刑法

  • 刑法(明治40年4月24日法律第45号) 最終改正:平成29年6月23日法律第72号 → 平成30年7月13日法律第72号 ※最終改正までの未施行法令あり。

※各論分野は、近年、毎年のように法改正あり。したがって、法改正等に注意が必要である。
※1冊本とは、総論と各論が両方載っている本のこと。(例:山口厚『刑法』有斐閣など)

刑法改正関係(最近改正された主なものに限る。)


(注)上記の記載内容について、官報において掲載された内容と異なる場合は、官報が優先します。


【基本書】

〔メジャー〕

<行為無価値論>

  • 大塚裕史・十河太朗・塩谷毅・豊田兼彦『基本刑法I 総論』『同II 各論』日本評論社(☆2019年3月・第3版、2018年4月・第2版)……「判例説」の立場から書かれた教科書。所謂「学者の書いた予備校本」といった趣。判例の立場を支持し、その内在的な理解を説明することに主眼が置かれており、学説対立については試験対策上必要な範囲で述べるに留められている。判例のエッセンスを抜き出して平易に解説することに関しては他の追随を許さない。著者の一人である大塚は、本書を学説から出発する「理論刑法学」ではなく、判例実務から出発する「実務刑法学」の視点に立ったものであると表現している(法学セミナー729号74頁参照)。全体のおおまかな構成は、まず学説について概説した上で判例の立場を述べ、その判断要素などを最後にまとめるという形を採る。具体的な叙述については、答案のように一つ一つどの段階の問題なのかを省略せずに記述しており、また、重要性に応じてフォントサイズを変えるなど、初学者にも十分に配慮している。類書には見られない特徴として、設例に対する学説のあてはめをきちんと行っていることが挙げられ、あてはめのやり方が分からないような場合に有用であろう。コラムでは試験対策上躓きやすいミスなども指摘されている。共犯の射程を唱えた十河執筆の共犯論は必読と言うべきであるが、一方で肝心の射程部分が少ないとの声もある。なお、判例説という立場を採る以上は仕方のないことであるが、本書は厳密な意味での行為無価値論に立脚するものではなく、体系的一貫性や理論的な精緻さといった学術的な面でやや心許ないことは否めない。尤もそうした点は現在の司法試験においてはさほど問題にならないため、専ら試験対策という観点から見れば、本書は極めて有用であると言えよう。各論に関しては、定義編と論点編が分離されており、特に後者は収録事例から論点を検討する形式を採ることから司法試験対策として実践的なものとなっている。特に大塚と十河執筆の財産犯は、判例の考え方を平易な文体で分かりやすく解説しており、一読の価値がある。総論(第3版)において、法改正・新判例が踏まえられ、「正当防衛」、「実行の着手」、「共犯」は全面改訂された。各論(第2版)は、2017年改正対応。全30・23講。A5判、536頁・610頁。

  • 裁判所職員総合研修所監修『刑法総論講義案』司法協会(2016年6月・4訂版)……通称「講義案」。伝統的行為無価値論。本書は元大阪高裁判事の杉田宗久氏(2013年に他界)による書記官への講義レジュメが元になっている。裁判官の手によって書記官の研修用テキストとして書かれたものということもあって、学説の対立など理論的に高度な部分には深く立ち入らず、判例と伝統的通説に基づいて淡々とまとめられている。そのため、総論における激しい学説対立に辟易した受験生からは高い支持を集めており、高度な学説対立が問われない判例・実務重視の新司法試験の出題傾向とも相俟って、総論の基本書の中では高いシェアを誇っている。理論刑法学を割り切るのであれば、選択肢としては真っ先に本書があげられよう。4訂版は、3訂補訂版(2008年9月)以降の法改正に伴う修正が行われ、また、危険の現実化や退避義務論、中立的行為による幇助など近時の学説の展開を踏まえつつ、新たな判例が補充され、大幅な加筆修正が行われた。A5判、514頁。

  • 井田良『講義刑法学・総論』『同・各論』有斐閣(2018年10月・第2版、2016年12月)……著者は伝統的行為無価値論とは一線を画する「新しい行為無価値論」の旗手。もともと井田説は行為無価値論の中でも理論的に高度で独自色が強いものである(例えば、消極的構成要件要素の理論、責任故意・責任過失の否定、緊急行為での有責性考慮、緊急避難の類型論など)。しかし、本書ではそうしたアクは前面に出ておらず、あくまで学生向けの概説書に徹しており、判例・通説等の説明はきちんとなされている。自説を主張する場合もその旨は明記しており、なぜそのように考えるべきなのかも説明されているから、読み手を惑わす心配もない。叙述の論理は非常に明快であり、社会倫理規範や社会的相当性というような曖昧で道徳的な語を使うことはない。そして、論点・学説も豊富に取り上げており、その解釈は非常に秀逸である。総じて、行為無価値論の基本書としては、現在最良のものの一つと言えよう。なお、総論(初版)については第7刷補遺が、各論については刑法一部改正にともなう記述の修正が公開されている。全30・41章。A5判、700頁・676頁。


<結果無価値論>

  • 山口厚『刑法総論』『刑法各論』有斐閣(2016年3月・第3版、2010年3月・第2版[ただし2012年1月第3刷にて補訂])……平野門下。現最高裁判事。総論・各論ともに非常にレベルが高く、司法試験合格レベルを想定するならばややオーバースペックとも思われるが、理論的な曖昧さを嫌う学生にとっては、安易なマジックワードなどを用いることなく、結果無価値論の最先端を示した本書は好適である。総論は、基礎的な事項を大胆に省いているため体系書としては薄く、そのうえ、正犯性等の従来の教科書レベルでカバーされなかった議論を載せているため、あらかじめ従前の議論を学ばずして本書を読みこなすことは困難であろう。初版時(2001年8月)には、ある種過激とも言える独自説が多かったが、第2版、第3版と判例の立場に沿う方向での改説が随所でなされ、版を改めるごとに試験的には使いやすくなっている。各論は、総論に比べてかなりの厚さであるが、その分丁寧な解説で読みやすくなっている。また、判例を元にした緻密な分析が特徴的であり、総論で山口説以外を採る場合であっても、辞書的に利用する価値は大いにあるだろう。山口自身も総論より各論の教科書の完成度に自信があるとコメントしている。なお、総論については第3版補遺が、各論については第2版補遺が公開されている。A5判、428頁・690頁。

  • 山口厚『刑法』有斐閣(2015年2月・第3版)……1冊本。通称「青本」。本書は初学者を主たる対象として、判例および全ての学説の前提となっている通説の解説に主眼を置いた教科書である。上記の二分冊の体系書に比べると、判例・通説の解説を主眼とする本書の性質上、自説はかなり控えめになっているが、一部に自説への誘導を図ろうとしていると思しき記述も見受けられる。また、広く浅い掘り下げのため、行間を読むことが要求されることから、初学者には正確な文意は理解できないとの声もある。本書は初学者を念頭に置いて書かれたものではあるが、刑法学の第一人者が判例と通説を平易に解説した教科書ということもあり、刑法全体を一通り学んだ後や試験直前期のまとめ用として用いる学生も多い。行為無価値論を採る学生でも使用する者は多いが、特に結果無価値論を採る学生にとっては事実上の国定教科書に近い存在ともいえる。なお、第3版補遺あり。A5判、548頁。

  • 西田典之(橋爪隆補訂)『刑法総論(法律学講座双書)』『刑法各論(同)』弘文堂(☆2019年3月・第3版、2018年3月・第7版)……平野門下。原著者は2013年に逝去。各論は、結論の妥当性や実務で使える議論であることを強く志向しており、分かりやすさとバランスの良さに定評がある。また、判例解説や論文で代表的見解として引用されることが多く、各論の体系書としては最も権威ある一冊となっている。そうしたことから、受験生の間では、行為無価値論・結果無価値論を問わず非常に高いシェアを誇っている。ただし、西田は少数説を採ることも少なくないため、特に総論で西田を使わない場合は食い合わせに注意すべきである(例えば、身分犯の共犯など)。総論は、学生有志によって録音された、著者の東大での講義をテープ起こししたものが元になっており、講義録的な要素が強く残っているため、各論とは大きく趣が異なっている。洗練された各論と比べると記述は冗長であり、ページ数の割にその内容は薄く、また、体系的な整理も各論ほど丁寧ではない。以上のように、各論と比べれば完成度という面では大きく劣るものの、講義を元にしたものというだけあって、読み手を飽きさせない。体系は平野説に比較的忠実であり、山口に比べて全体的に穏当な見解にまとまっている。総論第3版及び各論第7版の改訂は、弟子の橋爪によって行われ、旧版の記述は基本的に原形のまま残し、刑法に関する新たな動きを補訂したものとなっている。新法令や法改正については本文に修正を施し、最近の判例・裁判例についての加筆箇所は本文とは異なるレイアウトで追記している。補訂作業にあたり、橋爪個人の見解を示すことは避け、客観的な記述に徹している(はしがきより)。A5判、520頁・588頁。

  • 今井猛嘉・小林憲太郎・島田聡一郎・橋爪隆『刑法総論(LEGAL QUEST)』『刑法各論(同)』有斐閣(2012年11月・第2版、2013年4月・第2版)……伝統的論点から最新の議論までコンパクトにまとめられた学生向けの教科書。共著では最も人気のある一冊である。西田・山口門下による共著であるため、共著の弊害としてしばしば挙げられる立場のばらつきは少ない。しかしながら、総論については、橋爪執筆の正当防衛論や島田執筆の共犯論及び罪数論が秀逸である一方、今井執筆部分が総じて微妙であったり、小林の執筆部分がもはや教科書レベルを超えていたり(特に構成要件論は高度で難解)等、執筆者によって内容の質にばらつきが大きいという点で、共著の弊害が感じられるものとなっている。各論は西田・山口をコンパクトに整理したような趣になっているため、こちらは案外使い勝手がいい。なお、島田の逝去及び残る共著者の不和から、今後の改訂予定なしとの噂も。A5判、500頁・516頁。


〔その他〕

<行為無価値論>

  • 大谷實『刑法講義総論』『同・各論』成文堂(☆2019年4月・新版第5版、2015年9月・新版第4版補訂版)……行為無価値論を採る受験生のかつての定番書。現在も改訂は重ねられているが、著者高齢のためか最新の議論に対応しきれておらず、古さを感じさせる部分も見受けられる。大谷説は改説が比較的多いことで知られ、特に総論においてその体系的一貫性にしばしば疑問が呈されている。もっとも、そのような点は上掲『基本刑法』同様、現在の司法試験ではそれほど問題となるものではない。また、大谷説は「社会的相当性」という判断基準をマジックワードとして用いることで大半の論点で強引な解決を図っている、との批判も向けられているが、実際に総論において「社会的相当性」を用いて強引に解決が図られているところは正当業務行為と自招防衛程度である。各論については、大谷が実務との関連を意識していることから(はしがきより)、比較的判例・通説寄りであり、結論も穏当なものが多く、記述も整理が行き届いていることから、非常に使いやすい。収録判例数が多いことも評価できる。西田各論が肌に合わないという者は大谷各論を用いるのも悪くない選択肢であろう。なお、各論(新版第4版補訂版)の補遺(追補)あり。A5判、638頁・720頁。

  • 大谷實『刑法総論』『刑法各論』成文堂(2018年4月・第5版、2018年4月・第5版)……通称「薄い方」。『刑法講義』を判例・通説中心にコンパクトにまとめた、通読向きの概説書。量として必要十分なまとめ本に仕上がっており、試験前の総まとめに向く。『刑法講義』より大谷説を理解しやすいとの声あり。A5判、352頁・464頁。

  • 高橋則夫『刑法総論』『刑法各論』成文堂(2018年10月・第4版、2018年10月・第3版)……西原門下。新しい行為無価値論。総論は、最新の学説や問題意識が随所に織り交ぜられており、それらが著者の深い法哲学の素養と相俟って、行為無価値論の最先端を示すものに仕上がっている。いわゆる総論の総論の部分だけでも50頁超に渡るなど、近年では珍しい真剣勝負の理論書。特に客観的帰属論に関する記述は秀逸であり、明確な判断基準が示されているため論証化しやすく、大いに参考となるであろう。総論・各論ともに、判決文の紹介に多くの紙面を割き、判例解説も非常に充実している。また、具体的事案の処理に際しての思考過程も適宜示されており、受験生にも使いやすい本となっている。行為規範と制裁規範という独自の体系を採るなど、著者のアクが前面に出ているものの、結論は概ね判例・通説に近い。もっとも、結論よりも論証過程が重要である試験において、この点で使いづらいともいえる。他の基本書に比べ、やや独自色が強いため、中上級者向けであるとの声もある。A5判、638頁・796頁。

  • 井田良・佐藤拓磨『刑法各論(新・論点講義シリーズ)』弘文堂(2017年12月・第3版)……ケース・メソッドの刑法各論の基本書。刑法総論の内容を多く取り入れ、各論と総論を有機的に関連付けながら学習できるように工夫されている。また、普通の体系書であればごく簡単にしか言及されない、それぞれの犯罪類型に関する基礎的な事項について、かなり詳しく説明されている。2色刷で、図表を豊富に取り入れるなど、初学者でも理解できるよう配慮されている。本書は初学者から中級者への橋渡しを目的として執筆されたものであるが、司法試験に対応できる水準は十分に確保されている。第3版から弟子の佐藤が執筆者に加わった。B5版、306頁。

  • 中森喜彦『刑法各論』有斐閣(2015年10月・第4版)……著者は関西における行為無価値論の第一人者。本書は西田各論などの陰に隠れがちであり、あまりシェアは高くないものの、その内容には定評がある。他の基本書に比べて非常にコンパクトにまとめられており、また、基本的に穏当な見解が採られながらも、論点への鋭い踏み込みもあるなど、まさしく「簡にして要を得た」という表現がふさわしい基本書となっている。なお、刑法総論は執筆しないことを著者自ら公言している。A5判、348頁。

  • 大塚仁『刑法概説・総論』『同・各論』有斐閣(2008年10月・第4版、2005年12月・第3版増補版[改訂作業中])……著者は伝統的行為無価値論の大家。行為無価値論の論客として長く主導的地位にあり、団藤とともに伝統的通説を形成した。著者高齢のため一線を退いてはいるものの、最新の判例や学説を探求し、現在でも改訂作業は続けられている。実務的影響力は今なお大きく、刑法実務で通説といえば、概ね大塚説(ないし団藤説)を指す。ただし、本書では論理的一貫性の観点から、優越支配共同正犯説、不法領得の意思不要説など、実務通説と一部異なる見解を支持する。人格的行為論をはじめとして団藤説の多くを継承しているためやや議論が古く、特に総論は最新の議論に対応し切れていない部分も見受けられる。しかし、伝統的通説の立場から、終始一貫した論理で刑法を網羅的に解説する本書は、刑法学の理解に未だ有用であろう。A5判、658頁・782頁。

  • 川端博『刑法総論講義』『刑法各論講義』成文堂(2013年4月・第3版、2010年3月・第2版)……団藤門下。最新の議論にはあまり触れられていないが、基礎的な理論や論点については詳細かつ丁寧な説明がなされている。記述はレジュメ調に整理されており、判例・学説・自説を歯切れよい文章でたんたんと説明する。A5判、798頁・814頁。

  • 川端博『刑法』成文堂(2014年3月)……1冊本。放送大学テキストの改訂版。判例・通説を中心にコンパクトにまとめられている。特に上記の2冊本を基本書としている者にはまとめ本として好適。A5判、428頁。

  • 川端博『刑法総論(新・論点講義シリーズ)』弘文堂(2008年9月)……ケース・メソッド形式で刑法総論の重要論点を解説。模範解答の書き方まで学ぶことができる珍しい著作。B5判、288頁。

  • 佐久間修『刑法総論』『刑法各論』成文堂(2009年8月、2012年9月・第2版)……大塚弟子。いわゆる団藤=大塚ラインの系統。改訂により文章の読みにくさはかなり改善されたが、結果無価値論からの批判に対する目新しい再反論はあまりみられない。A5判、516頁・512頁。他に『刑法総論の基礎と応用―条文・学説・判例をつなぐ―』成文堂(2015年10月、A5版、410頁)、雑誌「警察学論集」の連載に増補・加筆して単行本化した『実践講座・刑法各論』立花書房(2007年3月)等がある。

  • 伊東研祐『刑法講義・総論(法セミ LAW CLASS シリーズ)』『同・各論(同)』日本評論社(2010年12月、2011年3月)、『刑法総論(新法学ライブラリ 17)』新世社(2008年2月)……夭折の天才・藤木英雄(東大最後の行為無価値論者)の弟子。著者曰く3冊とも未修者向け。著者の講義を聴講しない独習者にも理解できるよう著者の特異な独自説はあえて載せていない(もちろん自説主張がないわけではい。著者の法哲学見地(『講義総論』第1章)から体系がまとめられており、それに沿った主張もある)。また、学説の引用元を表示していない。近時出版された基本書の中では、判例の紹介・引用がやや少なめになっている。この点は賛否がわかれるところだろう。団藤=大塚ラインとは一線を画した洗練された行為無価値論を採る。各論も総論と同じく特異な独自説は少なめだが、新たな視点からの記述も多く参考になる。判例に批判的な箇所も多いが実用上支障はない。著者の文体は非常に難解であり、容易に読み進められない(故に、使用者が少ないのだろうか)が、一方、読み応えがあるという評価もある。レベルは日本評論社の方が幾分か高く踏み込んだ記述が多い。これに対し、新世社の総論は未習者、初学者向けであり、記述はあっさりしている。自分のレベルに合わせて好みで選ぶと良い。A5判、480頁・488頁・448頁。

  • 斎藤信治『刑法総論』『刑法各論』有斐閣(2008年5月・第6版、2014年3月・第4版)……「社会心理的衝撃性」なる独特の概念を用いる。学説紹介が詳細。巻末にユニークな設例つき。A5判、470頁・488頁。

  • 板倉宏『刑法総論』『刑法各論』勁草書房(2007年4月・補訂版、2004年6月)……判例を重視した学説。A5判、432頁・400頁。なお、概説書として、1冊本『刑法(有斐閣双書プリマ・シリーズ)』有斐閣(2008年2月・第5版、四六判、498頁)もある。

  • 小林充原著、植村立郎監修、園原敏彦改訂『刑法』立花書房(2015年4月・第4版)……著名な元刑事裁判官(元仙台高裁長官)による1冊本。原著者は2013年に逝去。第4版は第3版(2007年4月)以降の関係法令・判例・学説等の進展を踏まえて、植村立郎監修のもと、現役判事の園原敏彦が改訂。実務経験の裏打ちを基に判例の考え方を簡潔に説明。自説は少ない。A5判、512頁。

  • 幕田英雄『捜査実例中心 刑法総論解説』東京法令出版(2015年4月・第2版)……旧書名は『実例中心 刑法総論解説ノート』。著者は元最高検刑事部長。元検察官が若手警察官向けに著した教科書。著者の言うところの実務通説である、いわゆる団藤=大塚ラインをベースに書かれている。具体的事案の処理を強く意識した内容となっており、司法修習生や司法試験受験生にとっても非常に有益な一冊になっている。ただし、理論的に誤っている部分も散見される点には注意されたい。第2版では、判例がアップデートされ、初版(2009年11月)では言及されていなかった危険の現実化など最新の議論についてもフォローされた。全43設問。A5判、792頁。

  • 河村博『-実務家のための- 刑法概説』実務法規(2018年12月・9訂版)……総論・各論が1冊にまとまっている1冊本。著者は元名古屋高等検察庁検事長。実務に直結した実例と判例を中心とした解説。判例は、平成30年6月までの1220件以上を掲載。9訂版において、平成29年刑法改正に対応。A5判、692頁。

  • 橋本正博『刑法総論(法学叢書12)』『刑法各論(同13)』新世社(2015年2月、2017年2月)……著者は福田門下。最近の問題意識に応接しながらも、全体的に安定感がある記述となっている。著者は「違法性とは実質的に全体としての法秩序に反することである、と解する規範違反説的考え方に基づく定義が基本的には妥当である。……社会的相当性からの逸脱が違法性の重要な部分を占める」と明言しており、師である福田博士の影響が見てとれる。また、結果無価値論と行為無価値論は「原則として排他的なものではない」と述べているが、試金石ともいうべき偶然防衛については「行為者に行為規範を与えることも考慮する行為無価値論の視点を含める以上、防衛の意思で行われるからこそ正当化が認められる」としている。共犯論は、著者の有名なモノグラフィー『「行為支配論」と正犯理論』有斐閣(2000年2月)の内容を踏襲したものとなっており、説明の仕方にはやや独自色が見られるが、結論自体は現在の刑法学界の共通認識を踏み越えない穏当な所に収まるようになっている。なお、細かな解釈論については井田「講義」、及び同「理論構造」を参照させる場面が多いため、上記二冊が手元にあれば便利だろう。A5判、392頁・576頁。

  • 高橋則夫ほか『法科大学院テキスト刑法総論』『同・刑法各論』日本評論社(2007年10月・第2版、2008年4月)……行為無価値論者による共著。執筆陣は豪華だが、総論はちぐはぐ感が否めない。各論はよくまとまっており、論点ごとの判例・学説・文献カタログとして使い勝手が良い。A5判、432頁・392頁。

  • 大谷實編著『法学講義刑法1 総論』『同 2 各論』悠々社(2007年4月、2014年4月)……行為無価値論者による共著。主に大谷門下の関西系行為無価値論者によって執筆されている。従来の教科書から一歩前へ進めた議論を紹介しており、ちょうどリークエに対応する1冊。A5判、400頁・404頁。

(古典:行為無価値論)
  • 木村龜二著・阿部純二増補『刑法総論(有斐閣法律学全集)』有斐閣(1978年4月・増補版、OD版:2004年3月)……名著。目的的行為論の古典。A5判、502頁。阿部純二『刑法総論(BUL双書)』日本評論社(1997年11月……木村門下。目的的行為論、厳格責任説、違法性阻却事由の一般的原理における目的説、緊急避難の法的性質における二分説(生命対生命、身体対身体の場合に責任阻却)、不能犯論における主観的危険説、正犯と共犯の区別における決意標準説、共犯と身分における義務犯説など。コンパクトながらもドイツの学説も紹介している。B6判、320頁。)によりその後の議論をフォローすることができるが、いかんせん古い。

  • 団藤重光『刑法綱要総論』『同・各論』創文社(1990年6月・第3版、1990年6月・第3版)……行為無価値論の重鎮による一冊。実務的影響力は今なお大きく、現在でも刑法実務で通説といえば、おおむね団藤説(ないし大塚説)を指す。定型、形式を重視するシンプルですっきりした体系。法律論としての美しさには定評があるものの、共謀共同正犯を肯定したことで若干の綻びもみられる。半世紀前の初版の時点で体系そのものは完成しており、それがそのまま現在の刑法解釈学の基礎をなしているが、いかんせん古い。因果関係、不作為犯、実行行為性、共犯論など多くの分野において、近時さまざまに実質論を展開する判例・多数説との距離が開いており、団藤説は発展的に解消されつつある。三島由紀夫ファンは必読。

  • 福田平『刑法総論』『刑法各論』有斐閣(2011年10月・第5版、2002年5月・第3版増補)……団藤門下。著者は戦後昭和期の代表的な目的的行為論者であり、井田も私淑している。厳格責任説、共謀共同正犯否定説といった立場を採り、論理の一貫性においては師である団藤を上回るとも。曖昧さや倫理性を排し、基礎理論に根ざした福田説は現在でも説得力を持つ。団藤・大塚らの伝統的学説を立体的に理解するためにも有用である。なお、各論は非常に簡潔な構成となっている。A5判、408頁・340頁。

  • 藤木英雄『刑法講義・総論』『同・各論』弘文堂(1975年11月、1976年12月、OD版:2003年10月)……団藤門下の夭折の天才。実質的犯罪論、可罰的違法性論、新・新過失論、誤想防衛の違法性阻却、間接正犯類似説など、現在の学説にも示唆を与える啓発的内容が特徴だが、その理論体系に師匠ほどの緻密さはないと言われている。A5判、458頁・466頁。入門書として、板倉宏との共著『刑法案内1・2』勁草書房(2011年1月)が最近復刊されたが、既に克服された学説がそのまま掲載されているだけなので現時点で読むには物足りない。時機に後れた復刊と評さざるを得ない。四六判、256頁・260頁。

  • 平川宗信『刑法各論』有斐閣(1996年1月)……保護法益による3分体系をとらず、憲法を基準に個人の重要な生活利益を選び出し体系化。刑罰規定の解釈論に加えて、立法論・法政策論を含むのが特徴。A5判、598頁。


<結果無価値論>

  • 前田雅英『刑法総論講義』『刑法各論講義』東京大学出版会(☆2019年4月・第7版、2015年9月・第6版)……平野門下。結果無価値論を採る受験生のかつての定番書。前田説は、論理的な体系の構築よりも判例法理の抽出に重点を置いた学説である。規範・考慮要素がしっかり提示されているため、論述に用いやすく、かつ判例と一致する結論を導きやすい。二色刷りで図表を多用するなど視覚的効果に富んでおり、記述も詳しいことから、非常に理解しやすい。ただし、著者は結果無価値論者であるものの、行為無価値論者の藤木と同様の実質的犯罪論に基礎を置き、同門の山口や佐伯とは異なる独自の立場から書かれているため、他の学説と比較して考えると混乱するおそれが非常に大きく、前田説のつまみ食いは危険である。本書を利用するのであれば前田説と心中する覚悟が必要であろう。総論・各論とも、第6版に改訂される際にリニューアルされ、大幅な減頁がなされた。A5判、464頁・564頁。

  • 木村光江『刑法』東京大学出版会(2018年3月・第4版)……前田門下。1冊本。前田好き向け。増刷毎に一部改訂されている。各項目末尾の「まとめ」は自習に好適。A5判、480頁。なお、同著者による演習書として、『演習刑法』東京大学出版会(2016年3月・第2版)がある。

  • 曽根威彦『刑法総論(法律学講義シリーズ)』『刑法各論(同)』弘文堂(2008年4月・第4版、2012年3月・第5版)……著者は齊藤・西原の弟子だが、結果無価値論者。全体的に非常に簡潔な記述となっている。行為を独立の犯罪要素とする四分説を始めとして、所々で少数説を採っているが、そのような少数説もあっさりとした記述で流すことがあるので注意。A5判、324頁・356頁。

  • 曽根威彦『刑法原論』成文堂(2016年4月)……1冊本ではなく、曽根刑法学の集大成となる重厚な刑法総論の体系書。なお、刑罰論は含まれていない。学説紹介がとりわけ詳しく、ところどころで少数説を採っているものの(主観的違法要素否定説、共謀共同正犯否定説など)、通説や有力説も詳細に解説しているので調べ物用にも耐える。上掲『総論』から重要な改説をしている箇所(形式的構成要件的符合説に改説、383頁。構成要件的過失と責任過失との区別について、337頁)があるので注意。A5判、698頁。

  • 松原芳博『刑法総論(法セミ LAW CLASS シリーズ)』『刑法各論(同)』日本評論社(2017年3月・第2版、2016年3月)……曽根門下だが、行為を独立の犯罪要素としない三分体系をとり、構成要件については西田説と同様、違法構成要件→違法阻却事由→責任構成要件→責任阻却事由とする違法有責類型説を採用し、共同正犯論においては共同意思主体説を採用しないなど、その立場は平野門下の立場に近い。内容は高度であり、山口説や西田説をふまえて最新の論点(たとえば具体的法定的符合説における故意の個数)を盛り込みつつ、事例を用いて平易に解説している。『各論』は保護法益論などで理論的に詰められているものの、名誉毀損罪の真実性の錯誤についての故意阻却説、財産罪の保護法益についての本権説など、自説の落としどころとして疑問のある箇所が多々みられるが、学説を広く引用しているので調べもの用には適している。条文索引があるのは至便。A5判、552頁、666頁。

  • 中山研一『新版 口述刑法総論』『同・各論』成文堂(2007年7月・新訂補訂2版、2014年9月・補訂3版)……関西結果無価値論。著者は2011年に逝去したが、各論は2014年に松宮孝明によって補訂。A5判、358頁・384頁。『刑法総論』成文堂(1982年10月・A5判・638頁)は名著。

  • 山中敬一『刑法総論』『刑法各論』成文堂(2015年8月・第3版、2015年12月・第3版)……浩瀚な体系書。結果無価値+危険無価値によって違法性を判断(結果無価値論に近いが、違法一元論ではない)。客観的帰属論を全面的に展開。共犯はいわゆる関西共犯論。なお、総論(第3版)の正誤表あり。A5判、1224頁・944頁。ロースクール向け教科書として『ロースクール講義・刑法総論』成文堂(2005年4月、A5判、498頁)、『刑法概説I・II』成文堂(2008年10月、A5判、292頁・286頁)。

  • 町野朔『刑法総論講義案1』信山社(1995年10月・第2版)……平野門下。「もはや教科書のレベルを超え、極めて優れた高度な学術書」とも評されている。未完。なお、同著者による入門書として、『プレップ刑法』弘文堂(2004年4月・第3版、新書判、268頁)、刑法各論につき『犯罪各論の現在(いま)』有斐閣(1996年3月、A5判、448頁)がある。

  • 齋野彦弥『基本講義刑法総論(ライブラリ 法学基本講義 12)』新世社(2007年11月)……東大出身者だが大学院がケンブリッジなので団藤・平野門下ではない。学部時代の刑法教授は内藤。実行行為概念を否定する点では山口の説に近く、結果無価値論と親和性が高い。本人は「行為無価値論と結果無価値論の対立」として問題を扱うことを党派刑法学であると断じ、予め刷り込まれた立場から解釈論の帰結を導くことは自分自身で考えることを放棄するものだと指摘する。このような立場ではあるが、決して独自説の主張を強調するわけではなく、初学者の理解を目指すため判例・通説を厚く扱っている。A5判、400頁。

  • 堀内捷三『刑法総論』『刑法各論』有斐閣(2004年4月・第2版、2003年11月)……平野門下。体系は師説に比較的忠実。責任の本質を非難ないし非難可能性に求めるのではなく、犯罪の防止という実質的観点から理解しようとする実質的責任論を採り、責任の判断においては一般人を基準に据える客観説が妥当であるとする。専門である不作為犯論では、具体的依存性説を採る。因果関係論につき基本的には客観的相当因果関係説が妥当としながらも、相当性の判断において考慮されるのは一般人が利用可能な事情にかぎるとする。不能犯も予防目的の下で検討されるので、危険の有無は(理性的な)一般人を基準にして行われ、具体的な事情を基礎にして一般的・類型的に判断されるとする(修正された)具体的危険説を採る。A5判、420頁・410頁。

  • 林幹人『刑法総論』『刑法各論』東京大学出版会(2008年9月・第2版、2007年10月・第2版)……平野門下。著者は財産犯研究の第一人者。著者の学説は、許された危険の法理を多用することで知られる非常に独自色の強いものであり、その独特の体系が故、総論はあまり使い勝手がよくない。一方、各論の記述は非常に簡潔であり、その意味内容を正確に把握するためには著者の論文を読む必要があるため、こちらも使いこなすのは難しい。A5判、536頁・536頁。なお、同著者による演習書として、『判例刑法』東京大学出版会(2011年9月、A5判、440頁)がある。

  • 浅田和茂『刑法総論』成文堂(☆2019年3月・第2版)……関西結果無価値論。原理原則を重視する理論派で、背景知識もしっかり書かれている本格的体系書。社会的行為論、主観的違法要素否定説、違法性阻却の一般原理における法益衡量説、緊急避難の法的性質における違法性阻却中心の3分説、厳格故意説などが特徴だが、具体的事実の錯誤における構成要件上の客体の同一性を基準とする具体的符合説、抽象的事実の錯誤における形式的構成要件的符合説、原因において自由な行為における否定説など自説の落としどころとして疑問を感じる箇所がままみられる。共犯論においても、要素従属性において、正犯なき共犯を広く認め、間接正犯を認めない一般違法従属形式を採る(いわゆる関西共犯論)ので使いづらい。A5判、598頁。(第2版については評価待ち。)

  • 松宮孝明『刑法総論講義』『刑法各論講義』成文堂(2018年8月・第5版補訂版、2018年8月・第5版)……理論的にかなり突っ込んでいるため、内容は非常に高度かつ難解で、そのうえ少数説も多く、受験的には使いづらい。理論刑法学を究めたい刑法マニア向けの一冊。著者の研究成果がふんだんに盛り込まれており、ドイツや日本における学説の変遷や法律の改廃の歴史といった背景的知識を記述するなど、基本書でそういった理解を深めたいならこの本をおいて他に選択はないのであるが、そうした知識が司法試験合格に無用であるのは言うまでもないことである(ただし、本書が刑法”学”を学ぶための”教科書”として執筆されたことを意識せよ)。章末には演習問題と題した設問が付されているが、そのいずれもが理論面や体系面を問うものであり、あくまでも”刑法学”を意識した出来となっている。なお、松宮説としては、ドイツのヤコブスの説に基づいた見解を採ることが多い。A5判、420頁・558頁。こうした松宮説を理解するには、『レヴィジオン刑法I-III』成文堂(1997年11月-2009年6月)の松宮執筆(発言)部分を用いるのが吉。ただし、司法試験のレベルを遥かに超えていることに注意。著者のブログはこちら

  • 大越義久『刑法総論(有斐閣Sシリーズ)』『刑法各論(同)』有斐閣(2012年12月・第5版、2012年12月・第4版)……結果無価値論の立場から刑法理論をコンパクトに解説。さすがにこれだけでは薄すぎるとの評があるも、1冊目としては適しているともいわれる。四六判、262頁・256頁。

  • 小林憲太郎『刑法総論(ライブラリ 現代の法律学)』新世社(2014年10月)……本文は199頁と基本書としてはかなり薄い部類に入るが、最先端の理論刑法学の学問的成果がふんだんに盛り込まれている。著者の見解は「最終的には通説にほぼ近いところに落ち着くに至っ」ており、「学問的関心は『通説がなぜ通説であるのか』を理論的に明らかにする作業(以上、はしがき)」に移行しているとのこと。したがって、行為無価値対結果無価値に代表される過去の学説対立についての記述は最小限に留められており、通説および判例の説明に重点がおかれている。とはいうものの、実際には著者独自の主張(因果関係論、違法性阻却原理、過失論など)がかなり多く、かつ、その独特のレトリックに起因する晦渋な文体(通称「コバケン節」)と相俟って極めて難解である。レベル設定は「通説的な立場に基づいて著され、それを理解しさえすれば各種資格試験において最上位の答案を書けるような刑法総論の教科書のなかで、最もやさしい部類に属するもの(はしがき)」とされているとおり、主要な論点はほぼカバーしているが、その水準は並の(重厚な)体系書のレベルを優に超えており、著者の論文等を参照しなければ、絶対にその意を理解できないのではないかと思われる箇所も少なくない。また、上述したように過去の学説(たとえば、形式的三分説、法確証の利益説、抽象的危険説など)はことごとく省略されている。よって、本書は「かなりの(=科目別順位一桁台を狙うレベルの)」上級者向けというべきである。本書を読んで理解困難であった箇所については、後掲の『ライブ講義 刑法入門』と判例時報連載「刑法判例と実務」(2274号から原則毎月1日号に掲載。総論30回〔2274~2365号〕、各論30回〔2368~〕の計60回を予定)を読むとよいだろう。A5判、224頁。

  • 小林憲太郎『刑法総論の理論と実務』判例時報社(2018年11月)……判例時報連載「刑法判例と実務【総論編】(1)-(30)」に新章(第31章 犯罪論の体系)を書き下ろしし、加筆修正して単行本化したもの。主な読者層が法曹実務家であるため、「本書では、刑法総論の理論と判例実務に関する基本的に穏当な解釈が述べられている(はしがき)」と理解してよいとする。毎章リードとなる仮想対話に引き続き本編解説が付されるというスタイルで、毎回クスッとさせられる内容で、著者にしては読みやすく、実務的にも参考になる内容となっている。小林説は構成要件を不法類型とし、構成要件的故意・過失を認めない古典的な結果無価値論だが、過失責任を犯罪論のベースとし、「故意責任=過失責任+α(故意)」とする。すなわち、故意犯にも過失犯の客観的要件及び主観的要件(=結果の予見可能性)の具備が必要であるとする異説を採る。受験対策上本書を通読するのはオーバースペックだが、上記『刑法総論』を読んでわからなかった箇所をチェックするとよいだろう。A5判、790頁。

  • 日髙義博『刑法総論』成文堂(2015年10月)……著者は不作為犯の研究で著名。ドイツの学説も比較的詳しく紹介されているなど、本格派の体系書となっている。本書の最大の特色は「跛行的結果反価値論」の主張にある。跛行的結果反価値論とは「法益侵害説を土台にした結果反価値論を出発点にしているが、二次的に違法性を減少・滅失させる方向で行為反価値性の判断を機能させようとするものである」(203頁)。例えば、可罰的違法性では、絶対的軽微は「結果反価値の減少により可罰的違法性が欠ける」が、相対的軽微は「結果反価値性はあるものの……、行為反価値性が減少して可罰的違法性を欠く」(209頁)。また、緊急避難を責任論に位置づけている点も注目される。これは、「跛行的結果反価値論の立場からすると、転嫁行為には法益侵害性が認められることから違法性を否定しえず、危険回避の行動を責任の領域で評価し、責任阻却として処理することが適切」であるとの理由からである(379頁)。著者の代表的著作である『不真正不作為犯の理論』が、本書でどのように展開されているかも注目されるところであるが、「構成要件的等価値性」を提唱し(150頁以下)、学説の批判も考慮してか「先行行為説」は強調されていない。錯誤論では、師である植松正に倣って「合一的評価説」を採る。これは「錯誤論の使命が刑の不均衡を是正すること」から出発し、「結果の抽象化を排除し故意の抽象化を推し進める一方、観念的競合を排除して合一的評価を取り入れて1個の重い罪だけで処罰する」ものである(320頁)。この説は、結論の妥当性を重視するあまり、なぜこのような合一的評価が可能なのかが説明されていないように思われる。最後に形式面であるが、全部で37の設例を用意し、それに解説を加えることで、初学者にも配慮している。また、重要判例については、事実の概要を詳しく記し、それに対してコメントを加えている(云わば百選のスタイル)。これは新しい形の教科書と云えよう。このような事情で、判例・学説の引用は必ずしも網羅的ではない。A5判、620頁。

  • 関哲夫『講義 刑法総論』『同 刑法各論』成文堂(2018年11月・第2版、2017年10月)……A5判、592頁・734頁。

  • 松宮孝明編『ハイブリッド刑法 総論』『同・各論』法律文化社(2015年5月・第2版、2012年3月・第2版)……関西刑法読書会のメンバーによるテキスト。といっても、関西結果無価値論の主張は控えめで、最新の論点にも言及している。A5判、338頁・386頁。

  • 大野真義ほか『刑法総論』『刑法各論』世界思想社(2015年4月・新装版、2014年6月)……総論はオーソドックスな因果的行為論、結果無価値論の立場から一貫して読むことができる。ただし、自説を明記しない箇所が多いので初学者は混乱するかもしれない。また、加藤執筆部分(有責性〔故意・過失含む〕、責任阻却事由)のできはイマイチ。A5判、434頁、472頁。

  • 生田勝義・上田寛・名和献三・内田博文『刑法各論講義(有斐閣ブックス)』有斐閣(2010年5月・第4版)……学部生向けの教科書。総論はない。第4版において、凶悪・重大犯罪の厳罰化等の法改正を織り込むとともに重要な判例等を補充。 A5判、362頁。

  • 鈴木茂嗣『刑法総論』成文堂(2011年8月・第2版)……著者は京大系刑事訴訟法学の大家。本書では、著者独自の犯罪体系である「二元的犯罪論」が展開されている。著者の主張の大筋は、伝統的刑法学が陥っているとする認識論的犯罪論からの脱却であり、刑法学は単に「犯罪とはなにか」を究明する性質論を志向すべきであるというものである。そこでは、ドイツのベーリングによってもたらされた構成要件論を基軸とする性質論から認識論への転換を「失敗」であったとし、再度構成要件論以前の体系への再転換を図るべきであるとする著者の主張が述べられている。このため、従来の教科書とは構成を大きく異にしており、必然的に試験対策的観点からは本書は無用と言わざるを得ない。したがって、本書は専ら研究者や刑法マニアを読者として選ぶものだと言える。A5判、358頁。なお、鈴木説を簡潔に述べた最近の書(論文集)として『二元的犯罪論序説』成文堂(2015年12月)がある。『序説』という言葉で入門書的役割を期待しがちだが、内容的には刑法を一通り修めた者がその価値を理解できるレベルである。四六判、118頁。


(古典:結果無価値論)
  • 佐伯千仭『刑法講義総論』有斐閣(1981年3月・4訂版、OD版:2007年9月)……平野刑法に多大な影響を与えた名著。社会的行為論、客観的違法論、可罰的違法性論、可罰的符合説、準故意説、規範的責任論、期待可能性の国家標準説、共犯論における行為共同説、一般違法従属形式説、共謀共同正犯否定論など。A5判、496頁。なお、本書は『佐伯千仭著作選集 第1巻 刑法の理論と体系』信山社(2014年11月)にも収録されている。A5変型判、584頁。

  • 平野龍一『刑法総論I・II』有斐閣(1972年7月、1975年6月、OD版:I・IIともに2004年8月)……法益侵害説中興の祖。日本の結果無価値論刑法学のバイブル的存在。平野体系は、いわゆる結果無価値論の中でもスマートで理解しやすく、西田や山口に対してとっつきにくさを感じる人には現在でもお薦めできる。平野刑法学のエッセンスが抽出されたものとも言うべきなので、深く理解したい時は平野執筆の論文に当たった方がいい。A5判、208頁・232頁。『刑法概説』東京大学出版会(1977年2月、A5判、328頁。MJリバイバル(丸善・ジュンク堂限定販売)によるOD版あり。)も簡にして要を得た、今もなお参照に値する1冊本。かなり高度な議論を前提とした記述になっているので、ある程度勉強してから読み返すと、なお有意義。

  • 荘子邦雄『刑法総論(現代法律学全集25)』青林書院(1996年3月・第3版)……刑罰の本質は応報にあるとする。純粋な結果無価値論ではないが、行為は主観と客観とを統合した全一体であるとして、主観的違法要素をきわめて限定的にしか認めない(処罰し得る絶対的不能未遂の場合の未遂故意のみ主観的違法要素とする。)。正当防衛において積極加害意思ある防衛者について急迫性を否定する判例を支持する。防衛行為は、避難し得る不正に対する「反撃」の手段として認めるべきであるとして、過失による侵害行為者や責任無能力者の侵害行為に対して正当防衛を認めない異説(緊急避難しか認めない)を採る。因果関係の因果性(条件関係)における合法則的条件説、緊急避難の法的性質における二分説(生命対生命の場合に責任阻却)、故意と過失の区別における動機控制説、共謀共同正犯の限定的肯定説など。A5判、527頁。

  • 内田文昭『刑法概要 上巻・中巻』『刑法各論』青林書院(上巻〔基礎理論・犯罪論(1)〕:1995年4月、中巻〔犯罪論(2)〕:1999年4月、1996年3月・第3版)……上巻・中巻は刑法総論に相当(ただし刑罰論は含まれない)。下巻において上記刑法各論を改訂予定だが未完。客観的目的的行為論、新過失論などを採るが、主観的違法要素否定説などその内容はむしろ結果無価値論の立場に近い。『概要』で従来の見解(『改訂 刑法I 総論(現代法律学講座)』青林書院(1997年4月・補正版、A5判、426頁)における)を改説した箇所がいくつかあるので注意されたい。A5判、467頁、690頁、714頁。

  • 内藤謙『刑法講義 総論 上・中・下1・下2』有斐閣(1983年3月~2002年10月、OD版対応)……団藤弟子だが徹底した結果無価値論者(主観的違法要素否定説)。法教に長期連載された「基礎講座・刑法総論講義」を書籍化したもので4分冊、1502頁の大著。上(刑法の基礎理論、行為論、構成要件論)、中(違法性論)、下1(責任論)、下2(未遂犯論、共犯論、刑罰論)。各学説を詳細に検討しており、調査目的に至便。A5判、308頁・454頁・492頁・306頁。1冊本として『刑法原論』岩波書店(1997年10月、A5判、236頁)。


<行為無価値論・結果無価値論>

  • 佐久間修・橋本正博・上嶌一高『刑法基本講義―総論・各論』有斐閣(☆2019年5月・第3版)……1冊本。ケースメソッド形式。初版時(2009年4月)には「『いわゆる』通説・判例ベースの体系だが、佐久間・橋本(行為無価値論者)執筆部分と上嶌(結果無価値論者)執筆部分とにズレがある」との批判があったが、第2版の改訂時に記述の統一が図られた。体裁や形式が、佐久間毅『民法の基礎』と似ているため、同書の愛読者は親しみやすいと思われる。第3版において、第2版(2013年4月)刊行以後の法改正や新判例が反映された。A5判、580頁。

  • 伊藤渉・小林憲太郎・鎮目征樹・成瀬幸典・安田拓人、齊藤彰子・島田聡一郎『アクチュアル刑法総論』『同・各論』弘文堂(2005年4月、2007年4月)……主に山口・西田弟子と中森弟子の若手有望学者による共著。刑法学理論の最先端を著述している。総論は行為無価値論に立つ成瀬・安田により、最近の行為無価値論的に仕上がっているものの、他の結果無価値論の筆者との関係でチグハグ感が残る。基本概念・基本判例より新しい判例・学説の展開に重点が置かれている。リーガルクエストと被る部分はコピペになっている。齊藤と島田は各論のみ執筆。使い勝手の良いところだけつまみ食いで使うのがベスト(特に安田の責任論などは必読である)。内容はかなり深いところにまで突っ込んでおり、現代の刑法学の到達点と言っても過言ではない。リークエよりやや薄めで脚注が付いているので、レポートなどにも活用しやすい。A5判、368頁・576頁。

  • 葛原力三・塩見淳・橋田久・安田拓人『テキストブック刑法総論』有斐閣(2009年7月)……関西系学者による比較的初学者向けのテキスト。京大刑法総論とも言うべき執筆陣(葛原は中門下、葛原以外は中森門下)。葛原(結果無価値論)が因果関係・主観的構成要件・共犯、塩見(行為無価値論)が客観的構成要件・未遂犯・罪数と立場の違いが顕著に現れる部分を異なる論者が執筆しているため、一貫性に欠けるのが共著故の欠点である。学説検討がかなり詳しく最先端の議論にまでフォローしているが、学説相互の批判に欠ける。この点はリーガルクエストやアクチュアルに軍配が上がる。A5判、366頁。

  • 町野朔・中森喜彦『刑法1・2(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(2003年4月・第2版)……内容的に中途半端で、共著の悪い面がでてしまっている。四六判、278頁・336頁。

(古典:行為無価値論・結果無価値論)
  • 高窪貞人ほか『刑法総論(青林教科書シリーズ)』、『刑法各論(同)』青林書院(1997年2月・全訂版、1996年4月・全訂版)…… 刑法総論執筆者(高窪貞人・石川才顕・奈良俊夫・佐藤芳男)、同各論執筆者(高窪貞人・佐藤芳男・宮野彬・川端博・石川才顕)。平成7年改正刑法に対応。A5判、344頁・384頁。



【その他参考書】

  • 大塚裕史『刑法総論の思考方法』『刑法各論の思考方法』早稲田経営出版(2012年4月・第4版、2010年12月・第3版)……著者は学者だが、かつて若宮和彦名義で予備校で指導していた経験を持つ。大谷・前田がメジャーな受験生説だった時代(平成10年台前半頃)に、それらに親和的な内容の副読本として読まれていた。現在では大谷・前田の受験生シェアは低下しているものの、刑法が苦手な場合になお有用。これ以上ないほど丁寧で平易な説明がなされており、学説の整理も詳しく、あてはめのやり方までしっかりと示されているなど、至れり尽くせりの内容となっているため、手元にあると何かと役に立つであろう。なお、総論・各論ともに長らく絶版状態となっていたが、その後、改訂されないまま販売されていた。A5判、690頁・604頁。

  • 佐伯仁志『刑法総論の考え方・楽しみ方(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2013年4月)……平野門下。法学教室283-306号に掲載された連載を単行本化したもの。単行本化にあたり、正当防衛論(3)、責任論、共犯論(3)(共犯と身分、必要的共犯、過失犯の共同正犯、不作為と共犯)が新たに書き下ろされた。総論のほとんどの論点を解説しているが、罪数論や刑罰論を欠いているため基本書としては使いにくく、位置づけとしては副読本である(著者自身の講義でも教科書指定は「山口か西田のいずれか」であり、本書はあくまで参考書として挙げるにとどまっている)。はしがきにもあるとおり、あくまで「刑法総論の基本的な考え方を理解し、自分で考えることの面白さをわかる」ことが本書の目的であり、受験的な効用を過度に期待することは禁物である。佐伯説は、故意過失を責任要素として構成要件に含む3分説をとり、兄弟子である西田や山口よりなじみやすい体系となっている。因果関係論、不作為犯論、正当防衛論、被害者の同意論は著者の論文のダイジェスト版ともいうべき内容であり、とくに不作為犯論と正当防衛論は試験対策にも有用と言える。全22章。A5判、458頁。また、各論の連載(法教355号-378号→雑誌連載・企画)もあるが、こちらの単行本化については、まだ佐伯が作業を続けている段階で、出版の具体的な目処は立っていないとのことである。

  • 橋爪隆「刑法総論の悩みどころ」(法学教室連載・403号~426号、全22回)、「刑法各論の悩みどころ」(法学教室連載・427号~450号、全21回)……刑法学修にとり「悩みどころ」となる重要論点について学生にもわかりやすく自説を展開。警察幹部向けであるが「判例講座・刑法総論」(警察学論集連載・2016年1月号~2017年12月号、全18回)も参照されたい。

  • 井田良『刑法総論の理論構造』成文堂(2005年6月)……井田が自説を詳細に展開した『現代刑事法』誌上での連載を単行本化したもの。いわゆる「新しい行為無価値論」における代表的文献。本書で井田は、それまで"停滞"していた違法性をめぐる議論に一石を投じており、結果無価値論を徹底的に批判して、ドイツにおける議論を参照しながら、曖昧さを許さない透徹した理論によって行為無価値論(違法二元論)の正当性を主張している。例えば、行為無価値論が重視する一般予防の観点からは刑罰法規は国民に個別状況下で行為規範を差し向けるものでなければならず、またその規範に従って行動する限りはその行為が違法と評価されることはなく、したがって違法と適法の境界が明確になり罪刑法定主義の要請に応えることができるとする。そのため、法益侵害結果を因果的に惹起したことを理由に行為規範に適合する行為を違法と評価し、ただ責任が否定されて処罰を免れるに過ぎないとする結果無価値論は、犯罪の成立条件を明確にするあまり国民に対して違法行為と適法行為との分水嶺を提示することができず(一般予防や罪刑法定主義の要請を果たせず)、「ふろの水と一緒に赤ん坊まで流してしまう」理論であるとして激しく非難する。また、このような行為規範は行為者の認識した事情を基に与えられるものであり、客観的には殺人罪の構成要件に該当する行為でも行為者が客体を人ではなく熊だと認識していた場合には殺人罪の行為規範は行為者に対して無力(規範は行為者の認識を正すことについて無力)であるから、違法性の錯誤のうち事実面に関する錯誤は直ちに構成要件的故意を阻却するとする(制限責任説のうち違法性阻却説)。これに対し違法性の錯誤は、一般予防の観点からまさしく刑法が保護しようとする規範の安定性が動揺されられる場面であるから、行為者が錯誤に陥ったことに相当の理由がある場合(→違法性の意識の可能性の問題として責任が阻却される)を除いてこれに寛容であることはできないとする。なお、本書は総論に関する「コンパクトな論点書」として刊行されたものであり、総論の体系を全体的に網羅するものではない。差し当たり、行為無価値論版『問題探求』といったところか。A5判、488頁。

  • 山口厚『問題探究 刑法総論』『同・刑法各論』有斐閣(1998年3月、1999年12月)……刑法学界の碩学が、犯罪論・犯罪各論の重要論点を深く掘り下げ、文字通り問題探究を行った意欲的な書であり、我が国の刑法学史における最も重要な業績であると評する声もある。もっとも、現在では改説されている部分も多々あり。A5判、302頁・358頁。

  • 塩見淳『刑法の道しるべ(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2015年8月)……法教連載を元に新たに三つの章(第6章 間接正犯・不作為犯の着手時期、第9章 住居侵入罪の保護法益・「侵入」の意義、第13章 偽造の概念)を書き下ろしたものを単行本化。理論的に明快な有力説(侵害回避義務論、法益関係的錯誤説など)を批判的に検討し、通説的な理解からさらに一歩進めた自説を示すというスタイル。司法試験的には有力説をとれば明快で書きやすいと思われるが、実際にはそう簡単に割り切れるものではないというのが塩見説。したがって、答案には書きにくく難易度は高いものの、一読の価値はあると思われる。全14章。A5判、274頁。

  • 西田典之・山口厚・佐伯仁志編『刑法の争点』有斐閣(2007年10月)……全130項目。 B5判、264頁。

  • 山口厚・佐伯仁志・井田良『理論刑法学の最前線1・2』岩波書店(2001年9月、2006年5月)……現在の刑法学をリードする三人の論文集。決まったテーマごとに一人が論文を執筆し、残りの二人がその論文を批評するという形式。佐伯執筆部分は連載と合わせると面白い。司法試験レベルは遥かに超えている。A5判、248頁・264頁。

  • 川端博・山口厚・井田良・浅田和茂編『理論刑法学の探究 1-10』成文堂(1:2008年5月、2:2009年6月、3:2010年6月、4:2011年5月、5:2012年5月、6:2013年6月、7:2014年6月、8:2015年6月、9:2016年6月、10:2017年7月)……国内外の優れた学者による論文と書評を収録。刑法理論の深い理解に資すると思われる。A5判、224頁・222頁・241頁・256頁・274頁・302頁・318頁・247頁・334頁・306頁。

  • 川端博『集中講義刑法総論』『同・各論』成文堂(1997年6月・第2版、1999年7月)……中・上級者向けの論点本。A5判、486頁・494頁。

  • 曽根威彦『刑法の重要問題 総論』『同・各論』成文堂(2005年3月・第2版、2006年3月・第2版)……A5判、412頁・412頁。

  • 曽根威彦・松原芳博編『重点課題刑法総論』『同・各論』成文堂(2008年3月)……A5判、276頁・286頁。

  • 伊東研祐・松宮孝明編『リーディングス刑法』法律文化社(2015年9月)……理論刑法学における31編の重要文献に気鋭の学者たちが解題を加えるというアカデミックな書。A5判、508頁。

  • 高橋則夫・杉本一敏・仲道祐樹『理論刑法学入門  刑法理論の味わい方 (法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2014年5月)……全11講。A5判、360頁。

  • 高橋則夫・田山聡美・内田幸隆・杉本一敏『財産犯バトルロイヤル-絶望しないための方法序説(法セミLAW CLASSシリーズ)』日本評論社(2017年5月)……全24講。A5判、340頁。



【入門書・概説書】

  • 井田良『入門刑法学・総論(法学教室ライブラリィ)』『同・各論(同)』有斐閣(2018年11月・第2版、2018年3月・第2版)……法教連載(「ゼロからスタート☆刑法”超”入門講義」)の単行本化。著者の立場は行為無価値論(違法二元論)。『各論』第7講・危険犯は、体系的整合性の観点から、通説的理解とは若干異なる立場から説明されているが、特に支障はない。A5判、288頁・282頁。

  • 井田良『基礎から学ぶ刑事法(有斐閣アルマBasic)』有斐閣(2017年3月・第6版)……刑法・刑事訴訟法・刑事政策について平易に解説する入門書。全24章。四六判、372頁。

  • 大塚仁『刑法入門』有斐閣(2003年9月・第4版[改訂作業中])……口語体の良書。検察事務官の研修用テキストとしても使われている。総論は全12章、各論は全11章。A5判、380頁。

  • 川端博『レクチャー刑法総論』『同・各論』法学書院(2017年10月・第3版、2018年2月・第5版)……学部生やロースクール未修者を対象としている。わかりやすさを重視した、噛み砕いた説明が特徴。全35・12講。A5判、368頁・336頁。

  • 島伸一編著、山本輝之・只木誠・大島良子・髙山佳奈子ほか『たのしい刑法Ⅰ総論』『同Ⅱ各論』弘文堂(2017年3月・第2版、2017年10月・第2版)……二色刷り・図表多用。解答例付きのケーススタディあり。Ⅱ各論の第2版において、2017年6月に成立した性犯罪に関する法改正に対応。A5判、354頁・416頁。

  • 山口厚『刑法入門(岩波新書)』岩波書店(2008年6月)……新書判、238頁。

  • 中山研一『刑法入門』成文堂(2010年10月・第3版)……著者は2011年7月に逝去。全7章。A5判、194頁。

  • 木村光江『刑事法入門』東京大学出版会(2001年3月・第2版、オンデマンド版:2013年5月・第2版)……刑事法をとおした入門書。全20章。A5判、256頁。

  • 浅田和茂・内田博文・上田寛・松宮孝明『現代刑法入門(有斐閣アルマBasic)』有斐閣(2014年9月・第3版補訂版)……関西結果無価値の学者による入門書。全6章。四六判、344頁。

  • 町野朔・丸山雅夫・山本輝之『ブリッジブック刑法の基礎知識(ブリッジブックシリーズ)』信山社(2011年7月)……全9章。四六判、264頁。

  • 高橋則夫編『ブリッジブック刑法の考え方(ブリッジブックシリーズ)』信山社(2018年11月・第3版)……刑法学習の基礎体力づくりのために。執筆者(川崎友巳・高橋則夫・中空壽雅・橋本正博・安田拓人)。全20講。四六変型判、272頁。

  • 井田良・佐藤拓磨編著『よくわかる刑法(やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ)』ミネルヴァ書房(2018年5月・第3版)……第3版は、平成29年刑法一部改正ほか最新情報を踏まえて改訂された。B5判、240頁。

  • 藤木英雄著、船山泰範補訂『刑法(全)(有斐閣双書)』有斐閣(2013年9月・第4版)……はじめて刑法を学ぶ読者のために、学習上必要とされる基本的な事項を解説。平成23年・平成25年の通常国会で成立した刑法改正の内容(強制執行妨害罪の細分化、不正指令電磁的記録に関する罪、刑の一部の執行猶予に関する規定等)を盛り込んだ最新版。四六判、310頁。

  • 船山泰範編『刑事法入門(Next教科書シリーズ)』弘文堂(2014年2月)……刑法哲学入門。全12章。A5判、224頁。

  • 裁判所職員総合研修所監修『刑法概説』司法協会(2017年1月・8訂版)……A5判、190頁。

  • 佐々木知子『誰にでも分かる刑法総論』『同・刑法各論』立花書房(2011年4月、2012年2月)……著者は元検察官。A5判、288頁・320頁。同著者による『警察官のためのわかりやすい刑法』立花書房(2015年8月)は、警察官を始めとする初学者を念頭に置いて、学説には深入りせず、判例を中心とした実務的な内容で、刑法の全体像をつかめる。全29章。A5判、336頁。

  • 渡辺咲子『基礎から学ぶ刑法』立花書房(2015年11月)……著者は元検察官。「警察公論」の連載が元となっている。A5判、480頁。

  • 小林憲太郎『ライブ講義 刑法入門(ライブラリ 法学ライブ講義4)』新世社(2016年11月)……結果無価値論者による1冊本で、「ですます調」と著者による手書きの板書書きが相俟って刑法入門講義の実況中継といった趣。コンパクトながらも重要判例の要旨も載っている。また、高水準の内容を保ちながらも、著者が執筆した文献の中では比較的わかりやすい。ただし、本書はあくまで「小林説」の入門書であることに注意が必要である。本書を導入として『総論』その他発展的な基本書を読むとよいだろう。2色刷。A5判、264頁。

  • 船山泰範『刑法がわかった』法学書院(2017年7月・改訂第6版)……平成29年法改正「性犯罪厳罰化等」に対応。A5判、400頁。なお、同著者による入門書として他に、『刑法を学ぶための道案内』法学書院(2016年10月、A5判、272頁)、『刑法の礎・総論』、『同・各論』法律文化社(2014年5月、2016年5月、A5判、268頁・288頁)がある。

  • 船山泰範編著『ホーンブック新刑法総論』、『同各論』北樹出版(2017年4月・改訂2版、2015年4月・改訂3版)……全12・16章。A5判、236頁・260頁。

  • 津田隆好『警察官のための刑法講義』東京法令出版(2018年5月・第2版)……著者は、警察庁生活安全局生活経済対策管理官(元警察大学校特別捜査幹部研修所主任教授)であり、「警察官の、警察官による、警察官のための」概説書。第2版において、平成29年12月までの情報(法改正、裁判例)を反映。総論は全20章、各論は全37章。A5判、352頁。

  • 設楽裕文・南部篤編『刑法総論(Next教科書シリーズ)』、沼野輝彦・設楽裕文編『刑法各論(同)』弘文堂(2018年8月、2017年4月)……全11・11章。A5判、292頁・308頁。

  • デイリー法学選書編修委員会編『ピンポイント刑法』三省堂(2018年4月)……法学部生・ビジネスマン・一般読者向けの最新法学教養シリーズの刑法編。四六判、192頁。

  • 只木誠『コンパクト刑法総論(コンパクト 法学ライブラリ 10)』新世社(2018年6月)……著者は罪数論・競合論の大家。全34章で刑法総論を概観。基本的に行為無価値論(違法二元論)ベースだが、独自説はあまり見られず比較的中立的な立場から解説しているため読み手を選ばない(学説の位置づけについての指摘が的確で、設問に対する解答も各説に対応させている)。2017年刑法改正に対応。2色刷。A5判、352頁。

  • 松原芳博『刑法概説』成文堂(2018年11月)……性犯罪改正等の最新の法改正及び重要判例に対応。総論は全9章、各論は全13章。A5判、254頁。

  • ☆辰井聡子・和田俊憲『刑法ガイドマップ(総論)』信山社(2019年5月)……コンセプトは「歩きながら考える」。実務刑法学入門とされている。「初学者のための答案の書き方」、「平成22年・23年司法試験〔第1問〕の解答例」あり。総論:序章「犯罪論」をイメージしよう+全13章。2色刷。A5変型判、212頁。



【コンメンタール】

  • 大塚仁・河上和雄・中山善房・〔佐藤文哉〕・古田佑紀編『大コンメンタール刑法〔全13巻〕』青林書院(第1巻:2015年7月・第3版、第2巻:2016年8月・第3版、第3巻:2015年9月・第3版、第4巻:2013年10月・第3版、第5巻:1999年12月・第2版、第6巻:2015年12月・第3版、第7巻:2014年6月・第3版、第8巻:2014年5月・第3版、第9巻:2013年6月・第3版、第10巻:2006年3月・第2版、第11巻:2014年9月・第3版、第12巻:2003年3月・第2版、第13巻:2018年7月・第3版……我が国最大級の刑法典注釈書。実務法曹及び研究者による顕名執筆。判例・裁判例は網羅的に収録されているが、学説紹介についてはムラがあり、一世代前の学説の紹介に留まっている解説がある。A5判、第1巻〔序論・第1条~第34条の2〕:824頁、第2巻〔第35条~第37条〕:780頁、第3巻〔第38条~第42条〕:618頁、第4巻〔第43条~第59条〕:502頁、第5巻〔第60条~第72条〕:758頁、第6巻〔第73条~第107条〕:530頁、第7巻〔第108条~第147条〕:488頁、第8巻〔第148条~第173条〕:484頁、第9巻〔第174条~第192条〕:312頁、第10巻〔第193条~第208条の3〕:596頁、第11巻〔第209条~第229条〕:680頁、第12巻〔第230条~第245条〕:504頁、第13巻〔第246条~第264条〕:930頁。

  • 西田典之・山口厚・佐伯仁志編『注釈刑法(有斐閣コンメンタール) 第1-3巻〔全3巻(予定)〕』有斐閣(第1巻 総論 §§1~72:2010年12月、第2巻 各論(1) §§77~198:2016年12月)……旧版(団藤重光責任編集『注釈刑法』全6巻)に比べ、大幅にスリム化された。理由として、(1)読者対象に法科大学院生や学部学生をも考慮に入れたこと、(2)原則として戦後の重要な判例・裁判例のみとりあげる方針としたこと、(3)判例・裁判例の引用を極力控えたこと(はしがき)、があげられている。執筆者はいずれも編者らの門下生であり、したがって、東大系結果無価値論の立場からの記述で一貫しており、立場のばらつきは少ない(ただし、執筆者間に意見の相違がある箇所もないではない。因果関係の錯誤など)。また、そのレベルは高く、最新の理論刑法学の研究成果が盛り込まれているといっても過言ではない。ただし、刑法学界を総動員して執筆された旧版に比べて量的にも内容的にも網羅性が損なわれているとの評価も少なくない。現時点で第3巻のみが未刊行。A5判、1038頁・892頁・頁。

  • 前田雅英・松本時夫・池田修・渡邉一弘・大谷直人・河村博編『条解 刑法』弘文堂(2013年10月・第3版)……実務家向けのコンパクトな注釈書。執筆者はほぼ全て実務家で占められており、条解刑訴と同じく編集委員らの合議による修正がなされているため、各執筆者の分担区分は掲記されていない。文字が大きく余白も多いため、他の条解シリーズに比べ情報量がやや少ない。A5判、912頁。

  • 浅田和茂・井田良編『新基本法コンメンタール 刑法』日本評論社(2017年9月・第2版)……第1版(2012年9月)は、刑の時効、強制執行を妨害する犯罪、サイバー犯罪に関する改正など、平成23年までの法改正に対応。第2版は、2017年通常国会で成立した性犯罪規定の改正までが反映され、第1版(2012年9月)以降の判例・学説の動きもフォローされた。B5判、688頁。

  • 伊東研祐・松宮孝明編『新・コンメンタール刑法』日本評論社(2013年3月)……『学習コンメンタール 刑法』を改題したもの(改訂版)。すなわち、シリーズ名を改めた。インターネットコンメンタールとしても提供されている。A5判、520頁。

  • 川端博・西田典之・原田國男・三浦守編集代表、大島隆明編集委員『裁判例コンメンタール刑法 第1巻・第2巻・第3巻』立花書房(第1巻:2006年7月、第2巻:2006年9月、第3巻:2006年11月)……刑法全条文の意義・要件等を下級審から上級審までの裁判例を探ることによって解説する。A5判、第1巻〔第1条~第72条〕:680頁、第2巻〔第73条~第211条〕:664頁、第3巻〔第212条~第264条〕:664頁。



【判例集・ケースブック】

〔判例集等〕

  • 山口厚・佐伯仁志編『刑法判例百選I』『同・II』有斐閣(2014年7月・第7版、2014年8月・第7版)……解説付き判例集の筆頭。百選に掲載されているということが、当該判例の重要度を示すメルクマールになるので、まずは百選から頭に入れていくのが無難と言えば無難。ただし、解説は玉石混淆(判例の解説でなく、論点解説をしているようなものも散見される)。I 総論:106件、II 各論:126件を収載。B5判、224頁・264頁。

  • 前田雅英『最新重要判例250 刑法』弘文堂(2017年2月・第11版)……264判例を収録(第10版については、252判例を、第9版については、262判例を収録)。コンパクトに多くの判例を解説している。ただし、自説に沿う形で判例を取り上げ、解釈する傾向があるので、前田の基本書を使用している人以外が使用するのはやや危険。二色刷り。B5判、296頁。(第11版については評価待ち。)

  • 西田典之・山口厚・佐伯仁志・橋爪隆『判例刑法総論』『同・各論』有斐閣(2018年3月・第7版)……こちらは解説なし、判例のみ。下級審裁判例まで網羅しており、総論・各論を合わせると収録数は1,000件を超える。西田刑法を使用するならとりわけ便利。西田刑法を利用しない場合でも、解説は一切不要だと考える学生はこちらを選択するべきだろう。山口青本(第2版)でも本書の該当番号が引用されるようになった。A5判、552頁・562頁。(第7版については、評価待ち。)

  • 山口厚『基本判例に学ぶ刑法総論』『同各論』成文堂(2010年6月、2011年10月)……重要判例を単独で解説。事案の解説のみならず、当該判例を起点に、関連する重要論点も平易に解説。A5判、316頁・340頁。

  • 山口厚『新判例から見た刑法(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2015年2月・第3版)……最近の判例を題材にした解説。山口説に立たなくても、鋭い問題意識や分析は、判例の重要性や出題可能性と相俟って一読の価値がある。A5判、386頁。

  • 井田良・城下裕二編『刑法総論判例インデックス』『刑法各論判例インデックス』商事法務(2011年9月、2016年10月)……見開き2ページで簡潔に説明している。事実関係をイラストにより図示しており、イメージを持ちやすい。というか笑える。また、解説は簡潔であるが、判プラ同様に項目ごとに執筆分担がなされているので、一貫した理解が進むと思われる。総論:160件、各論:174件を収載。A5判、338頁・400頁。

  • 大谷實編『判例講義刑法1 総論』『同・2 各論』悠々社(2014年4月・第2版、2011年4月・第2版)……大谷門下による判例集。刑法総論は、平成24年末までの29件の新判例を取り込み、合計154判例を、各論は、平成21年3月までの153判例を収録。

  • 成瀬幸典・安田拓人編『判例プラクティス刑法I』、成瀬幸典・安田拓人・島田聡一郎編『同II』信山社(2010年1月、2012年3月)……通称「判プラ」。Iは総論。IIは各論。Iの収録判例は444件、IIは543件と『判例刑法』に迫る収録件数。1ページに事案・争点・判旨・解説と盛り込み過ぎの感が。若手・中堅の学者が、特定の分野の複数の判例の解説を執筆しているので、判例理論の一貫した理解に資すると考えられる。B5判、480頁・558頁。

  • 林幹人『判例刑法』東京大学出版会(2011年9月)......著者が『判例時報』などに掲載した判例研究を項目別にまとめ直し、各項目に複数の設問を付したもの。設問は「~(判例)は、どういう事実につきどういう判断を示したか」といった事案分析型のものが中心で、著者による判例研究は設問に取り組む際の参考にして欲しいとのこと。いわゆる「ケースブック」と異なり、そのままの判決文等が掲載されていないので、判例研究や設問で指示されている(一項目につき複数の判例が指示される)判例については、別途、判例集なり裁判所HPからのダウンロードなりで入手したうえで取り組む必要がある。A5判、440頁。

  • 松原芳博編『刑法の判例 総論』、『同 各論』成文堂(2011年10月)......A5判、326頁・302頁。

  • 川端博『刑法基本判例解説』立花書房(2012年7月)......総論66件、各論90件、合計156件を収録。A5判、352頁。

  • 奥村正雄・松原久利・十河太郎・川崎友巳『判例教材刑法 Ⅰ 総論』成文堂(2013年4月)......B5判、512頁。

  • 小林憲太郎『重要判例集 刑法総論(ライブラリ 現代の法律学 JA13)』新世社(2015年6月)......小林『刑法総論』における判例情報の不足を補う趣旨で作成された判例教材。しかしながら、単体の教材としての使用も想定されている。著者によると、「できる限り客観的な説明を心がけ」ており、また「判例の数も、引用の分量も、そして解説の量もかなりスリム化されている」(はしがき)とのことであるが、いわゆる"コバケン節"は相変わらず健在である。A5判、208頁。

  • 船山泰範・清水洋雄編『刑法判例ベーシック150』法学書院(2016年3月)......A5判、336頁。

  • 高橋則夫・十河太朗編『新・判例ハンドブック刑法総論』『同各論』日本評論社(いずれも、2016年9月)......重要判例の概要・判旨・解説を1ページでコンパクトに紹介。総論203件、各論175件を収録。四六判、240頁・208頁。

  • 十河太朗・豊田兼彦・松尾誠紀・森永真綱『刑法総論判例50!(START UPシリーズ)』『刑法各論判例50!(同)』有斐閣(2016年12月、2017年12月)……刑法総論・各論をはじめて学ぶ学生に向けた判例教材。B5判、156頁・150頁。

  • ☆井田良・鈴木彰雄・髙橋直哉・只木誠・曲田統・安井哲章『刑法ポケット判例集』弘文堂(2019年3月)......刑法総論・各論の基本判例226件、概要のみのAppendix100件収録。四六判、256頁。


〔ケースブック〕

  • 岩間康夫・塩見淳・小田直樹・橋田久・髙山佳奈子・安田拓人・齊藤彰子・小島陽介『ケースブック刑法』有斐閣(2017年3月・第3版)……京大系。法科大学院の双方向型授業を想定した学習教材。設問は判例分析よりも、理論面や細かな学説を問うものが多く、司法試験対策としてはほとんど無用の長物と言ってよい。第2版(2011年4月)で総論・各論をまとめて一冊になった。第3版において、判例、設問が厳選され、大幅なコンパクト化が図られた。全20章。B5変型判、390頁。

  • 笠井治・前田雅英編『ケースブック刑法』弘文堂(2015年3月・第5版)……主に前田門下の学者らによるケースブック。全30講。A5判、594頁。

  • 町野朔・丸山雅夫・山本輝之編『ロースクール刑法総論』、『同各論』信山社(2004年4月、2004年10月)……2冊計25テーマ、計80の判例を取り扱う。B5判、160頁・156頁。

  • 山口厚編著『ケース&プロブレム刑法総論』、『同刑法各論』弘文堂(2004年12月、2006年9月)……生きた法である判例を素材にした演習書。「ケースブックとは異なり、基礎的な設問から応用的な設問へとステップをふみながら、法的思考力と事案解決能力が身につく自習も可能な演習書」とされている。全12章・11章。A5判、410頁・336頁。

  • 町野朔・堀内捷三・西田典之・前田雅英・林幹人・林美月子・山口厚『考える刑法』弘文堂(1986年10月)……A5判、384頁。


【演習書】

  • 井田良・佐伯仁志・橋爪隆・安田拓人『刑法事例演習教材』有斐閣(2014年12月・第2版)……見てのとおりの第一線執筆陣による新司を意識した中級者以上向けの長文事例問題集。本書は司法試験の種本とも言われており、試験前に必ず解いておきたいところである。独習することができる程度の解説がある(こちらの解説はマニアックではない)うえに、巻末には事項索引と判例索引までついている。第2版では新たに8つの設例が追加され、設例は合計で48個となった。そのひとつひとつに遊び心が込められており、学生を飽きさせない。なお、あてはめの問題は基本的にスルーしているので、別途補完する必要がある。また、解説のボリュームは小さく、その理論水準もかなり抑えられている(相応に高度な論点が問題に含まれているのにほとんど言及がなかったり、多少匂わせるに留まったりする)ので、要注意である。B5変型判、270頁。

  • 島田聡一郎・小林憲太郎『事例から刑法を考える(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2014年4月・第3版)……法教連載を書籍化した事例問題集。問題文は長めだが、司法試験ほどではない。答案作成を意識した実戦的なアドバイスも豊富に盛り込まれている。設問もよく練られており、司法試験対策の演習書としての完成度は非常に高い。ただし、司法試験のレベルを優に超えた問題もあるなど難易度は非常に高く、使用者の実力によっては消化不良に陥る可能性がある。また、解説が非常にマニアックになってしまっている箇所もある。なお、第3版の改訂作業は、島田の急逝以後は小林のみによって行われた。A5判、518頁。

  • 井田良・田口守一・植村立郎・河村博編著『事例研究 刑事法Ⅰ 刑法』日本評論社(2015年7月・第2版)……現役の裁判官・検察官を中心とした執筆陣が事例問題を解説。設問の数は総論8問・各論9問と少なめで、論点を網羅することはできないが、各設問末尾の関連問題まで潰せば、重要論点については広範囲をカバーすることができる。主要な判例・学説の対立のみならず、先例的価値の大きな判例については、それが掲げる具体的な考慮要素にも多く言及がなされている。実務家の解説が多いこともあり、あてはめを鍛えるのにも有用。A5判、460頁。

  • 大塚裕史『ロースクール演習刑法』法学書院(2013年6月・第2版)……受験新報の誌上答練を書籍化したもの。司法試験を意識した長文事例問題集。もっとも、問題文の長さ自体は本番ほどではない。解説は答案作成も意識した丁寧なものであり、刑法の基礎的な力を鍛えるのに有用。ただし、論点相互が絡み合うような捻りのきいた問題は少なく、論点を足し合わせた、もっぱらボリュームで勝負してくる問題が多い。また、問題文に曖昧な表現が散見される点、一部解説に論点落としがある点、出題内容に偏りがあり網羅的でない点といった難点がある。A5判、408頁。

  • 只木誠編著『刑法演習ノート―刑法を楽しむ21問』弘文堂(2017年3月・第2版)……現役の考査委員・元最高裁調査官など豪華な執筆陣による全21問から成る新司法試験向けの長文事例問題集。本書が他の演習書と大きく異なるのは、全ての問題に司法試験合格者が書き下ろした実践的な解答例が付されている点である。ただし、合格者書き下ろしの解答は、学者による解説と必ずしも一致していない部分もあるので注意が必要である。あくまで参考答案の一つと捉えるのが適当であろう。A5判、448頁。

  • 佐久間修・高橋則夫・松澤伸・安田拓人『Law Practice 刑法』商事法務(2017年10月・第3版)……刑法総論・各論の全範囲から基本的な問題を60問ほど。問題はいずれも事例問題ではあるが、事案の分析・処理が求められるようなものではなく、実質的に1行問題に近いものも散見される。はしがきにあるとおり、学部~ロースクール1年生向け。A5判、344頁。

  • 大塚仁・佐藤文哉編『新実例刑法〔総論〕』青林書院(2001年2月)……刑法の論点本。すべて実務家(ほとんどは現職の刑事裁判官30名)が執筆している。イメージ的には、論点ごとの重要判例の調査官解説をほどよく要約したようなもの。したがって、必ずしも斬新な議論が紹介されている訳ではないが、団藤・大塚らの伝統的行為無価値論とは親和性が高いので、これらの本を使用する者であれば、参考書として座右に置くのも良いだろう。編者が交代した下掲の新版が出たものの、設問によってはいまだに使える。A5判、460頁。

  • 池田修・杉田宗久編『新実例刑法〔総論〕 刑法理論と実務を架橋する実例33問』青林書院(2014年12月)……上掲『新実例刑法総論』の「設問や執筆者を変え〔替え〕、近時の学説・判例を踏まえた内容に改めた全面的な新版」(はしがき)である。「裁判員制度による影響とその可能性について意識したため、執筆者は裁判員裁判を担当した経験のある、実務経験十数年以上の裁判官」(はしがき)が執筆している。旧版と比べて新たな学説への目配りが効いているが、特定の学説に偏ることなく判例・裁判例を尊重しつつ手堅く解説しており、その姿勢は答案作成上参考になるだろう。裁判員裁判を踏まえてどのように裁判員に説示すべきかを論じているのも特徴のひとつ。とりわけ、最新判例をフォローした、正当防衛関連(5問)、共謀共同正犯の成否、承継的共犯などは必読である。A5判、500頁。(目次及び設問

  • 池田修・金山薫編『新実例刑法〔各論〕』青林書院(2011年6月、2014年12月2刷にてその後の法改正について補注を付している。)……法科大学院を意識して、総論よりも事例はやや長め。こちらもすべて実務家(ほとんどが現職の刑事裁判官36名)が執筆している。百選改訂の折には新たに選出されることが予想される、直近の重要な最高裁判例をモデルにした事例(全36項目)が並んでおり、できる限り目を通しておきたい。A5判、500頁。

  • 前田雅英『司法試験論文過去問LIVE解説講義本 前田雅英刑法(新Professorシリーズ)』辰已法律研究所(2016年2月・改訂版)……司法試験論文本試験解説書。平成18年から平成27年までの問題について、「模範答案」1通と、「再現答案」2通を使いながら解説。A5判、294頁。

  • 松宮孝明編『判例刑法演習』法律文化社(2015年3月)……刑法総論と各論を有機的に結びつけ、応用できることを目標とした演習書。まず、判例の事案と判旨が示され、次に当該判例において問題となる論点を検討し、最後に判例の射程を検討するという形式となっており、書名のとおり、判例の内在的理解に重きを置いた内容となっている。執筆者は、松宮、安達光治、野澤充、玄守道、大下英希の5名。A5判、346頁。

  • 田中康郎監修、江見健一編集代表『刑事実体法演習 理論と実務の架橋のための15講』立花書房(2015年11月)……司法試験の刑事系科目である刑法(総論・各論)に関する主要なテーマについて、現役の刑事裁判官が、理論と実務の架橋をめざして学説と判例の接点を分かりやすく解説した演習書(はしがき)。「捜査法演習」・「刑事公判法演習」の姉妹書である。刑法の修学と題した序説では、司法試験の採点実感等を掲げて刑法学修のポイントを示す。問題は全15講。いずれも長文の事例問題に、解説を付すスタイル(答案例は付されていない)。「実務と学説の双方に通じた裁判官の事案解決型の思考過程を追体験」(はしがき)することができる。特徴は、犯罪事実記載例を掲げていること。A5判、560頁。

  • 木村光江『演習刑法』東京大学出版会(2016年3月・第2版)……全23問からなる長文事例問題集。全問に答案例が付されている。著者が前田門下ということもあり、前田の基本書との相性が良い。サンプルあり→サンプル1サンプル2。A5判、480頁。

  • 安田拓人・島田聡一郎・和田俊憲『ひとりで学ぶ刑法』有斐閣(2015年12月)……3段階に分類された問題群(Stage 1 Schüler(概念と論点を正確に理解する):全20問、Stage 2 Sänger(事例問題を解く基礎的な力を身につける):全11問、Stage 3 Meister(複雑な事例を解く):全3問 )からなる演習書。A5判、422頁。

  • 井田良・丸山雅夫『ケーススタディ刑法』日本評論社(2015年2月・第4版)……刑法総論について、全32章。丸山は町野門下。A5判、424頁。

  • 町野朔・丸山雅夫・山本輝之編『プロセス演習 刑法〔総論・各論〕(プロセスシリーズ)』信山社(2009年4月)……全24章。B5判、362頁。

  • 植村立郎監修『設題解説 刑法(二)』法曹会(2014年11月)……刑法総論の重要テーマを含む短文の事例問題(全30問)につき裁判官(裁判所職員総合研修所の教官?)が解説し、これに監修者の植村が辛口の【補論】を付すスタイル。設問の前に、いきなり当該設問において問題となる論点が一通り示されているため、論点抽出能力は全く養われない。裁判官が執筆しているため、概ね判例に沿った解説で信頼できる。なお、因果関係は相当因果関係説の立場から解説がなされている。雑誌『法曹』連載を単行本化したもので、題名に(二)とあるが本巻のみで総論の主要論点はカバーされている。全30章。新書判、536頁。なお、(一)は絶版の模様。

  • 佐久間修『新演習講義刑法』法学書院(2009年8月)……旧試対策問題集だった旧著『演習講義 刑法総論』法学書院(1998年5月)及び『同 刑法各論』法学書院(1997年10月)の改訂版。問題は旧試をイメージしたものであるが微妙にズレたものが多い。さらに、解説は難解なうえに、問題から離れた派生論点についての説明を延々と続けたり、少数説よりの自説の主張に終始したりしている面もあり、使い勝手は悪い。A5判、368頁。

  • 船山泰範『司法試験論文本試験過去問 刑法』辰已法律研究所(2004年5月・新版補訂版)……旧司法試験の過去問集。船山教授の解説講義を書籍化。問題解説、受験生答案検討、教授監修答案からなる。平成1-15年度の問題30問、昭和の問題13問の全43問。絶版だったがオンデマンドで復刊された。少数説が多い。

  • 川端博『事例式演習教室 刑法』勁草書房(2009年6月・第2版)……初版(1987年5月)から22年ぶりに全面改訂された総論・各論全45問からなる短文問題集。元々が旧司500人時代に出版されたものであることから、「事例式」と銘打ちながらも事例は短いうえに、一行問題も混ざっているなど、問題形式がかなり旧司チックな演習書となっている。論点整理には有益。縦書き。現在、出版社品切れ。A5判、328頁。

  • 甲斐克則編『刑法実践演習』法律文化社(2015年10月)……第I部から第III部までの構成のうち、第I部は精選された計24件(総論12件、各論12件)の最新重要判例の解説、第II部・第III部は司法試験の過去問(論文・択一)の解説となっている。第II部・第III部については、「司法試験問題(論文・択一)を徹底的に解剖」と謳っている割には、論文問題の解説はお世辞にも徹底的になされているとは言えず、択一問題に至っては体系順に問題が並べられているだけで、解説がほぼ皆無なうえに取り上げられている問題も少なすぎるなど、謳い文句からは程遠い中途半端な内容となっており、完成度は極めて低いと評さざるを得ない。A5判、328頁。

  • 斉藤誠二・船山泰範編『演習ノート刑法総論』法学書院(2013年4月・第5版)……全100講。A5判、276頁。

  • 岡野光雄編『演習ノート刑法各論』法学書院(2008年7月・第4版)……全110講。A5判、240頁。

  • 藤木英雄『刑法演習講座』立花書房(1984年1月)……藤木説を理解するためには必読の演習書。出版社在庫なし。

  • 石川才顯・ 船山泰範編『刑法1 総論(司法試験シリーズ )』、『刑法2 各論(同 )』日本評論社(1993年12月・第3版、1994年1月・第3版)……B5判、頁・頁。

  • 福田平・大塚仁『基礎演習刑法(基礎演習シリーズ)』有斐閣(1999年8月・新版)……総論・各論あわせて66問。出版社在庫なし。四六判、308頁。


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