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商店街繁盛記・番外編」(2008/09/05 (金) 02:47:38) の最新版変更点

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<div style="line-height:2em;" align="left"> <p>商店街繁盛記・番外編<br /> ゆうき いさむ<br /><br />  鈴は釣りが好きだった。<br />  どうしょうもないくらい。<br />  まいにち釣りをした。<br />  まいにち走り回った。</p> <p> 大好きなモロモロをいっぱい食べた。<br />  鈴木の爺さんは一人でたたずんでいた僕に「道具」をくれた。<br />  そう、モロモロと心を通わせる道具だ。<br />  彼らの声が聞こえるわけではない。<br />  聞こえるのかもしれないけど、悲鳴は上げていないよ。多分。</p> <p><br /> 「じっちゃん!」<br />  僕が麦藁帽子をかぶって上を見上げる。<br />  じっちゃんは目を見てくれた。<br />  瞳が僕を迎えてくれる。</p> <p><br />  朝霧に隠れた水面の地には糸が吸い込まれていく。<br /> …… ぴしゃん、竹竿が揺れた。<br />  境界には波紋ができた。</p> <p><br />  トントントントン、ネギを刻む軽快な音。<br />  そう、ここは「霧生ヶ谷蕎麦・水路」さっそく今日の仕入れを済ました俺は、相棒のすり身のテクを横目に見ながら、目を半分閉じていた。<br />  そう、半分。<br />  見えない半分は違うものを見ていた。<br /> 「モロットモンスター♪」<br />  えーと、この時間にアニメ?<br />  jyzkajyzkaと流れる歌を背中ごしに聞いた。<br />  俺は苦笑して作業を続ける。<br />  志穂さんの顔から流れる汗は、美人を引き立てる。<br />  大学まで行ってるからこそ切り盛りできるのだろう。 <br />  刹那、白い女性を見た気がして目を細めてみた。</p> <p>「シロ、クロ、ネコ鍋~♪」<br />  その声に目の前の霧は霧散した。<br />  タックルでもしそうなパワーで飛び込んできた赤みがかった髪の少年。</p> <p> 薄目を閉じた俺にそいつは話しかけてきた。<br /> 「おそば作るといたくない?」<br /> と、少年は言った。<br /> 「いや、いたいよ?」<br /> 「怪我したの?」<br /> 「いや、怪我していないよ?」</p> <p> あ、しまった。イントネーションが違うのか。<br />  霧生ヶ谷に戻ってきてからの俺は、視力が悪い。<br />  見えたものが見えなくなってきている。<br /> 「兄ちゃん、モロットモンスター、最後まで見た?」<br /> 「いや、今日最終回か?」</p> <p> シロがこちらを見ている。<br />  先程やってきた二匹のネコ=クロ、シロ、は、いつの間にか増えていた。<br />  おれも増えたんだな。</p> <p> 息を吸って、深呼吸! 笑って笑って!<br /> 「ここは店の裏だぞぉ、子供の来るところじゃないぞ!」<br />  手を伸ばすと、俺は赤毛をくっちゃくちゃにした。<br />  ネコと目が合った、クロとシロへまかない様のお椀へ手の伸ばすと、<br />  そーと二匹は舐めている。<br /> 「あ、バス来ちゃう! 俺、大樹、初めまして!」<br />  駆け出す少年に、「おぅ、鈴だ! 北霧 鈴だ!」</p> <p> 勉強ばっかじゃ息が詰まる! 暇なときはマンガでも読もう!<br />  しかし、「モロットモンスター」って、ヌシモロ捕まえて帰ってくる話だろ?<br />  あの笑顔を見てると、子供に触れてよかったな、って思うよ。<br /><br /><a href="http://bbs15.aimix-z.com/mtpt.cgi?room=kansou&amp;mode=view&amp;no=151">感想BBSへ</a></p> </div>
<div style="line-height:2em;" align="left"> <p>商店街繁盛記・番外編<br /> ゆうき いさむ<br /><br />  鈴は釣りが好きだった。<br />  どうしょうもないくらい。<br />  まいにち釣りをした。<br />  まいにち走り回った。</p> <p> 大好きなモロモロをいっぱい食べた。<br />  鈴木の爺さんは一人でたたずんでいた僕に「道具」をくれた。<br />  そう、モロモロと心を通わせる道具だ。<br />  彼らの声が聞こえるわけではない。<br />  聞こえるのかもしれないけど、悲鳴は上げていないよ。多分。</p> <p><br /> 「じっちゃん!」<br />  僕が麦藁帽子をかぶって上を見上げる。<br />  じっちゃんは目を見てくれた。<br />  瞳が僕を迎えてくれる。</p> <p><br />  朝霧に隠れた水面の地には糸が吸い込まれていく。<br /> …… ぴしゃん、竹竿が揺れた。<br />  境界には波紋ができた。</p> <p><br />  トントントントン、ネギを刻む軽快な音。<br />  そう、ここは「霧生ヶ谷蕎麦・水路」さっそく今日の仕入れを済ました俺は、相棒のすり身のテクを横目に見ながら、目を半分閉じていた。<br />  そう、半分。<br />  見えない半分は違うものを見ていた。<br /> 「モロットモンスター♪」<br />  えーと、この時間にアニメ?<br />  jyzkajyzkaと流れる歌を背中ごしに聞いた。<br />  俺は苦笑して作業を続ける。<br />  志穂さんの顔から流れる汗は、美人を引き立てる。<br />  大学まで行ってるからこそ切り盛りできるのだろう。 <br />  刹那、白い女性を見た気がして目を細めてみた。</p> <p>「シロ、クロ、ネコ鍋~♪」<br />  その声に目の前の霧は霧散した。<br />  タックルでもしそうなパワーで飛び込んできた赤みがかった髪の少年。</p> <p> 薄目を閉じた俺にそいつは話しかけてきた。<br /> 「おそば作るといたくない?」<br /> と、少年は言った。<br /> 「いや、いたいよ?」<br /> 「怪我したの?」<br /> 「いや、怪我していないよ?」</p> <p> あ、しまった。イントネーションが違うのか。<br />  霧生ヶ谷に戻ってきてからの俺は、視力が悪い。<br />  見えたものが見えなくなってきている。<br />  ま、視力を測ると1.0以上あるよ。<br /> 「兄ちゃん、モロットモンスター、最後まで見た?」<br /> 「いや、今日最終回か?」</p> <p> シロがこちらを見ている。<br />  先程やってきた二匹のネコ=クロ、シロ、は、いつの間にか増えていた。<br />  おれも増えたんだな。</p> <p> 息を吸って、深呼吸! 笑って笑って!<br /> 「ここは店の裏だぞぉ、子供の来るところじゃないぞ!」<br />  手を伸ばすと、俺は赤毛をくっちゃくちゃにした。<br />  ネコと目が合った、クロとシロへまかない様のお椀へ手の伸ばすと、<br />  そーと二匹は舐めている。<br /> 「あ、バス来ちゃう! 俺、大樹、初めまして!」<br />  駆け出す少年に、「おぅ、鈴だ! 北霧 鈴だ!」</p> <p> 勉強ばっかじゃ息が詰まる! 暇なときはマンガでも読もう!<br />  しかし、「モロットモンスター」って、ヌシモロ捕まえて帰ってくる話だろ?<br />  あの笑顔を見てると、子供に触れてよかったな、って思うよ。<br /><br /><a href="http://bbs15.aimix-z.com/mtpt.cgi?room=kansou&amp;mode=view&amp;no=151">感想BBSへ</a></p> </div>

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