映画 『処刑人』 The Boondock Saints @ wiki

Audio Commentary Ch. 01 - 04

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US 版 DVD 特典: Audio Commentary


US版DVDの特典、『処刑人』の監督トロイ・ダフィーによるオーディオ・コメンタリーの日本語訳です。

日本版DVDのオーディオ・コメンタリーには、トロイと共同プロデューサーのクリス・ブリンカーが東京ファンタスティック映画祭で来日した折に日本向けに特別収録した対談形式のものが採用されています。US版DVDに収録のものはこれとは全く別物で、トロイのみによる解説になっています。

なお、US版のうち、Unrated Special Edition のトロイのコメンタリーは通常版と同一ソースですが、本編映像は Unrated と銘打っているにも関わらず、コメンタリーはレイティングに無関係な部分でもところどころカットされています。ここでは、カットされていない通常版を土台にして行きます。チャプター割も通常版に準じます。


Chapter 01: The Saints


さてと。『処刑人』の脚本家兼監督のトロイ・ダフィーです。これからみんなを案内するよ。


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この教会はボストンのニューベリー・ストリートにあるユニオン・メソジスト・チャーチ [※]。この教会を見つけることができて俺たちはラッキーだったよ。というのは、脚本の内容が暴力的で宗教的な響きがあるから、ここ以外の教会はどこも内部撮影を許可してくれなかったんだ。トロント大司教区から手紙をもらったのは実際のところ自慢の種だね。シングルスペースで打った2ページのやつで、俺がサタンの申し子でこの脚本がサタンによる破滅計画の道具だって言うんだよ。撮影期間中ずっとその手紙を額に入れて制作オフィスの壁に貼っておいたんだ。かなり誇らしかったよ。どっかに紛れて失くなってしまったけどね。

   ※訳注 … 正式名称は "The Church of the Covenant" 『コヴェナント教会』。
         参照 … ロケ地


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この子は俺のいとこのテイラー。子供の顔に見られる純真さってのは、どんな言葉よりも価値があるよな。これが俺たちの主役、ノームとショーンだ。撮影してからというもの、俺たちはとても親密で仲のいい友達になったんだ。で、俺はお互いよく似ていると思えるような奴がふたり欲しかった。兄弟と思えるようなね。俺がこの場面全体でやろうとしたのは、主役による対話がないシーンにすることだったと思う。ふたりは教会を出てはじめて実際に言葉を発するんだ。うまくやれたと思うけど。


彼らが足元にキスをしている磔刑像は実はニセの作り物なんだよ。実に腕のいいヤツが発泡スチロールを削ってうまい具合に色を塗ったんだ。で、でかい木彫りの十字架みたいに見えるってわけさ。背景にひときわ印象的で宗教的な聖書に出てくる人物に関連するものが欲しかったんだ。だから、カネをつぎ込んでこれを作った。カネといえば、インディー映画を作るには、常にカネは大問題さ。この映画を作るのに俺たちは大体5~6,000万ドル用意してた。映画を作るカネってことに関しては、自腹でやるっていう性格が強いんだ。まさしくね。映画にカネをつぎ込まなきゃいけないってなって初めて、6,000万ドルではほんのわずかしか買えるものなんてないって分かるよ。


で、これが我らが説教師で、この映画の信条を述べている。「善良な人々の無関心」ってのは、ここでのテーマみたいなもんだ。この主人公ふたりがいかに無関心ではないかってね。彼らは自分たちのやり方で感情を行動に移すんだ。


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これはよく考えを練って撮ったショットだな。彼らの首にはそれぞれ聖人が。タトゥーをスタンプでやったってのはなかなかだったね。これもそうだけど、彼らのタトゥーは全部スタンプなんだ。だからみんな現場じゅうで聖人のタトゥーをして仕事をしていたよ。指にもしたし。この兄弟がしているタトゥー全部をね。スタンプでカシャっと押すだけだからね。


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これは、ボストンのチャールズ・ストリート・ブリッジ [※]。ヘリコプターでここに来たのは初めてだな。俺はひざの上にモニターを抱えて座っていたよ。で、ここでノームとショーンが橋の上を歩いていると。

   ※訳注 … 正式名称は "Longfellow Bridge" 『ロングフェロー・ブリッジ』。
         参照 … ロケ地


さぁ、俺だ。


そう、彼らは食肉工場で働いていたんだ。なぜそうしたかって言うと、俺が高校時代、何年か肉屋で働いていたからさ。俺を雇いたいっていうんで、食肉工場に連れて行かれたことがあるんだけど、これまで人生で見た中で一番胸くそ悪くなるような場所だったな。でも、ふたりにはふさわしい場所だと思った。貧困で低所得者層という背景を持たせたかったからね。


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これが、ボストンのプルーデンシャル・ビルディング。


このシーンは脚本ではもっとずっと長かったんだ。ひととおり撮影してから、どんどんカットして短くしていった。1時間45分以内に収めたくてね。最終的に収まったけど。でも、ショーン・パトリック・フラナリー演じるコナー・マクマナスとドット・マリーの間のこのケンカはずっと長かったんだよ。ここの巨漢の女性。まるで彼女の首のタトゥーみたいだ。そのタトゥーに何て書いてあるのか時々聞かれるんだけど、「男には触れられたことがない」って書いてあって、一時はクローズアップのシーンもあったんだ。タトゥーの文字の理由ってのは、彼女は雄牛みたいな攻撃的なレズビアンだからさ。カットしなくちゃならなかったセリフのひとつに、ノームが彼女の口元めがけてパンチした後に、彼が「これでそのタトゥーの文字を変えなきゃいけなくなったな」って言うのがあってね、まぁ、これはジョークなんだけど。時間の関係で切り取ってしまったって感じだね。時間を節約するためにね。このシーンはオープニング・クレジットで使うってことすら考えていなかったんだけど、とにかく、節約のためこんな風に編集してつなぎ合わせたってわけだ。


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実は、ショーンが倒れるシーンで、彼の後ろに俺の母親がいるんだ。血の付いたジャケットを着て座り込むんだ。あのシーンに出したのがおふくろだ。


俺はふたりをロフトに不法に住んでいるという設定にしたんだ。こんな感じの場所は倉庫かなんかの上の方の階に見えるだろ。弟と俺はこれとよく似た場所に住んでいたんだ。ホントのネズミの巣さ。


これが撮影監督のアダム・ケイン。彼はこの業界にほんの数人しかいない天才のひとりだと思うよ。つまり、物をうまくセットアップできるというか、まぁ、つまり、こういうのはみんなアートだからね。彼らはみんなアーティストなんだ。けど、彼らは財政状況についても理解しておく必要があったよ。時間なんてないからね。俺たちは32日間で撮影しなきゃならなかったんだ。芸術品まがいのライトの設備なんてやってる余裕はないんだ。オーケー、じゃあ、どれだけカラフルになっているか。彼の素晴らしい仕事っぷりを見てくれよ。


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ロックの登場だ。ここにいるのが、俺の親友のデイヴィッド・デラ・ロッコで、彼は俺と弟と一緒のバーで働いていたんだ。脚本を書いているうちに、彼の人柄がとても気に入ってね。それで彼を脚本に加えることにしたんだよ。彼は役者になるために15年前にロサンゼルスに来たんじゃなかったかな。諦めてしまったけどね。でも、俺が説得して戻ってこさせたんだ。




Chapter 02: The Russians Are Coming


こちらがドク。彼はトゥーレット症候群に罹っている。ちなみに、この前のショットに写っているオーバーオールを着た男は俺なんだ。


再び俺の登場だ。まったく魅力的だよな。あのショットには俺や弟とか俺の友人たちを入れたんだ。カウンターの端にいるドゥーラグを巻いている奴は、ダレン・ヤカヴェッタって名前の俺の友達。彼の名前を借用して犯罪組織のボスの名前に使ったんだ。究極の悪党のね。でもダレン本人は悪者じゃないぜ。俺の親友のひとりだ。


俺はこのショットが好きだね。ここで彼ら三人を撮っているやつ。夜更けにバーで何度も飲み明かすってのは、実際俺はそういうところで働いていたわけだけど、何にも増して楽しい雰囲気になるもんだ。


さて、巨漢の登場だ。俺の長年の親友、スコット・グリフィス。身長6.7フィート、体重350ポンドのスコット・グリフィスだ。彼はアメリカ人なんだけど、このようなロシア訛りで演じている。彼はいつもこんな感じで、色んな訛りを身につけることが出来るような奴なんだ。でかくて貫禄のある奴だよ。でも滅茶苦茶優しい奴なんだ。


えぇっと、脚本を書いていた時、ドクのキャラクターについて、ことわざをごちゃ混ぜにして使う奴として書いたんだ。ちょっとまぁ、面白いかなって思ってさ。


で、ここで俺の厚かましい売り文句が出ると。


この彼はボブ・マーリー。俺の友達のトミー・シャバートってのがラフ・ファクトリー [※1] に出演している彼のパフォーマンスを観に連れて行ってくれたんだ。スタンドアップ・コメディーなんだけど、彼はレノ・ショー [※2] とかその他にも何度も出演しているんだ。それを職業にしていてね。いい暮らしぶりだよ。たまたまなんだけど、彼を観てもう大爆笑したよ。そこでウィレムに対抗する役柄が欲しかったんだけど、グリーンリーというキャラクターは脚本を目立たせるバカの役どころだからね。対してウィレムの役は、彼に掛かればすべてお見通しってな人物なんだ。だから、脚本とか映画の中で、ウィレムが一発ギャフンとお見舞いしてやる相手が必要だったんだ。じゃあ、彼が実際どうやるか見ることにしよう。

   ※訳注1 … "Laugh Factory"。ハリウッドにあるコメディー劇場。
   ※訳注2 … "Leno Show"。NBCテレビで放送されているトーク・バラエティ番組 "The Tonight Show
          with Jay Leno" のこと。


ここではロック・ミュージックを使う計画だったんだ。前は、確かレッド・ツェッペリンの『レヴィー・ブレイク』をここで流してたんだよ。ちょっとかっこいいかなと思ってね。だけど、その曲を30秒だけ使うのに1,700万ドルくらい要求されたと思う。だから、言わずもがな、ボツにしたよ。


この日ステディカムを担当した奴を俺は本当に気に入ってね。彼にはこのシーンをぐるぐる回りながら撮影してくれって言ったんだ。ちょっと後でそういうのがもっと頻繁に使われてるシーンが出てくるよ。ところで、アーティストにやりたいようにやらせて、他の奴が未経験のことをそいつが今まで沢山やってきたという点を考えに入れるとなると、俺はいつもこう尋ねるんだ、「やりたいと思っていることは何だい?」とか「いつも何をやってみたいと思ってた?」ってね。多分、普通、監督ってのは好きなようにやらせないもんなんだろうな。だから、彼はこう言ってきたよ、「マジかよ、トロイ。俺はこんな風に幽霊が徘徊するみたい歩き回って、アクションを全部逃さず撮影したいと常々思ってたんだ」って。もうちょっと後でそういうシーンが出てくるよ。でもこの場面が彼がその実験を始めたところだ。凄い奴さ。


そうだな、俺はウィレムのキャラクターをボストン市警とたちまち不仲になる人物って設定にしたかったんだ。登場するや、こんなこと言うような感じでね、「俺は誰よりも頭がいいんだぜ。誰よりも見た目がいいし、着こなしだっていいぞ。俺のコートを持て。コーヒーを買ってこい。パパの仕事の邪魔をするな」って。


ここが一発お見舞いの最初の場面だ。[※]

   ※訳注 … スメッカーがグリーンリーにカフェラテを買いに行かせる場面のこと。




Chapter 03: Smecker's Opera



ウィレムと初めて会ったとき、じっくり腰を据えてこの映画について話し合ったんだ。彼がこれまで一緒に仕事をしてきた監督の中で、俺が初めての監督未経験者だったんじゃないかな。少なくともそう言われたよ。それで、初めて会ったとき、俺はウースター・グループが公演しているニューヨークの SOHO の劇場で、彼が200人の観客を圧倒する現場を目撃したところだったんだ。で、じっくり話し合ったんだけど、俺たちはあっという間にまるで砂場で城を造って遊んでいる子供みたいになったね。彼は、「ああ、これも出来る、あれも出来るよ」って感じだった。俺の方は、「そうそう、そんな風にやれば出来るね。これを加えることも出来るよ」って言ってね。まぁ、だから、俺たちはまるで子供みたいになってたよ。それから、夕食の席で彼が「僕はやるよ」って言ってくれて、俺は「最高だ!」って返したんだ。ふたりでハグし合って、俺は飛行機に乗ってロサンゼルスに戻った。こうして適役が決まったってワケだ。彼は素晴らしい俳優だから、俺は本当に嬉しかったね。それから、俺たちはこのシーンについても話し合ったんだ。


さて、ここでステディカム担当の奴がすっと入ってきて、ちょっとした場面を撮り始めるところだ。ここには漂う浮遊感みたいなのが場面に加えられてる。

ウィレムがこんな風にオペラを流して聞いてるところでやりかったことなんだけど、観客には単に彼が犯行現場を歩くのを見せるより、観客を彼の世界に引きずり込もうと思って、ちょっと俺なりに試してみたんだ。


次に彼は指揮者になっている。そうだな、このショットは初めは前の方から撮っていたんだ。ここは最終的に映画全体の中で俺の好きなシーンのひとつになったんだけど、今度は後ろから撮った。後ろから撮った方がいい感じに見えるし、優雅かなと思ったんだ。そして、彼はここで弾痕を発見し、その瞬間すべてを理解する。これは彼のアイディアだったんだ。彼は自分の世界から現実に引き戻される。


ここでもステディカムがうまく行ってるね。漂うように動いて、もうひとりの男が入ってくる場面を捉える。こんな風にね。こんな感じのカメラワークがもっと出てくるよ。彼らにやりたいように自由にやらせれば、とてもユニークなものが出来上がるね。


これは意味ありげなシーンだな。この先を暗示する瞬間だ。


ここでのカメラワーク、こんな感じのだけど、主役を他の人物の頭でさえぎりながら、端まで来たところで再び捕まえる。そして、背景ではこっちの男を捉える。


この日、俺たちは光の問題を抱えてたんだ。気付くかもしれないけど、ここの場所と死体の下を調べている警官のいる場所とで明るさが違うだろ。そこの角と後ろでは常に日光が照らしている。俺たちは、日光が当たらないよう、大きなブランケットをここのビルのてっぺんを覆うように張って、全部がすっきりと上手く見えるようにやろうとしたんだ。だけど、インディー映画をやってる時ってのは、「さっさとやっちまえ! 時間も金もないんだ! さあ、次! 次!」みたいな感じでね。これはそういう時の一場面だね。


さて、我らが『三バカ大将 [※] 』を務める刑事たちだ。グリーンリーは誰から見ても彼らの中ではマヌケ役。それから、ウィレムの隣、画面向かって左の彼は、ブライアン・マホーニーって名前だ。彼の素敵な奥方が俺たちに電話をかけてきて、彼をオーディションしてくれって俺にしきりに頼んだんだ。俺は自分の家の居間で彼をオーディションして、すぐに雇った。凄く良い役者だよ。

   ※訳注 … Three Stooges:
         1920年代に結成され1970年代まで続いた米国のコメディー・グループ。
         『三バカ大将』は彼らのTVショーが1960年代に日本で放映された時の邦題。


それからと、フェリー氏だ。彼はちょっと粗野な奴でね。見てれば分かるけど、鼻糞をほじったりとか、そんなことをする奴なんだ。彼も凄くいい役者だね。めっけものだったよ。トロントでのオーディションをくぐり抜けるってのは、それは大仕事だ。多分、一日で二~三百人受けに来る。異彩を放った人物をひとりだけ探しているというのに。彼がこの『三バカ大将』の残りひとりの座を占めるに相応しいと思えたんだ。


ドクが入ってきた。そうだな、このキャラクターたちが持っているアイリッシュ・カトリック信仰ってのは、この街、つまり、サウスボストン全域に見られるんだけど、ここは本当にすごく保守的で、団結の強いアイリッシュ・カトリックのコミュニティーなんだ。移民してきたばかりで右も左も分からないようなアイルランド人も沢山いる。バーにでも行くと、ボストン訛りを身に付けた連中もいるけど、気付いたら『砂糖まぶしのラッキー・チャーム [※] 』に話しかけているってこともあるよ。

   ※訳注 … Frosted Lucky Charms:
         米国のシリアル・ブランド "Lucky Charms" のかつてのCMで、アイルランドの妖精をモチーフ
         にしたブランド・マスコットがアイルランド訛りで発していたフレーズ。
         トロイがCMを真似てアイルランド訛りでこのフレーズを唱えてることから、ここでは、訛りの抜
         けない (ニューカマーの) アイルランド系住民のことを指していると思われます。
         また、あまり一般的ではありませんが、CMが元になり、このフレーズそのものがアイルランド
         人やアイルランド系住民全般を指すスラング用法もあるようです。

だから、俺はこの兄弟をそんな風にしたかったんだ。『田舎者の聖人たち [※] 』ってタイトルに合わせてね。ド田舎出身のこの彼らに関しては、彼らが本当はどこの土地からやって来たのかも分からないし、彼ら自身についてもよく分からない。そして、映画がこの先進むにつれ、彼らのやることが大いに物議を醸すことになる。でも、ともかくこういう設定はここまでですべて揃ったな。

   ※訳注 … The Boondock Saints:
         本作『処刑人』の原題。 … the boondocks = 『(人里から遠く離れた)ド田舎』のこと。




Chapter 04: They Are Not Angels



これから見てもらうけど、俺は、ある時点でこの映画のエンジンをスタートさせて、ピッチを上げて物凄く速いペースで進むようにさせたかったんだ。だから、小便なんかに行ってると凄く大事な部分を見逃してしまうよ。


実は、この日はウィレムにとっては最後の撮影日だったんだ。みんな彼がいなくなってしまうのをちょっと悲しんでたね。

もちろん、ここのボストン警察の連中は、兄弟がまさしく英雄だって理解するようになる。少なくとも彼ら自身にとってそういう存在なんだってね。彼らは兄弟に対してとても個人的な感情を持つことになるんだ。


また後ろから撮ったシーンだ。この動きは元々ウィレムがリハーサル中に時々やってたものなんだ。腕を突き出して指先を動かすという動作をね。それが例の路地でやっていた動きによく似ていると思ったんで、これも後ろから撮ろうと決めたんだ。自分でもなぜか分からないけど、後ろから撮る方が好きだね。


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こんな風に警官たちがすぐに兄弟をかばい始める。そしてここで兄弟の登場だ。

これはトロントにあるでかい倉庫 [※] で撮影したんだけど、無茶苦茶暑かったね。この日は撮影現場に役者たちの親御さんが沢山いたんじゃなかったかな。役者ってのはお互い仲良くなると親を出したがるんだよ。主役連中の親御さんも、母親をふたりと父親をひとり、このシーンに出したと思うよ。

   ※訳注 … 警察署の外観はトロント大学の鉱物工学科棟で撮影された。
         参照 … ロケ地

ウィレムが言ってるこのジョーク [※] は編集担当者のアイディアなんだ。ウィレムに後でアフレコをやってもらったんだけど、上手く行ったね。

   ※訳注 … "Hey, Greenly. Onion bagel, cream cheese. (「おい、グリーンリー、オニオン・ベーグルを
         買って来い。クリーム・チーズ入りだぞ」)" というスメッカーのセリフのこと。

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さて、ここのテーブル越しのシーンってのが、この映画の中で唯一、三人の主役だけが一同に会する場面だ。当然のことながら、ウィレムは、このあと何が起きるのか、事件はこの兄弟のせいなのか、それを突き止めるのに難儀しているところだね。それから、兄弟の頭の良いところを見せたかったんだけど、ここでは会話をさせることでそうしてみた。ここの部分はラテン語だけど、ラテン語を知らなければ、部屋に一緒にいるこっちの彼には理解出来ないような会話を字幕付きで開けっぴろげにさせることでね。彼らのキャラクターの幅をちょっと広げようと思ったんだよ。

これは役者たちが待ち望んでいたシーンのひとつだね。ウィレムは、作中のヒーローと一緒に演じたがっていんだ。彼はこのシーンを楽しみにしていたよ。この若いふたり、ショーンとノームも、ウィレムと一緒のシーンをやりたがっていた。彼はそれだけ凄い役者だからね。だから、みんなと同じように彼らもこの瞬間を楽しみにしていたよ。


それから回想シーンに入って、何が起きたのか、物語の続きが語られる。これは俺がロッコの好きな点だな。彼はただ自然にしているだけなんだよ。ちょっとやり過ぎかなと思われるかも知れないけど、俺にはどうにも出来ないね。こういうのが好きなんだよ。


おっと、彼らはロシア語も分かるんだ。彼らが他の人とは違うんだってのを見せるために、こんな感じの細かい芸を沢山入れたんだよ。そして、大喧嘩が始まる。こんな風に血が上って狂った感じの場面を入れたかったんだ。実際にバーでケンカになった時ってのは、何度もこぶしが振られるだけで、こんなに上手く相手に命中することはないよ。だから、いつもこんな感じだ、「俺はバーのケンカで小指を折ったんだ。だけど、一体どうやって折ったんだ?」ってね。


そして、尻に火をつけるシーン。ここも最初に撮った時はもうちょっと長かったんだけど、カットしてしまったんだ。



Images displayed on this page © 1999 South Boondock Productions, Inc.

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