愛と憎しみのハジマリ




「バトルロイヤル……」

いつもならば、すでに眠りについている深夜。
自分の置かれた状況が信じられないのか、真宮寺さくらは確認するかのような独り言を呟きながら、配られた参加者名簿を見ていた。
神社の境内で姿勢よく座っているその袴姿は、真っ暗な闇のなかランタンの灯りに照らされ、見惚れてしまうような凛とした美しさを醸し出していた。

「大神さん……それにアイリスと紅蘭まで……」

名簿に記されていた名前のなかにあったのは、愛しい人と帝國歌劇団の仲間たち。
そんな大切な者たちが、自分と同じく殺し合いの場に連れてこられているのは悲しいことではあるが、同時に心強さも感じる。
一人だけなら混乱もしよう。
しかし、共に苦難を乗り越えた頼もしい仲間と、何よりもその仲間たちと自分を支え導いてくれた隊長がいる。

地図を眺めてまず目についたのは、大帝国劇場。
ほぼ島の中心に位置していることから参加者が集まりやすく、危険も高まるかもしれないが、見慣れたこの場所に知り合いが向かう可能性も同じく高い。
迷った結果、知り合いとの合流を最優先するという結論になり、最初の目的地を大帝国劇場に決めた。
先ほどまで感じていた不安はどこへやら、彼らを探さねばと立ち上がり歩き出そうとする。
月峰神社へ新たな客人が訪れたのは、ちょうどそんな時であった。










「…………先客がいたか」

姿を見せたのは、甲殻類の殻のような兜と奇妙な鎧を身にまとい、怪しい気配を漂わせる男であった。
その瞳には友好的に接しようなどという意思を欠片も感じさせることはなく、自分以外すべてのものを見下し支配する、そんな邪悪さを放っていた。
かつて戦った、黒之巣会の叉丹を思い起こさせる。


「!?……止まりなさい!!」

すぐさま危険な相手と判断したさくらは、デイパックの中から支給されていた刀を取り出すと腰の位置に添え、構えながら警告する。

「ほう……このラディゲに無礼な口をきくだけあって、なかなかの覇気を持っておるようだな」
「あなたは何者ですか!!その場で答えなさい、近づけば斬ります!!」

口調は気丈に努めてはいても、相手から発せられるプレッシャーから、刀の柄を握るさくらの手のひらには汗がにじんでいく。
さくらの警告を気にも留めていないのか、男はゆっくりと近づきながら問いに答える。

「ふん、私が何者かだと?我が名は次元戦団バイラムが幹部、ラディゲ。
 そして、いずれは全次元の頂点に立つ者だ。このラディゲの手にかかって死ねることを誇るがいい!」
「くっ!?」

そう言うと、右手からムチのようなものを発生させ、さくらのいる場所へ向かって勢いよく振るった。
さくらが刀を構えた状態のまま、横っ飛びをするように回避したと同時に、背後にあった境内の一部が音を立てて崩れていく。
すでに警戒態勢に入っていたことから、いきなりの攻撃にも対応でき、なんとか躱すことに成功する。

ラディゲは即座にさくらが移動した場所にもムチを振るうが、またしても手ごたえはない。
さくらたち帝國歌劇団の面々は、妖魔たちと対していた際には、神武と呼ばれる霊子甲冑に乗り込み戦っていた。
だが、さくら自身も、魔を祓う破邪の力を持つ真宮寺一族であり、北辰一刀流免許皆伝の腕前を誇る凄腕の刀士である。
その実力を発揮し、次々と繰り出されるラディゲのムチによる攻撃を躱し続けるさくら。




「どうした、なぜ攻撃してこない。
 私に届くかはともかく、攻撃を仕掛けることはできたのではないか?」

十数分間そのようなやり取りを続けながらも、まだ余裕の表情のラディゲは、途中から抱いていた疑問を投げかけた。
ラディゲの言う通り、攻撃に移ることのできるタイミングは何度かあった。
躱し続けていても、誰かの救援が望めぬ以上、事態を好転させることが難しいのもわかっている。
さくらは手に持っている刀に目を向け逡巡する。


「来ないのならばそれでもよい、そろそろ終わらせてやる」

それまでムチを振るっていた右手を掲げる。
するとその手から衝撃波が放たれ、さくらは勢いよく傍にあった木の幹へ叩きつけられた。
ぶつかった衝撃によって、たまらずうめき声をあげてその場に倒れ込む。
なんとか目だけを向けると、再度ムチを発生させたラディゲが、今まさに止めをさそうと寄ってきていた。

(このままでは、やられる……)

もう迷っている暇はない。

「大神さんに会えずに、こんなところで死ぬわけにはいかない」

「真宮寺さくら、参ります!!」

さくらは決断し、急いで体勢を立て直すと、構えてた状態から刀を抜き斬りつけた――――――






「なにっ!?」

ラディゲとて、けっしてさくらを侮っていたわけではない。
しかし、その放たれた斬撃には、思わず驚きで目を見張った。
優れた刀士であろう、さくらによる斬撃の鋭さは予想できていた。
問題なのはその数。
なんと同時に八つの斬撃が放たれたのである。

真宮寺さくらに支給された刀の名は、『八房』。

人狼によって作られ、一振りで八つの斬撃を繰り出すことのできる妖刀である。

慣れた獲物である刀を支給されたのはありがたかったのだが、説明書に妖刀と記されていたので使うことをためらっていたのだ。


まだ十分に制御できていないのか、あらぬ方向に飛んだ斬撃もあったため、ダメージを与えることはできなかった。
にも関わらず、警戒しているのかすぐに攻撃に移らずに、何かを考えるようにじっとさくらを見つめている。

これは好機とばかりに八房で斬りつけると、突然ラディゲの姿が欠き消えた。

「えっ?」

戸惑いの声をあげたのもつかの間、続けて背後からわき腹を蹴り上げられる。

「がふっ」

すかさず身体をずらし、ダメージを和らげながらその方向に斬りつける。
が、ふたたびその姿は消え、斬撃は辺りを破壊する。


「さすがに今のままでは、それを相手に無傷とはいかなそうだ。
 この勝負、預けておくぞ」

別の方向に現れたラディゲは、などと勝手なことを言いながら闇夜の中に姿を消していった。

「逃げた……の?」

緊張が解け、力が抜けたように座り込む。
さっきの戦闘で、精神肉体ともにだいぶ消耗してしまったようだ。

「でもすぐに移動しないと。音を聞いて、また危険な人が寄ってきちゃう」

「それに、早く大神一郎を殺さないといけないしね」

立ち上がるさくらの腰元のあたりには、見慣れないブローチが輝いていた。










(これは当たりだったようだな)

傍に潜み、気配を殺して様子を眺めていたラディゲは、満足そうに笑みを浮かべた。
見つけた参加者へ攻撃をしながら観察をしていた最中、誰かの名前を口走ったので支給品を試してみることにしたのである。
『反転宝珠』という、逆さまに付ければ愛情が憎悪に変わるブローチ。
あの言動から察するに、思惑通りにいったようだ。

(くくく、愛などという愚かな感情を持つから、己の身を亡ぼすことになるのだ。
私のために、せいぜい暴れてくれよ)

ラディゲといえども、ジェットマンやグレイ、そしてなぜか甦っている女帝ジューザ、奴らがいる以上たやすく優勝できるとは思っていない。
会場を混乱させる要素を作っておいた方が、人数も減りやすいだろう。

(とりあえずの問題はジューザか)

女帝ジューザは、ジェットマンたちとも協力して、ようやく倒せたほどの存在だ。

(誰かと手を組む必要があるな、まずは蒲生の屋敷とやらに行ってみるか)

方針を決めると、さくらが向かったのとは逆の方向へ向かって歩き出した。



【D-2 月峰神社付近/1日目 深夜】




【真宮寺さくら@サクラ大戦シリーズ】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(大)、反転宝珠(逆向き)の影響下
[装備]:妖刀『八房』
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1(確認済)
[思考]
基本行動方針:ノストラダムスを倒す
1:知り合い(アイリス、紅蘭)と合流する
2:大帝国劇場へ向かう
3:憎き大神一郎を殺す
[備考]
※八房の斬撃を当てると霊力を吸収できることは知りません
※反転宝珠(逆向き)が腰の後ろあたりにつけられています
※1本編終了後からの参戦
※まだ八房を使いこなせていません



【ラディゲ@鳥人戦隊ジェットマン】
[状態]:疲労(中)
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考]
基本行動方針:優勝する
1:手を組める参加者を探す(今のところグレイ最有力)
2:蒲生の屋敷へ向かう
3:ジェットマンとジューザはできるだけ早く始末したい
[備考]
※少なくとも女帝ジューザ戦以降からの参戦



【支給品説明】

【妖刀『八房』@GS美神 極楽大作戦!!】
真宮寺さくらに支給。
一振りで八つの斬撃を繰り出せる妖刀。斬った相手のエネルギーを取り込むことができる。
フェンリル狼の封印が、使用者にどう影響を与えるかは後の書き手さんにお任せします。


【反転宝珠@らんま1/2】
ラディゲに支給。
笑顔と苛立ちの表情が上下に描かれたブローチ。
正位置につけると愛は豊かになるが、逆につけると愛が憎悪に変化する。




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最終更新:2017年06月09日 01:26