなってきたぞ。お前はもがき苦しみながら死ね」 吹き飛ばされた二人と、まだ余裕のありそうなジューザ。 そのジューザの額にある石が光り、アレンビーに向かって光線が発射される。 「あああああああああああっ」 なんと、光線を受け叫ぶアレンビーの腕からは結晶のようなものが生えてきているではないか。 心配して駆け寄ったジョンが見たものは、皮膚を破って血を滲ませながら結晶が生えてくる痛々しい姿だった。 「ちくしょおおおお」 「お前も終わりだ」 最後の力を振り絞るように突進していった良牙だったが、腹部を打ち据えられジューザの足元に倒れ伏す。 アレンビーは正体不明の光線を受け戦闘不能。良牙もジューザの力の前に屈してしまった。 今度こそ本当に終わりかと思われたその時、倒れていた良牙の手がジューザの足を掴む。 「なあ、俺はこのまま死ぬのか……」 「そうだ。だが私の役に立つのだ、誇り思って死ぬがいい」 「くそぉ…………」 「……ん、なんだ!?」 ジューザが良牙の異変に気付た。 突然、良牙の身体から凄まじい闘気が発せられたのだ。 「逃がさねえぞ」 「くっ!!」 離れようとするジューザを、掴んだ手に懸命の力を込めてその場に食い止める。 「ああ…憂鬱だ……獅子!!!咆哮弾ーーーーーーーー!!!」 良牙が叫び声をあげると、巨大な光の弾が頭上に現れ落下。 放たれた技の威力を物語るように、中心部にいた良牙の周辺はクレーターのように大きくへこんだ状態になっていた。 そこにはジューザの姿はなく、良牙が一人ゆっくりと立ち上がる姿だけが確認できた。 「だ、大丈夫なの?」 「ああ、なんとかな。  獅子咆哮弾の直撃を食らえばあいつだって―――」 振り返った良牙の誇らし気な顔に安心したのもつかの間。 その言葉が途切れる。 強大な敵を打倒したはずの男の口からは血が流れ、その胸を剣が刺し貫いている。 「ごふっ……」 「この剣を見ると思い出す。あの忌々しい裏切り者の顔をな」 「あ…かね…さん」 抉れた地面の下から現れ、良牙に致命傷を与えたジューザは、膝をついた彼の首をその剣で切り落とした。 さっきまでジューザと激闘を繰り広げていた男の首が、あっさりと体から離れ地面への落ちていく。 「さあ、小僧。次はお前だ」 「…………」 「安心しろ、手早く済ませてやる」 「…………」 「私はいいから……早く…逃げて…」 呆然と立ち尽くすジョンへ、アレンビーが逃げるように促す。 あそこまでの威力の攻撃を受けて生きているような相手に、銃だけで敵うわけがない。 だが今更逃げられるかと問われれば、それもNOだ。 乗り物も持ってない子どもが逃げ切れるとは到底思えない。 悩みぬいたジョンは、自身が生き残るために危険な賭けに出た。 「俺は役に立つよ」 「なに?」 「その首輪を調べるあてがないんなら、俺がやれる」 「ほう……」 ジョンの言葉を受け、歩み寄っていたジューザは足を止めて思考する。 はっきりいって首輪を解析する手段に心当たりはない。 だが、トランのような例があるにせよ、このような子どもがそれをできるなど信じがたいことだ。 「……いいだろう」 「!?」 しかしながら、ジューザは了承した。 嘘であったとしてもその時に殺せばいいことであり、この首輪がジューザにとっても最大の懸念事項であるからだ。 「ただし、裏切れば殺す。役立たずだと判断しても殺す」 「……わかった」 「よし、では行くぞ。  その女は放っておいてもそのうち死ぬ」 この場を立ち去ると促すジューザに対して首肯すると、アレンビーの傍に置いていたデイパックを取りに戻っていく。 「おい、早くしろ」 「は、はい!!」 デイパックを取りに行く際の一瞬、苦しむアレンビーへ視線を向けるが、ジューザの呼びかけに応え後を追って走っていった。 嵐が去った後に残されたのは、悪に立ち向かった男の物言わぬ骸と得体のしれない現象に苦しみもがく女の叫び声。 そして、女のそばには一つの支給品が目立たぬように置かれていた。 &color(red){【響良牙@らんま1/2 死亡】} 【D-3 1日目 深夜】 【女帝ジューザ@鳥人戦隊ジェットマン】 [状態]:疲労(大) [装備]:秘剣ブラディゲート [道具]:支給品一式、ランダム支給品0~1、首輪(響良牙) [思考] 基本行動方針:ノストラダムスを殺す 1:ジョンに首輪を解析させる 2:ジェットマンと裏切り者(ラディゲ、グレイ)は見つけ次第絶対に殺す 3:邪魔をする者、目障りな者は殺す [備考] ※参戦時期はラディゲに殺された直後 ※結晶化現象はジューザが一定の距離離れたら解除されますが、ジューザはまだ気付いていません 【アレンビー・ビアズリー@機動武闘伝Gガンダム】 [状態]:疲労(極大)、全身打撲、左腕に結晶化現象進行中 [装備]: [道具]:支給品一式、ランダム支給品2~3、 [思考] 基本行動方針:殺し合いから脱出する 1:ジョンを守る 2:知り合い(ドモン、レイン)と合流する 3:白いローブの女(女帝ジューザ)を警戒 4:東方不敗を警戒 [備考] ※同作参加者たちを知っている時期からの参戦 ※ジョンからターミネーターの話を聞きました ※倒れているアレンビーの傍に支給品(魔甲拳)が置かれています ※響良牙のデイパックは戦闘した場所の周辺に落ちています 【ジョン・コナー@ターミネーター2】 [状態]:精神的疲労(大)、良牙・アレンビーへの強い罪悪感 [装備]:ベレッタM92F [道具]:支給品一式、ランダム支給品2 [思考] 基本行動方針:母の元へ生きて帰る 1:逃げるチャンスが来るまでジューザに取り入って生き残る 2:T-800と合流したい 3:T-1000を警戒 4:アレンビーの知り合い(ドモン、レイン)と会ったらどうしよう…… 5:天道あかねが良牙の知り合いなら良牙のことを伝えたい [備考] ※T-800、サラと共に逃走中からの参戦 ※アレンビーからガンダムファイター・ドモンたちの情報を聞きました 【支給品説明】 【秘剣ブラディゲート@鳥人戦隊ジェットマン】 女帝ジューザに支給。 次元をも切り裂くことができる裏次元伯爵ラディゲ愛用の剣。 【魔甲拳@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-】 響良牙に支給。 魔界の名工ロン・ベルク作の武器。 利き腕と逆側に装着し「鎧化」の声に反応し手甲の一部が鎧に変わる。 鎧化後は呪文が効かないが金属のため雷系は防げない。 【ベレッタM92F@レオン】 ジョン・コナーに支給。 イタリアのベレッタ社が設計した自動拳銃。 マチルダがレオンから使用法を習っていた銃の一つ。 *時系列順で読む Back:[[愛と憎しみのハジマリ] Next:[[誰がために我は行く]] *投下順で読む Back:[[愛と憎しみのハジマリ]] Next:[[誰がために我は行く]] |COLOR(BLUE):GAME START|[[女帝ジューザ]]|Next:[[]]| |~|[[アレンビー・ビアズリー]]|Next:[[]]| |~|[[ジョン・コナー]]|Next:[[]]| |~|[[響良牙]]|COLOR(RED):GAME OVER|
*咆哮 人類が宇宙へ新しい発見を求めて旅立ち、国家ですらもスペースコロニーへと移転した未来世紀の時代には、ガンダムファイトと呼ばれる世界のリーダーを決める代理戦争が行われていた。 ガンダムファイトは、コロニー国家間での全面戦争を防ぐためにと考案され、地球をリングとして『ガンダム』と呼ばれる兵器を用いて行われる。 アレンビーも国家の代表としてガンダムに乗り、闘っていた一人である。 まだ17歳の少女ながらも、新体操の動きを取り入れた軍隊式格闘術を駆使する凄腕のファイターだ。 今現在、彼女が置かれている状況はガンダムファイトと似たようなものではある。 ただ違うのは、ガンダムに乗って闘うのではなく生身の人間同士で競い合うということ。 そして、勝ち残った一人しか生き残れない殺し合いだということ―――――― (こんな子どもまで参加させられてるなんて……) アレンビーは一人の少年と共に、広い草原を線路に沿って歩いている。 少年の名前はジョン・コナー。 10歳という幼さにも関わらず、取り乱した様子はない。 つい先ほどアレンビーと出会った時も、自分は殺し合いに乗っていないから協力しようという提案をしてきた。 話を聞いてみると、ターミネーターというロボットに命を狙われ、同じく別のターミネーターに守られていたという。 「襲ってくる奴の方が、規格外の化け物だったけどね」 とジョンは言っていたが、味方のターミネーターのことを語る表情から察するに、かなり頼りになる存在だったことが伺える。 これだけ落ち着いているのも、そのターミネーターが自分を見つけ出して守ってくれると信じているからなのだろうか。 殺し合いの場だというのに、弱音を吐かず歩みを進めている。 (まだ可愛い顔してるのに、ずいぶんとしっかりしてるのね) それにしても、冷静過ぎのように思える。 アレンビーを先導するように目の前を歩くジョンへ視線を向けながら、心中感心しつつも訝しむ。 「あのさ……」 「うん?どうかした?」 そんなことを考えながら歩いていると、不意にジョンが立ち止まり、後ろを歩くアレンビーに話しかけてきた。 「あのノストラダムスってやつは何がしたいんだと思う?」 「何がって……道楽だって言ってたけど……」 「でも、あいつは答えることはできないって言ってた。  遊びならそれが楽しいからで済むはずでしょ?」 そう言われてみればそうである。だが改めて考えてみても、何が目的かなど見当がつかない。 ガンダムファイトのように大規模な戦争を防ぐための手段としてでもなく、こんな殺し合いに多数の人を無理やり参加させるなんて、普通の人間が考えるようなことではない。 見世物として金儲けをするか、本当に道楽だという方が納得できる。 金と変人の欲求というのは、常人が理解できない状況を生み出すものだ。 とにかく、推理するにはまだ情報が足りない。 「ジョンくんは何か心当たりでもあるの?」 「ううん。でもさ、相手の目的が分かれば何か弱点も分かるんじゃないかと思ったんだ……」 そう話すジョンの表情には、どこか不安げな感情が読み取れる。 こんな状況で初めて会った人間だ。おそらく、アレンビーがいくら殺し合いに乗っていないとわかったとしても、多少警戒したまま接していたのだろう。 「大丈夫だって。  あいつが何をしようとしてるかはわかんないけどさ、私が守ってあげるから」 こう見えてもほんとに私強いんだよ、と元気づけるようにジョンへ向かって笑いかける。 これ以上続けても進展はないと思ったのか、ジョンも話題を切り上げて曖昧な笑みを浮かべた。 「ガンダムファイターだっけ?」 「うん、もう一人ドモンていう私よりも強いファイターも参加者にいるよ。  でも絶対にこんなゲームに乗るような人じゃないから安心して」 「ドモン……あった、ドモン・カッシュ」 話を聞きながら名簿を確認してみると、たしかにその名が載っていた。 アレンビーは自分のことを話す時よりも、生き生きとドモン・カッシュのことをジョンに語る。 アレンビーがここまで熱弁するほどなのだからよほど屈強な人物のようだ。 そしてその話す様子から、彼に対する淡い想いを感じることができた。 「それにレインはガンダムのメカニックもしてたから、この首輪を外せるかも」 「首輪を――――うわ!?」 ジョンが持つ名簿を覗き込み、続けてレイン・ミカムラという名を指さす。 本当に外せるものなのかと思い、後ろから覗き込んできているアレンビーへ向くと、女性特有の甘い匂いと共にその顔が至近距離にあったことに驚く。 「ちょ、ちょっと!近いよ!!」 顔を赤らめながら、思わずアレンビーとの距離を取る。 ジョンもそういうことを意識してしまう年齢だ。年上の美女の顔がいきなり至近距離にあれば、狼狽するのは当然といえる。 「あはは。ごめんごめん、もしかして照れてる?」 「ち、違うよ。ちょっと驚いただけさ」 「………」 「……何?」 「ううん、ちょっと安心しただけ」 「??」 目の前であからさまに狼狽えている少年を見ながら、その年相応な反応にアレンビーはどこかほっとした気持ちになった。 いくら落ち着きのある行動を取れていたとしても、やはりまだ子どもなのだ。 これから先、どのようなことになるか予想できないが、自分が彼を守らなくてはとの思いを堅固にする。 「あ、誰か来る」 そんなやり取りをしていた時、向かい合って話していたジョンが、視線の先を指さしながらアレンビーに告げる。 振り返って少年の緊張の眼差しの先を見てみると、たしかに一人の女性がこちらに向かって歩いて来ているのが見えた。 その足取りとただならぬ雰囲気から何かを察したのか、アレンビーは自然とジョンを庇うような位置を取っている。 近くまで来た女性は異様な格好をしており、まるでコミックから出てきたようなその様相は、この異常な状況においてより一層の不気味さを醸し出している。 「私たちは殺し合いをする気は―――」 「ジェットマン、ラディゲ、グレイ。こいつらの居場所に心当たりはあるか?」 「え?……知らない、ここであったのはあなたが二人目だから」 「そうか、ならば貴様らの首輪を貰うとしよう」 「な!!!?」 まずは対話を試みようとしたアレンビーを無視して、一方的に自分の要件を済ませる。 さらに聞き捨てならない言葉が発せられると、危険性を確信したアレンビーがすかさず攻撃に移ったが―――― 「嘘……」 「この程度で私に抗うとはな」 思わず驚愕の声を漏らすアレンビーであったが、それも無理もない。 標的の頭部目がけて放たれた上段蹴りは、相手の不意をつくには十分な速さと威力を備えていたはずだった。 しかし、その攻撃が事も無げに受け止められ、そのまま足を掴み取られてしまったのである。 それもそのはず、彼女が攻撃を仕掛けた相手は裏次元を征服した武装集団、次元戦団バイラムの首領でありバイラムいちの実力者。 見た目は妙齢の女性だが、女帝ジューザといえば部下をもその存在を恐れる女傑なのだ。 「まだまだ!!」 一瞬面食らったアレンビーだったが、すぐさま足を掴まれた腕へ絡みつき関節技を試みる。 「ふん、小賢しいわ」 「がはっ」 ところが、そのままアレンビーもろとも腕を地面へ叩きつけるという荒業へ出る。 衝撃音が鳴り響き、地面に倒れ込み悶えるアレンビー。 すると今度は片手で首を掴み軽々と持ち上げると、満足気に微笑んだ。 「このまま絞め殺してやる」 「あ……ぐ……」 「アレンビーッ!!」 デイパックから取り出した銃を構えて援護しようとするも、ジョンの腕前ではアレンビーに当ててしまう可能性もあり、構えたまま立ち尽くしてしまう。 早くも勝負は決したかに見えたが、ここでこの場にいる誰もが予想していない事態が起こる。 「なんだッ」 ジューザの立っている地面が、いきなり爆発したかのように弾けたのだ。 その際に見せた隙をついてアレンビーは拘束から脱出し、少し離れた場所から様子を窺っている。 「ここはどこだ……」 土煙の上がる地下から現れたのは、中華風の服を着て黄色いバンダナを頭に巻いた男。 まるで迷子のようにキョロキョロと辺りを見回している。 そしてジューザの姿を目にすると、ぎょっとしたような顔をして後ずさる。 「な、なんだてめえは!」 「私の邪魔をしておいて無礼な口まできくとは、そんなに殺してほしいのか?」 「殺すだと?まさかお前、こんな馬鹿げたゲームに乗ってやがるのか」 「ノストラダムスもお前たちも同じよ。私の邪魔をする者は殺す。  お前のでも構わん、そのために首輪のサンプルを貰うぞ」 「うおっ」 ジューザから放たれる拳をなんとかガードするも、その凄まじい威力から、バンダナの男はさらに後ろへ押し出された。 そこへ背後からアレンビーが受け止める。 そして静かにバンダナの男へ向かって話しかける。 「す、すまん。助かった」 「いいえ、気にしないで。私はアレンビー、そっちにいる子はジョン君。  二人とも殺し合いには乗ってない」 「俺は良牙、響良牙だ。俺も殺し合いには乗ってない」 「じゃあ、あいつをどうにかするの協力しない?  正直言って、一人じゃとても敵いそうにないの」 「同感だ、あいつはヤバい」 響良牙とアレンビー・ビアズリー。 二人とも達人といってもいい格闘技術を持っている。 しかしながら、相手も常識破りの怪物だ。 最初のような一方的な展開にはならずとも、決定打を与えることができないまま疲労だけが蓄積していく。 その様子を悔しそうに見つめるジョンは、戦いに向かう際に良牙が投げ捨てたデイパックへ目を向けた。 その中に何か役に立つ支給品があるかもしれない。 そう思い立ち、中を探り始める。 (あった……) 運よく武器になりそうなものを探し当て、見つけた支給品をアレンビーへ渡そうと顔をあげる。 「ぐあっ」 「きゃあっ」 「そろそろ煩わしくなってきたぞ。お前はもがき苦しみながら死ね」 吹き飛ばされた二人と、まだ余裕のありそうなジューザ。 そのジューザの額にある石が光り、アレンビーに向かって光線が発射される。 「あああああああああああっ」 なんと、光線を受け叫ぶアレンビーの腕からは結晶のようなものが生えてきているではないか。 心配して駆け寄ったジョンが見たものは、皮膚を破って血を滲ませながら結晶が生えてくる痛々しい姿だった。 「ちくしょおおおお」 「お前も終わりだ」 最後の力を振り絞るように突進していった良牙だったが、腹部を打ち据えられジューザの足元に倒れ伏す。 アレンビーは正体不明の光線を受け戦闘不能。良牙もジューザの力の前に屈してしまった。 今度こそ本当に終わりかと思われたその時、倒れていた良牙の手がジューザの足を掴む。 「なあ、俺はこのまま死ぬのか……」 「そうだ。だが私の役に立つのだ、誇り思って死ぬがいい」 「くそぉ…………」 「……ん、なんだ!?」 ジューザが良牙の異変に気付た。 突然、良牙の身体から凄まじい闘気が発せられたのだ。 「逃がさねえぞ」 「くっ!!」 離れようとするジューザを、掴んだ手に懸命の力を込めてその場に食い止める。 「ああ…憂鬱だ……獅子!!!咆哮弾ーーーーーーーー!!!」 良牙が叫び声をあげると、巨大な光の弾が頭上に現れ落下。 放たれた技の威力を物語るように、中心部にいた良牙の周辺はクレーターのように大きくへこんだ状態になっていた。 そこにはジューザの姿はなく、良牙が一人ゆっくりと立ち上がる姿だけが確認できた。 「だ、大丈夫なの?」 「ああ、なんとかな。  獅子咆哮弾の直撃を食らえばあいつだって―――」 振り返った良牙の誇らし気な顔に安心したのもつかの間。 その言葉が途切れる。 強大な敵を打倒したはずの男の口からは血が流れ、その胸を剣が刺し貫いている。 「ごふっ……」 「この剣を見ると思い出す。あの忌々しい裏切り者の顔をな」 「あ…かね…さん」 抉れた地面の下から現れ、良牙に致命傷を与えたジューザは、膝をついた彼の首をその剣で切り落とした。 さっきまでジューザと激闘を繰り広げていた男の首が、あっさりと体から離れ地面への落ちていく。 「さあ、小僧。次はお前だ」 「…………」 「安心しろ、手早く済ませてやる」 「…………」 「私はいいから……早く…逃げて…」 呆然と立ち尽くすジョンへ、アレンビーが逃げるように促す。 あそこまでの威力の攻撃を受けて生きているような相手に、銃だけで敵うわけがない。 だが今更逃げられるかと問われれば、それもNOだ。 乗り物も持ってない子どもが逃げ切れるとは到底思えない。 悩みぬいたジョンは、自身が生き残るために危険な賭けに出た。 「俺は役に立つよ」 「なに?」 「その首輪を調べるあてがないんなら、俺がやれる」 「ほう……」 ジョンの言葉を受け、歩み寄っていたジューザは足を止めて思考する。 はっきりいって首輪を解析する手段に心当たりはない。 だが、トランのような例があるにせよ、このような子どもがそれをできるなど信じがたいことだ。 「……いいだろう」 「!?」 しかしながら、ジューザは了承した。 嘘であったとしてもその時に殺せばいいことであり、この首輪がジューザにとっても最大の懸念事項であるからだ。 「ただし、裏切れば殺す。役立たずだと判断しても殺す」 「……わかった」 「よし、では行くぞ。  その女は放っておいてもそのうち死ぬ」 この場を立ち去ると促すジューザに対して首肯すると、アレンビーの傍に置いていたデイパックを取りに戻っていく。 「おい、早くしろ」 「は、はい!!」 デイパックを取りに行く際の一瞬、苦しむアレンビーへ視線を向けるが、ジューザの呼びかけに応え後を追って走っていった。 嵐が去った後に残されたのは、悪に立ち向かった男の物言わぬ骸と得体のしれない現象に苦しみもがく女の叫び声。 そして、女のそばには一つの支給品が目立たぬように置かれていた。 &color(red){【響良牙@らんま1/2 死亡】} 【D-3 1日目 深夜】 【女帝ジューザ@鳥人戦隊ジェットマン】 [状態]:疲労(大) [装備]:秘剣ブラディゲート [道具]:支給品一式、ランダム支給品0~1、首輪(響良牙) [思考] 基本行動方針:ノストラダムスを殺す 1:ジョンに首輪を解析させる 2:ジェットマンと裏切り者(ラディゲ、グレイ)は見つけ次第絶対に殺す 3:邪魔をする者、目障りな者は殺す [備考] ※参戦時期はラディゲに殺された直後 ※結晶化現象はジューザが一定の距離離れたら解除されますが、ジューザはまだ気付いていません 【アレンビー・ビアズリー@機動武闘伝Gガンダム】 [状態]:疲労(極大)、全身打撲、左腕に結晶化現象進行中 [装備]: [道具]:支給品一式、ランダム支給品2~3、 [思考] 基本行動方針:殺し合いから脱出する 1:ジョンを守る 2:知り合い(ドモン、レイン)と合流する 3:白いローブの女(女帝ジューザ)を警戒 4:東方不敗を警戒 [備考] ※同作参加者たちを知っている時期からの参戦 ※ジョンからターミネーターの話を聞きました ※倒れているアレンビーの傍に支給品(魔甲拳)が置かれています ※響良牙のデイパックは戦闘した場所の周辺に落ちています 【ジョン・コナー@ターミネーター2】 [状態]:精神的疲労(大)、良牙・アレンビーへの強い罪悪感 [装備]:ベレッタM92F [道具]:支給品一式、ランダム支給品2 [思考] 基本行動方針:母の元へ生きて帰る 1:逃げるチャンスが来るまでジューザに取り入って生き残る 2:T-800と合流したい 3:T-1000を警戒 4:アレンビーの知り合い(ドモン、レイン)と会ったらどうしよう…… 5:天道あかねが良牙の知り合いなら良牙のことを伝えたい [備考] ※T-800、サラと共に逃走中からの参戦 ※アレンビーからガンダムファイター・ドモンたちの情報を聞きました 【支給品説明】 【秘剣ブラディゲート@鳥人戦隊ジェットマン】 女帝ジューザに支給。 次元をも切り裂くことができる裏次元伯爵ラディゲ愛用の剣。 【魔甲拳@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-】 響良牙に支給。 魔界の名工ロン・ベルク作の武器。 利き腕と逆側に装着し「鎧化」の声に反応し手甲の一部が鎧に変わる。 鎧化後は呪文が効かないが金属のため雷系は防げない。 【ベレッタM92F@レオン】 ジョン・コナーに支給。 イタリアのベレッタ社が設計した自動拳銃。 マチルダがレオンから使用法を習っていた銃の一つ。 *時系列順で読む Back:[[愛と憎しみのハジマリ] Next:[[誰がために我は行く]] *投下順で読む Back:[[愛と憎しみのハジマリ]] Next:[[誰がために我は行く]] |COLOR(BLUE):GAME START|[[女帝ジューザ]]|Next:[[]]| |~|[[アレンビー・ビアズリー]]|Next:[[]]| |~|[[ジョン・コナー]]|Next:[[]]| |~|[[響良牙]]|COLOR(RED):GAME OVER|

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