映画 『処刑人』 The Boondock Saints @ wiki

Mom Calls From Ireland

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soi

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Deleted Scene: Mom Calls From Ireland

監督トロイ・ダフィーは UGO とのインタビューで、US版DVDに特典映像として収録されているカット・シーン『ママがアイルランドから電話を掛けて来る』について、マクマナス兄弟のパーソナリティが表されているという点で“あれはカットすべきではなかった”との後悔を吐露しています。以下、そのインタビューの該当部分とカット・シーンの訳出です。



UGO トロイ・ダフィー インタビューより抜粋


UGO: 振り返ってみて、あなたがカットせずに残しておきたかったシーンは何かありますか?

TROY: カットするんじゃなかったと思うシーンが一ヶ所あるんだ。あれは失敗だったな。そもそもファンのみんなが言ってくれたことなんだけどね。冒頭から外してしまった兄弟の母親が出て来るシーンがあったんだよ。彼女がアイルランドから電話をしてくるっていう……

UGO: あのシーンは良かったですね。

TROY: そう、カットしたのは失敗だったと思ってるよ。最初の15分でストーリーの設定を全部見せておきたかったんだ。で、そのあとで仮に誰かがトイレに行って戻ってくると完全にストーリーの流れを見失ってしまうような形にそもそもさせたかったんだ。実際その後は何も見逃せないよ。レーシング・カーのように突っ走って行くからね。だから、最初の15分はすごく大事だと考えていたんだ。編集の段階で、あのシーンを短くカットしつつ全体が上手く流れるようにしようとしたんだけど、結局全部をカットしてしまった。それでフィットするように思えたからね。俺は何かあったら口出ししても構わないって言ってたし、あのシーンは本当はカットしたくはなかったんだけどね。カットすべきじゃなかったよ。そのまま残しておくべきだった。事件を引き起こす前にコナーとマーフィーの人となりを垣間見ることが出来るからね。あれはすごく意味のある一場面になるはずだったのになぁと思うよ。カットしたのは失敗だったね。

UGO: それでもストーリーの流れは上手く行ってますよ。

TROY: そうだね、それでも上手くは行ってるんだけど、でも去年やったカレッジ・ツアーで目から鱗が落ちたよ。どのファンも例のシーンについて訊いて来てさ。『なんであのシーンをカットしたんですか?』って言われて、それで自分がヘマをやらかしたのに気付いたんだ。『てめぇは一体何考えてたんだよ!』ってな感じで言われてるみたいだったよ。彼らは決して映画マニアとかそんなんじゃないんだ。単にあの映画を気に入って例のシーンを見てくれた子供たちで、『凄いね、何これ?』って言ってるよ。けど、ファンと一緒に喋っていて、突然、『このようなシーンも入れておくべきだと本当は思うんだよ』なんて言うのは一流のプロデューサーじゃないよな。『おい! どうしたんだよ、何でなんだよ?』ってファンが訊いて来てもさ。だから、言い訳は止めようとだんだん思えてきたよ。



US版DVD特典 "Mom Calls from Ireland" より

(スクリプト、及び聞き取りから構成)


[場面: 精肉所でローゼンガートルに股間を蹴られ足下のおぼつかないコナーをマーフィーがかばいながら帰宅した後の部屋]

[コナー: ソファーに座り、氷のうを股間に当てながらビールを飲む]
[マーフィー: シャワーを浴びるため蛇口をひねる]
[コナー: 電話が鳴り、受話器を取る]

コナー  : もしもし
母親   : コナー、お前かい?
コナー  : 母さん?
母親   : お前の役立たずの兄弟も一緒かい? 二人とも聞きな。
マーフィー: お湯が出てこねぇよ……
コナー  : 黙ってろ! マー (注1) からだ。
母親   : みんなお前たちのせいだよ、この大馬鹿野郎どもめ! あたしゃ愚かだったよ。お前たちが安心させてくれると信じててさ。お前たちのダー (注2) が出てった日、まだ子供でほとんど覚えてないだろうけど、ダーはお前たち二人があたしの面倒を見てあたしの誇りになるだろうって言ったんだよ。けど間違ってたね。生きてて何の楽しみもありゃしない!
コナー  : 何言ってんだよ? どうかしてるぞ!
マーフィー: マーがどうしたって?
母親   : とうとうダーの古いリボルバーを見つけたよ、コナー
コナー  : あんた、ダーの銃で何してんだ?
マーフィー: ダーの銃? 何だって?
母親   : これで頭ブッ放つよ。
コナー  : 一体何やってんだよ!
マーフィー: 何だってんだ!?
母親   : 引き金を引く前に最後にひとこと言っとくよ。
コナー  : 引き金を引くって?! 気でも狂ったのかよ?! 落ち着けよ!

[マーフィー: コートを手に取りコナーの元へ駆け寄る]

マーフィー: マー!マー!
コナー  : ちょっと俺の声を聞けよ! 正気になれよ、おい!
マーフィー: マー!マー!
母親   : おまえ…… たちの…… せいだ!
C&M  : 止めろったら、マー! 引き金なんて引くなよ! 頼むぜ! 神様!

[母親: 外に出て上空めがけて銃を撃つ]
[コナー: 驚いて受話器を落とし、氷を床にぶちまける。そこへ二人でスライディング、受話器の取り合いに]

C&M  : クソっ! マー! マー?!

[母親: 部屋に戻り大笑い]
[C&M: 悪い冗談と気付き、コナーは怒りの表情、マーフィーは呆れ顔]

マーフィー: やれやれ、面白かったよ、マー……
コナー  : クソっ! 性悪女め!
母親   : 『ああ、イエス様! やめて、マー、やめて!神様! マー、やめて!』ってか
マーフィー: 彼女、ずいぶん自分に酔ってるね。
コナー  : ああ、まったくだ……
母親   : じゃあ、真面目な話、二人とも聞いとくれ!
マーフィー: 二人とも聞いてるよ、マー。
コナー  : どうした? 聞いてるぜ。
母親   : こっちはまだ11時なんだよ。だからお前たちの役立たずな親戚どもとアンヴィルに行ってもっと飲めるわけさ。
マーフィー: 俺たちを拷問に掛けるために電話しただけなんだな?
コナー  : マー、シビアル叔父さんは元気なのか?
母親   : まぁ、知っての通りこんな感じだね ―― 聖パトリックの日には全然稼ぎにならないっていつも文句言ってるよ。身内全員でカネ持たずに飲みに行くからね。だって、あたしたちに代金払えだなんてどう転んでもアイツは言えないの分かってるからさ。

[母親: ウィスキーを一口ラッパ飲み]

母親   : けど、アイツだって何杯か飲んでたからね。一晩中ウェイトレスのスカートに頭突っ込んでてさ。かわいそうな娘だよ。
コナー  : まぁな、シビアル叔父さんってそんな人さ。

[母親: シチュー鍋にウィスキーを一気に注ぎ込む]

マーフィー: 叔父さんにはそんなことでカッカせずにのんびりやれよって言っといてよ。女性を敬うことも覚えないといけないしね、コナーみたいに。
コナー  : おいっ!
マーフィー: コイツに女性への気遣いってものについて最初の授業をしてやったんだよ……
コナー  : おいこら!
マーフィー: ちょうど今日さ……
コナー  : それを言うなって、馬鹿野郎!
マーフィー: コイツ、女の子に散々殴られてね……
コナー  : 違うって! もしあれが女の子だったら身分証明書でも見せて欲しいぜ! 彼女は単に性転換手術前だったに違いねぇよ!まったくクソったれだ!! (注3)
母親   : 主の御名を汚すんじゃないよ、クソったれ! (注4)
C&M  : [十字を切りながら] 恵み溢れる聖母マリアよ…… (注5)

母親   : で、お前は何したんだい、コナー?
コナー  : 俺はさ、友達になろうとしたんだよ。そしたら彼女がキンタマに一発食らわしやがったんだ!
母親   : 何だって?! 小汚い雌犬だね!ちゃんと仕返ししてやったんだろうね?
コナー  : そう、小汚い雌犬ね、その通り。俺はね……
マーフィー: 心配すんなよ、マー。マーのために俺が彼女を丁重にもてなしてあげたよ
コナー  : そう、マッチョ・マーフィーさ、うんうん。
母親   : まぁ、聞きな。お前たちが飲めばケンカするってのはあたしにゃ分かってんだよ。
マーフィー: はい、お母様
母親   : あたしゃ本気で言ってんの! あたしはね、お腹の中にお前たち二人を一度に身籠もってたんだよ、この恩知らずのろくでなし! お前たちはあたしの少女体型をいっぺんに台無しにして、あたしの体をカラカラに吸い尽くしちまったんだよ。おっぱいは足首まで垂れ下がっちまってるし!歩く度にけつまずいてんだよ、まったく! だからよく聞きな! ケンカはするな!
コナー  : はい、お母さん
母親   : 約束だよ、お前たち
マーフィー: 約束するよ
コナー  : 約束する、母さん
母親   : そうかい、それでこそあたしの息子たちだ。畜生、もう行かなきゃ! あの一発でひと騒ぎ起こしちまったみたいだね。近所の連中が半分やって来る!
マーフィー: 分かった、愛してるよ、マー。あ、ちょっと待って。その前にあの答を教えてくれない? お願いだから
コナー  : そうだよ、いい加減教えてくれよ、マー。もう27年だぜ
母親   : まだうるさく言ってんのかい?
コナー  : 当たり前だよ、マー。さっさと教えてくれよ。どっちが先に生まれたんだよ?
母親   : 分かったよ。お前たちにも知る権利があるだろうしね。

[コナー: マーフィーの頭を小突く]

コナー  : 聞こえないだろ!

母親   : 心の準備は出来てるかい?
C&M  : さぁ、早く!

[母親: 更に一口ウィスキーをラッパ飲み]

母親   : チ◎ポのデカイ方だよ!

[母親: 大笑いし電話を切る]

コナー  : 何……? 何だそれ? これがお前のクソババァかよ!

[コナー: マーフィーの頭を平手打ち]

マーフィー: お前のクソババァだよ……
コナー  : クソったれ!

[コナー: ソファーの前に立ち上がる]

コナー  : 気違い女め!

[マーフィー: 床に横たわりながらコナーの股間を一瞥して勝ち誇った笑みを浮かべる]
[コナー: 下を見つめて……]

コナー  : 何も言うな! 俺のには氷載っけてたんだよ、分かってるだろ? 畜生!



…………………………………


[注1] ma = ママ、母ちゃん。mum (主にイギリス英語), mom, maw (主にアメリカ英語) に相当する主にアイルランド英語で使われる語形 (幼児語という訳ではない)。アメリカでは古風な田舎臭い表現と捉えられる。
[注2] da = パパ、父ちゃん。dad (イギリス英語・アメリカ英語) に相当する主にアイルランド英語で使われる語形 (幼児語という訳ではない)。アメリカでは古風な田舎臭い表現と捉えられる。

[注3] for Christ's fuckin' sake
[注4] Lord's fuckin' name! … 注意しておきながら自分で fuckin' と言うマーの性格のおもしろさがでている。旧約聖書のモーセの十戒にある "Thou shalt not take the Name of the Lord, thy God, in vain (汝の神である主の御名をみだりに言うなかれ)" [出エジプト記 20:7] の句が前提にある。
[注5] Mother Mary, full of grace … アヴェ・マリアの冒頭の一節より。母親を聖母マリアに見立てている。
また上記3フレーズの最終母音が各々 [ei] で全体で母音韻を踏んでおり、言葉遊びの性格を強めている。


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