メニュー
人気記事
「これはMR-49MORONだと思います」
アラトは真霧間邸リビングでコタツに入りながらプラモデルを前にうんうんと唸っていた。
「ちーがーうー」
キリコは「コアフレームの削りが甘いなー」などと言いながらやすりを手にアラトの答えを一蹴する。
二人は霧生ヶ谷ケーブルテレビ局で絶賛放送中の「超時空機動要塞戦士モロダムロス」のプラモデル、通称「モロプラ」を製作していた。
「惜しいけど違う。それってMR-49MORONビッグマウスよ。水転写デカールで貼り付けたでっかい口が分かんないの?」
「……」何が違うのか。シールか。シールが違うのか。アラトには分からない。そもそも超時空機動要塞戦士モロダムロスという名前自体が胡散臭すぎる。胡散臭いが覚えねばキリコが協力拒否をちらつかせる。すぐに「課長さんに言ってやろう~」とゆするキリコに未だ抗えない。そんな自分に不甲斐なさを感じるが、敵の力は圧倒的なのだ……。
「それはそうと、一年経ちましたね」
アラトとキリコが出会ってから一年が過ぎた。その間に色んな不思議に出くわし、驚き、そして魅入ってしまった。出会った人々はみな誰もがユニークで、エキサイティングなものだった。
「何をもって一年とするの? アラト君」
「え?」
「今年は閏年。三百六十六日あるのよ。去年は三百六十五日。閏年は約四年に一度、ということは次の閏年を迎えてこそ一年が過ぎたと言えるんじゃないの?」
「そんな……よしんば三百六十六日の年があったとしても最低三百六十六日過ぎれば一年とカウントすべきですよ。暦もちゃんと変わってるんですから!」
「変なとこでフレキシブルよね、律儀なやつー」
相変わらずMORONのトラスフレームを新円に近づけるべくやすり続けるキリコが答える。
「それはそうと、私、今度、皇宮学園都市に出張するの。アラト君も来ない?」
スメラギノミヤガクエントシ。霧生ヶ谷に似て異なる場所。明治以降の発展は目を見張るものがある。アラトはもちろん知っていた。
「遠慮しときますよ。どうせろくな目に会わないんだから」
「あ、そー」
キリコは大して何事も無かったかのように受け流したが、一瞬の双眸に宿った煌きをアラトは見逃さなかった。そして、その煌きの顛末をこの後アラトは身を持って知ることになるが、それはまた別のお話。
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。