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になし藩国 ボツSS&絵

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SS・イラスト


どこからか聞こえてくる背中を押す声に耳を澄ます。
あの声に導かれ、やっとここまで辿り着いた。

敵まではあと一呼吸。攻撃のチャンスは敵とはせ違うその一瞬のみ。
今までのどの敵よりも強力とされていた緑のオーマだが、敵の懐への侵入を果たした時点で、勝ちは五分と五分。あとはこちらの意思と、腕の問題だった。

鍛え上げた筋肉が軋みをあげ、汗が飛沫のように飛び散る。

脳裏によぎるのは祖国になし藩国に逗留していた黒の騎士、エイジャ兄弟。二人から剣の技と漢たる心意気を教わった身として、生半可な斬撃は許されなかった。

そうしてふと、自分たちを送り出してくれた祖国のことを思う。

そもそも近頃のになし藩国、国家としては死にかけで、軍事組織としてはまったく機能していない。
先日小笠原に行った際ぽちがエイジャ兄弟と共に国を出奔、そのショックで藩王になしが床に伏せり、国内の総務諸々が滞っている。
摂政二人はその穴埋めに奔走しており、他国との交渉や戦争に回す余力はほとんど残っていなかった。

そんな状況下で、なんとかレムーリアへ戦力を派遣しようとして動いていた人物が、いた。
帝国宰相府秘書官でもある九重 千景である。
総司令部及び参謀本部の協力の元、非正規部隊だった黒騎士を正式に騎士団の一部隊として編成し、
聯合国に燃料や食料の供出を打診するなど、形としては戦える所まで持っていっていたが、
部隊指揮官不在という壁を越える事が出来ず断念。

対緑オーマを見越して牙を研いでいた黒騎士は、
越前藩国との合同部隊という形でようやく陽の目を見る事になる。


そして、黒騎士は全身の力を抜き、静かに思考を止めた。

攻撃動作に入った黒騎士には、もはや敵を倒すという思考すら無かった。
敵を倒す、敵意や殺意といったもの、それすら純粋なる斬撃にとっては不純物になる。

深い考えも小細工も何もいらない。目の前の敵を倒すために、己の体に刻み込まれた技と、抱いてきた意思をただ自然のままに開放する。つまりは。

剣を振り上げて、そして全力で振り下ろす。ただそれだけのこと。

握りはあくまで優しく。

剣は腕で振るのではなく全身で。

足の先から湧き上がる力を膝を通して腰へと紡ぎ上げ、腰の捻りとともにさらに加速させる。それはさながら体内を巡る一匹の龍。そしてその顎は腕を介して剣へと達し。

敵を求めて暴れ出ようとするその力を一点に定め。

――――切ッ先に全てを注ぎ込む!


「この一撃―――――防げるものかああ!!!」


血みどろになるまで繰り返した鍛錬が、幾多の実戦が磨き上げた一撃。

黒い大剣が唸りを上げて敵へと振り下ろされる――――。

(文(合作):九重千景@になし藩国、刀岐乃@越前藩国、画:鴻屋心太@越前藩国)


解説

 このSS・イラストは、元は「E98 九州会戦」の行動提出(未使用)からの転載です。
 聯合に基づき、になし藩国の黒騎士&越前のドラッカーの合同部隊として編成、エントリーしましたが、AR10に到達するまえに勝負が決まり、結局使われませんでした。

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