ばおばぶ村へようこそ
オスカー短編小説(4村)
こんにちはオスカーです。
このSSは、4村でホリーとはぐれたとき、ホリーを探す旅に出た僕が、ちょっと感傷的になった時の一コマです。拙いし、読み返すととってもはずかしいのですが、その時の僕の気持ちとか、やっぱり大事に取っておきたいと思って、掲載させてもらうことにしました。
このSSは、4村でホリーとはぐれたとき、ホリーを探す旅に出た僕が、ちょっと感傷的になった時の一コマです。拙いし、読み返すととってもはずかしいのですが、その時の僕の気持ちとか、やっぱり大事に取っておきたいと思って、掲載させてもらうことにしました。
『いつかまた生まれた日のために』
村のはずれにある小さい森を抜けると、そこには森から仲間はずれにされたようにぽつんと立つ杉の木と、そこに広がる小高い丘があった。
眼下に広がる長い長い荒野、そして遙か彼方で輝きを見せる海のさざ波……
そこは、僕とホリーにとってお気に入りで、そして大切な場所だった。
そう、この丘にはたくさんの思い出があった。
二人で親に怒られた時はよくここへ来て愚痴を言い合った。
村の誰かと喧嘩をしてしまったり、失敗があってふさぎ込んでしまった時など、どちらともなくここにきて、そして物思いにふけったものだ。
もちろん二人で諍いを起こしてしまった時も、ここへきて、ただ黙ったまま景色を眺め……やがては仲直りをした。
眼下に広がる長い長い荒野、そして遙か彼方で輝きを見せる海のさざ波……
そこは、僕とホリーにとってお気に入りで、そして大切な場所だった。
そう、この丘にはたくさんの思い出があった。
二人で親に怒られた時はよくここへ来て愚痴を言い合った。
村の誰かと喧嘩をしてしまったり、失敗があってふさぎ込んでしまった時など、どちらともなくここにきて、そして物思いにふけったものだ。
もちろん二人で諍いを起こしてしまった時も、ここへきて、ただ黙ったまま景色を眺め……やがては仲直りをした。
そういえば、遊びで結婚式ごっこをしたのもここだったな……
洗濯物から拝借した純白のシーツをドレスに見立てて、ホリーは嬉しそうにはしゃいでいた。小さな体にそれを巻いてお嬢様っぽくお辞儀をしてみせる。
太陽に反射してまばゆく輝いたドレス、そして屈託なく笑う彼女はそれはそれは綺麗だと、子供ながらでも思った。
僕のは?って聞いたら「オスカー黒い服だからタキシードみたいでいいじゃない」
そう言ってくすくす笑うホリーの顔はよく覚えている。
洗濯物から拝借した純白のシーツをドレスに見立てて、ホリーは嬉しそうにはしゃいでいた。小さな体にそれを巻いてお嬢様っぽくお辞儀をしてみせる。
太陽に反射してまばゆく輝いたドレス、そして屈託なく笑う彼女はそれはそれは綺麗だと、子供ながらでも思った。
僕のは?って聞いたら「オスカー黒い服だからタキシードみたいでいいじゃない」
そう言ってくすくす笑うホリーの顔はよく覚えている。
人狼の噂が村中で聞かれるようになってから、彼女の屈託のない笑いというのはみることがなくなった。……そしておそらく僕も心の底から笑うことはなくなった。二人の中に思い影を落とした人狼騒ぎ、そのだれもが望まぬ狂想曲が鳴り響く中で、僕たちは命を落としたのだ。
駆けめぐる思い出に、意識せぬまま僕の足は速くなっていった。
もちろん期待なんてしていなかった。お互い死んだ身だ。時間も空間もすべてが混沌としたこの世界で、相手が望まぬままの再会はないことくらいわかっていた。
でも……
それでも、あの笑顔が…心に刻んだあの情景が僕の背中を押し続けた。
もちろん期待なんてしていなかった。お互い死んだ身だ。時間も空間もすべてが混沌としたこの世界で、相手が望まぬままの再会はないことくらいわかっていた。
でも……
それでも、あの笑顔が…心に刻んだあの情景が僕の背中を押し続けた。
森を抜けて、例の一本杉が見えたとき、僕の鼓動が一段と高鳴った。
かすかに見えるあの白いはためき…
それは過ぎ去りし日、この場所で僕が見た
あの微笑みを見た……
かすかに見えるあの白いはためき…
それは過ぎ去りし日、この場所で僕が見た
あの微笑みを見た……
「ホリー!」
無我夢中で走った。途中小枝に足を取られ、前につんのめりながらも走った。
ただただ走った。
一歩進むのすらもどかしい。今すぐそこにたどり着きたい!
焦燥感がやけに募り、胸がやけに痛んだ。
視界でなびく白いシーツ。手が届くや否や、僕は力一杯それをたぐり寄せ、抱きしめた。
小さな肩
風に乗って小気味よくワルツを奏でる髪
そして、全てを溶かしてくれるようなぬくもり……
それを、それを!
無我夢中で走った。途中小枝に足を取られ、前につんのめりながらも走った。
ただただ走った。
一歩進むのすらもどかしい。今すぐそこにたどり着きたい!
焦燥感がやけに募り、胸がやけに痛んだ。
視界でなびく白いシーツ。手が届くや否や、僕は力一杯それをたぐり寄せ、抱きしめた。
小さな肩
風に乗って小気味よくワルツを奏でる髪
そして、全てを溶かしてくれるようなぬくもり……
それを、それを!
…
……幻想は不意に霧散する。
「ああ……」
手からすり抜けるシーツは、無機質な冷たさだけを伝える。そこには心焦がれたホリーの温もりはなく、凩が僕の情動を冷ややかに包み込んでいた。
「ああ……」
全身の力が抜け落ちて、膝から崩れた。無意識に、微かに掴んでいたシーツが静かには揺れる。
目の前には小さな墓標があった。
この場所が、二人にとってかけがえのない場所だと、いつ誰が知ったのかはわからなかった。けれど、そこには確かに二人の名が…二人がこの村にいた証がしっかりと刻まれていた。
……幻想は不意に霧散する。
「ああ……」
手からすり抜けるシーツは、無機質な冷たさだけを伝える。そこには心焦がれたホリーの温もりはなく、凩が僕の情動を冷ややかに包み込んでいた。
「ああ……」
全身の力が抜け落ちて、膝から崩れた。無意識に、微かに掴んでいたシーツが静かには揺れる。
目の前には小さな墓標があった。
この場所が、二人にとってかけがえのない場所だと、いつ誰が知ったのかはわからなかった。けれど、そこには確かに二人の名が…二人がこの村にいた証がしっかりと刻まれていた。
堪えようとしていた嗚咽が、少し洩れた。
それに端を発したように、涙が溢れ出し、大地に小さなシミを築いていった。
くぐもったような嗚咽はいつのまにか大きくなり、ついには慟哭へと変わる。
暗闇にこだまする野犬の咆吼のように……
僕ははじめて張り叫んばかりの声でで泣いた。
視界にはもうなにも映らない。止めどなく零れる涙が、すべての景色を、自分の心をも覆ってなにも見えなくしてしまったのだ。
それに端を発したように、涙が溢れ出し、大地に小さなシミを築いていった。
くぐもったような嗚咽はいつのまにか大きくなり、ついには慟哭へと変わる。
暗闇にこだまする野犬の咆吼のように……
僕ははじめて張り叫んばかりの声でで泣いた。
視界にはもうなにも映らない。止めどなく零れる涙が、すべての景色を、自分の心をも覆ってなにも見えなくしてしまったのだ。
不意に……頬を何かがそっと撫でた。
喪失感の霞を少しだけぬぐって見ると、小さな花の輪がかすかに見えた。
季節はずれの白い花……
小さなシロツメクサの花輪が、儚げに墓標を彩っていた。
ああ……そうだ
この花輪は……僕がホリーにあげたんだ。
あの時、その姿があまりに儚げで、そして綺麗だったから、そっと頭に乗せた、あの花輪だ。
喪失感の霞を少しだけぬぐって見ると、小さな花の輪がかすかに見えた。
季節はずれの白い花……
小さなシロツメクサの花輪が、儚げに墓標を彩っていた。
ああ……そうだ
この花輪は……僕がホリーにあげたんだ。
あの時、その姿があまりに儚げで、そして綺麗だったから、そっと頭に乗せた、あの花輪だ。
「オスカー、普通こういうときは指輪を渡すものよ」
頭に乗せられた花輪を少し気にしながら、ホリーは口をとがらせた。
「指輪? 急に言われても僕、そんなの持ってないよ。それに、とても似合うよ」
「……ムードないわね」
苦笑まじりの僕の顔を、憮然としながら小首を傾げて眺めていたホリーは、大きくため息をついた。
「……はい。じゃあ誓いのキス」
「へ?」
「へ? じゃない。誓いのキス」
「本当にするの? そこまでしなくても……」
躊躇しようとする僕に、ホリーは目を閉じて体をあずけてきた。
自分自身紅潮するのが手にとるようにわかった。
けどまあ、悪い気はしない。
頬に口づけるくらいはよくあったわけだし、ごっこ遊びなのだからと、そう思ったのだけれど……
この瞬間はとても緊張したのをよく覚えている。
頭に乗せられた花輪を少し気にしながら、ホリーは口をとがらせた。
「指輪? 急に言われても僕、そんなの持ってないよ。それに、とても似合うよ」
「……ムードないわね」
苦笑まじりの僕の顔を、憮然としながら小首を傾げて眺めていたホリーは、大きくため息をついた。
「……はい。じゃあ誓いのキス」
「へ?」
「へ? じゃない。誓いのキス」
「本当にするの? そこまでしなくても……」
躊躇しようとする僕に、ホリーは目を閉じて体をあずけてきた。
自分自身紅潮するのが手にとるようにわかった。
けどまあ、悪い気はしない。
頬に口づけるくらいはよくあったわけだし、ごっこ遊びなのだからと、そう思ったのだけれど……
この瞬間はとても緊張したのをよく覚えている。
…
……
「ねえ、この花の意味知ってる?」
「ううん? どんな意味なの?」
「どうだと思った……気になるなら自分で調べなさい」
呆れたように、けれど少し嬉しそうに言うと、ホリーは僕を待たずに駆けだした。
「ちょっと待ってよ! ねぇ!どういう意味なのさ?」
「教えない……そう、でもね」
少し前で突然止まると、ホリーは体をくるりとこちらに向けた。
「私オスカーのお嫁さんになるからね」
屈託のない笑いに、僕の顔も自然に綻んだ。
……
「ねえ、この花の意味知ってる?」
「ううん? どんな意味なの?」
「どうだと思った……気になるなら自分で調べなさい」
呆れたように、けれど少し嬉しそうに言うと、ホリーは僕を待たずに駆けだした。
「ちょっと待ってよ! ねぇ!どういう意味なのさ?」
「教えない……そう、でもね」
少し前で突然止まると、ホリーは体をくるりとこちらに向けた。
「私オスカーのお嫁さんになるからね」
屈託のない笑いに、僕の顔も自然に綻んだ。
……あの時冗談だと思っていたこの言葉を次に聞いたのは、村で犠牲者が出たあの日だった。
そして三度目は、僕が命を失い魂を浮かべた時だった。
そして三度目は、僕が命を失い魂を浮かべた時だった。
次……あるのかな……
虚空に手を伸ばして、花輪を抱きしめた。
ほんのわずかに鼻孔をくすぐる花の香り……
それは僕の知っている
ホリーの思い出を胸に、僕はまた歩き出す。
いつかたどり着くその日まで。
虚空に手を伸ばして、花輪を抱きしめた。
ほんのわずかに鼻孔をくすぐる花の香り……
それは僕の知っている
ホリーの思い出を胸に、僕はまた歩き出す。
いつかたどり着くその日まで。
再会時のワンシーン
そして、再会したときのはずかしい台詞も(汗)
[双生児 オスカーは、双生児 ホリーにそっとシロツメクサの冠をかけた]
花言葉は「約束」そして「私を思って」……
途中困難があっても、エピで笑ってまた出会える……そんな約束…
僕だけじゃなくて、みんながみんなを忘れないで、そて思っておける「想い」
そんな気持ちの中で迎えられるエピローグになれて本当に、本当に!
……嬉しい……です
途中困難があっても、エピで笑ってまた出会える……そんな約束…
僕だけじゃなくて、みんながみんなを忘れないで、そて思っておける「想い」
そんな気持ちの中で迎えられるエピローグになれて本当に、本当に!
……嬉しい……です
ねえホリー
僕にとって世界の全てが、ホリー、君の中にある。
いつまでも君との世界を
……ううん君だけを見ていたいんだ。
ホリーの息吹
ホリーのぬくもり
そんな全てを
だから
僕はどこにもいかない。
ホリー……君もいかせない!
僕にとって世界の全てが、ホリー、君の中にある。
いつまでも君との世界を
……ううん君だけを見ていたいんだ。
ホリーの息吹
ホリーのぬくもり
そんな全てを
だから
僕はどこにもいかない。
ホリー……君もいかせない!
君を愛してる!
永久に
この命尽きたとしても…
この体がが大地に還り
記憶が無にかえったとしても
永久に
この命尽きたとしても…
この体がが大地に還り
記憶が無にかえったとしても
この魂は君のそばにいるよ
愛してる……ホリー
愛してる……ホリー