第170回国会 法務委員会 第4号
平成二十年十一月二十五日(火曜日)
   午後一時開会
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   委員の異動
 十一月二十日
    辞任         補欠選任
     白  眞勲君     小川 敏夫君
 十一月二十五日
    辞任         補欠選任
     山崎 正昭君     西田 昌司君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         澤  雄二君
    理 事
                千葉 景子君
                松岡  徹君
                松村 龍二君
                木庭健太郎君
    委 員
                小川 敏夫君
                今野  東君
                鈴木  寛君
                前川 清成君
                松浦 大悟君
                松野 信夫君
                青木 幹雄君
                秋元  司君
                西田 昌司君
                丸山 和也君
                仁比 聡平君
                近藤 正道君
   国務大臣
       法務大臣     森  英介君
   副大臣
       法務副大臣    佐藤 剛男君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  早川 忠孝君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山口 一夫君
   政府参考人
       法務大臣官房司
       法法制部長    深山 卓也君
       法務省民事局長  倉吉  敬君
       法務省刑事局長  大野恒太郎君
       法務省入国管理
       局長       西川 克行君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○国籍法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
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○委員長(澤雄二君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告をいたします。
 去る二十日、白眞勲君が委員を辞任されまして、その補欠として小川敏夫君が選任されました。
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○委員長(澤雄二君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国籍法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に法務大臣官房司法法制部長深山卓也君、法務省民事局長倉吉敬君、法務省刑事局長大野恒太郎君及び法務省入国管理局長西川克行君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(澤雄二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(澤雄二君) 国籍法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○千葉景子君 民主党の千葉景子でございます。
 今日は午後の開会ということになりまして、食事の後、少し何となくぼんやりしている部分もあるかもしれませんけれども、大変重要な中身でございますので、よろしくお願いをしたいというふうに思っております。
 非常に今日は限られた時間でそれぞれの質疑ということになりますので、私も細かいところはなかなかお尋ねすることができるかどうか分かりません。また追って同僚議員がまた別途の機会にお尋ねをするということになろうと思いますので、少し大きな焦点に絞りまして質疑をさせていただきたいというふうに思っております。
 さて、まずこの国籍法の改正でございますけれども、基本的には最高裁の判決を受けての改正ということになるのだろうというふうに認識をさせていただいております。この最高裁判決は、私は大変大きな意味のある判決だったなという気がいたします。幾つかのポイントがあろうというふうに思いますけれども、やはり今の国際的な潮流といいましょうか動向、こういうものを踏まえ、そしてまた、日本における家族のありようといいましょうか、そういう今の実情ですね、家族関係の変容、こういうところに思いを致し、そして、何よりも子供の権利を保障する、子供の保護というところにも温かい気配りをすると、こういう大変中身のある最高裁判決であったというふうに私は受け止めております。
 それだけに、こういうものを受けて、違憲だというその判断を受けてこの国籍法が改正をされるということについて、私は積極的に賛成の立場でございますし、一刻も早い改正によって子供たちが本当に安心して生活することができるような、そういう環境が整えられればと、こんなことを願っているところでございます。
 私の認識とすれば概略簡単に言うとそういうことになるんですけれども、この国籍法の改正に至る経緯、これについては法務大臣としてもどのように受け止めておられるのでしょうか、まずそこをお聞きをしたいというふうに思います。
○国務大臣(森英介君) 今委員から御指摘がありましたとおり、本年六月四日に、最高裁判所大法廷判決において、国籍法第三条第一項は違憲であるとの判断が示されたところです。この判断を受けまして、国籍法を所管する法務省では、国籍法第三条第一項が憲法に適合する内容となるように改正法案の立案作業を進めてまいりました。
 本法律案は、出生した後に日本国民である父から認知された子について、父母が婚姻をしていない場合にも届出による日本国籍の取得を可能とすること及び必要な法整備をすることを内容とするものとして立案されたものでありまして、平成二十年十一月四日の閣議決定を経て、国籍法の一部を改正する法律案として第百七十回国会に提出されるに至ったものでございます。
 最高裁判所判決の御判断は厳粛に受け止め、最大限尊重しなければならないと考えておりまして、その趣旨を踏まえまして、慎重な御審議を経て、しかし速やかに法改正を要するものと考えております。
○千葉景子君 最高裁判決を受けて法務省におかれましても決断をなさったということは私は了としたいというふうに思いますけれども、やはり国会、私どももそうでございますし、それから法務省におかれましても、いろいろ最高裁判決なりで違憲の判断が出たということを待つのではなくして、いろんな課題につきましてやはり今の国際的な状況やあるいは家族のありよう、そして子供の権利の保護、こういうことも踏まえつつ、いろんな角度から今問題を検討していただくと、こういうことが必要なのではないかというふうに思っておりますので、今回のこの改正はスピーディーに提案をいただいたことに私も歓迎をさせていただくと同時に、今後もいろいろな課題につきましてより一層検討を進めていただくことをお願いをしておきたいというふうに思います。
 そこで、今回の法の内容につきましては今日は詳細にお聞きいたしませんけれども、ちょっと具体的な手続につきまして確認をさせていただきたいというふうに思っております。
 まず、この手続は、市町村の窓口に認知の届出をし、その後法務局に国籍の取得の届けをするという形になるわけでございます。この都道府県の窓口の手続、それから国籍取得の法務局の窓口の手続、これについて、例えばちょっと私が聞くところによりますと、外国人の母親、その母国で証明が出ないような資料を求めたりするケースがないとも限らない、この間の実務で、そういうことが言われておるんですけれども、そういうことがありますと、せっかくこういう子供についても保護を厚くする制度ができましてもこれが十分に機能しないということにもなりかねません。そういう意味で、ちょっとこの窓口の手続の扱いにつきまして御説明をいただいておきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) 御質問の趣旨は、外国人の母親であるということで、母国の証明が出ない場合を中心にと思いますが、全体的な手続についてということですので、若干その点を補足して申し上げたいと思います。
 まず、市区町村役場の手続でございますが、任意認知の届出が市区町村役場に出ます。そうすると、市区町村の役場では戸籍の届書、添付書面及び市区町村役場が保管しております戸籍によりまして要件を備えているか否かの審査を行うということになります。その届出が虚偽ではないかと疑うに足りる合理的な理由がある場合、この場合には市区町村から法務局への受理照会をさせまして、法務局においてその届書の添付書類又は関係者等の調査などの実態調査を行いまして、そうした方法により慎重にその受否を決定しているところであります。
 また、本年五月一日から施行された改正戸籍法によりまして、認知届書を市区町村役場に持参した者に対し本人確認を行うこととされました。そして、認知者以外の者が持参した場合又は届出人について本人確認ができなかった場合には通知されるということになりましたので、このことで戸籍の真実性を担保するための方策が講じられているところでございます。
 御質問の日本人男性が外国人女性の嫡出でない子を認知される場合は、嫡出でない子であるということを戸籍によって審査することができないものですから、原則として母の本国の官憲が発行した独身証明書等をもって審査を行っております。外国人母の本国が公的証明が出せない場合についてはもちろん個別の対応となるわけでありまして、例えば母親から独身証明書を出せない理由及び子供が嫡出でない子であるという旨を明らかにした申述書、これを書いてもらうわけですが、そういったものを出してもらうようにお願いをいたしまして、その上で当該認知届の受否を総合的に判断しているところでございます。
 法務局等の手続はよろしいでしょうか。
○千葉景子君 今お聞きをいたしますと、市区町村の窓口におきましては従来と特段の手続の変更はないというふうに受け止めさせていただきますし、それから法務局においても、本国の証明が出ないようなケースにおいては、それによって届けを拒否するのではなくして、他の手法を用いてその確認を行うというふうな取扱いだというふうに受け止めさせていただきたいというふうに思っております。是非スムーズな手続が取れますようにきちっとした共通な条件をつくっていただきたいというふうに思います。
 さて、今回の国籍法というか最高裁判例、これの根底に流れている考え方を見ますと、言わば結婚の有無を問わず子供に認知があることによって国籍を付与するということになるわけで、そういう意味では、いわゆる嫡出、非嫡出、この区別を、差別といいましょうか、取っ払ったと言っても私は過言ではないんだろうというふうに思っております。子供にとっては嫡出かあるいは非嫡かということは責任のないところでもありまして、そういう意味ではこういう形が取れたということは大変私は歓迎すべきところだというふうに思っております。
 ただ、そうなりますと、この間、いわゆる婚外子、非嫡出子に対するいろいろな課題が残されておりまして、そういう意味では、こういう最高裁判例を踏まえたときに、是非、残された課題についてもむしろ積極的に検討する時期が来ているのではないか、こう思います。
 その一つがいわゆる婚外子の相続差別でございます。これは、御承知のとおり、国際的にも、国際機関からも常々厳しくこの差別が指摘をされ、これを解消すべしと、こういう指摘がされているところでもありますし、そしてやはり子供にとって差別を受けているということは責任のないところで不利益を被っていると、こういう状況もあるわけでございます。
 全体として嫡出の問題というのはなかなか難しいところありますけれども、子供に対するこういう相続差別というものは撤廃をするということを検討をするときが来ているのではないかというふうに思いますけれども、大臣としていかがでしょうか。その辺を積極的にお取り組みいただいたらいかがかと思いますが。
○国務大臣(森英介君) ただいまの千葉委員の御指摘は大変重要な御指摘であるというふうに受け止めます。既に様々な御議論があることも承知しておりますが、ではありますが、六月四日の最高裁の判決は、あくまでも国籍法第三条第一項について違憲の判断を示したものであって、嫡出でない子の法定相続分の問題については特に言及しているものではありません。
 相続分の問題については、御承知のとおり、最高裁、平成七年の大法廷判決において、民法第九百条第四号ただし書は、法律上の配偶者との間に出生した嫡出である子の立場を尊重するとともに、嫡出でない子の立場にも配慮して、嫡出でない子に嫡出である子の二分の一の法定相続分を認めることにより法律婚の尊重と嫡出でない子の保護との調整を図ったもので、合理的な根拠があって、特に不合理な差別ではないという趣旨の判断を示しております。判例としてはこの判決が現在でも生きているというふうに認識をしております。したがって、民法第九百条第四号ただし書の規定は、現時点においては憲法第十四条第一項に違反するものではないと考えております。
 さはさりながら、国際的に嫡出である子と嫡出でない子の法律上の取扱いに差を設けない国が多くなってきているところでありますし、また委員のような御意見も大変増えてきております。しかし、この問題が婚姻制度や家族の在り方、特に我が国の家族の在り方と関連する重要な問題であることにかんがみまして、これから国民の御議論が深まっていくのを見守りたいというふうに思っております。
○千葉景子君 お答えは、ずっとそのようなお答えのような気がするんですね、法務省のお考えなのかもしれませんけれども。
 ただ、やはり最高裁判決が出たという状況を考えるときには、今確かに、この相続分差別についての判例というのは確かに合憲、合理的な範囲だということではありますけれども、そこから今回の最高裁判例が出た、この間のやっぱり時代の流れ、あるいは国際的な潮流の動き、そういうことを考えますときには、そこにこだわっていることではなくして、やはり大臣としてここは、そうだな、率直にお考えをいただいて、この問題についての検討なりをしていただく、こういうときではないかというふうに思っております。
 是非それを私は大臣にお願いをさせていただき、次に移りたいと思いますが、もう余りないんですね。それと、これも国籍がない子供の問題でありました。
 それ以外に、今度は戸籍がない子供というのが先般から非常に問題になりまして、これはいわゆる離婚後三百日問題と言われている課題でございます。
 これについては、戸籍をつくれないままいる子供たちが大変存在しているということで、多くの皆さんが本当にその救済に向けて御努力をされておられます。法務省も一定の対応はこの間取られてまいりました。そういう意味では、法務省がどんな対応を取られてきたか。それと、やはりこれもその対応だけではなくして、新しいやはり家族関係の実情等々を踏まえながら、これはあくまでも父子関係をはっきりさせて子供の救済を、保護を図ろうというのが元々の趣旨の法律でございます、規定でございます。だとすれば、それが今父子関係を定めるのにむしろ障害になってしまっているということですから、逆に新しい父子関係を定めるためのルール作りですね、そういうことにも今検討を進めるときがやってきているのではないかというふうにも思います。
 そういう意味で、ちょっとこの間の法務省として、まあ一歩ではありますけれども、対応を取られたということと、根本的な解決に向けての考え方、これについてお聞かせをいただきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) 最初に通達の問題でございますが、委員御指摘の通達は、婚姻の解消又は取消し後三百日以内に生まれた子のうち、お医者さんに証明書を出していただきまして、この婚姻の解消又は取消し後の懐胎であるということを証明することができる事案については、戸籍の窓口において、いわゆる民法七百七十二条の推定が及ばないものとして出生届を受理すると、こういう扱いをいたしているところでございます。
 それから、そうすると、離婚後三百日以内に生まれた子のうち、懐胎が離婚後であると、言わば早産で生まれたような子、これは今の通達でいいとして、懐胎の時期が離婚後である事案、これについてはどうするんだということが残っているわけでございます。この点については、失礼しました、離婚前である場合ですね、この通達が適用されない事案ということになるわけですが、婚姻中に懐胎した事案につきましては、現在与党において戸籍の届出及び裁判手続に関してどのような方策があるのか検討を行うものと聞いておりまして、法務省におきましても、子の福祉の観点から協力をしてまいりたいと、こう考えております。
 以上でございます。
○千葉景子君 もう時間がございません。
 今、与党の方でも御検討をいただいているということでございますけれども、私どももしっかり検討をさせていただいておりまして、本来であればこういう問題は政府としても早くに検討、スタートをすることがやっぱり大事だというふうに思っておりますが、我々の考え方を取りまとめますれば、どうぞそれをしっかりと採用していただきまして、やはり子供たちの、戸籍のない子供が生まれるようなことがないように是非していきたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いをしたいというふうに思います。
 時間になりましたので、細かい点につきましては後日にでもまたお聞かせをいただくことにして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○松村龍二君 自由民主党の松村でございます。
 国籍法についての改正案について御質問申し上げます。
 今回の国籍法の改正案につきましては相当数の国民から心配する声が上がっており、我々国会議員のところにもファクスその他、その意思が届いているところでございます。その心配の多くは、虚偽の父子関係が作為的に形成され、本来日本国民となるべきでない人が日本国民となってしまうというもののようでございます。
 まず第一問といたしまして、ところで、今回の改正法案は本年六月四日の最高裁判所判決を受けたものとのことであります。そこで、この最高裁判所判決の内容及びその意義をどのように理解しているのか、法務当局に伺います。
○政府参考人(倉吉敬君) 現行の国籍法第三条一項が問題になったわけでありますが、まず現行の国籍法第三条一項という規定は、日本国民である父とそれから日本国民でない母との間に生まれた後に父親から認知された子供のうち、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した子については一定の条件の下で届出により日本国籍を取得することができるという道を開いたものでございます。他方、日本国民に認知されたにとどまる子供については届出による日本国籍の取得は認められないと、こういうことになります。
 本年六月四日の最高裁判所大法廷判決は、このように、現行の国籍法三条一項が日本国民に認知されたにとどまる子とそれから父母の婚姻により嫡出子たる地位を取得した子供で国籍取得に関する区別を生じさせている、このことは遅くとも平成十五年当時には合理的な理由のない差別として憲法違反であると、こう判断したわけでございます。判決の最初の判文の方には、今日においては違憲であると、こう言っておりまして、最後の方で、その本件の上告人らが届出をした時期が平成十五年であったわけですけれども、この平成十五年当時には遅くとも憲法違反になっていたと、こういう判断をしたものでございます。
 最高裁判所の判決の効力でございますが、これは当該事案についてのみ生じると考えられているわけでございますので、本年六月四日の最高裁判所判決により、一般的にこうした事件の原告の方と同様の立場にある子供も届出によって国籍を取得することができるようになるものではございません。しかしながら、最高裁判所によって判断が示された以上、同様の立場にある者が同様の訴訟を提起した場合には、下級裁判所において今度の最高裁判決に倣って同様の判断が繰り返されることになると、こう考えられるわけでございます。
 そこで、この最高裁判所判決には補足意見やもちろん反対意見も付されているわけでありますが、この判決というのはあくまでも多数意見によって示されるものでありますので、この判断は厳粛に受け止め、最大限尊重しなければならないと考えているところであります。
 この趣旨を踏まえて、国籍法第三条第一項が憲法に適合するよう速やかな法改正を要するということで今回の法案を提出している次第でございます。
○松村龍二君 最高裁判所の判決を受けて法改正をする必要があるということでありますが、両親が結婚していなくてもよくなることで、うその認知を受けて不正に国籍を取得する者が出てくるのではないかという不安の声が寄せられております。このようなことは断じて許されるべきものではないと考えますが、法務省としてどのような対策を考えているのか、なるべく詳しく法務当局にお答えいただきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) 一つには、今回の法案をお示ししたとおりでございますが、これは委員の御質問の趣旨からは外れるかもしれませんが、新たに国籍取得届を提出する場面において罰則を設けました。虚偽の届出があった場合には一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処するという規定を新設したいと、このように考えております。
 こういう趣旨も踏まえまして、窓口でこういう罰則もあるということも分かっていただければ虚偽の認知というのもある程度は、虚偽の認知ではありません、虚偽の国籍取得届、これは防げるのではないかと、このように考えている次第であります。
 その上で、法務局の窓口でどんなことができるかということを今考えているところを御説明したいと思います。
 まず、法務局等では、国籍取得届が法務局等に対して出るわけでございますが、その際、必要な要件が備わっているか否かを確認することになります。その際には届出人が窓口に来て届出をすることが必要でありまして、認知がされたことを証明する戸籍などの書類を提出していただくことになります。その際に併せて、届出人等から、父母が知り合った経緯はどのようなものか、それから父親と同居しているかどうか、していないとすればその理由は何かとか、父親から扶養を受けているかどうか、扶養を受けていないとすればどのような御事情があるのかといったこと、それから、子が生まれてから認知に至るまでの経緯や婚姻等の身分関係の状況等をお尋ねをいたしまして、その子供が認知した男性の子であるかどうかというのを慎重に確認していこうということを予定しております。
 言うまでもございませんけれども、真実の父子関係がないのに虚偽の認知をするということ、これはもちろん防がなければいけないことでありますけれども、少なくとも国籍を取得する目的でそのようなことをされるというのは断じて排除しなければいけないと、このように考えております。
 さらに、子を懐胎した時期に父母が同じ国に滞在していたかどうかということについて疑義が生じた場合、このようなことが起こり得ます。それからさらには、偽装認知ではないかという疑いが生じるということもございます。こういった場合には、関係機関とも連絡を密にいたしまして更なる確認をするというようなことをして不正の防止に努めてまいりたいと思っております。
 なお、市町村において、これは国籍取得届が出る前の場面でございますが、市町村において認知届の受理について疑義が生じたということで管轄法務局に当該認知届についての受理照会がされたような場合、このような場合には、照会を受けた法務局では当該届書の添付書類やそれから関係者の調査等を行うなどして適切に対処していきたいと考えております。
○松村龍二君 よく父子関係を立証あるいは母子関係を立証するというときにDNA鑑定というのがあるではないかということがだれの頭にも浮かぶわけでありますが、DNA鑑定が法務省のお考えによってはさほど重要に考えておられないようにお伺いしますが、どうしてでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) DNA鑑定に関しましては、基本的に父子関係の科学的な証明だけで親子関係を決めるというような誤った風潮になってはいけないということが一つございます。
 何よりも大きいのは、法務局の窓口ではDNA鑑定の正否というのを判断できないということでございます。DNA鑑定というのは、お父さんと言われる人それから子供と言われる人の間違いないその人の血液とか、まあ毛髪なんかもあるみたいですけど、そういったものを採って、そこにすり替えがない、検体に間違いがないという前提でその審査がされるということがないといけません。しかし、法務局では、替え玉が立てられていないかとかすり替えがないかというのが判断ができないという問題がございます。さらに、DNA鑑定も様々な科学水準に従ったものがあるんだと思うんですけれども、そのような科学的な専門的な水準にきちっと達したものが、ちゃんとしたものが出ているのかということも、これは法務局では判断ができないわけでございます。
 そのような事情がございますので、DNA鑑定を採用するということについては、現在、消極の立場を取っております。
○松村龍二君 終わります。
○木庭健太郎君 国籍法の質疑に入る前に、入管の方にちょっとお伺いしておきたいことがございます。
 それは、先般報道にも取り上げられたわけでございますが、不法滞在の両親を持つ公立中学校に通いますフィリピン人の少女の件でございます。今月二十日、法務大臣あての在留特別許可を願う嘆願書を持参されたというふうに認識をしております。この件は現在どういう状況になっているのか、まず入管当局から御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(西川克行君) お答えいたします。
 委員御指摘のフィリピン人家族につきましては、約二年半前に不法滞在が発覚し、退去強制手続が取られまして、退去強制令書が発付されたものであります。その後、同一家は当該退去強制令書の発付処分の取消しを求めて訴訟を行っていましたが、一、二審とも訴えは退けられ、本年九月、最高裁において上告が棄却された結果、裁判は確定をしております。
 現在、当該一家から本邦への在留を求めて再審査の申出があり、嘆願書の提出がなされているという状況でございます。慎重に検討して、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
○木庭健太郎君 去年の二月だったと思います。イラン人の方でございましたが、同じような全く状況の中で、特に、御両親いられて、子供さんで短大生でございましたけれども、全く同種の状況の中で、そのときは在留特別許可がその短大生のみに出すという形で最終的には判断を法務大臣がなさったという経過がございました。在留特別許可を判断する場合には、その希望する理由等、本人の状況、特に人道的な配慮をも含め総合的に勘案されるというふうに伺っておりますが、イラン人のこの短大生への判断と同様の要素により判断されるというようなことで認識しておいてよろしいんでしょうか。これも事務レベルでちょっとまずお伺いしておきたいと思います。
○政府参考人(西川克行君) お答え申し上げます。
 一般論で申し上げますと、委員御指摘のとおり、在留特別許可の判断に当たりましては様々な要素を総合的に検討いたします。特に、不法滞在になっている子供が学業を継続したいとして在留特別許可を求める際につきましては、当該子供の年齢が幾つであるか、本邦での監督者が得られるかどうか、生活ができるかどうかなど、様々な観点から在留特別許可の許否判断を行うことになるというふうに考えられます。
○木庭健太郎君 そこで、大臣に尋ねておきたいと思います。
 もちろん、その不法滞在という問題に対して我が国がこれまでいろいろな意味で取り組んできた問題があることも事実であり、そのことの影響をどう考えるか、それも重々分かった上でも、やはり人権に対する判断というのが今回は求められておるんだろうと思います。
 もちろん、あのイラン人の短大生の場合と比べて、今回の場合の女の子はまだ中学生でございます。年齢の問題について今後検討していかなければならない課題はあるとしてみても、申し出ている本人は日本で生まれ育ったわけで、全く日本語以外はしゃべれないわけであって、友人関係、いろんな関係も含めても、日本以外では、彼女が今生活、また学習をしていく、学んでいくという環境の中ではそれ以外が考えられない状況の中で、本人が嘆願書も出し、同級生たちも、周り、一緒に遊んできた仲間たちもまさに交友を深めながらやっている。そういう意味で、多くの署名も付き添えた上での嘆願書だったと私は認識しております。
 本人は日本の教育を受けたい、熱望しているわけでございまして、それは親にいろんな問題があったとしても、私は子供にはある意味では罪はないと思うんです。もちろん、その子をだれが本当に見ていくのかというような問題も含めて検討すべき課題はいろいろあると思いますが、あえて子供の人権に配慮した対応をしていただきたいと私は思いますが、大臣の見解を伺っておきたいと思います。
○国務大臣(森英介君) 委員の今の御所見については、重々にそのお気持ちは理解するものであります。しかし、在留特別許可の判断に当たりましては、当然にその人道的な配慮も含めまして、様々な個々の事情を総合的に勘案し、さらには、他の同種の事案に与える影響をも考慮して適切に対処してまいりたいと存じます。
○木庭健太郎君 是非、様々な面を本当にあらゆる角度から判断をなさっていただきたい、そのことを強く要望をしておきたいと、こう思います。
 さて、国籍法の問題でございます。この問題、先ほどから御指摘があっているように、まさにこの問題は今年六月四日の最高裁判所の大法廷の判決を受けての今回の国籍法改正でございまして、ある意味では、違憲判決が出たことに対して私ども公明党は、速やかにそれに対する対応をすべきだという考えで、判決に対する対応の申入れも大臣に対して当時行った次第でございまして、まず冒頭お聞きしておきたいのは、判決の趣旨を踏まえた法改正を速やかに行うことを要望したわけでございますが、今回の法案はその要望に沿うものになっているんだろうと、そう思っておりますが、その点について大臣からまず伺っておきたいと思います。
○国務大臣(森英介君) この六月四日に最高裁の判決が出まして、いち早くその趣旨に沿った改正を要望する活動を展開されました御党に満腔の敬意を表したいと思います。
 最高裁判決の御判断は申すまでもなく厳粛に受け止め、最大限尊重しなければならないと考えております。そこで、国籍法を所管する法務省では、最高裁判決の趣旨を踏まえて、国籍法第三条第一項が憲法に適合するよう速やかに改正をするべく立案作業を進めてきたところでございまして、この度国会にお諮りして、慎重な御審議をいただいた上で、速やかに御可決をいただきたいと願っているところでございます。
○木庭健太郎君 そこで、先ほど松村委員の方から偽装認知の問題の御指摘があったものですから、今日は各党限られた時間での質問ということになっておりますので、この偽装認知というところの問題について本日は何問かちょっとお伺いしておきたいと思うんですけれども。
 確かに偽装問題というのは、これ十月二十七日でしたか、朝日新聞を見ましたら、この場合はいわゆる偽装結婚の問題が、外国人女性が日本人男性と偽装結婚をして子供に日本国籍を得させたという問題、そういった指摘がなされておったのはそのとおりでございまして、先ほど局長からある程度細かく御説明もいただきましたが、法務局、とにかく国籍取得届を受け付けるに当たって、まずどう臨んでいく、もちろん、先ほど申されたように、届出が出たら届出人から状況を聴くとか、様々な点、御指摘もいただきましたが、具体的に例えばどんなことをお尋ねしたいかというと、関係人から事情聴取するというようなことを先ほどおっしゃっておりました、どんな状況だったかということも含めて聴くと。偽装認知の疑いがないか、組織的な偽装認知ではないかとか、そんなこともその場合に多分疑義がないか判断をなさるんだろうと思いますが、じゃ、そういうことを実際に調査担当する者というのは、知識も含めて、いろんな意味で一体どなたがこの問題を担当してやろうとなさっているのか。ある意味でいくと、官職でいうとどんな方が担当してこれをやるのか、若しくは、これぐらいの資格がない、の者じゃなければこれできないよとお考えになっていらっしゃるのか。その点を含めて、どう偽装認知を防止するために最大限の体制を組みやろうとしているのかを、御説明を改めていただきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) この国籍取得届というのは、法務局、地方法務局の本局及び支局に提出することができます。したがいまして、これを担当する者は本局及び支局の法務事務官でございます。
 御質問の趣旨は法務事務官で大丈夫かと、こういう御趣旨ではないかと思いますが、大丈夫でございます。是非この点は強調しておきたいと思うんですが、法務事務官は常日ごろから戸籍、国籍業務やこれに関する研修をしておりまして、こうしたことを通じて、民法の法律知識はもちろん、外国法令の知識も習得しております。各種証明書等の真偽の判断についての経験も積んでいるところでございます。これまでも帰化等の申請、これも同じ担当者が扱うわけでございますけれども、そうした帰化等の申請者からも事情を聴きながら、いろんな仕事をして、具体的に出ている書面と話していることが矛盾していないかとか、あるいは関係機関からいろいろ収集した資料と矛盾はないかというようなことを調べるということをごく当たり前の通常業務として行っております。
 そのような調査業務を通じて、疑義のある事項を発見する能力というのも相応に備わっていると、このように考えております。
○木庭健太郎君 もう一つは、この問題で、私もある人から言われて、ああ、そういうふうな認識なのかと思ったのは、実は偽装認知ということがこれは起こる可能性が高いと思っていらっしゃる方たちは、それをしたとしても、偽装認知をしたとしても罰則がないと言った方もいらっしゃいます。罰則はあるんですよ、本当は、先ほども御説明されていましたが。そのことを、でも、正直に御存じない。知っている方がいらっしゃったとしても、どうなるかというと、とてもそんな軽い罰則で防げるだろうかという話が、いや、その前に、是非、そういう方々、この問題を心配される方たちに、法務省として、もし万が一偽装のようなことをした場合どういう罪に問われるのかということをある意味では公に向かってもきちんと言わないところが、逆に言うと、まあおっしゃっているのかもしれませんが、認識をされていないところがこの国籍法の問題について様々な御批判が改正について出てくる要素だと思うんです。
 例えば、これ、先ほどおっしゃった新たな罰則のほかに、この国籍を、つまり認知を求めて、その後にこれ出す場合、少なくとも手続としては、出す前に前段階として認知届、後の段階では戸籍に子供の国籍を反映させるための届出が必要になるわけですよね。それがもしうそであれば何に問われるかといったら、公正証書原本不実記載になるわけでしょう。それは罪なわけであって、そうすると、新たにできた罪とこの不実記載の罪、併合できるわけでしょう。そうすると、どれくらいの一体罪になるのかというようなこともある意味でははっきりさせておかなければ、私はこの問題、理解がされていないんではないかなと思うんですが、この点について説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) ただいま委員御指摘のとおりでして、三か所のゲートがございます。
 最初に、父親が子供を認知することになりますが、その認知の届出を市町村に出します。そうすると、父親の戸籍の身分事項欄にその父親がだれだれを認知したという事項が記載されます。これが戸籍に載りますと、これが虚偽だということになれば公正証書原本等不実記載に問われます。懲役刑では五年以下の懲役ということになります。
 それから、その次に、父親の身分事項欄に記載された戸籍を持って法務局に参ります。そして、国籍の取得届、これが今回新設されるやつということになりますが、出すわけですが、そうすると、それに対しては、先ほど申し上げましたとおり、一年以下の懲役という新しい新設の規定がございます。
 最後に三番目でございますが、その法務局でもらった国籍取得届を持って市区町村の役場に参ります。今度は、その子供が日本人になりますので、子供を日本人として戸籍に載せるための手続をするわけでございます。届けをいたします。そして、その子供が日本人であるということでその子供の戸籍ができ上がりますと、これも公正証書原本不実記載ということになります。
 この三つを、普通は偽装認知ということであればこの三つが全部やるということになりますので、五年、一年、五年でございます。刑法の法定刑、これが併合罪になりますと、一番最長期の刑の一・五倍までが上限でございますので、五年の一・五倍ということで、七年六月以下の懲役ということになります。
○木庭健太郎君 是非、先ほどの手続をどうしていくかというような問題、さらに、もしそういう偽装認知によって不正な国籍取得をした場合、重い罪が科せられるということを、これどういう方法で周知徹底するかというのはいろんな在り方があると思うんですが、その辺含めて、政府広報含めて、またホームページとかいろんな方法があると思いますが、きちんと周知徹底をしていただきたいと思いますが、その点について伺っておきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) 委員御指摘のとおりでして、今回の新しい制度について広報する必要があると思っております。
 もちろん積極的に、国籍取得届が要件が変わりましたということが一番広報しなければならない柱だとは思いますが、それと併せて、このような罰則があると、しかも新しく設けられた罰則だけではなくて、その前後のものもあるんだということも含めてきちんと広報したい。リーフレット、パンフレット等を作りまして、市区町村の役場、公的機関、裁判所等もあり得ると思いますが、いろんなところにお配りをする。それから、法務省のホームページはもちろんですが、政府広報でもそれをお願いしたいと思っております。さらには、在外公館等にも、これは外務省にお願いするということになろうかと思いますが、こういう宣伝広報活動について一層周知徹底するように、そのときに、ただいま委員御指摘のとおり、罰則の点も含めてきちんとした完璧な広報ができるように努めてまいりたいと思っております。
○木庭健太郎君 大臣にも、これある意味では毎日のように我々も、この国籍法を改正して大丈夫でしょうかというような声も届いていることも事実であって、私は、きちんとこういう違憲判決を受けた形で即刻対応することが必要であり、それによってどれだけこれまでのことが改善されるかということをお話しするとともに、それをやることによって不正が急に増えてくるとか、そんなこととはちょっと違うんです。もしそんなことをすれば厳しい目に遭いますよというようなことを逆にお話しする機会もあるんですが、大臣としても、これ法改正したときに、そういう偽装がもし起きたならばそれに対して徹底した取組をしなければならないし、起きないように最大限の努力もしていただきたいし、その点についての大臣の決意を伺って、私の質問を終わっておきたいと思います。
○国務大臣(森英介君) 委員御指摘の点については、多くの皆さんのこの改正に当たっての一番の心配な点だろうと思います。衆議院でもその点を眼目にした附帯決議が付されたところでございますけれども、いずれにしても、そういった偽装認知が行われないように、ただいま局長から答弁申し上げましたとおり、もしそういうことをすれば相当に重い処罰があるということを広報いたしますとともに、また、その届出受けるに当たっては十分な調査をすることを奨励、督励してまいりたいと存じます。
○木庭健太郎君 終わります。
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○委員長(澤雄二君) この際、委員の異動について御報告をいたします。
 本日、山崎正昭君が委員を辞任され、その補欠として西田昌司君が選任をされました。
    ─────────────
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 この六月四日の最高裁判決なんですが、これ大臣も御覧になったかと思うんですけれども、この判決が言い渡されたときの当事者の子供たち、本当にうれしそうな笑顔の映像、ニュース、御覧になったんではないかと思います。
 この子たちもそうですが、日本国民である父から生まれた子でありながら日本国籍を取得できない子供たちがこれまで外国人だといっていじめられたり、戸籍や住民票もない、児童手当や扶養手当あるいは健康保険もない、入学できなかった子供たちもいる。パスポートの取得も認められなかったり、あるいは外国籍の子が在留ビザを数年ごとに更新をしていかなきゃいけない。本当に流れている血も、そして暮らしているのも、本人は日本人だという、そういう思いであるにもかかわらず、その尊厳が認められないという実態が長く続いてきたわけでございます。
 そういった意味で、私、最高裁の判決を受けて、結婚や家族の変化を踏まえて世界の流れに沿った本当に画期的なものだと思いましたし、何より、子供たちの最善の利益を優先するという立場で大変重い判決だと思いました。
 先ほど他の先生からもお尋ねがありましたけれども、こうした子供たちの救済をこうした形で図った最高裁判決を大臣がどのように受け止めていらっしゃるか、まずお尋ねしたいと思います。
○国務大臣(森英介君) それまで法務省としてはこの条項は合憲であると主張してきたところでございまして、この違憲判決が出たときも時の鳩山法務大臣が衝撃的な判決であったという発言を委員会でされました。そのぐらい画期的な判決だったと思いますけれども、遅くとも平成十五年当時には合理的な理由のない差別として違憲であると判断されましたのを受けまして、この国の三権の一つである最高裁判所の判決によってこのような判断が示されたのを受けまして、法務省としては、その趣旨を踏まえて、国籍法第三条第一項が憲法に適合するよう速やかな法改正を目指してまいりました。
 今般、様々な手続を経た上で国会に御提出いたしまして、慎重な御審議の上に速やかに御可決をいただきたいと念じているところでございます。
○仁比聡平君 そうした法案を提出をしておられる大臣として、お一人の政治家として、この最高裁の事案の当事者となった子供たち、あるいは同じような、今後この法改正によって国籍を取得し得る子供たちに対してどんな思いでいらっしゃいますか。
○国務大臣(森英介君) そういったいろいろな非常に不遇な状況に置かれた子供たちに対しましては、情においては忍び難いものがありますけれども、しかしながら、これまで、先ほど申し上げましたとおり、最高裁でも合憲というふうに判断されてきた対応でございますので、それはその時点ではやむを得なかったと思います。
 これからは、今回改正されました法案にのっとりまして、この点については子供たちの立場を尊重して対応していくことが日本国政府としても必要であろうというふうに思っております。
○仁比聡平君 大臣が情において忍びないとおっしゃった、それが私は政治家としての大臣のお気持ちだろうと思いますし、にもかかわらず、これまで法務省、国がこの規定が合憲であると主張をして最高裁まで争ったという、ここが最高裁によって言わば断罪されたというところに私は画期的なところがあるんだと思うんですよ。政府はこの判決を受けて今回の法改正を提案しておられるわけですから、私は過去のことをもう今更とやかく言うつもりはないのです。そういった意味で、この最高裁判決がどういう枠組みでどういう価値を重んじてこういう判決を下したのか、このことを今回の改正に当たってしっかり言わば確認をしておきたいというふうに今日は思っております。
 少し最高裁判決の中身に立ち入っていくわけですが、まず、どういう判断の枠組みで現行法を憲法違反だと判断をしたのかということについて、先ほども千葉理事から少しお話ありましたが、この現行法が、同じく日本国民である父から認知された子でありながら父母が法律上の婚姻をしていない非嫡出子は、その余の要件を満たしても日本国籍を取得することができないという区別という、つまり、準正によって嫡出になった子とそれから嫡出でない子、この区別が憲法十四条に違反するのかしないのか、こういう問題の素材を置いているわけですよね。
 ですから、判決理由の中には、例えば「その子と我が国との結び付きの強弱を両親が法律上の婚姻をしているか否かをもって直ちに測ることはできない。」とか、「日本国民である父から出生後に認知されたにとどまる非嫡出子のみが、日本国籍の取得について著しい差別的取扱いを受けているものといわざるを得ない。」とか、つまり嫡出子か非嫡出子か、ここにおいての区別が差別である、憲法十四条に反するのであると、そういう判断をしたわけですね。
 これ、局長で結構ですが、確認をください。
○政府参考人(倉吉敬君) ただいま委員御指摘のとおりでございます。できれば、この大法廷判決の論理的な枠組みについて御質問だと思いますので少し申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 この大法廷判決は、要するに、国籍の定め方については、これは憲法十条で法律で定めると書いてあるんだ、だから立法府に裁量権が与えられていると。しかしながら、その裁量権を考慮してもなお今委員の御指摘のあった嫡出子と嫡出でない子との間の区別をすることの立法目的に合理的な根拠が認められないとか、あるいは立法目的自体はいいんだけれども具体的な区別とその立法目的との間に合理的関連性が認められない場合、この場合には合理的な理由のない差別として憲法十四条一項に違反するという、こういう枠組みを打ち立てました。
 その上で、本件の区別というものは、設けているその基本的な立法目的でございますが、これは、血統主義を基調としつつ、我が国との密接な結び付きの指標となる一定の要件を満たす場合に限り生まれた後における日本国籍の取得を認めることとしたものだと、これ自体は合理的であると、こういたしました。
 二番目に、昭和五十九年にこの規定が設けられた当時、この当時においては、婚姻を要件として我が国との結び付きを示す指標と見るということはなおこの立法目的との間に合理的関連性があったと、ここまで言いました。ここまでは法務省も同じでございます。
 この次が違ったわけでございますが、しかしながら、その後の我が国における、先ほど委員が御指摘になった、家族生活の実態が変わってきただろうとか、それから意識も変わってきただろうとか、それから国際的な状況も変わってきただろうと、そういうことをいろいろ考えると、準正を日本国籍取得の要件としておくことについて、少なくとも今日においてはこの立法目的との間に合理的関連性を見出すことは難しいのだと、こう言いまして、その今日においてはというのは、遅くとも、本件の上告人らが届出を出した平成十五年当時は遅くとも違憲になっていたと、このような判断をしたわけでございます。
○仁比聡平君 いや、局長、詳しいじゃないですか、やっぱり、さすがに。これまで国会で衆議院の審議も通じてこうした議論を余りされてないと思いますので、私、是非続けてさせてもらいたいと思っているんですが。
 今局長が御紹介をいただいたような判断枠組みを最高裁が採用したということについて、もちろん憲法研究者あるいは国際人権法や民法の研究者を含めていろんな評論が当然この判決受けてされているわけですけれども、その中で、立法目的との間に合理的関連性が認められるか否かというこの判断枠組みは、憲法学上のいわゆる厳格審査基準を取ったに通ずるものがあるのではないかという憲法研究者もいらっしゃいます。
 今日はそのこと自体をどうこう言うつもりはないんですが、そうした厳しい判断をしていく要素となったのは、一つは国籍が持っている意義だと思うんですね。その国籍の意義について、重要性について判決は、「我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。」というふうに述べていますけれども、これは法務省も同じ見解だと伺ってよろしいですか。
○政府参考人(倉吉敬君) 法律上はそのとおりでございまして、公的資格ということに関して言えば、国籍があるかないかで公務員になれるかなれないかとか、そういう違いがございます。
 それから、公的給付については、法律上はいろいろあれですけれども、少なくとも運用上は、現在住んでいる外国人についてはできるだけ、教育の面も含めて、それなりの配慮がされていると承知しております。
○仁比聡平君 確かに運用上はいろんな配慮がされているが、法的には違うわけですよね。
 その国籍が、判決は続けてこう言うわけですね、「子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄」によって左右されていいのかという問題だと思うんですよ。この点については法務省としてはどのようにこの判決を受け止められていらっしゃるんですか。
○政府参考人(倉吉敬君) この点については最高裁の判決の当否自体を私ども言う立場にはございませんが、結論においてはもうまさにそれを受け止めるしかないわけでありまして、非常に重く受け止めているところでございます。
 先ほども申しましたように、ただ、これは、この規定ができていた当時からおよそ婚姻を要件としているというのは、国家との重要な結び付きを示す指標として婚姻なんというのはおよそ役に立たないのだと、こう言っているわけではありません。その後のいろんな状況の推移等から、今日ではそのような結び付き、婚姻だけを結び付きと見るのは妥当ではないのだと、こういうふうに判断しているものだと受け止めております。
 ただ、いずれにいたしましても、そのような憲法違反であるという判断がされたわけですから、これは十分に重く受け止めて対処しなければいけないということで今回の法案を提出している次第でございます。
○仁比聡平君 判決は、「父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。」と。そのとおりなんですよね。
 子供は子供として一人の人格です。その親の結婚するしないということによって子供の本当に大切な国籍というものが左右されてはならないというこの考え方は、私は本当に立法府として正面から受け止める必要がある、政府にもそのことを重く受け止めていただきたいと改めて申し上げておきたいと思うんですね。
 それで、先ほどから局長が繰り返しておっしゃっておられます、この前の改正時は立法目的との間に関連性はあった、けれどもその後変わったというその判決の中で、時間がございませんので一つだけ取り上げたいと思うんですけれども、それは国際法との関係、特に国際人権法との関係なんですね。
 判決は、「諸外国においては、非嫡出子に対する法的な差別的取扱いを解消する方向にあることがうかがわれ、我が国が批准した市民的及び政治的権利に関する国際規約及び児童の権利に関する条約にも、児童が出生によっていかなる差別も受けないとする趣旨の規定が存する。」というふうに述べまして、簡潔な文章ではありますが、世界の動向だけでなく、この国際人権B規約、それから児童の権利に関する条約、これを最高裁が判決理由の中で特に示して理由としているというところは、私、大変重いものがあると思うんです。
 これ、局長、通告してないので申し訳ないけれども、このそれぞれの条約がどんな規定をしているかというのは御案内ですか。
○政府参考人(倉吉敬君) 若干うろ覚えではありますが、出生によって子は差別されないと、それから、子供が無国籍であってはいけないという意味で必ず国籍を有しなければならないとか、本件に関連するものとしてはそういった条項があったと思います。
○仁比聡平君 ありがとうございます。
 自由権規約あるいは児童権利条約は、児童は出生による差別を受けない、児童は国籍を取得する権利を有すると定めておりますし、児童権利条約は更に、児童が無国籍となる場合を含めて国籍を取得する権利の実現を確保するというふうにございます。女子差別撤廃条約には、子の国籍に関して、女子に対して男子と平等の権利を与えるという規定もあるわけです。
 これまで、自由権規約委員会やあるいは児童権利委員会あるいは女子差別撤廃委員会、これらが、この国籍取得における嫡出子と非嫡出子の間の差別、この区別を差別としてとらえて様々な意見を繰り返し発表してきたわけです。日本国政府が提出した報告書を審査した上で、この婚外子差別についての懸念が度々表明をされてまいりました。
 そうした意味では、今度の最高裁判決は、この婚外子差別、非嫡出子差別についての国際社会の指摘、国際機関の指摘、これを正面から受け止めたものだというふうに評価をされているわけですけれども、この点については、法務省、どんなふうに受け止めていらっしゃいますか。
○政府参考人(倉吉敬君) 最高裁が、我が国が批准している条約それから規約等を一つの、この本件規定の立法当時は合憲であったけれどもその後変わったということの根拠として挙げているということは、十分に受け止めております。
○仁比聡平君 更にこの点についてよく深めていきたいと思うんですが、時間ありませんから、最後に、この最高裁判決の文脈で、先ほど来テーマに上がっています偽装認知ですね、これ判決では仮装認知という言葉を使っているんですが、最高裁がこの点についてどう考えたのかということについてだけ最後確認をしたいと思います。
 最高裁は、文章で言いますと、仮装認知のおそれについて、「そのようなおそれがあるとしても、父母の婚姻により子が嫡出子たる身分を取得することを日本国籍取得の要件とすることが、仮装行為による国籍取得の防止の要請との間において必ずしも合理的関連性を有するものとは」言い難いと言っているんですね。これ、どういう意味なんでしょうか。
 最後にこれだけ聞いて、終わりたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) これは、最高裁の判決の書いている意味はどういうことかということだと思いますので、評価をしているつもりは全然ございませんで、要するに、仮装認知に対する対策をどう取るかということはまさに立法府の問題であって、それは本件の条項、つまり婚姻だけを条件、婚姻をしていなければ届出で国籍を取得することができないんだということを決めている、その規定の当否とはかかわりがないと、こういうことだと思います。
 だから、婚姻の要件は排除した上で、削除した上で、偽装認知の問題は別問題なんだからそれは考えなさいと、こういうことではないかと思っておりまして、今回罰則を新設したのもその趣旨でございます。
○仁比聡平君 つまり、婚姻要件のあるなしと仮装認知というのはこれは関係ないという話だと思いますので、(発言する者あり)えっ、違いますか、今の話そうなんじゃないですか。
○政府参考人(倉吉敬君) 委員長、よろしいですか。
○委員長(澤雄二君) 倉吉民事局長。
○政府参考人(倉吉敬君) 婚姻要件を外すことによって偽装認知の危険が高まるかどうか、そのことについては最高裁判決は言っておりません。高まるとしても、これに対してどうするかということ、そういったことはこの婚姻要件を外すかどうかとは関係がないんだと、こう言っているのだと思います。申し訳ありません。
○仁比聡平君 つまり、高まるとも高まらないとも言っていないんですよね、判決は、ということだと思いますので、もし、後でよく勉強して、またあれば次回にお尋ねしたいと思います。
 ありがとうございました。
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。
 本法案は、法律上の婚姻関係にない日本人の父と外国人母との間において生まれた子供が出生後に父から認知された場合に日本国籍を認める、こういうものでございます。
 当委員会におきまして、このことについての先ほど来出てきております最高裁判決、これが出されました翌日の六月五日議論になりまして、千葉委員も木庭委員もそして丸山委員も、この判決を本当に高く評価をされて、この判決の趣旨に沿った速やかな法改正を求める、こういう意見を表明されたことを覚えております。
 そして、私も、社民党という立場で、その二、三日後だったと思うんですが、福島みずほ党首と私と鳩山当時の法務大臣のところに行きまして、とにかく一日も早くこの最高裁判決の趣旨に沿って国籍法を変えていただきたいと、こういう申入れをさせていただきました。そういう経過もございますので、私どもは今回の法案を高く評価するものでございます。
 その上で、今ほど仁比議員の方からこの最高裁判決を深掘りをしていただく、こういう質疑をやっていただきましたので、私はそれを受けまして、この最高裁大法廷判決の射程について少し議論をさせていただきたいというふうに思っています。
 今ほども話が出ましたけれども、この判決は三つの言わば柱を立てて、〇三年、少なくとも今は国籍法第三条一項が違憲であると、こういうことを言っている。
 それは、一つには家族生活や親子関係の実態が随分変化し多様化したということですね。二つ目は、諸外国においても非嫡出子に対する法的な差別的取扱いを解消する方向に進んでいるということ。そして三つ目、これも先ほど来議論がありましたけれども、我が国が批准した市民的及び政治的権利に関する国際条約、つまり自由権規約、B規約及び児童の権利に関する条約、こういうものが児童が出生によっていかなる差別も受けないという趣旨の規定を持っているということ。この三つから、少なくとも今現在は国籍法第三条第一項はこれは憲法に違反すると、こういうことを言っているわけです。
 この論理からいけば、少なくとも単に今回の国籍法の改正だけにとどまらないのではないかと私は思っているわけでございます。少なくとも、婚外子の法定相続分を婚内子の二分の一とするというふうに定めた民法の九百条の四号、これはやっぱり見直されるべきだ。つまり、随分家族生活や親子関係の実態は変わっていますよ、世界の趨勢はみんな非嫡出子について一定の差を付けるということについてはやっていませんよと。聞いてみると、これは日本とフィリピンだけだという。そして、国際人権規約はそういう立場に立っていませんよと。
 この最高裁判決からいけば、少なくとも、婚外子の法定相続分を婚内子と比べて差を付ける、これは私は許されないんではないか、見直されるべきなんではないかと、こういうふうに思えてならないんですが、大臣の所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(森英介君) ただいまの近藤委員の御指摘につきましては、極めて傾聴すべき御意見であると思います。また、世界の趨勢がそのようになっているということも私も聞き及んでおります。
 しかしながら、民法第九百条第四号ただし書については、平成七年の今もお話のあった大法廷判決以降、最高裁における判決において合憲であるとの判断が示されているところでございまして、法務省としては、このような取扱いについて、不合理なものではないと、現況においてはですね、と考えております。法務省の内部においては、そういった御議論を踏まえていろいろと議論はしておるところでございますけれども、現況においては結論は今申し上げたようなことになっているということを申し上げたいと思います。
○近藤正道君 かなり際どいところに来ているな、いいところまで来ているなというふうな思いを今大臣の答弁を聞いて思いました。
 衆議院の法務委員会では、今法案につきまして、法制審も通っていないのに何だという、こういう批判がありました。私はこれは、最高裁の大法廷判決が、大法廷があれだけ明確に言っているのにこれを踏まえていないなと、違憲立法審査権や三権分立を十分に理解していない、こういう意見だというふうに思っております。
 問題は、私どもはもう、またこの法案に、本法案に一定批判的な方々も含めまして、法制審議会の答申というのは大変重いものだと、ここは共通しているというふうに思うんですが、調べてみますと、法制審議会の答申が出されているにもかかわらず、いまだそれが実現されていないやつが三つあると。一つは昭和四十九年の出された改正刑法草案、二つ目は昭和五十二年の少年法の一部改正に関する要綱、そして三つ目が平成八年に出された民法の一部を改正する要綱。
 最初の二つは、その後、何らかの形で法改正は実現されているんです。ところが、平成八年の民法の一部を改正する要綱、この中には、今私が言いました非嫡出子の相続分の差別の問題だとかあるいは選択的な夫婦別姓の問題が入っているんですが、これがまだ全く手付かずになされております。
 とりわけ非嫡出子の相続差別の問題については、これはもう何度もこの間国会でも議論が上程をされて、さきの会期でも参議院で民主、共産、社民、無所属からこの改正案の提出がなされたんだけれども、審議することすらなかったと。これは国会の問題といえばそうかもしれないんですが、法制審議会の答申が出されて十二年もこれが日の目を見ないというのは私はやっぱり問題なんではないかと。
 今回の、つまり最高裁の判決、そして今回の法改正、国籍法の改正などを見れば、やっぱり今度は責任を持って内閣が改正案、民法の改正案をやっぱり出すべき、そういう時期に来ているんではないかと私は思うんですが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(森英介君) 今もいみじくも委員が御指摘になりましたように、この問題については反対意見もまだ根強くあるわけでございまして、婚姻制度や家族の在り方と関連する重要な問題でありますので、各界各層における議論が深められて大方の国民の御理解を得ることができるような状況の中で見直しが行われるとすれば行われるべきものであると考えております。
 よく引き合いに出されるところでございますけれども、平成十八年の世論調査結果によると、嫡出でない子の相続分について、相続できる金額を嫡出である子と同じにすべきであるとする意見は全体の二四・五%であったのに対しまして、現在の制度を変えない方がよいとする意見が全体の四〇%以上を占めているということでありますが、いずれにしても、先ほども申し上げましたけれども、各界各層の、また国会での御議論が深まっていくのをしっかりと見守って対応したいというふうに思います。
○近藤正道君 今ほどの大臣の、国民の中に多様な意見がある、嫡出子の相続分と非嫡出子の相続分で一定の差を付けるということについて国民の半分ぐらいが支持をしているという話があった。私は、このことについてはいわゆる憲法の立憲主義との関係で意見があります、これまた後で申し上げますが。
 ただ、この嫡出子と非嫡出子との間の相続分に差を付ける、これについては、民法九百条の四号ただし書の規定でありますが、〇三年に最高裁の小法廷判決が出た。確かに、大臣おっしゃるように、合憲という形にはなっているけれども、三対二ですよね、これ。二人の裁判官がこの九百条の四号ただし書について極めて違憲の疑いが強いと、そういうふうに言っていますよね。そのうちの一人は現在の最高裁の長官の島田さんですよ。島田仁郎さんは、これやっぱり違憲の可能性が非常に強い、可及的速やかに法改正をすべきだと、こういうことを言っているわけでございます。裁判官はみんな平等ですから、その後最高裁長官になった方がこう言っている、だからより重いんだと言うつもりはありませんけれども、しかし、それほどやっぱり際どい。
 先ほどちょっと話がありましたけれども、これは確かに少数意見かもしれませんけれども、こういう明らかに違憲の可能性がある、極めて強いと、こういう判決が出ているわけでありますけれども、法務省の中ではこの判決を受けてその後どんな議論が省内で行われていたんでしょうか、ちょっと御披露いただきたい。さっきちょっとあったようなお話を大臣がされましたので、お聞きをしたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) 委員の御質問は、今度の国籍法に関する大法廷判決が出た後……
○近藤正道君 九百条の四号ただし書。
○政府参考人(倉吉敬君) あっ、そうではなくてですか。
 九百条四号ただし書の件につきましては、もちろん国会でも御質問を度々繰り返しいただいておりますし、最高裁の判決も、平成七年の大法廷判決の後、小法廷判決で、今委員御指摘のとおり、三対二というような判決も出ているわけでございますので、その都度いろんな機会で、これはどうだろうかということで検討は部内ではしております。ただ、先ほど大臣の方から答弁申し上げましたように、世論調査の結果等もございまして、必ずしも嫡出子と非嫡出子を同等にすべきではないんだという意見も多いわけでございます。
 そういったことも考えますと、やはり国民の大方の皆さんがこれは賛同できるなという形で法案を出すのが望ましい、事は要するに家族法の、日本の伝統的な家族の身分関係の根幹にかかわることでございますので、やはりそのように考えるのが望ましいと、こう思っておりまして、以下は大臣が先ほど答弁申し上げたとおりでございます。
○近藤正道君 最後に大臣にお聞きしたいというふうに思うんですが、国民の多数といった、まあ意見が割れている、世論調査をすると割れる、それはそのとおりなんですが、少なくとも最高裁の今回の国籍法のあの論旨からいけば、それは、家族の形態はどんどん変わっていますよ、そして世界の国々もどんどん日本とは違った方向に行っていますよ、そして国際人権法はまさに嫡出子と非嫡出子の格差を、差別をなくすような規定になっていますよと、こういうふうになっています。そして、先ほど来もちょっと出ましたけれども、この間の国連の人権規約の勧告は繰り返し、非嫡出子の相続差別についてはこれは問題だと、こういうふうに言っています。とにかく、差を付けること、二分の一と差を付けるということは憲法の解釈からいっておかしいと、こう言っているわけですよ。そういうときに、世論が割れているということは合理的な理由になるんだろうか。
 つまり、私が申し上げたいのは、立憲主義という立場ですよ。憲法というのはつまり国の行政権を担っている人たちを言わば縛っている。ある意味では、多数に対して説得をしても、それはやっぱり間違っていると、多数が幾ら、ある意見に多数にまとまっても、それが憲法との関係においてそれはおかしいと、そういうことは通らないということであれば、やっぱり毅然として、それはやっぱり憲法違反だ、だからそういう考え方はやっぱり変えなきゃならぬというふうに政府が説得するというのが立憲主義の立場だというふうに私は思うんですよ。単に国民の多数がそういうふうな立場に支持していないという、これは理由にならない。
 だから、立憲主義をまさに体現している、まさに体を張って憲法を守る、立憲主義を守る、法務大臣はこのことについてどういう考え方を持っているのか。単に国民が、四十何%が賛成していません、支持していませんというのは私は理由にならないと思う。立憲主義の立場からこの間の流れをどうとらえるのか、大臣から明確に御答弁をいただきたいというふうに思います。
○国務大臣(森英介君) もとより、少数意見を十分に尊重しなきゃいけないこととは……
○近藤正道君 少数意見じゃございません。少数意見のこと言っているんじゃないです。
○国務大臣(森英介君) 少数者、何とおっしゃったの。
○近藤正道君 少数意見のことなんか言っているんじゃないです。
○国務大臣(森英介君) いやいや、少数意見を尊重することが立憲主義の基だとおっしゃったんじゃないですか。(発言する者あり)ですから、私はそういうふうに思います。
 しかしながら、最終的にやっぱり多数決というのを、これは意見集約する場合には当然必要になる場合もございますし、さはさりながら、確かに世論調査というのも、これ頭数が違うわけですから、必ずしもそれをもって理由にするというのはいかがなものかと思いますけれども、私は、日本人というのは誠に賢明でありますから、必ずいずれ議論が収れんして、そういった今は少数である意見に国民の大方の皆様方が賛成するときが必ず来るというふうに思っておりますけれども、今はそういう時期になっていないというふうに私としては認識をしているところでございまして、国民の各界各層の御議論の収れんするところを見守りたいというふうに思います。
○近藤正道君 少なくとも今の参議院は、非嫡出子の相続分の差をなくすということについて、それはおかしいなどというふうに思う人はいないですよ。むしろ多数は、差を付けること自身はおかしいというふうに私は言うというふうに思いますよ。
 ただ、私が申し上げたいのは、憲法の解釈というのは、多数意見、どちらが多数かどうかということで決めるんじゃなくて、憲法の解釈はある方向で示されているんなら、それは国民のある程度の、半分ぐらいが反対したとしても、それはやっぱり行かなきゃならない、その道で進まなきゃならぬ、これが私、立憲主義だと思うんですよ。
 だから、大臣の立憲主義の理解は違うんじゃないかと思うんだ。立憲主義というのは、多数意見の言わば暴走というか、多数意見の行き過ぎを抑える、幾ら多数であっても、そちらが多数であっても、憲法の解釈がこうであればそれは多数意見の方が間違っているというふうにびしっと言うのが、それを私、立憲主義だと思うんだけれども。基本的に大臣の立憲主義の理解は間違っているんじゃないかと思うんだけれども、どうですか。
○国務大臣(森英介君) 私は、まさに今そういった御議論が行われている過程であって、今法務省がそういった一方の立場に立って見切り発車するということはむしろ強権的であって、もうちょっとやっぱり議論が熟度を高めてくるのを見守るべきだというふうに思っております。
○近藤正道君 それなら、先ほどの最高裁判決、これ国籍法の最高裁判決、この三本柱、世の中が動いている、世界の流れも動いている、そして世界の人権規約はある方向をきちっと向いている、それからいけばこの非嫡出子の相続分に差別を付けるのはやっぱり間違っているんだよということを積極的に国民に対して説得してくださいよ。それが法務大臣の仕事じゃないですか。どうですか。
○国務大臣(森英介君) 非常に重要な御指摘と承りました。
○近藤正道君 まあなかなか今日はこれ以上やってもらちが明きません。改めてというか、日を改めてこの論議をさせていただきたいと思っています。
 終わります。
○委員長(澤雄二君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
    ─────────────
○委員長(澤雄二君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国籍法の一部を改正する法律案の審査のため、来る二十七日午前十時に、中央大学教授奥田安弘君及び弁護士・日本弁護士連合会家事法制委員会副委員長遠山信一郎君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(澤雄二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時三十一分散会