シェアワールド@霧生ヶ谷市企画部考案課

セカキュー日誌(其の6)

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
タイトル:「カマキラス再び」

好きこそ物の上手なれ、とはよく言ったもので、ミュウの頑張りようにはひたすら頭が下がる思いだ。
満を持して僕ら「キリコのたて」メンバーは再び第三階層の地にその足跡を記した。
相変わらず、触れただけで切れそうな殺気である。
でも、緊張感の欠片もない場違いなミュウの鼻歌が不思議と僕らの緊張をほぐしてくれている。
やれる。いや、カマキラス……全てを刈る影……だけを倒すために僕らは研鑽を積んできたのだ。
「ねぇねぇ、死んじゃったらどうなるの?」
ミュウが聞いてくる。ミュウはギルドに参加してから一度も死を経験したことがない。
「アクマロが担いでる奴に仲間の身体を放り込んでケフト施薬院」まで持ってかえって「治療」してもらうよ~」
キリコが、アクマロが引っ張っている四個の棺おけを指差す。四個というのはつまり誰かが生き残っていたらの話で、全滅したら棺おけなど必要ですらない。
「全員死んじゃったらどうなるわけ?」
「宿帳に記載した日時までの世界樹磁軸の力で時空間が保存されていて、その日まで時が遡る。便利よねー」
「ふーん。ロストしたり、リビングデッドになっちゃう心配だけはないみたいね。良かったわ」
ゲームのようにリセットしたら生き返る、こういう考えが蔓延してあっさり殺人を犯す若者が増えていると聞く。こんなのは都市伝説にもならない。人は死ねばすべからく死ぬのだ。
とはいえ、エトリアのこの地に立つ僕らは僕らであって僕らではない。アバター(化身)みたいなものだ。どういう仕掛けかは分からない。それは最下層へ潜ってみれば分かるような気がしている。

ひゅんひゅん。
ひゅんひゅん。

もはや、耳奥にこびりついて離れない。恐怖の権現が近くにいる音だ。僕らは世界樹地図を確認して背後に回りこみ、
「みんな、行くよっ!」キリコが号令を挙げた。
「よーし、行くぜーLet's Fire!」
……嗚呼、僕もつい洗脳されてしまったらしい。僕、アラトが先頭を走り、防御陣形を敷く。
被弾の分散を考え、前衛に立ったアクマロが医療防御を発動させ、ミュウがアニソンの節回しに乗せた、聖なる守護の舞曲を奏ではじめた。
キリコが雷撃の術式を立ち上げようとしている。
アンジェーが無言でレザーウィップをしならせ、全てを刈る影の両鎌を縛りあげる。
特訓を重ねたアームボンテージが一度で決まった!
全てを刈る影はアンジェーのアームボンテージを振り切ったまではよかったが、もはや一撃必殺の大鎌斬は発動できない。それでもその一撃は脅威で、体当たりされたアンジェーが吹き飛び宙を舞った。それでもバランスをとりヒラリと地に降り立つ。あちこち傷だらけだが致命傷を負ってはいない。すかさずアクマロがキュアⅡをアンジェーにかけ、全回復させる。
キリコが雷撃の術式を放つ。全てを刈る影の風斬り音をあっさりと掻き消す轟音が地に響く。電光が幾筋も放射され、大気を振動させる。全てを刈る影の外骨格の境目から内腑を焼く厭なにおいとともに煙が立ち昇る。
舞台は回る。
ミュウの火劇の序曲が僕のファングダガーに宿る。いや、僕の身体が灼熱し、剣先にその律動を伝えているのだ!
「カマキラス! 俺の歌を聴きやがれ~っ!」
嗚呼、気持ちいい。僕は高揚感の中、剣を振るった。前回はいとも容易く弾き返された刃が、今度は容易く突き通る。
隣ではアンジェーが足封じのレッグボンテージを決めていた。このままヘッドボンテージすら決まれば、或はエクスタシーが見られるかもしれない。
後列で術式を唱えていたキリコが鎌の一撃でなぎ倒される。それでも術式は続いている。各種の防御対策が功を奏しているのだ。
「こぉんのぉ恨みぃ晴らさでおくべきかーっ!!」
キリコが再度、雷撃の術式を発動させた。その時、すでに全てを刈る影はアクマロのボーンメイスやミュウのショートボウの的になっていた。
そして……。

「あー、もうTPすっからかんよぉ」
キリコが愚痴をこぼす。こぼしながらげしげしとリーフサンダルの爪先で「ソレ」に蹴りを加えている。
「あー、グロな場面あると思ったのになかったわぁ~」
ミュウが怖いことを言っている。グロって僕らの死体をご希望なのですか……。
実はこの時、アクマロの様子がどうもおかしかったのだが、誰一人戦勝の高揚感の中気付くものは無かった。後日一騒動があるのだが、それはまた別のお話。

さて、全ての刈る影にリベンジを果たし意気揚々と歩を進める。第三階層入り口の部屋はやたらと広く、慎重にマップを埋めていく。f.o.e.さえ倒してしまえばのどかなもので、僕らもゆるゆると緩んでいった。そして、隣の空間への扉をこじ開け奥に進む。
途端。
世界樹地図の一角に見慣れた禍禍しい点が浮かび上がり闊歩し始めた。
そう、全てを刈る影は一匹ではなかったのだ……

(続く)

ギルド「キリコのたて」
(前衛)
パラディン:アラト:LV16
ダークハンター:アンジェー:LV16
メディック:アクマロ:LV15
(後衛)
アルケミスト:キリコ:LV16
バード:ミュウ:LV15

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー