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至近の間合いに至り、敵に相対す。 敵の反応よりも、一瞬だけ早く刃を振り上げる。 動作の中で、思考が走る。 …敵め、迷うたか。 この期に及んで銃砲に意味は無く。 されば、しとめるに刃をおいて上はなし。 ただ一振りの剣のみを友として、数多戦場を渡ってきた彼らには自明の事。 だが強大な火力をもって進撃を続けてきた敵は、ほんの一瞬、迷ってしまった。 その一瞬が、 ……生死を分かつ。 振り上げたられた剣は、予め定められていたかのごとく剣士の肩に乗る。  ― 心魂は高揚と平穏を矛盾無くはらみ。 敵の目には何故かゆっくりとした動作に写ったそれは、  ― 剣技は修練の極みにありて精緻。 その実、神速にて行われており、  ― 身体は鍛錬の極みにありて強靭。 剣士の全力を一分のロス無く剣に宿す。  ― ここに心技体は三位一体の境地に至り、 ビン!  ― 解き放たれた斬撃は、 吐息と共に、袈裟懸けに振られた剣の残光が、  ― 是、一撃必殺を体現す! ようやく動き出さんとした敵の見た、最期の光景となった。 剣士は去る。 …あとにはただ、屍が残るのみ。 (書:不破陽多)
至近の間合いに至り、敵に相対す。 敵の反応よりも、一瞬だけ早く刃を振り上げる。 動作の中で、思考が走る。 …敵め、迷うたか。 この期に及んで銃砲に意味は無く。 されば、しとめるに刃をおいて上はなし。 ただ一振りの剣のみを友として、数多戦場を渡ってきた彼らには自明の事。 だが強大な火力をもって進撃を続けてきた敵は、ほんの一瞬、迷ってしまった。 その一瞬が、 ……生死を分かつ。 振り上げたられた剣は、予め定められていたかのごとく剣士の肩に乗る。  ― 心魂は高揚と平穏を矛盾無くはらみ。 敵の目には何故かゆっくりとした動作に写ったそれは、  ― 剣技は修練の極みにありて精緻。 その実、神速にて行われており、  ― 身体は鍛錬の極みにありて強靭。 剣士の全力を一分のロス無く剣に宿す。  ― ここに心技体は三位一体の境地に至り、 ひゅか!  ― 解き放たれた斬撃は、 吐息と共に、袈裟懸けに振られた剣の残光が、  ― 是、一撃必殺を体現す! ようやく動き出さんとした敵の見た、最期の光景となった。 剣士は去る。 …あとにはただ、屍が残るのみ。 (書:不破陽多)

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