一瞬、あの人の目に絶望を見た気がした。
信じられない。
信じられない。
いや、仕方の無い事なのかもしれない。
誰だってそう思う状況だ。
誰だってそう思う状況だ。
それでも、あの人ならば身命を賭して信念を貫くものと信じていたのに。
……これは失望か?
あの人への?
……これは失望か?
あの人への?
……否。違う。
思い出す。昔、子供のころ、自分にはきっと何かすごい事ができると信じていた。
とても有名になる、偉大なことを成し遂げる。そんな未来を想い描いていた。
だが年月が経つにつれ……道は狭くなった。
それは知らぬ間に「夢」を捨ててきてしまったということなのだろうか。
とても有名になる、偉大なことを成し遂げる。そんな未来を想い描いていた。
だが年月が経つにつれ……道は狭くなった。
それは知らぬ間に「夢」を捨ててきてしまったということなのだろうか。
絵本の中の英雄に憧れた。そして自分もそんな風になるのだと意気込んだ。
今でもその憧れは変わらない。
けれど、自分はもう知っている。
知りたくなくて、必死で目を背けてきたが、本当はもう知っているのだ。
自分がどんどん夢から離れているということを。
遠いあの日に憧れた、英雄像から離れて行ってしまっているのだということを!
知りたくなくて、必死で目を背けてきたが、本当はもう知っているのだ。
自分がどんどん夢から離れているということを。
遠いあの日に憧れた、英雄像から離れて行ってしまっているのだということを!
今の自分は、どうしようもない現実に追い込まれている。
そして──その現実を打破できるほどに、周りのモノを捨てきれない。
全てを捨てる覚悟ならば、どんな無茶だってできる。
自分の持っているモノの価値を知らなければ、どんな掟破りだってできるだろう。
自分の持っているモノの価値を知らなければ、どんな掟破りだってできるだろう。
でも自分は捨てることができない。
自分の手にしているモノの価値を知っている。
自分の手にしているモノの価値を知っている。
「そう。だから……私はあの人に、私の望む英雄を演じていて欲しかった……!」
だが、あの人も私と同じように捨てきれないものを抱えるただの人間だった。
だから、私の理想の英雄とは違っていた。そう思った。
だから、私の理想の英雄とは違っていた。そう思った。
「なのに」
あぁ、だというのに。
「あなたは」
どうして。
「それでも、向かっていけるのですか?」
走り抜けるあの人のまばゆい背中に、届かぬと知りながらもなお。
私は、声を投げずにはいられなかった…
私は、声を投げずにはいられなかった…
(書:不破陽多)