シェアワールド@霧生ヶ谷市企画部考案課

その参

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闇鍋三昧 その参

「も、申し上げます!」
 寒風吹きすさぶ陣屋に、今しも駆け込んできた伝令は泥まみれ、汗まみれでひざまずいた。その背中につけたのぼり旗の家紋は西川家のもの。伝令は息も絶え絶えに続けた。
「正元原に展開しております我が方に対し、敵方の火矢攻め激しく、大将西川常沖・・・無念の討ち死にを成されました・・・」
 後半は嗚咽が混じり、言葉にならなかった。伝令の言葉をまぶたを閉じてじっと聞いていた蒲生忠興はきつとまなこを開くと陣屋に詰めかけた将軍たちに向かい大音にて言った。
「正元原が落ちたということは、程なくして敵勢はこの本陣までおよぶであろう。おのおの方!これが、最後の戦となる!我らが霧生ヶ谷武士の誇り、見せてくれようぞ!」
 うおぉ!と、居並ぶ将軍たちが声をあげ、すぐさま決戦に備えて各陣営に戻っていった。
 さて、一人本陣に残った蒲生忠興は沈思黙考。これより攻め来る敵の大軍といかに対するべきかと思案を巡らせていた。と、そこへ・・・
「忠興様・・・忠興様はおられましょうや?」
 見れば一人の女がふらふらと陣屋に倒れこんでくるところであった。忠興はすぐさまそれをしかと抱きとめる。女は忠興の部下であり、忠興が唯一心を許す人物でもあった。
「秋津。お主、病の身でありながらこのようなところへ出てくるものではない!」
「しかし、病の床にありますときも、忠興様がお苦しみになっている姿が目に浮かび、秋津は、いてもたってもおられぬのでございます」
「何を馬鹿な。わしが苦しんでいるだと?確かに、此度の戦では少しばかり手を焼いてはいるが、何、すぐに盛り返して見せるわ。この忠興とて、蒲生の大困り者と呼ばれた男。これしきの戦で死ぬるわけにはいかぬのよ!」
「ああ、忠興様。本来ならば忠興様を一番に信頼せねばならぬこの私としたことが、とんだ醜態をお見せしてしまいました」
「ふふ。まあよいわ。ちと火に当たって休むが良い。おぬしが体を温めるうちに敵方を蹴散らしてまいるからな」
「わかりました。私は、あなた様を信じて、お待ちしております」
「うむ。秋津、この戦が片付けば、霧生ヶ谷は名実共にわしのものとなる。ここからわしの天下取りがはじまるのじゃ。」
「はい、忠興様!天下を、お取りなさいませ!秋津はどこまでもお供いたしまする」
「うむ。では行ってまいる」
 忠興は秋津を本陣に残し、駿馬にまたがって戦場へと向かった。だが、秋津が忠興の姿を見たのは、これが最後だったのである。
 忠興と秋津が言葉を交わしてからわずか半刻後、忠興は敵陣深く斬り込んだ上に周囲を囲まれ、壮絶なる最後を迎える。
 後に「霧生ヶ谷の合戦」と呼ばれたこの戦において、蒲生連合側の死者一万二千人、負傷者一万八千人、木武家側、潰れた漬物二百万トンという、壮絶なものであった。
 この戦に勝利した木武家は、霧生ヶ谷を足がかりに、天下統一へと躍進するのである。



 もうもうと立ち上るたばこの煙を破り、A4サイズの紙の束が宙を舞った。
「ぅおい!もうちょっとマシな企画はあげられねえのか!?」
「だ、駄目っすか!?これ・・・人間と漬物が織り成す壮絶な歴史大河ドラマ「キムチ萌ゆる」」
「アホか!なんでキムチなんだよ!なんで萌えるんだよ!」

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