俺の名前はバルスラー、俺の部屋は狙われている。

『極上☆軍人サークル』

「おい……お前ら、何で俺の部屋にいやがるんだ」
午後の訓練を終えて自室に戻ったバルスラーは部屋を開けた瞬間、憂鬱になった。
自室のテーブルを囲むようにドッグタッグをぶら下げ、タンクトップに迷彩の長ズボンを
履いた女が三人。 
そいつらがデザートに取っておいた桃の缶詰を勝手に開け完食した挙げ句、その缶を
灰皿代わりにウインストンとキャメルの吸い殻が山のように積み上げられていればもう十分であった。
「いや、何でって言われてもねぇ…」
「はい。」
「です。」
あら、いやだと言わんばかりに顔を見合わせる三人にバルスラーは言った。
「ねぇじゃねーだろアウラ。」
「まーまーいいーじゃないの。バルスラー、明日から休暇なんでしょ」
「そうだよ。テメェらが出て行けば、今日の夜からだよ。」
「溜まってるんですか?」
これも勝手に開けたであろう桃の天然水のボトルを片手に小柄な女性が言った。
「誰がだ!このミニマムボケが!しかも、クキ!俺のモノ勝手に!」
クキと呼ばれた女性、名は九鬼(くき)ミツコ。極東出身者の父に、ウォルンタリア人の母を
持つ二世である。先祖は遠い昔、極東の戦乱時代の『センゴクダイミョウ』であったとか、なかったとか。
「バルスラーさん、クッキーを悪く言わないで下さい。他人の欠点をあけすけ言う人は嫌われますよ。」
 九鬼の隣にいた女性が口を尖らせ言った。こちらの本名は、ティーナ=レコ。
凛とした顔立ちから同性の訓練兵に人気がある。ちなみに衛生兵で、
従兄弟はなんたら医療介護サービスの看護師だとか。

「むしろ嫌ってくれ、つーか出てけ。」
「私は好きよ。バルたん。」
と九鬼の甘い声。
「だ、誰がっ!」
 顔を真っ赤にして怒るバルスラーに対して明後日の方向を向きながら九鬼は言った。
「冗談よ、このバカ筋肉ダルマ。」
「まぁまぁ…そこまでにしておいて。さて、バルスラー、私達がここにいるのは他でもないわ」
 改まった態度と口調に変わったアウラにさすがのバルスラーも身構えた。
「……な、何だってんだよ」
「そう…他でもない。新たな教官の同人誌を作るための集会を招集したのだ!」
「ハイル・アウラ!ハイル・アウラ!」
「アウラ万歳!万歳!万歳!」
「………」
騒ぐ三人にバルスラーは口から魂が抜けかけていた。
「とゆーワケでぇ…前回に引き続き、教官モノ同人誌の第二弾案をだしてもらいます。」
 何やら場を仕切り始めたアウラに我に戻ったバルスラーはあわてて言った。
「いや、だから…何で俺の部屋でやるんだよ!お前の部屋でやれよ!アウラ!」
「私の部屋ヴィクター教官の写真やグッズがたくさんあるから他人は入れない事にしてるの。
あの部屋の空気を吸っていいのは私とヴィクターだけだから」
平然と言ってのけるアウラにバルスラーはまたも口から魂が抜けかけていた。
「わお♪さすが『ヴィ君大好き狂(教)』の名は伊達じゃありませんね。ちなみにあたしの部屋は
害虫駆除の為に自家製殺人ガスを焚いているからダメです。」
「“自家製”で“人”じゃダメだろ、お前。」
「私の部屋も今はダメだわ」
「アウラやティーナはともかく…なんでテメーの部屋はダメなんだよ」
「友人に貸してるの。有料で。料金は1時間で―――――」
「ラブホかよ」
「いいえ。SMクラブよ、道具も揃えて上官も利用してるからとてもお金になるの」
「……お前らと同期って事にものすごく後悔してる。とにかく俺の部屋はダメだ、帰れ。」
「もちろん無料とは言わないわ。クロル教官のセクシー生写真10枚でどう?」
 アウラは訓練生時代に撮ったクロルの生写真をちらつかせた。
余談だがクロルが収集していた上官・下士官のデータは今はアウラが引き継いでいる。
「よし、暫定的に認める。そして俺も集会に参加する。ジーク・アウラ」

「あたしはクロル教官がSでヴッ君がM。クロル教官が主導権を握り、足コキとかパン屋の休憩時間にやってると思います」
「う~ん、そうかな…クロル教官を破壊し尽くさんばかりにSなヴィクターの方がしっくりくるんだけど」
 バルスラーが用意したポテチを摘みながらティーナ続いてアウラが言った。
「それは前回やったじゃねーか、しかもウィルトスまで入れてよ。やっぱ純愛ボーイッシュ系だろ」
「前回が3Pだったから今回は異性物孕みバッドエンドか産卵で超鬱エンドがいいわ。はあはあ」
「ちょっと…クッキー、暴走しないで、抑えて、抑えて。」
 アウラが九鬼を宥めながら周囲を見回した。
「とにかくこれじゃ意見がバラバラだわ。とりあえずティーナから順に大まかな内容を話してくれる?
それで決めましょう。」

「お…あ……ク、クロ…ル」
「ん?何?…どうしたのヴィクター……ふふ」
 今のこの時間、パン屋『リーベルタース』は昼の休み時間だ。表の看板には準備中とある。
その時間は約2時間、本来であれば仕込み、パンを焼く準備と昼食の時間なのだが……。
「いやならいいんだよ?ボクは追いかけもしないし、このままやめてもいい。」
 クロルの着している物はTシャツとショーツのみ、いつも履いているジーンズは脱ぎ捨て
蓋を閉めた洋式トイレの上に又借り、壁に押しつけたヴィクターの肉棒を足の指で挟み込んでいる。
「て…テメェ…卑怯だぞ。戦車牽引用の鉄線なんてどっから…」
 超獣並の力を持つヴィクターもこればかりは簡単には引きちぎれない。
両手をそれでぐるぐる巻きに拘束され、クロルにいいように弄ばれている。
「そんな事はどうでもいいんじゃないかな?ふふ、用はコレだよ」
「くっう!」
 グイと足の指でカリの部分を思いっきり挟まれ、ヴィクターは思わず呻いた。
「ははは、いいね、いいねゾクゾクするよ。この感覚…ボク、クセになっちゃうかも…ん…ふ」
 クロルは身動きが取れないヴィクターの肉棒を両足で責め、自らは手で己の秘所を慰めだした。
「く…クロ…覚えて…や…が…おうう!」
 痛いほどに勃起した肉棒をクロルの両足が這うように前後しだした。
「はっはっは、何だい、その情けない声は?ボクの足コキがそんなにいい?」
 手コキ程早くないにせよ、諜報任務で培われた性技は並ではない。足がまるで生き物のように
ヴィクターの肉棒を這い回り、時には食らいつき、快感とも痛みを交互に与えてくる。
「あ…ぐっク、クロ…おまっ…ぐっ!」
「まだ、まだだよヴィクター…ふふ、ふふははははっ!ヴィクターの主導権をボクが
握ってるなんて…ああ…ダメだ…ボク、ボクもうイッちゃ…ん、んん」
「クッソ…誰の主導権だっ―――!?」
 両眼をつむり、必死に耐えていたヴィクターが片眼を開け、精一杯の強がりを言おうとした
その時
「…舐めろ…ヴィクター」
 目の前には既に濡れそぼり、密を垂らすクロルの秘所があった。クロルがヴィクターの胸の上に
跨り、秘所を見せつけているのだ。上気し、完全に理性が氷解したクロルが上から己を見下ろしている
―――――支配の逆転―――――
普段なら、絶対にありえないシチュエーションにヴィクターもまた胸の鼓動が止まらない。
「舌だけで…ボクをイカせろ…いくら前戯下手なお前でも出来るだろ、それくらい?」
「ク、クロ…お、お前」
「クロル?クロル様の間違いだろ?くく…ははははーはっはっはっは!」


「はっはっはっは―――――ていう女王様チックなクロル教官なワケです。どうですか皆さん?」
ティーナは皆を見回した。
「あ、終わり?じゃあ次、クッキーお願いね」
 何の検討も、感想もなく、アウラは無情にも九鬼に振った。
「え!?あ、あたしの案はどうなんですか!クロル様×ヴィクター教官の逆転劇は!」
「没よ。現実を素直に受け入れて冷静に対処なさい。」
 くいと桃の天然水を煽り、九鬼は言った。
「だな。俺も女王様系の絵は描く気なんかねェ。」
「そ、そんなぁ~タイトルはまだだけど、このサークルの名前とかまで考えてたのに~」
「あ………このサークル、名前とかまだ決めてないわね」
 そういえば…と九鬼が今更ながらに言った。
「いいんじゃねーの、誰も気にしねーよ。マーケットで売るワケじゃねーんだし」
「ティーナ、参考までに聞いておくけど…?」
 多少気になったのかアウラがティーナに向かって言った。

『ウルトラ★満子』

「………」
「………」
「うるとらまんこ?」
 何かこの世に存在してはならないような生命体を見るような目つきで二人はティーナを見た。
バルスラーはあまりわかっていないようである。
「な…何ですかその目は!?断じてあっちの読み方じゃないですよ!クッキーの名前を元に
閃いたんですよ!読み方はクッキーと同じ『ミツコ』です!『ミツコ』!」
「……マ×コ…」
「きっとすごい名器のコトだと皆、思うわね。」
 ボソッとアウラに続いて九鬼が呟いた。
「何ですかその×は!しかも名器ってアレじゃないって言ってるでしょう?」
「いいじゃねーか、うるとらまんこで―――おぼずっ?!」
「だから違うって言ってんだろ!この筋肉ボケ!」
 切れたティーナが救急箱をバルスラーに向かって投擲し、直撃、バルスラーは倒れた。

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最終更新:2007年10月08日 03:07