第170回国会 法務委員会 第5号
平成二十年十一月二十七日(木曜日)
   午前十時八分開会
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   委員の異動
 十一月二十六日
    辞任         補欠選任
     鈴木  寛君     白  眞勲君
     松浦 大悟君     田中 康夫君
     西田 昌司君     山崎 正昭君
     舛添 要一君     山谷えり子君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         澤  雄二君
    理 事
                千葉 景子君
                松岡  徹君
                松村 龍二君
                木庭健太郎君
    委 員
                小川 敏夫君
                今野  東君
                田中 康夫君
                白  眞勲君
                前川 清成君
                松野 信夫君
                青木 幹雄君
                秋元  司君
                丸山 和也君
                山崎 正昭君
                山谷えり子君
                仁比 聡平君
                近藤 正道君
   国務大臣
       法務大臣     森  英介君
   副大臣
       法務副大臣    佐藤 剛男君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  早川 忠孝君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局人事局長   大谷 直人君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山口 一夫君
   政府参考人
       警察庁刑事局組
       織犯罪対策部長  宮本 和夫君
       法務大臣官房司
       法法制部長    深山 卓也君
       法務省民事局長  倉吉  敬君
       法務省刑事局長  大野恒太郎君
   参考人
       中央大学教授   奥田 安弘君
       弁護士
       日本弁護士連合
       会家事法制委員
       会副委員長    遠山信一郎君
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  本日の会議に付した案件
○国籍法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
○政府参考人の出席要求に関する件
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○委員長(澤雄二君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告をいたします。
 昨日、西田昌司君、舛添要一君、松浦大悟君及び鈴木寛君が委員を辞任され、その補欠として山崎正昭君、山谷えり子君、田中康夫君及び白眞勲君が選任されました。
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○委員長(澤雄二君) 国籍法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、お二人の参考人から御意見を伺います。
 本日御出席いただいております参考人は、中央大学教授奥田安弘君及び弁護士・日本弁護士連合会家事法制委員会副委員長遠山信一郎君でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 ありがとうございます。
 議事の進め方について申し上げます。まず、奥田参考人、そして遠山参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いをしたいと思っております。
 それでは、奥田参考人からお願いいたします。奥田参考人。
○参考人(奥田安弘君) 中央大学の奥田です。本日は、このような場で話をする機会を与えていただき、ありがとうございます。
 さて、今回の国籍法改正について意見を述べよということですが、改正法案は本年六月四日の最高裁判決をきっかけとしておりますので、最初にこの判決の趣旨を説明し、さらに若干の補足をしておきたいと思います。
 御承知のように、我が国の国籍法は血統主義を採用しておりますが、血統主義とは親の国籍によって子供の国籍を決定することでありますが、そこで言う親とは法律上の親を意味します。すなわち、大ざっぱに申し上げますと、国籍法で言う父親や母親というのは民法上の父子関係や母子関係と連動しているとお考えいただいて結構かと存じます。
 ところが、この血統主義を定めた国籍法二条一号をよく読みますと、出生のときにそういう法律上の父親又は母親が日本人であることを求めています。この「出生の時に」という箇所が非常に重要でありまして、民法によりますと、母子関係は原則として分娩の事実により成立すると解されていますが、父子関係はそういうわけにまいりません。父母が結婚している場合は、母が産んだ子は夫の子と推定され、また婚外子であっても生まれる前の認知、すなわち胎児認知があれば出生のときに法律上の父子関係が成立します。これに対して生後認知の場合は、言わば出生のときには法律上の父が存在していなかったことになるので、国籍法二条一号による国籍取得は認められない、このように解釈されております。
 そこで、国籍法三条が問題となるわけです。生後認知の子供は国籍法二条一号による国籍取得は認められませんが、出生後の届出による国籍取得であれば認めてもよいのではないかという点が問題となります。ところが、現行の国籍法三条一項は、認知だけでなく父母の婚姻を求めています。すなわち、出生のときは婚外子であったわけですが、出生後に父の認知があり、かつさらに父母の婚姻もあれば子供は嫡出子になる、これを準正と呼んでおりますが、こういう準正子にだけ届出による国籍取得を認めております。
 この届出による国籍取得は出生による国籍取得の血統主義を補完するものであると言われておりますが、その国籍法二条一号の方は父母の婚姻を要件としておりません。日本人母の子供は婚外子であっても日本国籍を取得しますし、また日本人父の婚外子も胎児認知があればやはり日本国籍を取得します。日本人父の婚外子であって生後認知しかなかった子供、すなわち準正子にならなかった子供に対し、届出による国籍取得さえ認めないのは行き過ぎではないか、このように最高裁判所は考えたのでしょう。さらに、社会の変化や外国の立法動向、我が国が批准した国際人権条約もあるということで、今回の違憲判決が出たものだと理解しております。
 それでは、このような子供には簡易帰化の道があるではないかという疑問に対してどのように答えるか。最高裁はこの点について余り詳しい説明をしておりませんが、少し私の方から補足しておきたいと思います。
 簡易帰化と言いますが、国籍法は法務大臣が帰化を許可する最低条件を定めているだけです。これは二つの意味を持っています。第一に、これらの最低条件を満たしても帰化が許可されるという保証はないということです。法務大臣は、更に様々な事情を総合的に考慮して、自由裁量により帰化を許可するかどうかを判断いたします。第二に、これらの最低条件を満たす限り、一般の外国人と日本人父の認知を受けた子供は全く同じスタートラインに立つということです。すなわち、一般の外国人は二十歳以上であり、かつ五年以上日本に住所がなければならないわけですが、これに対して、日本人父の認知を受けた子供は未成年であっても構わないし、現に日本に住所があればその期間は問わないとされています。
 しかし、これらの最低条件を満たしている場合、日本人父の認知を受けた子供が一般の外国人よりも緩やかに審査をされるというようなことは、少なくとも法令上の根拠を見出すことはできません。しかも、日本に住所を有することが最低条件となっていますが、本件の第一次訴訟の子供ですが、母親とともに日本からの退去強制を求められていたわけですから、この最低条件さえも満たすのが不可能な状況であったことに注意していただきたいと存じます。すなわち、第一次訴訟の子供は住所条件という最低条件さえも満たさないわけですから、帰化の可能性はその当時はなかったということです。
 次に、仮装認知の問題であります。
 皆さん御関心のあるところだと思いますが、仮装認知が増えるのではないかという疑問につきましても、最高裁判決自体では余り詳しいことが述べられておりません。この点については、私はドイツの例を取り上げたいと思います。
 一部の報道では、今回の国籍法改正が成立すると仮装認知が増えるおそれがあるとして、ドイツにおける今年三月の法改正を取り上げております。しかし、このドイツの法改正は国籍法の改正ではありません。国籍法の方は、相変わらずドイツ人父親による認知だけでドイツ国籍の取得を認めております。今年三月に行われたのは民法の改正でありまして、ドイツの官庁が認知無効確認の訴訟を提起できるようになった、そういう内容でございます。
 すなわち、ドイツの民法では、改正前は、認知をした父親本人又は認知を受けた子供、さらに母親しか認知無効確認訴訟を提起することができなかったのです。これは法律上、明文の規定による制限です。そこで、新たに官庁もこういう訴訟を起こせるようにしたわけです。
 このドイツの例は、三つの点で注意する必要があります。
 第一に、ドイツは、仮装認知が増えたからといって、認知のみによる国籍取得をやめませんでした。つまり、国籍法の方は改正しなかったということです。これは、真実の認知を保護する必要があると考えたからでしょう。
 第二に、ドイツでは認知無効確認の提訴権者が制限されておりますが、日本法にはこのような制限がありません。それどころか、公正証書原本不実記載などの罪により刑事裁判で有罪判決が確定した場合は、裁判所から本籍地の方に通知がなされまして、本籍地の市町村では職権によって認知の記載を抹消することになっております。
 今回の国籍法改正が成立した場合は、さらに日本国籍を取得したとして戸籍が作成された子供についてもその戸籍は抹消されることになります。したがって、ドイツの三月の法改正はある意味では日本法では必要のないことであり、またある意味では仮装認知の防止と国籍取得を安易に結び付けるべきではないということを示しております。
 第三に、ドイツではドイツ人父親の認知があれば自動的にドイツ国籍の取得を認めており、我が国のように更に加えて国籍取得届を出させるというようなことはしておりません。これは極めて大きな違いであります。
 国籍取得届の詳細は、我が国の場合、国籍法施行規則一条や昭和五十九年の通達などに定められておりまして、これらも改正が予定されているようですが、この国籍取得届の取扱いは市町村への認知届とは大きく異なります。すなわち、届出人は必ず自分で法務局に出頭し、届出の際に届書や必要書類の点検を受けるだけでなく、いろんな質問をされた後に受付をしてもらいます。さらに、受付後も法務局の職員は届出人や関係者の自宅に赴いて事情聴取をするなどの権限が与えられています。このように慎重な手続を経て初めて国籍取得証明書が交付され、子供の戸籍をつくることができるのです。したがって、認知のみで国籍を与えるドイツと比較いたしますと、かなりハードルが高いと言えます。
 さらに、届出による国籍取得は、それ以前に取得した外国国籍を喪失する可能性が高いことも指摘しておきたいと思います。例えば韓国がそうですし、恐らくフィリピンの場合もそうであろうと思われます。これらの国から見た場合、届出による日本国籍の取得は自己の意思による外国国籍の取得となるからです。
 我が国の国籍法も、自己の志望による外国国籍の取得を日本国籍の喪失原因としておりまして、これと同様の規定が諸外国にもあるということです。したがって、外国人母親から生まれたことによりその国籍を取得した子供は、届出により日本国籍を新たに取得した場合、母親と同じ国籍を失うことを覚悟しなければなりません。これは国籍取得届を慎重ならしめる要因の一つとなり得ます。
 ただし、ここで問題となるのは、このような届出による国籍取得が外国政府に通知されるかどうかということです。この点の実務がどのようになっているのかは私も詳しく存じませんが、仮に全く通知がなされていないのであれば、新たに通知を検討すべきではないかと思います。
 少なくとも、届出によって日本国籍を取得した場合、韓国国籍は確実になくなるはずですし、恐らくフィリピン国籍もなくなるはずです。しかし、本人や関係者はこのような国籍喪失を自覚していないおそれがあるので、国籍取得届の際に十分に説明するとともに、本人が自発的にパスポートなどを返還しない場合に備えて我が国から相手国政府に通知をするということが望ましいように思います。
 それでは、国籍法改正法案自体を見ていきたいと思いますが、父母の婚姻要件を除いて、単に認知があれば届出による国籍取得ができることになっています。このように改正法案が父母の婚姻要件を除いただけにしたのは、もちろん最高裁判決を慎重に検討した結果であろうと思います。父母の婚姻要件に代えて他の追加的な要件を設ける可能性は確かに最高裁判決でも否定されておりません。しかし、判決は「合理的な選択肢の存在の可能性」と述べておりまして、追加的な要件が合理性を有すること、すなわち合憲の範囲内であることを求めております。そして、判決自体は何が合理的な選択肢であるかを示しておりません。
 恐らく、父母の婚姻要件を除いたその他の現行法上の要件、すなわち二十歳未満であること、父親が子供の出生のときだけでなく届出のときも日本国民であること、さらに法務大臣への届出、これらの要件で足りると考えたように思います。そして法案の起草者も、合憲の範囲内で考え得る追加的な要件、すなわち新たな差別を生み出さないような要件は見当たらないと考えたからこそ父母の婚姻要件のみを除いた法案を提出したのだと思います。
 次に、罰則については私の専門外のことでありますので、コメントを差し控えさせていただきます。
 さらに、経過規定につきましても、これこそ立法者の裁量の範囲内に属することですから余り多くのコメントはいたしませんが、かつて尊属殺違憲判決の際にも、恩赦により減刑や刑の執行免除がなされたことが思い起こされます。そのような意味では、今回の国籍法改正や経過規定によっても救済されない人々、すなわち、経過規定はかなり広いですが、それでもなお、国籍取得届が出せたはずであったのに父母の婚姻要件があるためそれができなかった人々、こういう方々についても、帰化の審査の際には特段の配慮をするというような措置が考えられます。
 誤解のないよう申し上げますと、私は帰化の制度を変えろと言っているのではありません。現行の制度の枠内で、すなわち自由裁量の範囲内でそのような配慮をするという方針を示すことにより、関係者の方々の気持ちを和らげることができるのではないかということが言いたいのです。恩赦の場合も上申書を出した人がすべて減刑や刑の免除を受けたわけではありませんので、今回の場合も必ず帰化を許可するということにはならないと思います。
 以上で私の話を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
○委員長(澤雄二君) どうもありがとうございました。
 それでは次に、遠山参考人にお願いをいたします。遠山参考人。
○参考人(遠山信一郎君) お手元の陳述骨子を御覧ください。
 私の肩書は日本弁護士連合会が付いておりますが、これから述べるお話は私の個人の見解でございます。
 まず初めに、考え方のスタート地点は子供の基本的人権の保障にあるというところから話を進めたいと思います。
 そして、本改正の憲法上の意味合いについては、基本的人権の保障の視点からすると、最高の判例もおっしゃっているように法の下の平等、そして、国籍を取得する権利というものも、国籍自体が人の生存にかかわるものだと考えますと、憲法上も保障されているのではないかというふうに考えております。視点を変えて、民主的統治機構の視点ということになりますと、これは主権者たる国民の拡大という問題になります。ここら辺が本改正の憲法上の意味合いの骨子ではないかというふうに考えております。
 次に、条約上の意味合いということで、資料一と資料二を付けさせていただきました。ヒントがとても満載された条約で、私の愛読書でもあるのですが、今回は自由権規約とその延長線にある児童の権利に関する条約を付けさせていただきました。
 これは、資料一の方でいきますと、自由権規約の二十四条というところに、出生による差別を受けない、そして、すべての児童は、国籍を取得する権利があるというふうにうたい込んであります。
 そして、その後、我が国が批准した児童の権利に関する条約では、二条、七条、九条、十条、十八条と関連条文がございます。七条を見ていただくと、児童は、出生の後直ちに登録される、そして国籍を取得する権利を有するというような記述がございます。九条とか十条とか十八条というのは、さらに子供を父母から分離してはいけないとか家族の再統合とか、そういった事柄が書いてあるのですが、これは出生、国籍、家族というものが実は一体として有機的にとらえるものなのだということをこの条約はうたい込んであるわけですね。ですから、とても何か示唆に富む条約だなと思っておりますし、我が国は批准しておりますので、この条約との要するに調和ということも立法においては考えなくてはいけないのではないかということで、ここで御紹介させていただきました。
 次に、家族法制上の意味合いというところでは、非常に言葉としてはよく使われている家族の多様化、グローバリゼーションということがよく言われます。それに対する法制的対応として考えるときに、どうも法律婚、つまり婚姻秩序の尊重に揺らぎが出ているんではないかというふうに考えております。それはどこに出てくるかというと、婚内子と婚外子とのいわゆる平等化という流れの考え方にこれは表れているんではないかと思っておりますし、今回の改正もここで一つの合流点を示すんではないかというふうに考えております。
 さらに、国籍取得の要件として任意認知ということを考えたときに、ここの場面では私法としての民法とそれから公法としての国籍法が言わば交錯します。この関係どう考えるかというのも結構面白い問題なのですが、ここでは、国籍法は言わば血族主義を取っている、そして私法である特に家族法では血族集団の秩序ということを考えているという点ではセットで考えざるを得ないのかなというふうに今のところ考えております。
 次に、偽装認知リスクの国家管理の手法という、ちょっと何か官僚のような題名を付けてしまいましたが、これは私が思い付く範囲でどんな管理の仕方があるのかなというリストを作っただけでございますので、どこがいい、どこが悪いということは今はちょっと差し控えさせていただきます。
 事前管理ということでは、DNA鑑定というものの義務付けというのが議論の俎上に上がっているということは耳にしております。これについては、だれの費用負担で、どの業者が行って、さらにその正確性をどう担保するかというなかなか実務的に厄介な問題もあります。というふうに実務家的なセンスでは考えております。
 そして、その届出の手続のところで、一定の調査、スクリーニングができないかという議論につきましては、これは十分に実務的にもいろいろな行政手続ではなされているとは思うのですが、ちょっと気になるところでいうと、過度の窓口規制にならないようには配慮しなくちゃいけないかなというのがここの私の考えでございます。
 さて、事後管理の問題でいきますと、一応三つほどA、B、Cと分けて考えてみました。一つは、人事訴訟、認知無効訴訟ですね。今、奥田先生の方からドイツの話を聞いて目からうろこだったのですが、ここで問題となるのは、ちょっとマニアックな問題なのですが、日本で認知無効訴訟を公益の代表者たる検察官ができるのかしらというのが実は議論としてはあります。これは民法の七百八十六条の解釈の問題なのですが、ドイツでは、もう先走ってとは言いませんが、ドイツではそういった公の方で認知無効の訴訟が提起できるということになっているのを聞いて、非常に勉強になりました。
 この認知無効訴訟ということになりますと、その訴訟の空間の中でDNA鑑定というものが登場してくると思います。さらに、刑事処罰ということで刑事訴追をするということになりますと、捜査方法若しくは刑事訴訟内での証拠としてのDNA鑑定というのがクローズアップされるというふうに考えております。
 ちょっと私の考えでは、先ほど言いました事前管理でのDNA鑑定とそれから民事訴訟、刑事訴訟で登場してくるDNA鑑定はかなり質が違うものだと考えております。なぜならば、民事訴訟、刑事訴訟の空間でのそのDNA鑑定は法的なバックアップがしっかりでき上がっていますので、その正確性が担保されておるというところで質的に違うのではないかという実務家的な感覚を持っております。
 三番目、Cと書きましたが、行政の方で例えば国籍取得後の監護養育というか家族の実態というのを確認するのはどうかということを、勧めているんではなくて、ちょっと考えてみました。一種のトレーサビリティーなのかなという気もするのですが、ここら辺も行政の方が仮に偽装の事実若しくは事実に裏付けられるような関係を認知した場合、この場合は多分、捜査の端緒と考えるのであれば刑事訴追の方に移るでしょうし、公務員がそういう事実を知ったときには刑事訴訟法上告発義務がありますので、ここら辺でCからAやBに移行するのかなというふうな感覚を持っております。
 さて、じゃ、そういった事前管理、事後管理ということを考えたときに、この管理手法の設計、選択、運用の配慮点って何なんだろうかと思ったときに、思い付くままA、B、Cというふうに付けておきました。
 Aは関係当事者の人権。取りあえず私は、比較的専門的に勉強している個人情報について言うと、DNA情報というのは究極の個人情報かな、センシティブ情報の最たるものかなと思っておりますので、その入手、保管、利用については最大限に慎重にあらねばならぬという力が働くと思っております。
 そして、Bについては、リスクの実現ですね。どの程度偽装の認知のリスクがあるのかということについては、ただ懸念されるというだけでは少しちょっと力が弱いので、若干、官庁の方が持っている現実的なデータをしっかり検証する必要があるのかなとも思っております。
 さらに、リスク管理費用とその効果ですね、それから費用負担ということもしっかり考えなくてはいけないというふうに思っております。
 もう私の話はこれでおしまいなのですが、この問題の根底にあるものは一体何なのかというふうに一文入れさせていただきました。これはこの場に立って考えようということでこの一文を入れたのですが、様々なお考えがあると思っているんですね。
 例えば、国籍が商品化されちゃうのは困るなとか、それから男女間の倫理が少し問題じゃないかとか、それから国の安全保障の問題もあるんじゃないかとか、それから国の財政の問題もあるんではないかとか、本当に様々な思いがこの問題には交錯すると思うのですが、やはりこの問題の根底にある本質的な問題というのは、軸足を人権保障に置かざるを得ないだろうと。そうすると、この人権保障に対応する合理的な制限は当然考えざるを得ませんので、そこら辺を立法府の良識で構築していただければよろしいのではないかというのが私の、極めて雑駁でございますが、陳述の中身でございます。
 以上です。
○委員長(澤雄二君) どうもありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○松岡徹君 民主党の松岡でございます。
 今日は、両参考人、本当に忙しい中ありがとうございました。
 限られた時間でございますので、我々もここまで議論が世間を騒がすということについては想像していなかったんですが、奥田先生がおっしゃったように、私たちの当初の認識は、最高裁の六月の判決が違憲である、今の立法が、国籍法の三条一項が違憲であると。立法府である我々とすれば、我々が作った法律が憲法違反であると言われているわけでありますから、当然のように、そこをどう正していくかという立場で今まで来たわけでありますし、当然そうならざるを得ないというふうに思っています。
 ただ、それによって起きてくる、先ほど遠山参考人がおっしゃったように、リスクの問題とかいろんな派生する問題の心配がございます。そのことと今回の法改正の部分とは若干性格が違うかのように思っております。しかし、考えられるこの法改正によって起きてくるであろう問題をどう対処していくのかというのは、当然課題として積み上げていかなくてはならないと思いますが、そういう意味で、まず分けて、今回の最高裁の判決結果を受けて、最高裁がなぜ違憲と言っているのかというところなんですね、そこをやっぱり我々はまずしっかりと受け止めたいというふうに思っています。
 その上で、大きく、先ほど奥田参考人がおっしゃったように、まあ最高裁の判決の中にもありましたが、社会の変化であるとか、あるいは諸外国の、海外の動向の変化でありますとか、それから国際人権諸条約の対応、責任等々もあるというふうに言われています。
 この国籍法三条一項の結果によって差別が生じて違憲であると言っていますが、この社会の変化というものを、これは後のところでもちょっと議論に重なってくると思いますが、社会の変化というものを最高裁はどういうふうに言って、参考人お二人はどういうふうに受け止められて、それが改正されるべき重要な根拠となり得ているのかどうか、すなわち特徴的な社会の変化という内容をできればお二人からお聞かせいただきたいというふうに思うんですが。
○参考人(奥田安弘君) まず、違憲判決の意味ですが、我が国の違憲審査はもちろん具体的な事件の解決のためのものでありまして、つまり法律を適用した結果が違憲状態なんだと、こういうことであります。ですから、最初から立法が間違っていたとか、立法過誤ですね、そういうようなことを言っているわけではないというふうに私は理解しております。
 その上で、なぜ違憲かということなんですが、今回の原告の子供たちの状況を見たところ、日本人父親の認知を受けている、そして国籍取得届を出していると、そういう事実に対して日本の国籍法三条を当てはめたところ、これでは国籍取得届を出しても国籍が取得ができないというその結果を問題としているんだということだと思います。
 御質問の社会の変化の方ですが、判決の方を見ますと婚外子が増えたということを言っておられますが、私がそれを少し補足して申し上げたいと思います。
 日本人同士の婚外子の数は約二%程度と言われておりますが、私が調べたところ、外国人母から生まれた婚外子は一〇%に達しております。その辺が判決では詳しく述べられておりませんが、私は、その点で日本人の母親の婚外子と外国人母親の婚外子だと随分状況が違うんだろうと思っております。
 ただ、私はこの裁判で意見書を随分出したんですが、私自身の主張としましては、数は問題ではないんだろうと思っております。たとえ一人でもそういうふうな子供さんがいる、婚外子であって父母の婚姻がないために認知があるのに国籍取得ができないという子供さんが一人でもいれば、やはりそれは違憲という判断をするべきなんだろうというふうに思っております。
 以上です。
○参考人(遠山信一郎君) 社会の状況の変化ということについては、私の骨子に書いてあるような言わば婚姻秩序に対する考え方に対して裁判所も少し柔らかくなったのかなという認識を持っております。
 裁判所の素朴な憲法センスというふうに私理解というか考えておりまして、婚内子とそれから婚外子という大人の事情で国籍取得要件に差を設けられるというか、それがあるということ自体が非常に不合理である、憲法的には非常に不平等であるという感覚が最高裁の中で裁判官の方々にセンスとして言わば沈着したのでこういう判決が出たのではないかなというふうに思っております。
 以上です。
○松岡徹君 時間がわずかですので。
 奥田参考人にお聞きしたいんですが、先ほど奥田参考人がおっしゃいました例えばドイツの例でございますね。今年の三月の改正で国籍法ではなく民法の部分を改正した、すなわち認知の無効確認訴訟ができるところを変えた、すなわち官庁自身もできるというふうに変えたと。その背景ですね。認知すれば国籍を取得できていたのが、今回の法改正の背景となったのは一体何なのかというのをお教え願いたいということが一つと。
 もう一つは、今、遠山参考人もありましたDNA鑑定というのがあります。その認知をする場合、その日本人の父親が本物の父親なのかということを確かめる作業とすれば、日本には様々なゲートがあるわけですが、新たにDNAというのが出ています。そのDNAは、先ほど遠山参考人がおっしゃったように、もう要するに究極の個人情報になります。しかし、そうではなくて、取られる側が、そういう場合にDNA鑑定をするということ自身が例えば人権侵害には当たらないのかどうか、違憲には当たらないのかどうかということも含めてちょっと危惧するところがございます。その点については、遠山参考人、奥田参考人からも簡単にお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(奥田安弘君) ドイツの立法の背景について今直ちに述べよと言われましても、ちょっと私の方も調べる時間をいただければと思うわけでありまして、正確なことをお答えするためにはやはり調査が必要でございますんで、一般的なドイツの、今のドイツの立法と日本の立法ですね、これは国籍法や民法、非常に似ていますが、違うということだけ説明したいと思います。
 まず、国籍法の方は日本と同じ血統主義です。ただ、認知による国籍取得について、あちらは国籍取得届を要件にしていない、認知届だけです。その認知届が現実的にどういうふうに審査されて受理されているのかということも、これまた調査を要することですので正確なことは今お答えできませんが、やはり日本で行われるであろう国籍取得届の審査と比べるとかなり緩やかなんじゃないかということは推測できます。ですから、ドイツで仮装認知が仮に増えたからこういう改正をしたんだとしても、日本も同じようになるかどうかというと、それは分からないわけであります。
 次に民法の方ですが、認知無効確認の提訴権者を制限する規定というものがドイツにはありますが、日本にはそういうものがない。先ほど遠山先生がそれは日本法で可能かどうかというのは一つの問題だとおっしゃいましたが、日本の場合は、ただそういう訴訟をしなくても刑事裁判の方で有罪が確定すればそれは戸籍の訂正を自動的にいたしますんで、結局、国が訴訟を起こすというようなことまでしなくても済むじゃないかということであります。その違いをやはり認識しておく必要があるんだろうと思います。
 次にDNA鑑定の方ですが、私、今日ここに来る前に衆議院の方の議事録を拝見いたしまして、そこでイギリスの例を取り上げられた方がいらっしゃったようなんですが、イギリスでは実は認知制度というのはございません。英米法一般の話なんですが、英米法系の国では認知というようなことで包括的な親子関係を成立させるというものがそもそもないんです。国籍取得や扶養請求や相続や、そういうそれぞれのことが問題になったときにその前提として親子関係を確定すると。ですから、その時々の証明の問題になるわけですね。
 ところが、日本の場合は認知制度というものがありますんで、そして認知があれば法律上の親子関係は成立すると。つまり、生物学的な親子関係ではなくて法律的な親子関係、これを国籍法は基本にしているわけですから、余り生物学的な親子関係にこだわるというのはどうかなと。
 DNA鑑定自体の技術的な問題は遠山先生お答えになったとおりですので、私の方からは特に補足することはございません。
 以上でございます。
○参考人(遠山信一郎君) DNA鑑定の義務付けが人権侵害かと問われれば、まごうことなく人権侵害だと思います。問題は、その人権侵害を正当化する合理的な理由が例えば憲法的な価値とかということで見出すことができるかというふうに思っております。
 繰り返しになりますが、本当にこれ究極的な個人情報なものですから、よほどの正当な理由がない限りはやはりこの人権は、個人情報の人権は守らなくてはいけないというのが私の考えでございます。
 以上です。
○松岡徹君 どうもありがとうございました。
○丸山和也君 自民党の丸山ですけれども、よろしくお願いします。
 お二方に二、三点、同じ質問を順次さしていただきたいと思いますけど、若干やや大まかな、大まかというか、大局的な観点からどういうお考えを持っておられるかということをひとつお聞きしたいんですけれども。
 たしか私の記憶では、福沢諭吉が明治維新のころに封建制度は親の敵であるとたしか言って、有名な言葉、有名かどうか知りませんけど、私の記憶の中にあるんですけど、やはり日本のいわゆる、まあ今封建時代じゃないはずなんですけれども、いわゆる戸籍制度、戦前は家族制度というのがありましたから、そこに、いわゆる戸籍制度と国籍制度というのはこれ非常にリンクしている問題だと思うんですけれども、いわゆる戸籍万能主義というか、それと婚姻万能主義というか、これの結び付いたところで、実際この国籍法の問題にしたりあるいは他の民法との関連の中で恐らく最高裁が言うような法の下の平等が発生してきていると思われるんですが。
 そこでお聞きしたいんですけれども、そもそもいわゆる日本の言う戸籍というような制度が、私も若干は勉強しているんですが余り専門家じゃないので、世界的に見て非常にたぐいまれな制度なのか。韓国なんかはあると思うんですけれども、外国で戸籍というのは余り、私もアメリカにおりましたけど、そういう発想がないものですからお聞きしたいんですけれども、戸籍というのは、世界の中で日本的な戸籍というのはどのように位置付けされるのかということを一点お聞きしたいのと、それからいわゆる二重国籍の問題なんですけれども、例えば日本人が、最近よくあるんです、日本人女性が外国人男性と結婚すると、当然といいますか、例えばヨーロッパならヨーロッパの国籍を取得しますね。すると、日本の国籍法にすると国籍の選択という義務があるんですけれども、要するに二重国籍を原則として日本の国籍法は認めないんですけれども、これについて、例えば二重国籍を許容する国もいっぱいあるんですけど、この点についてどのようなお考えをお持ちなのかと。あるいは二重国籍を、例えば日本人女性が外国人と結婚した、しかし、日本にいる父親、母親が老後になって介護の必要が出てきた、すると、日本に帰るときは今度外国人として帰らなきゃならないとか、いろんな問題がたくさん出ているんですね。だから、二重国籍問題というのも避けて通れない問題だと思うんですよ。こういう点についてどういうお考えかということが第二点と。
 第三点として、今回の六月の最高裁判決というのは、この問題だけじゃなく、例えば嫡出子と非嫡出子の違いによる、やっぱり親の地位というか位置付けによって子が不当に差別をされることは法の下の平等に反するというところがやっぱり僕は主眼だと思うんですね。そうすると、民法九百条とかの問題なんかも避けて通れない近々の問題になると思うんですけれども、こういう点についてどのようにお考えか、この判決の効果といいますか、思想的な流れとしてどのようにお考えかということを簡潔にお聞きできたらと思っています。
○委員長(澤雄二君) すべての質問を両参考人でよろしいですね。
○丸山和也君 はい。
○委員長(澤雄二君) じゃ、今度は遠山参考人にお願いいたします。
○参考人(遠山信一郎君) まず、戸籍については、先生以上の知見を私持っておりませんので、ちょっとお答えができません。
 二重国籍の問題は、実は今回の改正が第一楽章であれば、第二楽章の問題かなというふうに思っています。たしか衆議院の附帯決議にも後ろの方にそのような重国籍のことが書いてありました。
 私の認識としては、例えばノーベル賞をアメリカに国籍を取った人が出たときに、実は日本人だったというときに日本の誇りと言いづらいとか、そういうふうなこともありますので、二重国籍ということは今まではどちらかというと忌み嫌われたという風潮があるかなと思っていますけれども、これからはそれも揺らいでいくのではないかというふうな感覚を持っております。
 先生がおっしゃっていたのは非嫡差別の問題なんですが、これも実は第二楽章だと思っておりまして、今回は、個別の判例のテーマとしてはこの国籍の問題でございました。でも、そのセンスの、最高裁の物の考え方の本流にやっぱり非嫡差別はいかぬというのがあると思います。ですから、これはその流れからすると、親の都合で婚外子になったということで不当な不利益を与えるのは、これはもう憲法違反であるという流れにあるのかなというのが私の大局的な感覚です。
 以上です。
○参考人(奥田安弘君) 丸山先生の御質問に対して私の答えが少しずれていたりしますと、そのときは御指摘いただきたいと思いますが、まず戸籍が万能かどうかという、これ質問の中に入っていませんでしたが、戸籍はあくまで公証力がある、公に証明するという力があるだけでありまして、それは実際に例えば後で裁判で覆るというようなことはあるわけです。ですから、万能という言い方は少し違うかなと思っております。
 その上で、世界の中での我が国の戸籍制度ということですが、家族登録制度というふうに言い換えますと、それはどのような国、どこの国でもあるわけです。出生、婚姻、離婚、死亡、そういうものを全部一つにまとめてあるという意味では、日本の戸籍制度というのはかなり優れていると思っております。例えばアメリカなどでしたら、出生届、婚姻届、死亡届というものが全部ばらばらでありまして、それを一つにまとめるものがない、ですから丸山先生が向こうでは戸籍を見なかったと、こういうようなことだろうと思います。
 家族登録というのは、しかしどこにも、どこの国でもあるわけでして、それは登録されたことによって、じゃ子供が国籍を取るのかというと、それは逆でありますね。日本人である、国籍法によって日本人であるということが確定されて初めて戸籍ができると。戸籍あって国籍じゃなくて、国籍があるから戸籍だという、この順番を考えますと、そういうことでいいますとほかの国と何ら違いはない、共通しているものだと思います。
 次に二重国籍の問題ですが、私が最初の説明で少し申し上げましたように、今回届出によって日本国籍を取得した場合、外国国籍を失う危険というのが非常に多くあります。ですから、私は裁判ではそれは望ましくないんじゃないかということを主張しましたが、しかし最高裁判決が出て、届出は残しておくべきだと、こう判断されたわけですから、私がそれに従って考えますと、そういう自分の意思による国籍取得によって元の国籍を失う、これは実は自動的でございまして、例えば日本人がアメリカに帰化して、それをしかし日本の戸籍とかに届け出なければ日本国籍をあたかも失ってないかのように見えますが、実は国籍法では既にもう失ったことになっているわけです。私は、そういう意味で、むしろ仮装認知より仮装二重国籍の方が問題かなと思っています。
 今回、私が言いたかったのは、届出によって日本国籍を取得しましたということを元の国籍国に通知するということ、これが非常に重要だろうと思います。本当はもう元の国籍を失っているのに、あたかも失っていないかのようにパスポートもそのまま持っているというようなことは望ましくないだろうということでありまして、この辺が丸山先生の御質問とかみ合っているかどうかというのはちょっと私分かりませんが、私の方が言いたかったのはそういうことであります。
 二重国籍一般の問題については、今コメントを差し控えさせていただきたいと思います。
 三番目の非嫡出子差別の問題ですが、子供にとってどうしようもないことということがすべて違憲だということにはもちろんなりません。社会的身分による差別は確かに憲法十四条で禁止されていますが、しかし、そこには合理性が問題となるわけです。婚内子と婚外子が全く同じかといいますと、それは同じではありません。それは嫡出子、非嫡出子という用語、言葉を廃止した国においても、やはり差別はないけど区別は残っているわけです。母が産んだ子供はその母の夫の子であるという推定、これはそういう嫡出、非嫡出という用語を廃止した国でも残っておりまして、その辺の区別はやはり残っているわけであります。
 したがって、今回の違憲判決の射程距離、射程範囲ということですが、これはあくまで国籍についてこれは不合理であったという判断をしたわけでありまして、相続分差別の方はまた合理性は別個に判断すべきことだということであります。つまり、問題によってやはり分けて考えていかなければならないということが申し上げたかったわけであります。
 以上です。
○木庭健太郎君 公明党の木庭健太郎でございます。今日は、奥田、遠山両参考人、貴重な御意見をありがとうございました。
 まず、今回の最高裁判決がどこまで射程にとらえているのかということを両参考人からお伺いしたいんです。
 今回の最高裁判決でございますが、別件の上告人九人も含めて十人の子供たちは、いずれも日本国内で出生し、日本国内で生活している子供たちです。また、最高裁判決の冒頭の事案の摘示におきましても、「日本国民である父とフィリピン共和国籍を有する母との間に本邦において出生した上告人が、」とされているわけでございまして、この判決の射程という、この日本国民から認知された子というのは、そのようないわゆる日本国内において出生し生活しているという子が前提ということになるのか、あるいはそのような限定なしに日本国民から認知された子と考えてよいのか、この点について両参考人から御見解をお伺いしたいと思います。
○参考人(奥田安弘君) 我が国の国籍法は血統主義でありまして、そういうことからいきますと、日本で生まれて日本で育って日本語しか話せないということは全く本来関係のない話でございます。親が両方とも外国人であれば日本国籍を取るわけがないわけでありまして、そういう意味では今回の裁判の原告の子供たち、これも日本で生まれて日本で育ったということは余り関係ないだろうと。
 それから、法律的な意味で日本における居住、これ住所と置き換えてみますと、法律的な意味の住所が第一次訴訟の子供にあったかというと、実はなかったわけですね。少なくとも国籍取得届の時点では不法滞在の状態ですから、退去強制命令を受けていたわけですから、法律的な意味の住所は日本になかったと、こういうふうに解されます。そうしますと、そういう子供についてしかし違憲判決が出たということは、つまり住所要件というのは全く問題外であろうと思います。
 それから、日本で生まれたということも、今回はやはりたまたまで、そういう子供たちについて裁判なされたというふうに理解しております。
 そういうわけで、今回の判決は、やはり法律上の親子関係が成立したんだから、だからせめて届出による国籍取得くらいは認めるべきであると、そういう趣旨が私の理解でございます。
 以上です。
○参考人(遠山信一郎君) 最高裁が国籍要件、つまり国との結び付き要件として、出生から住所ということも要件としているというメッセージを送っているというふうには私も考えてはおりません。その意味では奥田参考人と同様でございます。
 以上です。
○木庭健太郎君 当委員会でも一番議論になっているのがやはり偽装認知の、これをどう本当に防ぐのかという問題がずっと議論になっているわけなんですけれども、私は、奥田参考人が先ほどおっしゃったように、本法そのものも、例えば虚偽の届出に対する罰則を設けるとか、元々の法律の仕組みの中で、公正証書原本不実記載の問題も御指摘いただきましたが、ある程度仕組みの中でそういうものはあると考えているわけでございます。
 ただ、それでもなおかつ議論の中で大きく主張されるのは、先ほども御指摘ありましたが、DNA鑑定など親子関係の科学的な証明、これを提出を必ずすべきであるという議論は一向に消えないところでございます。
 先ほど遠山参考人は、そこまで求めることになればそれは人権侵害という問題も考えなければならないという御意見でございましたが、奥田参考人はこのDNA鑑定の問題についてどうお考えになられるのか、先ほどちょっとイギリスの例をおっしゃっていましたが、これを当初から仕組みとして導入するということについてどうお考えかということについて御意見を伺いたいと思っておりますし、遠山参考人からは逆に、でしたら、この偽装認知の防止対策としてこれからどんなことにある意味じゃ取り組まなければならないのか、もしそういう策について御意見があれば遠山参考人から伺っておきたいと思います。
 以上です。
○参考人(奥田安弘君) 偽装認知の問題に関しては、これが必ず防げるか防げないかというふうなことは、これは研究者の立場としては言えることではございません。どういう方法を取れば必ず確実だということは言えないわけでありますが、私は、その罰則とかDNA鑑定よりももっと重要な問題があるんじゃないかと思っております。
 今回、偽装認知を心配されていらっしゃるのは、例えば胎児認知の偽装なんかも随分多かったじゃないかという声がございます。しかし、胎児認知の場合は、これは出生による当然の国籍取得ですから、元々持っていた国籍を失わないわけです。これに対して、届出による国籍取得の方は元々持っていた国籍を失うという可能性が非常に高うございまして、やはりこの点はかなりハードルになるんじゃないかと。例えば、いわゆるオールドカマーの人たちが日本に帰化するかどうかを判断するときに、元々の国籍を失うということはかなり心理的な障害になっているというふうに聞いております。帰化の場合は元の国籍を失うということは皆さん御承知だと思うんですけれども、日本に帰化した場合、元の国籍を失うということは皆さん御承知だと思いますが、今回の届出による国籍取得で元の国籍を失うかどうか、これは余り認識されていらっしゃらないんじゃないかと思います。
 我が国の場合、こういう戸籍や国籍の問題について諸外国と協力関係を結ぶということをやっていらっしゃるのかどうか、これは私、詳しくは存じませんが、これから非常に重要になってくるだろうと思います。そういう情報交換ですね、届出によってこの度日本国籍を取得されましたということを相手国政府に通知をする、そうすることによってまた相互主義で相手国政府からも情報が得られるだろうと、そういう協力関係が非常に重要だろうと。そして、そういう協力関係を密にすることによりまして情報交換がなされれば、それは偽装ということはやりにくい環境ができ上がるわけでありまして、私はむしろそちらの方が重要だろうと思っておりまして、DNA鑑定はやはり必要ないというのが私の意見でございます。
 以上です。
○参考人(遠山信一郎君) 今回、私の陳述骨子の第五というところが思い付く範囲の国家管理の手法のメニューを示しました。私の考え方は、事前管理としてのDNA鑑定をこれは差し控えましょうというふうに考えておりますと、あと四つ残るんですね。ですから、この四つをうまく組み合わせて、なおかつ運用もしっかり実施してもらうというところでいかがなものかというふうに私自身は考えております。
 以上です。
○木庭健太郎君 終わります。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。お二人の参考人、本当に今日はありがとうございます。
 私からも、まず、奥田参考人に今回の最高裁判決の意義についてまずお尋ねをしたいと思うんですが、立法府の裁量の範囲とその制約原理をどのように考えるのかということについて、今回の最高裁判決は厳格な審査を行ったというふうにも言われているわけですけれども、その辺り、奥田参考人の御意見、特にどうして最高裁判決はそのような原理を取ったのかという点についてお伺いをできますでしょうか。
○参考人(奥田安弘君) まず、最高裁判決の意義でございますが、確かに、国籍というのは要するに自国民の範囲を決めるということですから、それぞれの国が自国の主権作用としてその範囲を決めると。その国にとって一番基本の問題ですからその国が自主的に決めるということは当然のことでございますが、これはただ、直ちにじゃ立法の専権事項になるかということにはならないんだろうと思うんです。憲法で違憲審査が認められている以上、裁判所は憲法違反だという判断はできるわけでありますから、したがって、今回、立法権の裁量を、立法権を侵害したというようなことにはならないだろうと思います。
 その上で、じゃなぜ違憲審査に当たっていわゆる厳格審査のようなことをしたのかという点でございますが、国籍は、アメリカなんかではこれは権利を取得するための権利というような言葉を使っておりますが、国籍を請求する権利、裁判で国籍を請求する権利というものは、確かにそういうものはなかなか実定法上は言えないだろうと思います。国籍はやはり国民としての法的地位でございまして、国籍請求権というものがあるかといったら、そういうわけではないでしょう。ただしかし、その国籍を取得することによって得られる権利というものが非常に重要でございます。参政権とか公務就任権とか言われますが、私はやはり日本に住む権利、居住権、これが一番重要だろうと思います。
 現に、今回の第一次訴訟の子供は、日本人父から認知を受けているにもかかわらず退去強制命令を受けていたわけですね。それは日本国籍はないんだから当然じゃないかと思われるかもしれませんけれども、そういう法律上の親子関係が成立しているにもかかわらず日本に住む権利がない。これは国籍そのものの問題ではないけれども、国籍が前提となって居住権が与えられるわけですから、だからその前提となる国籍もこれは人権として保護しようじゃないかと。法律用語で言いますと背景的権利と言っておりますが、そういう意味で重要な人権問題だからこそ厳格審査をしたのであろうということでございます。
 つまり、単なる利益とかそういう問題ではないだろう、かといって実定法上の権利というものでもないだろう、その中間的なものといいますか、実定法上の権利の前提となる国籍ということで厳格審査が必要になったわけでありまして、これがじゃどんな場合でも厳格審査でいくかということにはならないかと思います。
 以上です。
○仁比聡平君 さらに、奥田参考人、今回の最高裁判決が国際人権規約B規約あるいは児童の権利条約について触れているわけですけれども、この点は先生はどんなふうに受け止めていらっしゃるでしょうか。
○参考人(奥田安弘君) 判決を検討しますと、判決の中では差別の禁止というところだけが取り上げられておりますが、私は、これらの人権条約の中に国籍取得権も規定されているということに注目してほしかったと思っております。
 先ほど、実定法上の権利ではないと言いましたが、いわゆる背景的な権利としての国籍取得権です。この国籍取得権そのものは直ちに具体性を持つものではありませんが、なぜそうかといいますと、それぞれの国は血統主義を取るか出生地主義を取るか、それは自由でございますので、直ちに具体的な権利には結び付かないわけですが、ただ、それが差別の禁止と結び付くこと、差別の禁止という規定と相まって、血統主義を取るんだったら、そこで国籍取得について差別をしてはいけないと、こういう形でこの二つの規定が合体して具体的な権利を生むんだろうと思います。
 ただ、判決自体は条約違反ということを直接的には認定しておりませんで、いわゆる間接適用ですね、これ間接適用と言うんですが、条約を間接的に適用して我が国の憲法の解釈の参考にしたと。最高裁の立場はそうだろうと思っております。
 以上です。
○仁比聡平君 そうした形で、先生のお言葉で言えば間接的に適用したと、間接的にでも適用したというところの重みを私ども受け止めたいと思うんですけれども。
 この婚内子と婚外子の区別について、これが、父母の婚姻が子の意思や努力によって変えることができない事柄であるという判決がございまして、これは先ほど少し話題になりました相続分についての嫡出でない子の差別にかかわる平成七年の最高裁判決とはこれは違った考え方を取っているのかもしれないと。平成七年の相続分についての最高裁の大法廷は言わば大変広い裁量を立法にもゆだねているというふうにも感じられるわけですが、その辺りは先生はどんなふうにお考えですか。
○参考人(奥田安弘君) 平成七年の判決そのものについて詳しくコメントをするというわけにはまいらないと思いますが、私自身が感じますのは、相続分差別の場合、相続分の区別の場合ですね、これをなくした場合に、つまり婚内子と婚外子と相続分を同じにするということの意味が直接財産的なものに結び付いてくる。つまり、婚外子が二分の一であったものを平等にするということは、その分だけ婚内子の取り分が減るわけですから、そういうものを考慮するということはあり得ると思います。ただ、私は、それが適切かどうかということについてはコメントを差し控えたいと思いますが、一つの考え方として、つまり婚内子の方に影響があるというところが相続分の方では問題となり得るだろうと、こう考えております。
 ところが、今回の国籍の場合は、婚外子が国籍を取っても婚内子に何の影響もないわけです。その点では、相続分差別の合憲判決というのは今回の国籍法の判決とは全く関係がないといいますか、区別して見るべきだろうと、こういうふうに思っております。
 以上です。
○仁比聡平君 遠山参考人に一点だけお尋ねしたいんですが、実務家として、DNA鑑定の義務付けの問題について実務的には厄介なことを抱えることになると冒頭の陳述でおっしゃったと思うんですけれども、この厄介さというのをどんなふうにお感じになっていらっしゃるか、教えていただけませんでしょうか。
○参考人(遠山信一郎君) 実は私も自分でDNA鑑定したことがなく、先生方もしたことが余りないかとは思うんですね。実際の訴訟空間であれば法的バックアップの中でかなり正確性を持ってくるんですが、どの業者がどのくらいの精度でどれぐらいの料金でどのようなことを実際に行っているかということ自体は全く分からないわけですね。
 そうすると、その正確性をじゃ届出の役所がどうやって対応するんだろうか。例えば、一番簡単なアイデアというのは、国が指定業者をつくって、なおかつ費用も国が持って、それでやってしまうというのであれば、アイデアとしては出てくるんだけれども、とてもそういうことは国民的理解も得られないんじゃないかというふうないろんな選択肢がある中で設計がすごく厄介である、なおかつ、それに苦労するほど価値のある管理方法かという問題がそもそも論であるということで、かなり厄介な問題かなという印象を持っているということでございます。
○仁比聡平君 ありがとうございました。
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道です。
 今日は、お二人の参考人、大変貴重な御意見いただきましてありがとうございました。何点かお尋ねしたいというふうに思っています。
 最初に奥田参考人に質問いたしますが、先ほど国籍取得権についてのお話がございました。今回の法案の直接のきっかけになった最高裁の大法廷判決、法改正の論理の一つに国際人権規約、自由権規約と児童の権利条約がございます。この二つの国際人権規約からいきますと、国籍取得権をどういうふうにとらえたらいいのか。外国では、とにかく認知さえあれば、つまり法律上の親子関係さえあれば、新たに国籍取得という手続にどれほどの重みを持たせたらいいのか、そもそもそういうものは必要ないんではないかという議論さえ出てくる中で、日本は認知があって、かつ届出による国籍取得という新たな行為を求めているわけですね。
 ところが、この国際人権規約からいくと、私はまず国籍取得権あるいは届出による国籍取得、この法的性格をやっぱりきちっとまず整理をしておくことが必要なのではないか、こういうふうに思えてならないんですが、奥田参考人はこの点についてどういうふうにお考えでしょうか。
○参考人(奥田安弘君) 国籍取得権について、これら二つの国際人権条約では随分もちろん議論がございました。その辺の議論については私は研究いたして論文などを書いたりしたところでありますが、そこで問題となったのは、各国が血統主義と出生地主義に大きく分けて二つ相対立してあるわけです。人権条約に書かれております国籍取得権は、血統主義を採用せよとか出生地主義を採用せよと、そういうことは言っておりません。ですから、具体性に欠けるんじゃないかという議論もございました。
 今回の認知による国籍取得との関連でございますが、例えば、我が国のこういう国際人権条約に基づく報告書に対して人権委員会や子どもの権利委員会が勧告をいたしまして条約違反じゃないかというようなことを意見を述べております。どうしてそう言われたかといいますと、それは国籍取得権そのものからは直ちに条約違反とは言えないけれども、しかし差別の禁止という規定と結び付くことによって条約違反になるんだと、こういう理屈でございます。
 それでは諸外国はどうなのかということですが、諸外国の例を見るときにまず気を付けなければいけないのが、認知制度がそもそもあるかどうかなんです。先ほど言いましたように、英米には認知制度はございません。それから、ドイツも最初はなかったんです。認知制度がなくて、非嫡出親子関係そのものを、非嫡出父子関係ですね、これをかつては否定していたというような、そういう歴史がございます。最初から認知制度があった国、つまり日本が認知制度をつくるときにモデルにした国はフランスが第一ですし、ほかにベルギーやイタリアなんかがそうですね。で、フランス、ベルギー、イタリアにとっては、認知があれば国籍取得を認めるというのは、実はもうその国籍法を作った最初から当然のこととして認められておりまして、これを要するに戦前から戦後に至るまで一度もやめたことはございません。
 日本だけが、戦前の旧国籍法では認知による国籍取得の規定があったのに、戦後やめてしまったんですね。これは立法過誤かもしれませんが、この点はしかし問題にすべきではないだろうと思います。で、そのまま来まして、昭和五十九年の改正で準正による国籍取得、ただし届出による国籍取得を認めたと、こういう流れでございます。
 私、日本の国籍法と民法の、これ連動するということを申し上げましたが、そういうことからいくと、日本は最初からずっと認知制度があったのだから、やっぱり国籍取得に連動させるという方がむしろ自然だったんでしょうが、やはり国籍法は国籍法でその連動を制限するという判断、それをするということもまたそれは一つの判断であろうと思います。
 こういう認知制度があるにもかかわらず、しかし一度認知による国籍取得をやめてしまった国というのは、実は余りほかには見当たらないわけであります。ドイツの場合も、最初は認知制度がなかったけれども、一九六九年でしょうか、正確なことは覚えておりませんが、そのころに民法の方で認知制度をつくったんで、それじゃ国籍法も改正しましょうといって一九九三年に認知による国籍取得の規定を置いたわけです。
 だから、これは人権条約と直接関係する話ではありませんが、立法のことですから直接は関係しませんが、しかしドイツでもその九三年の法改正のときは随分やはり人権侵害じゃないかという議論がございまして、それで九三年にそういう規定を設けたわけですので、民法との連動ということからだけではなくて、やはり人権の観点から国籍取得を認めるべきであると。その背景にあるのは、国籍がないことによって生じる様々な権利の制限ですね、特に大きいのは居住権ですが、そういうものを考えると、やはり人権の観点を見逃すわけにはいかないだろうと思います。
 以上です。
○近藤正道君 時間がもうなくなってきているんですが、私は、その国籍取得権とかあるいは国籍届出による国籍取得、ここに余り大きなウエートを掛けるべきではないと、認知という制度があるんだから、できるだけその後はスムーズに国籍取得のところにいくべきだと、こういうふうに思っているんですね。
 ところが、日本の実務は、その国籍の取得の届けがあったときに、まあ様々、本人を出頭させたり、あるいはその父親の身分関係を様々証明させたり、あるいは最近では、この本法案の審議の中で出てきたことなんですが、母親について、外国籍の母親だけにDNA鑑定を求めたり、ある意味では過度の負担といいましょうか、あるいは新たな差別とも受け取られるような、そういうことをいろいろ今は準備をしているんですが、これは基本的にちょっとおかしいんではないかな、行き過ぎではないかな、こういうふうに私は思えてならないんですが、奥田参考人、遠山参考人、お答えいただけますか。
○参考人(奥田安弘君) 手短にお答えいたします。
 その国籍取得届は、今回新たにつくるわけではなくて、準正による国籍取得、昭和五十九年の改正のときに届出が必要だと、こう言ったわけで、今おっしゃったような手続もそのときに定められておりまして、今回の最高裁判決の趣旨は、ただ準正子と準正のない子供とを平等にしなきゃいけないと、そういう趣旨でございますので、判決の趣旨からいくと、もう届出のところは仕方のないことなのかなと思っております。
 ただ、私個人の考えでは、先ほどおっしゃったように、認知があれば当然国籍取得があるんじゃないか、届出を再度させるというのは変じゃないかと。これは立法論としては不適切ということは言えるかもしれませんが、最高裁判決に沿った改正ということであれば仕方がないかなということでございます。
 以上です。
○参考人(遠山信一郎君) 人権擁護という発想で考えると、確かにハードルをできるだけ下げるという発想はよく理解できる話だと思っています。
 ただ、一方で、だれをこの国の主権者とするかという問題でもあるんですね。そうすると、ちょっと言葉が乱暴ですけれども、むやみに主権者にするわけにはやはりいけないというお考えも十分に考えられて、そこが立法政策の問題にかかわるのかなと思います。
 だから、このハードルの取り方というのは、まさに立法府のバランス感覚で考えていただくしかないのかなというのが私の考えでございます。
○近藤正道君 終わります。
○委員長(澤雄二君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。本委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時三十一分休憩
     ─────・─────
   午後一時四分開会
○委員長(澤雄二君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国籍法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に内閣府大臣官房政府広報室長阪本和道君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長宮本和夫君、法務大臣官房司法法制部長深山卓也君、法務省民事局長倉吉敬君及び法務省刑事局長大野恒太郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(澤雄二君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
    ─────────────
○委員長(澤雄二君) 休憩前に引き続き、国籍法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○白眞勲君 民主党の白眞勲でございます。
 この法案を審査するに当たりまして、私は、この法律の改正自体というものは、国籍って一体何なのと、国籍自体の在り方とかあるいは考え方、さらには婚姻、結婚についての認識の変化というものがやはり根底にあるような気がしているわけなんですね。特に現在、日本には二百万人以上の外国籍の住民が居住しているわけですし、また、この前新聞に出ていて私びっくりしたんですけれども、今生まれてくる赤ちゃんの両親のうちのどちらかが外国人の親だというのが三十人に一人になっていると、こういう、実際、現実があるわけなんですね。
 そういう考え方からしますと、今回の判決というのは言わば現実を見据えた判決とも言えなくはないんじゃないんだろうかというふうにも私は思えるんですけれども。つまり、日本の国際化とともに、この国にいる外国人とどう付き合っていくのかということもそろそろ真剣に議論していかなければならない時期に来ているんではないかというふうに思っております。
 そこで、大臣にまずお聞きしたいんですけれども、この国籍法を改正するに当たりまして、日本における外国人とどのように付き合っていくのかということも併せて考えていかなければならない。つまり、当たり前のように隣に外国人がいる国にもう日本というのはなっているんではないんだろうかという中で、外国人に対する政策をどうするのかという基本的な問題もそろそろ認識していかなければいけないんではないんだろうか。この国における外国人政策って一体どうしていくんだ、外国人に対してどう接していくんだということもそろそろ、もちろん考えてはいるんだろうけれども、より真剣に考えていく必要性もあるんではないかと思うんですけれども。この我が国の法律に従って住んでいる外国人と共生していくことこそ、というのが私はこの国の国益にもなるというふうに思っているんですけれども、その辺のまず大臣としての認識をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(森英介君) 私も白委員と全く認識を共有するものでございますけれども、まず、そういう日本の法律に従った在留資格のある外国人につきましては、彼らがより日本で住みやすいように、また不当な差別がないように、そういった環境条件をつくっていくことが日本政府としても肝要だろうというふうに思います。一方で、不法滞在の外国人も随分といるものですから、こちらにつきましては今年度末に半減計画ということで今対処しているところでございまして、やっぱりそういった不法滞在者についてはなるべく出ていっていただくと、こういうことでございます。
 もっと、将来的には外国人をどういうふうに日本で受け入れていくかということは、移民政策と申しますかそういったことは、私自身は、私見を申し上げるならば、やっぱり余り無制限なというか、余り、何といいましょうか、開放的に受け入れるということにはいささか消極的なものでございますけれども、いずれにしても、そういった移民政策あるいは難民政策とかそういったことについては国民的な議論を深めていくことが大事だと思いますので、国会の場においても大いに議論をさせていただきたいと思います。
○白眞勲君 まさに大臣おっしゃるとおりだと思うんですね。やはりめり張りの利いた、外国人の人たちとどうこの国で共生をしていくか。つまり、もう法律違反してここに住んでいる人たちというのは、これは出ていってもらうと、これは当たり前だと私は思っているんですね。ですから、それも法律に従ってきちっと。しかし、ここできちっといわゆる外国籍の住民として生活している人たちに対しては、どう差別的な対応をしないでいかにこの国で住みやすく生活してもらうかということも重要な位置付けだと。
 そういう観点からすると、移民政策をどうしていくんだとかいうことも、国民的な議論として、外国人だから気に食わないから出ていけとかそういう話じゃなくて、どうしていったらいいのという部分の議論というのはこれから本当に私はもっともっと活発化させていかなければいけない、そういうふうにも思っているわけなんですが。
 そこで、事務方の方で結構ですが、ちょっとお聞きしたいんですけれども。現在、先進国、つまりOECD加盟国において、いわゆる重国籍を認めず、さらには、いわゆる血統主義ではなくて生地主義というんでしょうか、で、なおかつ永住外国人の地方参政権を認めていない国は何か国あるのか、お話しいただきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) 実は、地方参政権については当省の所管ではございませんので調べておりません。私も、EU諸国においては、EU諸国相互では地方参政権を認めるというような話があるということは聞いたことはありますが、定かな情報ではございませんので、ここでは差し控えさせていただきたいと思いますが。
 なお、諸外国の中で、原則として血統主義を採用し、出生における重国籍を基本的に容認していない国としてはドイツ、ルクセンブルク、中国、韓国、インドネシア、ベトナムがございます。それから、原則として血統主義を採用し、帰化により外国国籍を取得した場合には自国の国籍を保持することはできないと、こういうふうに定めている国はデンマーク、ノルウェー、韓国、インドネシア、ベトナムがございます。
○白眞勲君 私はいわゆる出生地主義を採用しろということを言うつもりは全然ないんですけれども、ただ、今いろいろな話がありましたけれども、諸外国も少子高齢化が進行する中、実際流入してくる外国人とどう付き合っていくのかということを考えて、結局その実情をある程度受け入れながら、また悩んでいる、そして手直しをしながら共生の道を歩んでいるような気が私はしているんですね、それは日本も例外ではないと思うんですけれども。もちろん、その国にはその国の実情に合わせて絶えず変化していかなければならないわけですし、日本も歴史的に見た場合には、多くの外国人を受け入れて、それをうまく活用しながらこの国の活力をもって発展してきたという歴史も私はあると思うんですけれども。
 そういう観点からすると、もう一度ちょっと大臣にお聞きしたいんですけれども、そういう外国人の、こっちにいる外国人、つまり住んでいる外国人、それも、ちゃんと法律に従って住んでいる外国の人たちといかに共生していくかという部分においては大臣はどういうふうにお考えになっているんでしょうか、それをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(森英介君) 外国人が日本に住もうと思っていただくというのは、これはやっぱり日本がいい国だからにほかならないわけでございまして、そういう外国人が多いということは日本としては歓迎すべきことだと思います。したがって、先ほど申し上げましたように、ちゃんと法律に従って在留資格を持って日本で生活していただく外国人の方には、それはやっぱりなるべくコンフォタブルに、かつ日本人と同様に過ごしていただくのが望ましいと考えます。
 もちろん、私どもも、これは島国ですからね、日本は、どうしても閉鎖的になりがちですから、やっぱりそういう日本にいる外国人の方を通じて世界を知るということも大切でしょうから、そういった意味において、やっぱり日本における外国人とのお付き合いというのは極めて大切なことであるという認識を持っております。
○白眞勲君 ここで今回の国籍法について、改正のポイントの一つについてちょっとお聞きをしたいと思うんですけれども、恐らくここにおられる委員の皆さんも、この法案には基本的には賛成だけれども、いわゆる偽装認知について心配をしていることの部分があるんではないんだろうかというふうにも思います。
 実際今までの議論を聞いていまして、これ法務省にお聞きしたいんですけれども、いわゆる偽装認知、簡単に言えば、そのリスクってどれぐらいあるんだということなんですね。それについてどういう判断を今法務省としてされているのか、まずお聞きしたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) これまでは届出によって国籍を取得する人というのは、認知を受けた上で、日本人の男性から認知を受けた上で、それでその父と外国人女性である母親が結婚していることが要件でございました。仮にこれを偽装しようといたしますと、偽装の認知届を作ってうまくやって、しかも婚姻も偽装しなければいけないと、二重に偽装しなければならないということになります。
 今度は、婚姻は要らないよということになるので認知だけになりますから、抽象的には偽装認知で国籍を取得するということがやりやすくなってくると。そういう意味では偽装認知対策が必要だ、偽装認知があり得るという懸念が生ずると、こういうふうに考えております。
○白眞勲君 やはり偽装認知の懸念が生じるということを法務省自身も認めて、その対策をするんだということもお話は聞いているんですけれども、じゃここで、私、今日は本当、実は法務委員会は今日初めてこうやって質問に立たさせていただいて、驚いたのは、本当に多くの弁護士の皆さんがいらっしゃって、非常に専門的な、さっきも民法九百条とか言われても私は何だろうということで分からなかったところもあるんですが、ちょっと素人的な考えかもしれません、認知って何というところから私ちょっと聞いてみたいなと。これは本当、本質的な問題だと思うんですね。
 例えば日本人同士の場合、女性の子が父となる人との血縁関係がなくても男性が認知している例もあると聞いたんですけれども、その辺り一体どうなっているんでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) それは昔からあるということが言われておりまして、極端なことを言うと、弟が何かほかの女性と子供をつくっちゃったと。それで、弟の子供だということになるといろいろまずいからお兄さんが認知してしまって、そして自分の子供として育てるとか、そういうことはあったんだと聞いております。
 それで、生物学上の父子関係がなければ、たとえ認知すると認めても理論的にはその認知は無効であります。しかし、そういう日本人同士の今のケースでいけば、家族もみんな分かっている、で、そのお兄さんがちゃんと育てている、弟もそれを認めて、みんなそれで相続でももめないということでだれも異議を唱えなければ、親子関係不存在だとかそんなことを、訴訟を起こすということを言わなければ、そのまま円満にいってしまう。そんなことについてまで国家権力が介入していって、おまえ、この認知おかしいじゃないかと、そんなことは言わないということでございます。
 これが事実上、今までの親子法制としてやられていた面はあると。それが望ましいかどうかというのはまた別のいろんな考え方があろうかと思いますが。
○白眞勲君 そうしますと、今回の件において、この国籍取得をするしない、これはちょっと別問題としまして、認知するという時点では外国人でも同様のケースが生じる可能性があるということですね。
○政府参考人(倉吉敬君) まさにそのとおりでございまして、よく好意認知という言い方をするんですが、外国人の女性が既に子供がいると、自分の子供ではないと分かっているけれども、分かっているけれども自分の子供として育てたいと、その愛する女性と一緒に育てたいというようなことがあり得るわけです。そのときに認知をするという例はあるということは聞いております。ごくわずかだと思いますが、もちろん。
○白眞勲君 つまり、その女性が外国人の場合でも同様のケースがあるということを聞いていらっしゃるということでよろしいですね。
○政府参考人(倉吉敬君) はい、そのとおりでございます。
○白眞勲君 そうしますと、認知された子が国籍取得の今度は届出を出す際に、法務局等に対して出すわけですよね、届出を。で、今までの御答弁では、相当厳格に認知に至る経過などを確認するということなんですよね。
 そうすると、ちょっとその辺りで、今言った、そのいわゆる好意的な認知があるんだということになりますと、本人は、いや、もういいんだよ、認知なんだと、好意的なんだけど認知なんだよといった場合に、いや、あんたたち、これ親子関係じゃないでしょう、本当の血縁関係じゃないでしょうといって国籍を出さないということになってしまうんでしょうか。その辺はどうでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) もし法務局の調査により血縁上の父子関係がないということが分かれば、国籍を与えるわけにはいきません。で、ここからでございます。そういうときにどうすればいいんだと、こういうことでございますが、そのお父さんは日本人として育てたいということを考えているんでしょう。それで、法務局としては、そういうことが分かった場合には、あなた、これは駄目なんだ、国籍を与えるわけにはいかないと、だから国籍取得証明書なんというのは出しません、国籍は与えられないという通知を出しますが、これは養子縁組しなければ駄目ですよと、こういうことを言います。そうして、本当の自分のお子さんにしたいんだったら養子縁組をしてくださいと、そして恐らく多くの人はそれに従うだろうと思います。
 実は、先ほどそういう例があるということをお話ししましたが、過去の例で、まだこの三条一項の届出の事例、現行法の届出の事例ですが、御本人の方から、実は自分の子供じゃないんだけど認知したんだよねと、こう言ってしまうというようなケースもあるんですね。そういうときはもう必ず、それは駄目ですよと、養子縁組をしてくださいということを言うというようにしております。
○白眞勲君 そうしますと今度は、今までの御答弁ですと、いわゆる相当厳格に認知に至る経過を調べるんですよ、国籍の取得の届出をする際にと。要するに、それは調べるというのは何を調べるかというと、いわゆる本当に血縁関係があるかどうかを調べるという、その一点ですよね、つまり認知という部分においては。それ、ちょっとお聞きします。
○政府参考人(倉吉敬君) もちろん、国籍取得の場面でやるのは、血縁上の父子関係があるかという、その一点でございます。
○白眞勲君 そうすると、いわゆる法務事務官の方が国籍取得の際にいろいろヒアリングをするということで、今までの書類上のものとかいろいろなものを調べるという作業をして、今までは国籍を与えるかどうかをある意味事務官の方である程度の書類をそろえていくという作業をしていらっしゃったと思います。
 いや、実は私も父親が韓国籍で母親は日本籍でしたから、一九五八年生まれですから、当時は私の父親の国籍に自動的に入って韓国籍だったんですね。それで、その後、日本国籍を取得する際に法務事務官の方と、実際私も面接を受けまして、それで国籍取得をしたわけですから、その法務事務官の方、よく知っていると言っちゃなんですけど、本当に一生懸命やっているなというのが実感としてあったわけなんですね。非常に優秀ですよ。これプロとして優秀な方々が本当おそろいだなと思って、本当これは私、立派だなと思って、こういう作業をされている方もいるんだなということを思ったんですが。
 今回、そうはいっても、法務事務官さんが幾ら面接をしろと言っても、この認知という部分だけの認識、つまり血縁関係をどう判断するのかというのは、同居の有無とか扶養しているかどうかというのは別に関係ないんじゃないかというふうに思えるんですね。これは、判断材料とは血縁関係だけで、だけって言っちゃいけない、まあそれが重要な要素、重要って、それだけだということであるならば、扶養だとか一緒に住んでいるとかなんとかという、これは幾ら法務事務官が優秀でも、いや、していないって言われたらどうにもならないんじゃない、でも血縁関係あるんだよって言われたらどうにもならないんじゃないかなと思うんですが、その辺どうなんでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) まず、先ほどの答弁をちょっと訂正させてください。血縁関係一本だと言いましたが、それだけではありませんで、もちろん、虚偽の認知かどうかというのを見るのと、三条一項の要件を審査いたしますので、本当に二十歳未満であるかとか、そういう審査はもちろんいたします。そこを訂正させていただきます。
 その上で今の御質問ですが、もちろんです。普通は、ちゃんと認知してその子供を一緒に育てようとしているんだったら扶養していることが多いだろう、あるいは同居していることが多いだろうという観点から聴くわけです。それで、扶養料もらっていますかとか一緒に生活していますかと聴きます。すると、いえ、そんなことしていません、えっ、どうしてですかと聴くわけです。そして、いや、それはこういう事情があってといろんなことを御説明されるだろうと思います。その中で、事務官が今までの自分の知識と経験に照らしてこう言っているうちにだんだんしどろもどろになっていくな、そういうところからおかしいなと疑念を抱くと。そういうところを見ていこうとしているわけでございます。
 もちろん、事情を聴くだけではなくて、いろんな客観的な公的な書類、それは、外国で生まれたお子さんだったら外国でのいろんな書類とかそういったものも出していただきます。そして、そういったものを見ながら御本人の供述を聴き、そしてその御本人が言っていることと客観的な書類とが、日時とかなんとかが符合しないなとか、そういうことがあればそれを聴いていく。
 もちろん、関係者が遠くにいるというようなことであれば、そこまでお宅にお邪魔して聴きたいと思っていますし、父親がこの国籍取得届の届出人ではないということがむしろ多いわけでございます、法定代理人は母親ということが多いもんですから、そのときは父親にも協力を求めていろいろ事情を聴いていこうと。そういうことを総合してやっていこうということでございます。
 それで、法務事務官、優秀だと。非常にありがとうございます。やっぱりいろんな研修を積んでおりまして、仕事の上でも、帰化の手続とかいろんなことをやりながら、いろんなことを、知識、経験がございます。そういうことを踏まえてフルにやっていこうということで、我々組織全体懸けてこのことをきちんとやり遂げていこうと思っております。
○白眞勲君 今局長さんがおっしゃった部分というのは本当にそうだと思うんですけれども、いろいろな様々な私はケースが、今回もいろいろな認知から国籍取得に至る経過であるんではないかなという中で、私が心配しているのは、今おっしゃったように、いわゆる相当優秀だとしても、面接調査やあるいは事情を聴いて、具体的に出ている書面と話していることが矛盾していないかとか、あるいは関係機関からのいろいろな収集した資料と矛盾はないかと、これ御答弁でそうおっしゃって、今も同じようなことをおっしゃったんですけれども、これ、当たり前の通常業務でやっているというその法務事務官の皆さんが大丈夫だと強調もしていらっしゃるんですけれども、今回の国籍取得というのは赤ちゃんだけの場合もあるわけですよね、赤ちゃんが国籍取得の対象者であると。
 例えば、こういう例もあるかもしれないという例で言うと、例えば日本人の男性が一回だけ外国人女性と会って意気投合してこの赤ちゃんが生まれたんだと、それで、それ以降もう会っていないといった場合に、これ、事務官は正しい判断下せますか。ただ、本当に血縁関係があるということだってないとは言えないと思うんですけれども、その場合、事務官としては、これ、正しい判断下しようがないんじゃないかというふうな、私はそういう感じもするんですけれども、それどうでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) それは、おっしゃることは一般論としては非常によく分かります。同じようなことは裁判の場面でもいろいろ起こるんですね。裁判所の事実認定というのも似たようなところがございます、こんなことがあり得るだろうかどうだろうかと。でも、両方の言い分を聴いていると、あっ、やっぱりこういうこともあるかなと。これはもう経験的なものでして、何とも言えませんが、その中でおかしいと感じるものが出てくれば、そこでいろいろ聴いていくと。
 確かに、委員おっしゃるように、一回こっきりのことでできたんだよといって、それでも、じゃ何でそれで日本国籍の届出までするんだろうと。どういうふうに育てようと思っているんですかとか、それはいろんなことを聴けるわけで、そこは、その場合だって、ぴしゃっと全部一〇〇%分かりますなんて断言するつもりはもちろんございませんが、そもそも世の中の起こったことの事実認定というのはそういうものだと思っております。
○白眞勲君 いや、私は心配しているのは、世の中そういうものだって言われたらそのまま、何というんでしょうね、それ以上先へ進まなくなっちゃう部分が私はあると思うんですけれども。
 私が気にしているのは、その法務事務官の皆様に過度な負担を与えるんではないんだろうかということなんですよ。これはやっぱり非常に大きい問題だと私は思うんですね。本当にこの赤ちゃんが、お子さんが本当にそのお子さんだった場合に、これ、この判断を下すというのは非常に重い判断だと私は思うんですね。
 今いろいろな、本当にもうそうだという、ほぼ間違いないだろうという人もいるだろうけれども、そういう場合に、事務官の皆様のやっぱり過度な負担というのがあると果たしてどうなるんだという部分が私は心配。いや、それは心配に及びませんよ、そんな、それが仕事ですからと言われたらそれまでかもしらぬけれども、それはどうなんでしょうかね。
○政府参考人(倉吉敬君) 大変つらい重い問いかけでございまして、それは、個々の事務官はケースによって非常に苦労するというケースがあるだろうということは、もうもちろん承知しております。
○白眞勲君 やはり非常に国籍取得というのはその方の、その子の、お子さんの人生にもう大きな影響を及ぼす、まさにもう転換点にもなりかねないという大きな判断であるというものを認識して法務事務官の方もやっていらっしゃるとは思いますけれども、だったら、だったらやっぱり任意でDNA鑑定、強制じゃなくてDNA鑑定をもしその方が書類で持ってきてもらえば、よりその辺はクリアになるんではないんだろうかという部分において、こっちの方がよっぽどすっきりしているんじゃないかなという感じもしなくはないんですけれども、その辺はどういうふうに御認識されていますか。
○政府参考人(倉吉敬君) DNA鑑定を入れるべきだという御意見はいろんなところで伺っておりまして、その御意見もよく私ども分かるわけでございます。
 しかし、まず一般論なんですが、DNA鑑定を取り入れるということは、今任意でというお話なんでそれはちょっとおいておきまして、取り入れるということは家族法の体系と相入れないのではないかという、そこはどうしても引っかかるわけでございます。
 例えば、それまで築かれてきた親子関係それから家族関係をいつでもDNA鑑定ぽんと出ちゃうとひっくり返せるということになりますと、今民法に嫡出推定の規定とございます。あれは何であんな規定を置いているかというと、婚姻期間中に生まれた子供というのは、実際は分からないけれども、その御夫婦の子供だと推定するということによって、子供が生まれたときから子供の地位を安定させ、そこで確定させようとしているわけです。だから、それを覆すには裁判手続によらないと大変ですよとしている。それが、ある日どこかでDNAの紙が出て、あれが行政機関に届け出られてぽんぽんぽんとなったら、あっ、親子じゃなかったんだよねなんてなるようなことになってはいけないと。心配し過ぎだと言われる方もあるんですが、そういう風潮になってはいけないと、こう思っているわけでございます。
 さらに、今のは私は主として法務局に国籍取得届が出てきた場合のことをお話ししましたが、認知そのものということになれば、一般論としてですよ、最初の市区町村に認知届をするときにやっぱりDNAを入れないとおかしいんじゃないのという議論にはなってくるだろうと思うんですね。もし、それをやるということになりますと、外国国籍の子を認知する場合にはDNAが要るというようなことになりかねません。そうすると、それは新たな差別を生むというような議論にならないかとか、それからDNA鑑定には相当の費用も掛かる、そのような負担が掛かるということで日本の国籍を取得する機会を奪われる人が出てこないかと、こういうことも問題になろうかと思います。
 そこで、確かに、DNA鑑定が任意に出たらいいじゃないかというお話でございますけれども、それは、それでそのDNA鑑定が絶対間違いないということであれば事務官は楽だろうなと思います。でも、任意にそれが出てきたら、それがやっぱり本当かなということを考えざるを得ません。本当かなということを考えるためには何をするかというと、やっぱりいろんな書類を見て、事情を聴いて、そしていろいろ聴いて、あっ、この人はもう大丈夫そうだなと、だったら、このDNA鑑定も確かにお父さんと子供が業者のところに行ってちゃんと検体を渡してやったんだろうなと認定できると、こういうものではないかと思っているわけでございます。
○白眞勲君 今局長さんから、外国人だからといって差別するわけにいかぬじゃないかと、DNA鑑定を外国人のみに課すわけにはいかぬじゃないかという話なんです。まあこれは、お言葉ですがと言っちゃいけないのかもしれませんけれども、だったら指紋ですね、入国のときの指紋なんかも外国人だけに課すのは差別じゃないかというふうにも思えなくはないんですね。それはやっぱり個人情報ですよ、究極の個人情報ですよ、指紋も。
 ですから、そういう部分においては、こっちでは何か、いや、これも差別だよと、で、こっちは大変だということ、いや、これはいいんだということというのはどうなのかなという、これは今日の話とはちょっと話が違いますけれども、やはり論理的に考えた場合には、じゃ、そっちはどうなんだというふうにもなりかねない部分が私は御答弁の中にあるんではないのかなというふうに思うんですね。
 また、今おっしゃった中に、恐らく父子関係の、科学的な証明だけで親子関係を決めるといった誤った風潮になっちゃいかぬじゃないかというお話だと思うんですね。
 もう一つ、市町村の問題もあったんですが、その市町村の問題で、窓口でということであるかもしれませんけれども、例えば任意で、私もう一度、何かくどいようで申し訳ないけれども、任意で鑑定結果を出していただくと。それも、例えば、これ今後の課題でしょうけれども、法務省が認定したDNAの鑑定機関みたいなところでやるならば、ある程度その辺は市町村の負担なんかも減るんではないんだろうかということもあり得るんではないんだろうか、今後の課題として。その辺については、大臣、どうでしょうか。大臣、ずっと腕組んで考えていらっしゃるので、ちょっと一回この辺でお答えいただきたいと思うんですが、どうでしょうか。
○国務大臣(森英介君) 今局長から御答弁したことが基本的なところだと思いますけれども、これは、やはり私どもの家族においても、別にDNA鑑定してこの子供が我が子だと思っているわけじゃなくて、女の人は自分の子だ、確かに自分の子供だって分かるでしょうけれども、男は分からないわけですね。だから、そういったことで、うちの子供なんかも、お父さん似ですねと言われるので、ああ、やっぱりおれの子供かなと、こう思ったりするわけですけれども、いずれにしても、そういったやっぱりお互いの合意みたいなことで家族が成り立っているんだと思うんですね。
 ただ、この場合は、国籍を付与するという特別な条件下ですので、やはりそれなりに法務局においていろいろな聞き合わせをして、血統主義にものっとっているということを確認した上で国籍を付与するということですから、私は、若干そういうお互いの合意に基づいた、要するに、民法は必ずしも親子関係というのは生物学的親子じゃないということと、それから血統主義のその微妙なところですから、私はこの法律で定めているところが割合程々なんじゃないかと思っているんです。それで、それは、何というか、疑いを持てばどこまでも疑えるけれども、白委員も私も元々工学部の出身ですけれども、科学が万能じゃないということは私どもはよく分かっているわけですから、私はやっぱり、DNA鑑定ということを任意にしても持ち込むということは私自身はちょっと余り賛成しかねるところでございます。
○白眞勲君 大臣の認識というのも私も同じ、共通認識な部分が私はあると思うんですね。
 ただ、もう一つポイントになるのが、法務事務官の方がいろいろお聴きになるという部分、これも非常に微妙な部分があるんじゃないのかなというのも、私、逆に感じるときがありまして、相当詳しく、場合によっては相当プライバシーに関する事項なども当然聴かざるを得ないんだと思うんですね。機微な部分、そういったものも聴かなければならない。聴く側も、別に聴きたくもない話だと思うけれども、やっぱり仕事柄聴かなきゃいけないけれども、聴かれる方も、何でそこまで聴くのというふうに不快な気分を味わう部分もあるかもしれないんですね。
 もちろん、プライバシーという部分では、法務事務官の方は本当にこれは口の固い方々だなという感じは私は印象として持っておりますから、その辺は大丈夫だと思うんですけれども、ただ、それだったらば、もう何でもかんでも聴いてほしくないんだったら、DNA鑑定とか何かで科学的に証明されたデータだったらそこまで聴かなくたってぽんと分かるんだったらそれでも、今は裁判の部分においてはそういったこともある程度取り入れられているというんであるならば、そういったこともよっぽどいいんじゃないかというふうにも思えなくはないんですね。
 もちろん、DNAというのは、私、本当に今おっしゃったように、家族って何だというところにまで行っちゃうんでやるべきじゃないんですけれども、ただ外国人、いわゆる家族の、何というんでしょうね、つまり外国人が日本国籍を取得するための必要な書類、つまり認知の届出でDNA鑑定をしろというんじゃなくて、もう一段階、つまり国籍を取得するときの届出の際にそういった書類があったら割とすんなりいくんだけどなみたいな部分の考え方というのもあるんじゃないかなというふうにも思えなくはないんですけれども、その辺は局長さんとしてどうでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 大変よく分かります。それで、DNA鑑定が出たらそれでいいんだということになれば、恐らく全国の法務局の職員は楽だと思います。しかし、楽しちゃいけない仕事だと思っているんです。どうしてもDNA鑑定で、それはうそついているかもしれないんです、検体をすり替えているかもしれない、あるいはいろんなことがあるかもしれないと。そうすると、それが出たからといって、じゃ、後の調査をしなくていいということにはやっぱりどうしてもならないので、それじゃ、どういう経緯でこうなったのかというようなことはやっぱり聴かざるを得ないということになるだろうなと思います。
 ですから、任意でDNA鑑定書が出たとき、それを突き返すと言っているわけじゃありません。それは見させてもらいますが、やっぱり一応の認定作業というのはやらざるを得ない。その間で、むしろそれを受ける方が非常に不快な思いをする、DNA鑑定の方がよっぽど楽でいいよということを言われるかもしれませんが、やっぱりどうしても細かいことを聴かれたくないんだとすると、それは純粋にプライバシーで知られたくないということなのか、本当に知られては困ることがあるのかということもございますので、一応は今のやり方を考えております。
 もちろん、衆議院の法務委員会で、施行後の附帯状況を踏まえて科学的な証明方法の導入について要否と当否を検討しろと言われていることは重く受け止めておりまして、今後の状況を見て、それは真摯に検討しなければならないと思っております。
○白眞勲君 認知というのは、まあ今日はずっと認知って何という話になっちゃったんですけれども、扶養の義務があり、そして遺産相続の際に第一順位の相続人になるというものである。そして、なおかつ、一度認知してしまったら取り消すことができない制度だということ。私、これ、一般の方々は知らないんじゃないかと思うんですね、特に最後の取消しできないというところですね。
 ここでちょっとお聞きしたいんですけれども、いわゆる役所で認知の届出があった際に、役所はそういったことを説明していますか。
○政府参考人(倉吉敬君) 常にしているわけではないと思います。ただ、認知ってこういうものですよということは、相手を見ながら説明するということはあるわけで、そのときには委員が御指摘のようなことも話している場合もあるだろうとは思っております。
○白眞勲君 結婚の場合は離婚はできるわけですよね。一回結婚したら二度と取消しできないということはない。そういう役所に届出というのは、住民登録でも引っ越すときにはいつでも変えられるというか、そういうこともできるし、名前だって場合によっては変えることもできるし。要するに、届出というのは変える届出をするんだという考え方でやると、一般の人って認知を取り消すこともできるんじゃないかというふうに安易に考える、特に私は、偽装認知をしようとする人たちというのはその部分が本当に認識しているのかなというのは私はあると思うんですよ。
 ですから、例えばの話ですけれども、認知の届出をする人には、例えばその認知の届出の用紙とか何かに認知というのはこういうものですよということをちゃんと書いておく。それによって、本当に自分が、この子は自分の子だと思えば取消しなんかしっこないわけだから、ああ認知、当たり前だと思ってやってくれると思うんですよ、私は。何かそこに偽装とか何かの考えがあるとやっぱり、取消し、えっ、できないのといってそこでちょっとひるむというかね、後ずさりするような。あっ、そういうものなんだということを何かこれから分かってもらうような形によっての抑止効果というのも私はありじゃないかなというふうに思っておるんですね。
 これについて、法務省としてどうでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 本当に違法に国籍を取得してやろうというワルがそんなことを考えるかなという、たじろぐかなというところはちょっとあろうかとは思いますが、ただ、御指摘の点はなるほどと思うところも多いわけでございまして。ただ、今の市町村の窓口でいろんな仕事をしています。そんなときに一々そういう説明をする余裕があるかなというようなことも、対応の余裕ということも考えなきゃいけないと思いますが。
 そういうことで、可能かどうかということも含めまして、ちょっと慎重に検討させていただきたいと思います。
○白眞勲君 いや、本当のワルは自分で認知はしないんですよ。ワルがだれかに金出して、いわゆる何の知識と言っちゃ失礼な言い方かもしれないですけれども、そういったことに対しての関心のない人たちに、おいよっていうふうにやってもらうわけですから、そういう面でいうと、何というんですか、そのワルの先にある人たちに対してどうなんだというところでストップ掛けるということも私は一つの案だというふうに思います。
 もちろん、お役所のいろんな煩雑なことになるというのをどういうふうにするか。それは、でも逆に言えば手間、手間といえば法務事務官の手間のことを考えたらそれも一つの手間ですから、私はそういったことも一つのアイデアとして考えていただいてもいいんじゃないかなと思うんですが、大臣、どうでしょうか、その辺について。
○国務大臣(森英介君) 非常に重要な御指摘というか、傾聴に値する御意見だと思います。
○白眞勲君 私は、これ別に外国人の子供の親の認知だからというよりも、やっぱり認知というものというのはそういう責任が伴うものなんだと、子供の扶養だとかあるいは遺産相続の際にもそうなんですよということをやっぱり知るということも必要だと思う。これは日本人自身も知るということ、僕は必要だと思っているんですね。
 そういった観点からすると、認知というものがこうなんだよ、特に今家族制度がこうなっている、ああなっているという中で、認知というものについてのやはり一般的な認知ですね、それこそ。私は、この認知というのをグーグルとかヤフーで調べてみたら、認知症とかあっちの方ばっかりになっちゃうんですよ。認知と子供とやっても、なかなか法的な子供を認知する方じゃない方の、認知症とか、そっちの方の認知になっちゃっていたり。なかなか一般の国民にはその辺の考え方をもう少しやっぱり認知させることも必要なんじゃないかなというふうに思いまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
○田中康夫君 参議院における統一会派、民主党・新緑風会・国民新・日本の一員であります新党日本代表、私、田中康夫でございます。
 通常は、国土交通委員として、脱ダム宣言は脱ムダ宣言ということで既得権益と闘い続けておりますが、本日は、理事の千葉景子さん、松岡徹さん、また委員の松野信夫さんの御配意の下、法務委員会で質疑に立つ機会をちょうだいいたしました。改めて感謝申し上げます。
 最初に私の立脚点を申し上げます。
 私は、今回の国籍法、いわゆる「改正」に疑義があると考えております。そして、DNA鑑定制度を導入するべきであり、そのことを明記すべきであると考えております。実は、人権保障を尊重するならばなおのことこのDNA鑑定の導入が必要である、こうした立脚点に立って御質問いたします。
 まさに法律のはざまに留め置かれた罪なき子供を救済せよと、第百七十回国会に提出されたはずの今回の国籍法の一部を改正する法律案は看過し得ぬ瑕疵を内包していると、このように考えます。
 すなわち、新たに別の罪なき子供を奈落の底へと突き落とす蓋然性が極めて高い、当初から偽装認知奨励法にほかならぬと懸念されておりました本法案は、人身売買促進法、ないしは小児性愛、ペドフィリアと呼ばれますが、小児性愛黙認法と呼び得る危険性をはらんでいると私は思います。
 たとい閣議決定しようとも、至らなさを改むるにしくはなし、それが考える葦であります私たち人間の目指すべき場所でございまして、Uターンする決断こそ政治であると考えます。手続も結果がねじれていては成果になりません。附帯決議や附則というものは、これは往々にして官僚行政の中における単なる恣意的な、効力のない裁量行政に陥りがちでございます。
 今この瞬間も、日本の各地で真っ当に働き、学び、暮らす人々の悲しみや憤りを誇りと希望に変えてこそ政治でございます。信じられる日本へと向けて、おかしいことは一緒に変えていこうと、これは私が代表を務める新党日本の結党の精神でございます。
 では、法務大臣の森英介さんに御質問に入らせていただきます。
 まずは、こちらのパネルを御覧くださいませ。(資料提示)お手元の方にも皆様に資料がお渡ししてございます。
 これは十一月七日付けの英国のザ・タイムスという新聞、御存じのようにザ・ガーディアンと並んで英国を代表する日刊新聞でございます。ここに見出しが付いております。「ハズ ディジタル トリッカリー ヘルプト キム オーバーカム ア ストローク」と書いてございます。
 皆様のお手元のパソコン等で御覧になれるデジタル版のところでは、「キム ジョンイル ディジタル トリッカリー オア アン アメージング リカバリー フロム ア ストローク」と書いてございます。
 これは、写真はロイター通信の配信でございまして、記事はリチャード・ロイド・ペリー記者が書いております。
 この見出しの意味するところは、また本文は、これはデジタル写真の合成なのかと、それとも脳卒中からの驚異的生還のあかしかという皮肉でございます。中に、よく見てごらんと、足下の影の具合が彼の周囲の同志とは彼だけ違うよ、これはフェイク、偽造の写真かい、それとも北朝鮮の偉大なる上から目線の領主様の場合は我々下々とは異なる影が写るのかと、このように書いてございます。
 森さんのお手元の方にも今資料をカラーでお届けをしております。森さん、この写真、またこの記事を御覧になっての御感想をまず冒頭にお聞かせください。
○国務大臣(森英介君) ちょっと今の委員の御質問の趣旨がよく理解できませんし、それから、その前提となりました本法案についての疑義、委員の疑義ですね、それについても最高裁の判決で御判断が示されたところで、その違憲状態をなるべく早く解消するために法案を国会に提出いたしているところでございまして、現に衆議院においては全会一致で附帯決議を付した上で御賛同をいただいたところでございまして、今参議院に議論をお願いしております。
 この写真について何を申し上げればいいんでしょうか。
○田中康夫君 この後、私が、法務省が新たに方針としてお出しになっていることを踏まえてでございます。
 でも、森さん、このやはり写真、そのほかの写真が合成であると、全世界でいろいろ報じられているスポーツ観戦をしているところ、これは森さんも恐らくそういうお考えを、御懸念をお持ちですよね。
○国務大臣(森英介君) この写真が合成の可能性があるんじゃないかという御指摘であるとすれば、そうかもしれないなと思います。
○田中康夫君 こちら、皆様御存じのように、凄惨なテロとも呼ばれた事故があったときに、警察庁、警視庁あるいは埼玉県警はDNA鑑定をするというような記事が載っております。(資料提示)
 皆様のお手元の方にお配りしました読売新聞の二十五日付けの夕刊、「親子の確認厳格化へ」、「国籍法改正で偽装認知防止」と。「法務省は二十五日、今国会で予定されている国籍法の改正により、外国籍の女性の子供に日本国籍を取得させる目的で日本人男性が偽装認知する事件が増えることを防ぐため、親子関係の確認を厳格化する方針を固めた。」と。これが火曜日の夕刊でございます。私は、こうした方針自体は大変に結構なことであると思います。その後に、「関係を証明する書類や写真を法務局に提出するよう求める考えで、年内にも省令改正や法務局への通達を行う方向だ。」と記述されております。
 森さん、こうした動きは御存じでいらっしゃいますね。
○国務大臣(森英介君) はい、承知しております。
○田中康夫君 ありがとうございます。
 この記事の中では、「参院での慎重審議を求める声もあるため、法務省もできる限りの偽装認知防止策を取ることにした。」というわけでございます。これは、具体的に、「法務局に子供の国籍取得届を提出する際、父親の戸籍謄本や両親と子供が一緒に写った写真などの添付を求める方針」と。「戸籍の住所や写真を、両親が知り合う機会の有無や子供が幼いころから一緒にいたかどうかなどを判断する材料にしたい」というふうに報じられております。
 今はデジタルな時代でございます。一般の方々でも写真は容易に様々な編集ができる、もう皆様御存じのとおりでございます。こうしたことを、法をつかさどる法務省が情念や情緒のようなお話をなさっているということは、私は大変に憂うべきことではないかというふうに思います。これは、先ほどの金正日領主様にお仕えする方々の写真又はそれと同様の頭の中の思考回路に法務省は残念ながらなってはいないかということです。
 こうした点で、この後の記事は、「DNA鑑定を義務付けるべきだとする意見も出た。」が、「法務局の窓口で鑑定の信用性を判断するのは難しいうえ、母親が外国人の場合だけ鑑定を求めるのは差別につながるという指摘もあり、」と。私は、読売新聞の記事ではなく、思わず人権を声高に語る朝日新聞の記事かと勘違いしちゃったわけでございますけれども。
 つまり、窓口で写真の信用性を判断するのは簡単であるというふうに書いてございます。DNAの鑑定というのは逆に難しいと言っているわけですが、森さん、この御認識でよろしゅうございますね。
○国務大臣(森英介君) 窓口で判断をするのは、何も写真だけじゃなくて総合的に判断するわけでございます。
 先ほどの三人殺傷した人をDNAで立証したと、これ犯罪者をDNAで鑑定して立証したんでございまして、それは確かに悪い人もいるかもしれないけれども、基本的に、新たな日本人を日本国に迎えるに当たって、犯罪を立証するときと同じようにDNA鑑定を付与するということは、私は余り芳しいことじゃないと思います。
○田中康夫君 森さん、DNA鑑定は犯罪の捜査の場合には適するけれども、こうした国籍の問題、また婚姻をしていない場合でございます、この最高裁の事例の場合には、家族を大事にということを自由民主党を始めとする方々はおっしゃっています。私も家族が大事だと思っています。しかし、今回の事例は、最高裁で扱われた、あるいは同様のことを求めている学者の方は、家族としての婚姻関係はしないけれども認知だけは認めさせろよというお話なんでございます。ここを誤解なきようにいただきたい。
 そしてその上で、なぜDNA鑑定を私が求めるのか。今、森さんは犯罪者を挙げるためならば許されると言いました。私は違うと思うんです。仮に、もうあろうこと、とんでもない事件を引き起こした者、しかし、そういうふうに供述している者がうそをついているかもしれない。DNA鑑定をするのは、冤罪を防ぐために犯罪捜査の場合にも行っているのです。とするならば、国籍を付与するかしないかという場合においても、まさに法のはざまにいる罪なき子供あるいはその周囲の者が冤罪のような不幸に巻き込まれない、悲劇に巻き込まれないためにDNA鑑定が必要だということでございます。
 お手元の資料の中に、各国で既にDNA鑑定をしているのがございます。(資料提示)これはヨーロッパ各国、ヨーロッパ十一か国でございます。調査をいたしましたのは、こちらに記してございますように国立国会図書館の調査の部門が行ったことでございます。
 これをごらんいただきますと、十一か国では皆、イギリス、デンマーク、ノルウェー、オランダ、フィンランド、ベルギー、ドイツ、イタリア、スウェーデン、オーストリア、フランス、DNA鑑定というものを実施をしているわけでございます。この場合、フランスの場合には、議会の側からこれは憲法違反ではないかという形の話が出ましたけれども、最後のところにも書いてございますように、付託された憲法院で合憲判断というものが出ております。
 先ほど民事局長はそのDNA鑑定が正確なものであるのかどうか分からないと言いましたが、これはあほなお話でございまして、例えばベルギーならばエラスムス研究所という歴史的な研究所、あるいはスウェーデンの場合は国立法医学研究所、イギリスは政府から権限を付与された研究機関、こうしたところを法律できちんと定めて、省令においてですね、しかし、まず法律を定める、その上で省令等でこうした具体的規定をしております。
 十万円掛かると言っておりますが、ほとんどの国は申請者負担、あるいは国の負担もございます。あるいは申請者負担で、一たびきちんとDNA鑑定で認められた場合には、そのお金はきちんと戻すという形にもなっているわけでございます。
 実際には、日本の最高裁判所においても、認知訴訟におけるDNA鑑定、これは訴訟上の正式の鑑定を、認知訴訟でございます、実施している事例は既に三割近くもございますし、当事者が任意で実施をした鑑定結果等が証拠として提出をされると。この事件等も含めますと、かなり多くの認知の訴訟事件においてDNA鑑定は資料として採用されているわけです。
 これは、今回の問題が違憲であると述べた最高裁判所も、冤罪という不幸や悲劇を防ぐためにDNA鑑定を用いているということであります。ですから、今回の判決にDNA鑑定をしなさいというような文章が付いていなかったからそれは入れなかったというような弁明が仮にあるとするならば、それこそは視野狭窄な法律を作成をしていくということに私はなると思います。
 実はもう一つ、こちらは最後に資料を付けました。(資料提示)「闇の子供たち」という映画でございます。桑田佳祐さんが音楽を担当しまして、宮崎あおいさん、江口洋介さん、妻夫木聡さんが出演をされました。原作は梁石日さんで、そして監督は阪本順治さんです。八月に公開された映画でございます。これは、幼女売買春、臓器密売の知られざる闇が今、明らかになる、値札のついた命というようにここのポスターにも書いてございます。
 私も鑑賞いたしましたが、この中で扱われているのはペドフィリアと呼ばれる小児性愛の被害者、犠牲者の東南アジアの子供たちを描くものでございます。この中では、日本あるいは欧米の人たちがこうした東南アジアの子供を買い求める、そして国に連れていくというような形がございます。その中には、それを養子縁組という形ではなく、婚姻もせずに、あるいは日本の場合にはアジアの方々の顔と似通った相貌の方もおります。こうした中でこうした子供たちが新たな奈落の底に落とされるような小児性愛の対象となるようなことを私たちは法治国家の一員として防がねばならないと思っております。その意味において、私はやはり、従来の一たび決めたというようなことのメンツにこだわってはいけないと思っております。
 私が一月三十一日の予算委員会で、輸血製剤に関してのウイルス感染対策の不活化技術の導入というものを提唱し、当時の福田康夫さんが早急に行うべきであるということで厚生労働省が動くようになりましたのも、転ばぬ先のつえということです。あるいは今社会で大きく問題になっているような事故米を始めとする様々な偽装は、転ばぬ先のつえのシステムをきちんとつくらず、そして現地機関の人たちにその認知の部分の仕事を押し付けるというような形はリーダーシップではありません。すなわち、今のばらまき行政でお金を配って、市町村の現場で判断してくださいと言っているのと同じ、丸投げのような談合のような話でございます。
 ですから、私が田崎真也さんというソムリエの方と一緒に、原産地呼称管理制度というような農作物や農産加工品の日本酒や米やワインやしょうちゅう等の生産表示、情報開示と品質評価の客観的、具体的制度化をしたのも、そうしたことです。
 森さんにもう一度お伺いをしたいと思いますが、ヨーロッパの国が優れているということじゃなくて、このように新たな法律のはざまに、子供を奈落の底に落とさないための具体的制度というものの中でDNA鑑定制度を明記をする、修正をするお考えがあられるかどうか、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(森英介君) DNA鑑定については、先ほど私の意見を申し上げた、私のというか、法務大臣としての考え方を申し上げたところでございます。
 いずれにしても、そういった様々な問題も起こり得るということで、そういったことがないように関係部門を督励いたしまして、しっかりとした調査を個別にするように指示をいたします。
○田中康夫君 しかし、先ほど白さんもおっしゃったように、指紋に関してはプライバシー侵害ではなくてDNAはプライバシー侵害だというのは、これはダブルスタンダード、二枚舌であるということで、法治国家というものへの信頼感を著しく損ねることに私はなると思います。
 いずれにいたしましても、私は国立国会図書館の意欲あるメンバーの調査データも踏まえた上で、私たちは今回のこの法律というものを、第三条第二項のところに以下のような文面を追加すべきと考えております。
 すなわち、前項の規定による届出には、父又は母が認知したこと、当該父又は母との間の親子関係の存在について、法務大臣の指定する者が人の個体のデオキシリボ核酸、これがDNAでございます、の塩基配列の特徴により鑑定した経過及び結果を記載した書面を添付しなければならない。
 これは、繰り返しますが、一たび閣議決定の手続を踏んだ事柄とて、至らなさを改むるにしくはありません。一たび動き出したならば、もはや止められない変えられないでは、これは諫早湾の悲劇や戦争の悲劇と同じでございます。永田町や霞が関という村社会のメンツを超えて、私たちは至らなさを改むるにしくはない。でなければ、私は一体何のための政治かと、森さん、思うわけでございます。
 僣越ながら、私は真のこうした手続民主主義ではなく成果民主主義を勝ち取るべく、私が発議者としてただいま読み上げた修正の実現に必要な十名の賛同者を求めたく、お声掛けをさせていただいております。既に、心ある複数名の参議院議員から賛同者としての署名をちょうだいするに至っております。
 幸いにして、国民新党代表代行の亀井静香さんからも、また民主党幹事長の鳩山由紀夫さんからも、是非とも、いささか形骸化しつつある良識の府参議院で法案修正を勝ち取って衆議院に差し戻してほしいと、私、昨日、直々に、直に激励を受けました。
 幸か不幸か、いや、これは幸いにしてだと私は思いますが、民主党では、今国会、この今改正案を役員会での議論を経ていないと、このように聞いております。
 つまり、真の国民益を創出する上では、私たちは、言葉、ロゴスというものを駆使して公論するべく全国各地から選び出された一人一人でございます。こうした私は決断をなし得てこそ国権の最高機関にして唯一の立法機関と日本国憲法でうたわれる国民の負託にこたえる考える葦が集う国会たり得るのではないかと、このように考えております。
 ねじれたピサの斜塔は世界遺産にはなりますが、目先の誘惑に惑わされての傾城は国家を滅ぼすわけでございます。往々にして形骸化しがちな手続民主主義の末にねじれた中身の法律が成立したなら、それこそは匿名性に守られた官僚政治が跳梁ばっこする官僚統治の官治という弊害であろうかと思います。
 私は、より良き成果をバイネーム、自分の名前を、的確な認識、迅速な決断、明確な責任を持って国会議員が集う、そうした気概と行動を生み出してこそ真の民主主義と呼び得る民治の社会が実現すると思っております。是非とも御賛同いただける参議院議員の諸兄諸姉が一人でも多からんことを願うところでございます。
 そして、まさに今この瞬間も、この質疑をかたずをのんで見守ってくださっている、おかしいことは一緒に変えていこうと、そういう思いのあられる全国の皆さんと一緒に信じられる日本を形作るべく、私は是非ともこの法律案、これは本当に後世のみならず現世においても大変な看過し得ぬやみの底へと子供たちを追い落とす法案であると考えております。
 是非ともDNA鑑定制度の導入ということを明文化する修正がこの良識の府において実現することを願って、私、田中康夫の質疑を終わります。
 ありがとうございます。
○松野信夫君 民主党の松野信夫です。
 我が会派も、白さんや田中さんやら非常に多彩な方々がおられます。私の方は、この法務委員会、たくさんいる弁護士の一人でもありますので、いささか弁護士的な発想での質問になるかもしれませんが、よろしくお願いしたいと思います。
 今回の国籍法の一部改正の法案ですけれども、今回の法改正というのは、御承知のように、今年の六月、最高裁の判決を受けてのものだということで、私は基本的には今回の法改正に賛成するという立場で質問をしたいと思います。ただ、いろいろと残された論点がございますので、そういった点についてはきちんと確認を取っておきたいと思います。
 そこで、今回の法改正ですけれども、今年六月の最高裁の違憲判決を踏まえたものだということは間違いないかと思いますが、しかし、本来は国民の人権あるいはいろんな方々の人権をしっかり守るという法務省とすれば、最高裁から憲法十四条に違反するというような指摘を受けて法改正するというのはいささか残念な気もいたすわけで、本来であればもっと前にきちっとした法改正等をやるべきではないのかなと。
 ですから、以前からのこういう法改正への検討というものはなかったんでしょうか。まず、この点、お聞きいたします。
○国務大臣(森英介君) 率直に申し上げて、この違憲判決が六月四日になされましたのを契機として法務省においては具体的な検討に着手しております。
○松野信夫君 これ、やっぱり非常に基本的な人権にかかわる大事な問題であります。
 今大臣言われたように、今年六月の最高裁の判決を受けてのものだということですけど、しかし、その前から、これは違憲だ、あるいは違憲の疑いが強いと、こういうような指摘は裁判所、下級審の方でもありました。また、最高裁の補足意見辺りでも出ていたわけです。もちろん学者の方々からも出ていたわけで、私は、そういう点についてはやっぱり基本的人権にかかわることですから、法務省はその辺の感度を良くして、最高裁の違憲判決を受ける前にやっぱりしっかり検討すべきではなかったか、違憲判決を受けて慌ててやるというのはいささか格好悪いという気もしないではないですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(森英介君) 委員の御指摘の趣旨は理解をいたしますけれども、しかしながら、法務省においてはこの判決を契機に検討を始めました。
○松野信夫君 これは、まあ私の個人的な思いも正直あります。というのは、もう十年ぐらい前かと思いますが、フィリピン人の女性から相談がありました。日本人の男性と関係を持って子供さんが生まれたということで、その男性の方には日本人の奥さんがおられるということで、まずなかなか認知してくれないということです。ですから、まず認知の手続を取りました。
 晴れて父と子という関係はできたわけですけど、しかし、その次の壁が、やっぱり国籍の壁がありまして、何とか父親が日本人だということがはっきりしたんでこの子供も日本人として育てたいというお母さんの思いもありまして、私もかなり調べたんですけれども、当時の国籍法の条項から見ると、これはなかなか難しい。そのフィリピン人のお母さんに、これは裁判で闘うという手もありますよと、しかし、裁判になれば、仮に一審、二審勝ったとしても、まずこれは間違いなく国の方は最高裁に持ち込むでしょうから、相当時間が掛かる、相当エネルギーも掛かる、それ覚悟できますかというお話をしたんですけど、エネルギーの点からいろんな費用の点もあって、もうそこまではとても闘うだけの力はないということで、もう断念します、こういうような経験もありまして、ですから、早く法律がこういうお母さん、子供さんの声をしっかり踏まえるような法改正がなされていれば断念しないでもよかったのに。
 恐らく、こういう形で断念せざるを得ないと、法律がある、その壁を突破できない、こういう方はかなり多かったのではないかなという気もして、やっぱり法律がきちんと国民のそういう要求を受け入れる、何も違憲判決を受けなくてもしっかり対応しなければいけない、こう思います。
 ですから、この判決を契機に今回国籍法の法改正がなされる、これはこれで結構だと思いますが、しかし、この後、民法九百条の嫡出子あるいは非嫡出子のこの差別の問題も、あるいは重国籍の問題も、最高裁から違憲判決だとか、そういうのを受けなければ動かないというのではなくて、やっぱりいろいろと御検討いただいて、最高裁の違憲判決受ける前に法務省としても、基本的人権の尊重あるいは憲法十四条のこの趣旨を踏まえて、積極的に対応をしていかれることが必要ではないかと思いますが、大臣、この点はいかがでしょうか。
○国務大臣(森英介君) 今の御指摘については、これは法務省としてもそういったことが、取組が必要であると思いますし、また国会におかれましても是非御議論を深めていただきたいと思います。
○松野信夫君 それで、今申し上げたように、できるだけこの最高裁の判決も踏まえて、やっぱりいろんな形での不合理な差別というのはなくしていかなければいけないと、こう思っております。
 それで、今回の法改正で、いわゆる胎児認知のケースと、それから生まれた後の生後認知での差別、私は、基本的には胎児認知の場合もそれから生後認知の場合も余り差を設けない方がいいのではないか、このように考えているんですけれども、今回の法改正でこの胎児認知と生後認知での差別というのは解消したんでしょうか。
○副大臣(佐藤剛男君) ただいまの松野委員の御指摘でございます胎児認知と生後認知での差別が解消したかどうかというものでございますが、この度の改正法案で、国籍法第三条第一項の要件、すなわち父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したと、その要件を削除するものでありまして、国籍取得に父母の婚姻を不要とする胎児認知と、これを必要としていた生後認知での実質的な要件の違いは解消されていると、このように考えるわけでございます。
 もっとも、胎児認知された方が出生のときに父又は母が日本国民であるときに該当しますので、国籍法第二条第一号によりまして出生時から日本国民となりますが、改正法においても、生後認知された方は、国籍取得の届出が必要でありますが、そのときから日本国籍を得ると、こういう違いがございますが、委員のおっしゃるとおりでございます。
○松野信夫君 実質的には差別解消したようなお話ですが、少し細かく見ますと、今副大臣言われたように、日本人の父親と外国人の母親との間に生まれた子供さんの場合について言うと、胎児認知、つまり胎児の時点から日本人の父親が認知をしていたという場合には、これは出生のときからもう既に日本国籍を取得すると。しかし、生後認知の場合は、要するに認知の届けをして、国籍の届けを出した、これで初めて国籍を取得するという、こういう違いが出てくるわけですね。
 それからもう一つ違いは、胎児認知の場合は今回の法改正で出てくるいわゆる罰則は、これは出てこないですね。それから、生後認知の場合は今回の法改正で設けられる罰則の適用、これを受けるということで、こういう二点の違いがあるのではないかと思いますが、この点は間違いないですか。
○副大臣(佐藤剛男君) 本法案においても、生後認知された方につきまして届出によります国籍取得という制度を維持しているのは、生後認知された方は、それまでに他の国の国籍を有していることがありますが、外国の法制によりましては、我が国の国籍の取得によって当該国の国籍を喪失してしまうという場合もあることや、外国人として生活している子が日本の国籍取得を望まない場合もあり得ることなどからしまして、生後認知によって当然日本の国籍を取得するということは妥当でないというふうに考えるからでございます。
○松野信夫君 その辺はちょっと私もいささか異論がありまして、最初に申し上げたように、胎児認知の場合と生後認知の場合と、これは余り取扱いに差を設けない方が子供さんの福祉のためにもいいのではないか。
 ですから、国籍の取得の時期についても、罰則を掛けるかどうかについても、掛けないなら掛けない、掛けるなら掛けるというふうに、やっぱり取扱いには違いを設けないということが私は必要ではないか。今回のこういう、今二点、違いを設けるというのはどうも余り合理的な差別とはちょっと考えにくいなと、このように思っていますが、いかがですか、何かありましたら。
○政府参考人(倉吉敬君) ちょっと今の点、まず罰則の点から申し上げますが、罰則ですので、何らかの処罰に値する行為がなければいけません。
 胎児認知の場合には、生まれたと同時に、胎児認知をしていればもうそのままで日本の国籍を取得するわけでして、胎児として生まれたときに何らかの行為があるわけではない。今度の国籍法三条一項、これは現行法の規定でも同じですが、届出という行為があるわけです。その届出という行為をとらえて、そこが虚偽の認知であったときには、虚偽の認知に基づく虚偽の国籍取得届であったときには罰則を掛けようということで、そこは行為があるかないかということなので、そこの違いはやむを得ないかと、こう思っております。
 それからもう一つ、時期の点でございますが、これは、要するに生物学上の父子関係があったら直ちに日本国籍を与えるということではありませんで、認知という行為によって法律上の父子関係、法律上の親子関係ができたときに日本国籍を与えるということでございます。
 胎児認知の場合には、既に胎児のときに認知行為が行われておりますので、生まれたと同時に法律上の親子関係が父親とその子供の間に発生します。しかし、生後認知の場合には、生まれたときはまだ認知されるかどうか分かりませんから親子関係が発生していないわけです。そして、生後、認知行為をしたときに、そのときに初めて親子関係が発生する、その後国籍取得届を出すことによってそれが具体化していくと、こういうことですので、時期がずれてしまうというのもこれはやむを得ないと思っております。
○松野信夫君 今の説明で、生後認知の場合は新たに国籍届をする必要があるということです。確かに今の現行法は、胎児認知は特段のそういう手続をする必要はない、胎児認知しておけば生まれる時点で直ちに日本国籍を取得するというのが、今のこの法律上の仕組みがそうなっているから今そのとおりおっしゃられたんだろうと思うんです。だけれども、結果として胎児認知の場合と生後認知の場合で区別が出ていることは間違いないんでね。だから、私はどっちかに統一した方がいい。ですから、多少これは極論になるのかもしれませんが、統一するということでいうならば、胎児認知の場合もちゃんと国籍の届けを生後認知の場合と同じようにしてもらうと。罰則を掛けるならそこで罰則を同じように掛ける、しないならしない、私はどっちかに統一する方が合理的ではないか。
 ただ、そうするとかなり法改正が伴うことはもう御存じのとおりですけれども、余り胎児認知と生後認知とそんなに区別をする合理的理由はちょっと考えにくいなと、これは率直に指摘をしておきたいと思います。
 それから次に、今年六月の最高裁の判決の中ではこういうくだりがあります。諸外国において認知のみにより自国籍の取得を認める旨の法改正が行われている。だから、認知だけで別に婚姻手続までは要らないんだと、こういう一つの理由になっているんですが、こういう諸外国の例というのを幾つか御紹介いただけますか。
○副大臣(佐藤剛男君) ただいまの御指摘でございますが、私ども法務当局としまして調べました結果を申し上げます。
 嫡出子でない子につきまして、準正、すなわち父母の婚姻による嫡出子たる身分の取得、これを要件とせずに、認知等によりまして国籍取得が認められるようになった国の法律改正としましては、例えばドイツでは一九九三年改正というのがございます。また、スイスの二〇〇三年改正、それからデンマークの二〇〇四年改正というのがあるものと承知いたしております。
○松野信夫君 ついでに、もしお分かりでしたら教えていただこうと思うんですが、ドイツとか今スイスとかの事例はお話しされたんですが、そういうような改正になった理由、どうしてそういう法改正をするようになったのか、さらに、その改正によって何らかの不都合が生じたのかどうか、もしその辺までお分かりでしたら教えてください。
○政府参考人(倉吉敬君) いずれも婚姻の要件を外したということであろうと思っておりますが、各国とも。これはやはりヨーロッパで非嫡出子の数が増えてきたとか、いろんな、非嫡出子に対する考え方、意識が変わってきたとか、今度の最高裁の大法廷判決もそういうことを挙げておりますが、それと同じようなことがヨーロッパでも起こっていたという、そういうことなのかなと思っております。
 それから、後の御質問は、その後何か状況が変わってきたのかという御質問かと思いますが、その点はまだちょっと十分確たるものは把握しておりません。
○松野信夫君 私の質問は、事情が変わったかどうかじゃなくて、そういう法改正、つまり婚姻を要件としない、認知だけで国籍取得できるという法改正することによって何らかの不都合、あるいは想定しない事態というのが各国で生じているんでしょうかという質問です。
○政府参考人(倉吉敬君) その点も確たるものはちょっと把握しておりません。
○松野信夫君 是非そういう点については御検討をいただきたいな、こう思っています。
 何かありますか。
○政府参考人(倉吉敬君) 実は、内容をしっかり、どういう法制度がどう変わったんだと明確に説明できるところまではいかないんですが、オランダとかドイツでは、そのことによってきちっと扶養をしない父親が増えたとか、何かそういうことがあって、公的機関が介入して、何ですかね、親子間の出生証明が十分でない人についていろんな対処をするというようなことをしているという話も聞いております。
○松野信夫君 是非外国の動向についてもよく御調査をいただきたいと思います。
 それで、今回の六月の最高裁の判決によりますと、この国籍法の立法された昭和五十九年当時は合憲であった、しかし遅くとも平成十五年の時点では違憲だ、違憲状態になっていると。そうすると、昭和五十九年から平成十五年までの間のどこかの時点で違憲状態になったのかなというふうにも思うんですけれども、ただ、その時期については最高裁は必ずしも明確にはしておりませんで、要するに遅くとも平成十五年の時点では違憲だと言うにとどめているわけですね。
 これは恐らく、この事件の原告になった方々が実際に法務省の方に国籍取得届を出されたのが平成十五年だと、だからそこでは違憲と言わないとこの原告の皆さんが救済されないと、そういうことから平成十五年の時点では遅くとも違憲になったと、こういう形で救済をしたんではないかなというふうに私は見ているんですが、法務省の方はどのようにお考えですか。
○政府参考人(倉吉敬君) 最高裁の判例の読み方、評価にかかわりますので、法務省当局としてどうだと断定的なことは申し上げられませんが。
 ただいまの点ですが、一般論で申し上げますと、とりわけ最高裁の判決というのは射程距離が問題になります。基本的に、個別的な事件についてそれを解決をするというのが裁判所の仕事でございます。だから、それを余りに拡大するような一般論というのは控えるという一般的な傾向はあるやに思います。
 その観点からいきますと、平成十五年に届出をした人たちが、原告たちたくさんいるんですが、一番古い人だったと。そうすると、その人が届出をしたときは少なくとも違憲だったよ、遅くとも憲法違反だったよと言えば、その事案の解決としては済むわけでございます。そういう観点から、あの判決のくだり、今日では憲法違反になっていると言いまして、最後のまとめのところで、遅くとも本件の上告人が届出をした平成十五年当時にはでしたか、何かそういう書き方になっていたんではないかと考えます。
○松野信夫君 そうすると、たまたま訴えに出られた方が平成十五年の時点で国籍取得の届けを出されていたと。だから、もしかして平成十年とか十一年とか十二年とかに届けを出していた方が訴えておられたら最高裁の結論も、もしかしたら平成十年当時違憲だというふうに言う可能性もあるわけですね。そうしますと、平成十五年という時点に私はそれほど大きな意味合いというのはないのではないかと思っております。
 それで、経過措置として、今回の法改正では、施行日から三年以内に届出をすることによって国籍の取得ができる、平成十五年の一月以降に二十歳に達した者に限定をすると、こういう立て付けになっているんです。平成十五年一月以降に二十歳に達した者に限定する。これは恐らく最高裁で、先ほどから出ますように、平成十五年の時点で違憲だというのを踏まえたものなのかなと思うんですが、この辺の理由はどうでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 御指摘のとおりでありまして、そこの時点をまず最初の基準で考えないといけないだろうなと、こう考えたわけでございます。
 ただ、今委員がいみじくも御指摘されました平成十五年一月以前でも違憲だった可能性は、最高裁の論理からいえばあるではないかと。それはそのとおりだろうと思います。
 それで、平成十五年一月以前でも届出をしていた、本件の事件の原告と同じように届出をしていた人は、平成十五年一月以前でもこれは救済しないといけないだろうと。しかし、十五年の一月以前に届出もしていなかった人、そういう人たちまで経過措置で配慮をして日本国籍を付与するという、そこまではしなくてもいいのではないかと、このように考えまして、今の立て付けになっているわけでございます。
○松野信夫君 今のお話、平成十五年一月以前に国籍取得の届けを出していた人は助けてあげようというようなお話ですけれども、しかし、私も最初、冒頭申し上げたように、十年ぐらい前相談を受けたフィリピン人の女性、その子供さんのケースは、弁護士の私が付いていたんですけれども、ああ、これは駄目だ、とても正直勝ち目がないということで、それは私の実力不足だったかもしれませんが、これは勝つにはもう最高裁まで行かないととても無理だから、国籍取得届も出しても無駄だと、受け付けてくれるかどうかも分からない、出しても駄目だというふうに、率直に言うと早々にあきらめてしまったというのが実態で、恐らくこれは私だけじゃなくて、法律がそうなっているから駄目ですよと言われればすごすごと引き下がっちゃうという人がむしろ私は大半ではないかなという気がしますので、平成十五年一月より前に国籍届を出しておれば助けてあげますよと言ったって、そういう人は恐らくほとんどいないのではないかなと、こういうふうに思います。
 ですから、先ほど申し上げたように、平成十五年の一月というのはそんなに重い意味が時期としてあるわけではない。その時期にドラスチックに社会情勢、世界情勢、婚姻の情勢が変わったわけでもない。ですから、平成十五年の一月以降に二十歳になった人はオーケー、平成十四年の十二月で二十歳になった人は残念でした、あとは帰化の手続しかありませんという仕組みは正直言っていかがなものか、この妥当性はどうかなと思いますが、この点はいかがでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 委員のおっしゃることもよく分かります。これはすぐれて立法政策の問題でして、どの時点でどう処理するのがいいかという問題でございます。
 実質的なところも十分に考えたつもりでありまして、平成十四年の十二月以前に二十歳になっていた人、その人たちがそれからずっと日本で暮らしていれば恐らく簡易帰化をして、日本国籍が欲しいということであれば日本国籍を取っているであろう。十二月以前で日本にはいない、もう外国で暮らしているということであれば外国での生活が安定しているであろうと。だから、日本国籍の取得を望むかどうかということ、ここは、そんなこと言ったって一人一人見たら違うじゃないかとおしかりを受けることは十分覚悟しておりますが、どこかの時点で、どこかの時点でポイントにしてやらざるを得ないというところで、こういう仕切りの仕方が妥当なところかなと考えたわけでございます。
○松野信夫君 どこかの時点で仕切るというのは全く分からないではないですけれども、平成十五年というのがたまたま原告の人たちの国籍届がそうだったということ、立脚しているわけですから、元々余り合理的な基準をとらえて経過措置をしているわけではない、この点は指摘をしておきたいと思います。
 それから、先ほど来から出ている偽装認知、仮装認知、これをどう防いでいくのかという点が問題になっているわけですが、これは、警察庁の方お見えいただいていると思いますが、これまで偽装の結婚、偽装婚姻、あるいは偽装認知あるいは偽装の養子縁組というようなことで例えば公正証書原本不実記載罪で犯罪として摘発された最近の件数、あれば教えてください。
○政府参考人(宮本和夫君) 平成十五年から平成十九年までに都道府県警察からいわゆる偽装結婚事件の検挙として報告を受け警察庁が報告しているものは百七十三事件でございまして、同様に、平成十五年から平成十九年までに偽装認知事件として把握しているものは三事件でございます。
○松野信夫君 そうすると、今のお話ですと、偽装結婚というのは五年間で百七十九件……
○政府参考人(宮本和夫君) 百七十三件。
○松野信夫君 百七十三件ということですが、偽装認知はわずか三件ということで、偽装認知そのものの数というのは非常に少ないのかなということが分かりました。
 それで、一昨日の委員会の質疑の中で、民事局長さんの御答弁で、それぞれ三ステージ、三つのステージで偽装を防止できるというようなことが、これは木庭健太郎さんの御質問で、三か所のゲートがございますということで言っておられるわけですね。その内容というのは、まず第一に認知の届けを市町村に提出する時点、それから二番目に法務局に国籍の取得届を出す時点、それから三番目に戸籍創設の届けを市町村に出す時点、この三段階でそれぞれ、例えば犯罪とすれば公正証書原本等不実記載罪でいけると、こういう御指摘があるんですが。
 しかし、実際のところを見ますと、認知の届けを市町村役場に出す、それから三番目の段階で、戸籍を新しくつくるということで市町村に出す、ここは恐らく実質的なチェックというのではほとんど機能しないのではないか。市町村の町民課の窓口でそういうチェックをしろといっても、これは現実にはなかなか難しい。実際のチェックというのは、法務局の方に国籍の取得届を出される、ここの時点ではないかなと、これはもう率直に言ってそのように思っておるんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 基本的には委員御指摘のとおりでして、第二段階で法務局に国籍取得届を出してくる時点、そこできちっとやることが一番大事だと思っております。市区町村ではそれはなかなかそんなこと見付けられないだろうというのは、おっしゃることはそのとおりでございまして、私どもも基本的にそう思っておりますが。
 例えば、過去にも似たような例があるわけですけれども、同じ男性が全然別の女性との子供、外国人の女性との子供を何人も認知するとかいうようなケースがあったとします。そうすると、一人目で認知申請来たときは分からないんだけど、二人三人と来ると、前の戸籍に付いていますから、市区町村はおかしいなと担当者が思うわけです。そのような場合には、何かその届出をそのまま受理することに疑義が生じる場合には法務局に照会をして、法務局に関係書類を送って法務局の判断を仰ぎなさいということが手続としてできておりまして、そういう場合には、そういうルートで法務局がよく検討をして、おかしいんじゃないかということで見るということもまれにはあるということは付言させていただきたいと思います。
○松野信夫君 余りまれな話ではなくて、通常は、ですから市町村の窓口、役場でチェックするというのは極めて難しい。やっぱり法務局の方に国籍の取得届、出されるこの段階だろうと思うんです。
 それで、念のためにちょっと確認をしておきたいんですが、認知といっても、いわゆる任意認知、父親が自発的に認知する任意認知の場合と、それから裁判手続を経た強制認知と二種類あるわけです。実際のところは、強制認知だろうと任意認知だろうと結局その三つのゲートをくぐっていくということは変わらないんだろうと思うんですが、ただ、強制認知ということは裁判所の目が光って、裁判所で一定のチェックが掛かってクリアされているということになると、強制認知で父子関係がきちんと裁判所が確認をしているということであれば、これはここでかなり偽装認知というのは防止できているのではないか。
 だから、そういう意味では、任意認知と強制認知というのは、事実上の取扱いでは実際上は少し違ってくるのではないかな、実務の運用としては違ってくるのではないかと思いますが、この点はどうでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 一般論として、御指摘のとおりだと思います。強制認知の場合は、通常の当事者が出頭して裁判をやって、そこでやっているということであれば、外国の手続がどうかというのがちょっと問題にはなるかもしれませんが、きちんとやられているであろうということで、それはおのずと物の見方が変わってくるという面はあろうかと思います。
 日本で言われている公示送達なんかの事件で相手がいないというときはどうかなという問題は若干残るかもしれませんが、基本的には委員御指摘のとおりだと思います。
○松野信夫君 それから、念のための確認ですが、法務局での国籍の取得届が出されるときに、十一月二十五日の読売新聞にも出ているように、厳格に写真取ったり父親の戸籍謄本取ったりでチェックをするという、そういうふうに考えておられるようですが、そうすると、例えば郵送で国籍取得の届けをぽんと送ってきただけではそれは駄目ですよと、単に郵送で送り付けるぐらいじゃ駄目で、必ず本人が法務局の窓口まで出頭してもらわないと駄目ですよということになるのか、その辺はどうでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) これは、届出人が出頭しなければならないということになっております。
○松野信夫君 それからもう一つ、念のための確認ですが、新たに国籍を取得するということで法務局の窓口に来られる。そうすると、場合によっては二重国籍ということもあり得るわけですね。元々、例えばフィリピン人の女性の産んだ子供だ、フィリピンの国籍も持っていらっしゃると、こういう場合には二重国籍になるということでの何らかの説明とか、あるいはフィリピン政府に対してこういう国籍届が出たのでというような通知が、日本政府からフィリピン政府の方に通知を出されるのかどうか、この点をちょっと確認したいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) まず、二重国籍になると、だからその後の対処が必要であるということは必ず説明をいたします。
 それから、政府間でそういう、例えばフィリピンの人の例の場合にフィリピン政府にそういう通知をするかという御質問ですが、この点はそのようなことはしておりません。
○松野信夫君 しておりませんというよりか、今後はどうなるんでしょうか。今後もそういう通知はするつもりはないというふうに聞いていいんですか。
○政府参考人(倉吉敬君) それぞれ自国民に国籍をどういう形で与えるのかというのは、今各国がそれぞれ決めてやっているというところでありまして、国際的に見てもそういう通知をするという扱いはないようでございます。今のところ、法務省としてもそういうことをやるというつもりはございません。
○松野信夫君 時間が参りましたのでもう最後にしたいと思いますが、念のために。
 一昨日の民事局長の答弁で、私は必ずしも適切ではないなというふうに思った点があります。これは、仁比委員の質問に対して国籍と公的給付との関係を言っておられて、公的給付については、法律上はいろいろあれですけれども、少なくとも運用上は、現在住んでいる外国人についてはできるだけ、教育の面も含めて、それなりの配慮がされていると、こういうふうに答弁されているんですが、私はこれは余り適切な答弁ではないと思います。
 例えば生活保護については、これは予算措置で行われているわけですし、また年金とか国民健康保険とかこういうものについては、元々は国籍条項があってある意味じゃ区別していたわけですが、その後、国籍条項を取っ払って外国人についても適用するということですので、それなりの配慮をしているというようなことではなくて、法律上そういう扱いをしなきゃいけないわけですから、この一昨日の御答弁は余り適切ではないと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(倉吉敬君) 委員御指摘のとおりでございます。
 少なくとも運用上はというところであいまいな記憶を、一生懸命答弁したつもりではございましたが、ただいま委員の御指摘のとおりでして、正確には、法律上もそうされている場合があるし、運用上そうなっている場合もあると。ただいま委員が説明したとおりでございます。
○松野信夫君 終わります。
○丸山和也君 自民党の丸山です。よろしくお願いします。
 もう各委員が何度も聞かれているんですけれども、今年の六月のこの最高裁大法廷判決のもたらした意義というか、そういうとらえ方から少し聞かせていただきたいと思います。
 これは法の下の平等という憲法十四条のここに、根幹にかかわるケースなんですけれども、先ほど白眞勲先生から、やっぱり外国人とどのように付き合っていくかという問題ではないかと、この国籍法に関してそうおっしゃって、私もまさにそうだと思うんですが、もう一つやっぱり、これは日本の取っている戸籍とか婚姻制度というものをどのようにとらえるかという問題とも同じ比重がある問題だと思うんですね。
 そういう意味で、私はこの判決出たときにぱっと脳裏にひらめいたのは、何度も言われているんですが、民法九百条の嫡出子と非嫡出子の相続分、取り分の不平等といいますか、これが目に浮かんだんですね。むしろ私の感覚からすれば、これだけ紛糾のあると言うと変ですけれども、大議論を起こす国籍法以前に、この民法九百条の方がむしろ先に訂正というか改正して取り組むべき課題であったんじゃないかと。これは何度も裁判になっているんですけれども、一定の理由があるということで、この前の最高裁の判決でも意見は若干分かれましたけれども、多数意見ではなお維持されているんですけれども。
 この点について法務大臣は、既に答えられていますけれども、基本的な今回の判決を受けて、この民法九百条についての御認識といいますか、ありましたら一言お伺いしたいんですけれども。
○国務大臣(森英介君) 最高裁の判決は、少なくとも十五年以降は違憲であったということで、これはやはり日本における家族観、それから様々な状況等の変化などもやはり勘案された上での御判断だと思います。
 しかしながら、先ほど申し上げましたけれども、やはり子供の立場に立って、別に子供は生まれてくる親を選べない、国を選べないわけですから、子供の立場に立って考えるべきであるという御判断であるというふうに受け止めておりますけれども。
 一方、やはり日本の戦前の家制度というのは、そこから既に変容して脱皮したものの、基本にやっぱり戸籍主義というか、そういったものが私はあるんだと思うんです。要するに、戸籍に入れば家族だということが基本にあって、それで、そういった日本の家族観というのが、やはりどういうふうに見るかということが一つあると思います。
 それでもって、やはり世界の、まあ世界の趨勢といっても私は日本の中の事情の方がより重いと思いますけれども、それに立って、これからどういうふうにこの問題に取り組んでいくかということでございますけれども、私、例えば世論調査の結果なども前回の委員会で引き合いに出しましたけれども、これは嫡出でない子よりも嫡出の子の方が、そういう子供も母親もずっと多いわけですから、ああいう世論調査の結果になるというのはある意味で現時点では当然なんだと思うんです。しかしながら、必ずしも、この間近藤先生からも御指摘あったように、これ多数決の話じゃなくて、やはりそういった子供の立場というのは十分に考えなきゃいけないというふうに思います。
 しかしながら、先ほど申し上げました日本の家についての考え、家族についての考え方とかそういったことが根底にありますから、これはまさに国民的な議論を更に深めていただいて判断すべきことだと思いますけれども、これは裁判所でどういう判断を示されるかとかそういうことと別にして、やはり法務省としても考えなきゃいけないし、また国会においても御議論いただかなきゃならないと思いますけれども、国籍法が先か九百条が先かということは別にして、いずれにしても同様に重要な課題であるというふうに認識をしております。
○丸山和也君 ありがとうございます。
 私も午前中にも言ったんですけど、福沢諭吉が封建制度は親の敵であると言いまして、これは明治維新のころですけれども、それから戦前、家制度、家父長制度、いわゆる家という強固な制度がありまして、それが戦後、現憲法になりまして、それから家制度がなくなり、子供は皆平等であると、そして法の下の平等、基本的人権が高らかにうたい上げられた、こういう出発をしたわけですね。
 そこの中で、大臣がおっしゃるように、やっぱり家制度の名残のようなものが、ああいう嫡出子であるかないかによって、たかが財産と言ったら変ですけれども、財産、まあお金ですよね、そこにおいてまで出生によって差別をするということは、やっぱり僕は残滓がかなり強固に残っていて、悲しむべき現実だと思うんですね。
 だから、まず日本国内におけるというか、国籍法ももちろん大事なんですけど、こういうところもむしろ僕はやっぱりかなり大きな、この民法九百条も解決されて初めて、まあほかにもまだあるんですけれども、国籍法の問題と同様の問題点で大きな問題が解決されたという時期が来るんじゃないかと思っていますので、是非、法務大臣、今おっしゃったように問題意識を持って取り組んでいただきたいと思います。
 それから、この国籍法なんですけれども、この判決についてはいろいろ賛否両論、意見がございまして、今日の新聞でも出ていたり、あるいはそれ以前からも一部の人で言っていますけれども、これは司法権の逸脱だと、要するに、国に法律制定を命じるようなものであって、司法権の範囲を逸脱したとんでもない、まあとんでもないと言うかは別にして、司法権の逸脱判決だと言う方もおられます。また、しかし司法権を逸脱しているけど、まあ最高裁判所が言ったから仕方なく国籍法の見直しはしなきゃならないんだろうという意見の方もおられる。
 そこで、大臣としては、今回の判決が司法権を逸脱しているけれども、最高裁判決が言ったんだからまあ仕方がないと、何とか国籍法を改正しようかというようなお気持ちで今回の改正案が出ているのか、そこら辺を、いやいや、あれは立派な判決だと、やや遅かったけれども、はっと気が付いて取り組んでいるんだというところか。そこら辺、忌憚のない御意見を伺いたいと思うんですけれども。
○国務大臣(森英介君) ここで忌憚のない私見を述べますとえらいことになりますから差し控えますけれども、私はあくまでもやっぱり法務大臣として最高裁の判決を尊重してなるべく早期に違憲状態を解決したいと思い、またそういう気持ちでもって国会に御審議をお願いしているところでございます。
○丸山和也君 それと、やっぱりちまたで一番問題になっているのは偽装認知とか犯罪行為が増えるんじゃないかということなんですけれども、ここでよく言われるのがいわゆる国籍法における血統主義という用語なんですけど、この血統主義というのが、法務省側の説明不足もあるのか、やや誤解されているんじゃないかという感じがするんですね。本当の生物学的な、まさにDNA的な血統を言っているのか、国籍法上の血統主義というのはどういうものかという点についてのやや僕は説明が足りないために誤解を生んでいる面があると思うんですよ。
 そういうことについて、先ほど田中委員もおっしゃっていましたけど、ちょっとやっぱり違っている前提の上でおっしゃっているような気もしましたんで、質問ですけれども、いわゆる日本は血統主義を取っているとおっしゃる、民事局長で結構ですけれども、ここでいう国籍法上の血統主義というのはどういうものなのかを勉強のつもりでひとつ教えていただきたいんですけれども。
○政府参考人(倉吉敬君) 血統主義というのは、基本的に血統がつながっている人、日本人の血がつながっている人はまず日本人としていくということであります。これに対する反対概念というか、立法例でありますのは出生地主義でして、領土で生まれた人、自国の領土内で生まれた人は全部自国民にしようという考え方と、血のつながりのある人を自国民にしようという、こういう大きな二つの考え方がある、それを血統主義と出生地主義と呼んでおります。
 それで、あとお答えになるかどうか、今回の最高裁の判決でございますが、国籍法の三条一項についてどういう趣旨かということを述べております。国籍法三条一項の立法目的を述べているところですが、血統主義を基調としつつ、我が国との密接な結び付きの指標となる一定の要件を満たす場合に限り出生後における日本国籍の取得を認めることとしたと。だから、血のつながりがあるというのがまず第一だけど、それに認知プラス婚姻ということで、それが我が国との密接な結び付きだと。
 つまり、認知というのは、単なる生物学上の父子関係ではなくて、法律上の親子関係をつくるということでございます、先ほど議論されたように。その親子関係ができて、そしてしかも、今の現行法は結婚をしている、そのことが我が国との結び付きを示す指標になるんだと、そういうことで定めた規定であって、この規定の立法目的自体は合理的であると、こう述べているわけでございます。
○丸山和也君 若干私が聞きたいのは、例えば、いわゆる純粋な意味での、我々素人的に言えば血統というと血のつながりと、じゃ、もう一〇〇%それを、まあ九九・九九九%か知りませんけど、科学的に立証するんだとやっぱりDNA鑑定が必要じゃないかと。それをしないで血統主義というのはおかしいじゃないかという議論に発展すると思うんですね。
 ところが、国籍法二条を見ますと、出生のときに父又は母が日本国民であったときは日本国籍を取得すると書いていますよね。これはだから、いわゆる国籍が、父又は母が日本国民であれば日本国籍だと、こういう血統主義を取っているわけですね。それは、だからどのように説明されるわけでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) ちょっと漠然とした説明をし過ぎたと思います。血統主義というのは、日本でいう血統主義というのは法律上の親子関係があるということでございまして、委員御指摘のとおりでございます。
○丸山和也君 そこで、最大の、今一番問題になっている偽装認知、偽装国籍取得ということになってくるんですけれども、これ三つの段階があって、それぞれの段階でチェックすると。認知の届出は余り実際はあれだけど、国籍取得届の段階で一番それが、チェック機能が働くだろうというお答えをいただいたように思うんですけれども。
 もちろん、それぞれの段階で十分事情を聴き、いろんな調査もされたり面接もされたりして厳格にやっていただく、またいただかなきゃならないと思うんですけれども、私がやや心配するのは、もちろんどんなことをやったってその網もかいくぐってくるような事例をもう一〇〇%防ぐということは人間がやることですから難しいと思いますけれども、一番心配するのは、不正が発覚したとき、それに対する、いや、法律ではこういう刑罰も設けましたよ、あるいは併合罪で最高七・五年まで行きますよ、だからもうかなり重いですよとおっしゃると、なるほどなと、一見そう思うんですけれども、やっぱり実際は法定刑がどうなっているかじゃなくて、発覚したときにそれをどのように追及し、実際どのように処罰するかという実際の運用なんですよね。例えば告発して、例えば検察庁に行ったって、こういうような行政犯みたいなものだったら、まあ初めてならいいや、今後はもうこんな変な申請したら駄目だよというふうに帰されたら、まあ何だそんなことか、しかられて帰ったわいぐらいに収まってしまうと、これはやっぱり後同じような例がどんどん続く可能性が十分あると思うんですよ。
 ですから、法律を作る段階では、もちろん違反者の処罰とかいうこと、実際運用は当たらないわけですけれども、そこの範囲についての、例えば違反が発覚した場合は、例えば国籍に関してはどのように、厳格にというか刑の実効性があるように、また抑止効果が発揮できるように運用されようとしているのか、もしそういうお考えがあるのならばお聞かせいただきたいと思うんですけれども。
○政府参考人(倉吉敬君) もちろん法務局の窓口に来た届出人に対して、これはすべての人にこういうことを言ったら良くないかなと思いますけれども、一般論として、この国籍取得届だけでも、これがうそだということになれば、ちゃんと罰則があるんですよ、一年以下の懲役ですよということは言うということになろうかと思います。
 それから、一般的に広く広報活動をしないといけません。こういうふうにして日本の国籍法が変わりましたということを広報するわけですけれども、その中でも、こういう罰則が設けられて、新しく新設されて、虚偽の認知に基づく国籍取得届というのはそれ自体でも処罰されますということはもちろん言っていくということになりますし、先ほど委員が御指摘になった、その前と後ろの公正証書原本不実記載罪になるという戸籍に載る場面のことについても十分に広報していく、そして説明をしていくということに予定しております。
○丸山和也君 そういうふうに説明をされることは当然なんですけど、例えば実際に認知届なり持っていくとしますよね、窓口に。それで、偽装認知のあれですよ、偽装認知の関係の書類を持っていくと、いろいろ聴いているうちに、おかしいじゃないの、あなた、これ本当じゃないんじゃないのと言われて、いや済みませんでした、じゃまた翌日来ますわと言って持って帰ったら、大体これで終わってしまうんじゃないかという感じもするんですよ。おい、待てと、そこでこう、ただ捕まえるという言葉はあれですけど、そこでもうはっきり言えば着手しているわけですよね、書く段階でそうですけれども。そういう扱いの現状なんですよ、私が一番心配しているのは。
 窓口に行ってあれしてもらって、いや済みません、ちょっともう一回考えて書きます、出直しますと、いや、もう気を付けてくださいよというようなことで、悪いことをやったら犯罪になりますよということで帰しているようでは、やっぱり僕はちょっと、発覚さえしなければやっていいし、発覚したって帰ればそれでいいんだということになって、たまたますり抜けた人がうまくいくというような感じで、やっぱり法定刑だけ作っても実効性がないんじゃないかと思うんですね。
 というのは、こういう手続に関する犯罪というのは余り重く見ない風潮がありますね。例えば、暴行とか傷害とか窃盗だと、やっぱりこれは即座にその場で未遂であっても逮捕しますけれども、あるいはこういうのだとやっぱり突っ返されて終わりということになってしまうと、法定刑だけ重くしたあるいは新設したということにしても、実効性という意味では余り抑止効果があるのかなという点が心配しているんですけれども、そこら辺についてどのようにお考えになりますか。
○政府参考人(倉吉敬君) 今の委員が設定されたケースでは、疑わしいとなった場合でございますが、疑わしいとなった場合には、更にいろんなことを聴いて証拠を詰めるということもやりますけれども、それ以上に、これは本当に犯罪の疑いが強いということになれば警察に通報をいたします。場合によっては告発をするということがあり得ます。
 それから、それとも離れて、要するに私は関係機関との連携ということを言いたいわけでございますけれども、入管や警察と連携を取って、事前に情報を集め、そして何かあったときは、これはどうだと、何かおかしいケースはなかったかと個別の事案ごとにやる。それからさらに、もちろん各法務局、地方法務局ごとに関係機関との連携具合というのは事情が違うわけですけれども、少なくとも帰化の届出の関係なんかではいろんな連携がございますので、そういうことで連絡会を定期的に持つとか、本省においてもそういうことはできると思っております。そういう体制を組むということも非常に大事なことだと思っております。
○丸山和也君 今、教科書的なお答えをいただいたんですけれども、それを、市町村窓口、法務局窓口、全国たくさんあるわけですよね。そういう中で、一生懸命仕事をされるということと、やっぱり犯罪行為を摘発して告発するということは、ちょっとやっぱり一般の人はなかなか、幾ら公務員であってもステージが高いと思うんですね。だから、そこは僕はかなり疑問に思っているんですよ。
 だから、いろいろ、例えば疑われ出したら、いや、もう結構です、撤回しますというふうに帰ってしまうんじゃないかというような感じも非常に持っていまして、それで、そういう偽装がなければいいんですけれども、その程度の抑止効果だとするとちょっとやっぱり心配だなという気がしていますから、先ほどおっしゃったこれからの取組なんですけれども、やはり疑わしいと思ったら、すべてやっぱり、取調べと言うと変ですけれども、よく審査をすると。それで、かなり疑わしいと思ったらもう告発をすると。司法機関によって犯罪性があるかないかをやっぱり漏れなくやると、こういうぐらいの決意でやっぱり取り組んでいただかないと多くの方の国民の不安はなかなか取り除けないと思うんですね。特にDNA鑑定を入れない今回の制度の場合ですね。
 ですから、そこら辺は実際のやはり運用が非常に大事になると。それで、最高裁の方もこういう判決を出していますけれども、実際はやっぱり運用がどうなるかということは非常に心配しているような判決のように私は思ったんですけれども、そういう意味では、最高裁判決の意を酌む意味でも、是非、今回の法改正が悪用されないように最大限の、運用面でのこれから研究をして、工夫をしていただきたいと思いますけれども、もう一度そこら辺の覚悟をお聞きしたいんです。
○政府参考人(倉吉敬君) 御指摘のとおりでございまして、それぞれ事案が違うから、それに応じて緩いことにならないかという御指摘でございまして、そこは我々も非常に重く受け止めました。そこが一番基本的には大事なところだと思いますので、今委員の御指摘になったこと、本当におかしい、いよいよ疑わしいとなったら常に告発するのを原則にしろという、そこら辺を基本的姿勢で臨むということで、今後また法務局の運営に当たっていくようにしたいと思います。
○丸山和也君 大体聞こうと思ったことをもうおっしゃったんですけれども、勉強のために少しお聞きしたいんですけれども、国籍法、現在の国籍法ですね、昭和二十五年制定ですか、戦前の国籍法においては、国籍の取得というのは、国籍取得の届出は必要だったんでしょうか、それは必要なかったんでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 認知の場合は必要でありませんでした。日本人の男子が外国人の女性との間に生まれた子供をおれが認知すると言ったら、認知した瞬間に日本人になる、届出も要らないという、そういう制度でございました。
○丸山和也君 逆に言うと、ドイツなんかもそうじゃないかと思うんですけれども、短絡的に考えると、その方がむしろ時代の流れかなと思ったりもしないこともないんですよ。すると、わざわざ法改正をして、例えば戦後の体制、個人の自由を尊重した憲法下でこういう法律が逆に強化されて、それで今またいろいろ問題が起こっているんですけれども、これはどういう意図でというかいきさつで、あえてこの国籍法で認知のほかに国籍取得の届出を要求したんでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 実質的には、認知をしただけで日本人になるというと、日本人になる方は子供でございます。子供には外国国籍がある場合が多いわけで、それを子供の意思にかかわらず、あるとき認知するということを言ったら自動的にその人が二重国籍になったりとか、いろんなことが起こるわけですね。それでいいのかという問題があります。
 それで、きちっと届出をさせて、そこで身分関係をきちっと安定をさせて、そしてやるというのが正しいという、そういう立法政策だろうと思います。
○丸山和也君 そこで、どうしても二重国籍問題というのが出てくるんだと思うんですね。それで、現在の国籍法においても基本的には二重国籍は望ましくないという発想ですよね。それで、先ほど局長の答弁の中で、例えば日本人男性がフィリピン人の女性との間に子供をもうけたと、そして生後認知をしたケースだとしまして、既にもう子供がフィリピン国籍を取っているとして、すると、今回の改正で日本国籍を取ったときに、結果的にはまあ、その後どうなるは別にして、その時点では二重国籍になるわけですよね。
 それで、一方、日本の国籍を与えても、日本の法務当局からはフィリピンに対して、いや、日本国籍を取りましたからおたくの方でしかるべき手続を取ってくださいという通知もしないし、今後もする意向はない、また、そういうことを一々やらないのが国際的な各国の流れだと、私もそう思うんですけれども、そうなると、ある意味じゃ特定の場合にはだから二重国籍者をどんどん今回の国籍法の改正によって増やすことにもなるわけですよね。
 それと、一方、日本の国籍法は基本的に私が読む限り余り二重国籍というのは前提にしていないと。それから、国籍の選択ですか、何条でしたかね、十四条ですか、こういうことがあって、どちらかの国籍を選ばせるという思想のようになっていると思うんですけれども。
 こうなると、二重国籍あるいは三重国籍、四重国籍もあるかもしれませんけれども、重国籍に対する考え方についても、基本的に考え方自身をどのようにするかということを考えるときが来ているんじゃないかと思うんですけれども、これについて、まず法務大臣はどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(森英介君) そうですね、現状では今委員のお話にもありましたとおり日本では国籍唯一ということが基本で、これは何でそうなっているかということを私なりに考えると、やっぱり白眞勲委員のように重国籍になる可能性のあった方の場合、やっぱりその両国の利害が対立したときなんかに非常に困ったことになっちゃうというふうに思うわけです。そんなことで、日本では恐らく国籍唯一ということが基本になっていると思いますけれども、諸外国では重国籍を認めている国も少なからずあるわけでございまして、これをどうするかというのは、やっぱりこれから国の在り方も含めて大きな議論になると思いますけれども。
 私は、個人的には、別に特に国籍唯一を基本として特に問題はないと思いますし、また、今回確かに重国籍が増える、可能性としては重国籍が増える方向に行くと思いますけれども、それも二十歳まで、二十歳以下の場合には二十歳のときに自分で決めると、それで、それ以上であればその二重になった時点から二年後に決めるということで、かなり自己申告的な感じもありますけれども、私は現状においてさしたる不都合はないんじゃないかなというふうに思っております。
○丸山和也君 実際の運用で少しお聞きしたいんですけれども、二重国籍に関する問題なんですけれども、十五条で、法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期限内に日本の国籍を選択しないものに対して、書面により、国籍の選択すべきことを催告することができる、そしてこれを、催告を受けても選択しなかったら国籍を失うと、こういうふうになっているように思うんですけれども、実際にこういう催告なんてやっているんでしょうか。
○国務大臣(森英介君) 事務方から答えさせますけれども、ちょっとその前に、先ほど二十歳と申し上げたのは、二十歳以下の場合には二十二歳のときに国籍を明らかにすると訂正させていただきます。
○政府参考人(倉吉敬君) 催告をしているのかという御質問でございます。しておりません。
○丸山和也君 だから、実際問題としては、例えばアメリカで生まれた子供さんとか、日本人夫婦の、出生地によってアメリカ国籍を持ったと、それで日本に帰ってきて、そのままにして二つのパスポートを持ってやっていて、成人になっても別に催告も受けないし、そのままずっといっている方もたくさんいるんですが、こういうのはどのように考えたらいいんでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 実はその重国籍の問題というのは非常に難しい問題で、いろいろ、例えば自由民主党の司法制度調査会のプロジェクトチームなんかでも非常に議論のされているところでございます。
 様々な御意見があります。これまでも国籍法については、我が国を取り巻く情勢とか、国内のいろんな意見とか、そういうことを振り向きながら必要に応じて改正をしてきたわけでございますけれども、この重国籍の問題については非常に意見が分かれているところでございまして、今後とも、もちろん国際的な動向がどう動いていくかということも注視しなければいけませんが、それと同時に、国民的な議論が深まっていくということを見守っていきたいと、今はそう考えているところでございます。
○丸山和也君 あえてそれを調べて催告もしないというのは、そういうことをすれば事務的手数も増えますし、そういう時代の流れもゆっくり見ていた方がいいという配慮からそういう催告もするようなこともないということなんでしょうか、現実的なとらえ方なんですけれども。
○政府参考人(倉吉敬君) 実は今の下でだれが重国籍者なのかというのをもう把握できないわけでございます。そのような状況の中で、たまたま把握した人に催告をするのがいいのかと。もちろん、催告を受ける側は追い詰められるわけですから、どっちかを選択しなければならない、それが本当にいいのかという問題はございます。いや、そんな生ぬるいことでいいのかとか、いろんな御意見はあるわけですけれども、今のところはそういったもろもろの事情を考えて催告をしないということにしております。
 我が国の国籍法は、基本的に国籍唯一の原則、国籍は一つであるべきだという原則を理念としております。したがって、無国籍及び重国籍の発生はできる限り防止し、解消を図るように努めることとされているわけでありますけれども、国籍選択については、今申しましたように、そういう事情があるとともに、本人のみならず、その親族等関係者の身分関係及び生活等に極めて重大な影響を及ぼすということがございますので、慎重に対処する必要があると考えておりまして、本人の自発的な意思による選択がされるよう制度の周知と啓発に努めているわけでございます。
○丸山和也君 いや、私は決してそれでいいのかと言ってるんじゃなくて、非常に我が日本国も寛大なところがあるなというふうに思ったんですけれども。
 ただ、この重国籍に関しては問題があるという方もあるし、やっぱりまじめな方で、重国籍を認めてくださいという請願も結構来るんですね。それで、多様な文化、異国の文化を共有しながら社会生活を送る、それによってやっぱり共存といいますか、できるんだと。
 特に、日本人で外国の方と結婚されて、向こうの国では重国籍を認めるんだけれども、日本は認めない。それで、どうしても日本国籍を失うとなると、例えば外国人と結婚して子供ができて孫を連れて親に見せたいと、あるいは親の介護のために日本にしばらく長期滞在したいと思っても、外国人扱いされてなかなか非常にそれが困難だとか、こういうことで、そういうグループの方は、どうして日本国籍を失わなきゃならないんだと、これを何とか改正してくれないかという要望もありますし。
 それから、昨今ニュースになっておった、ノーベル賞をもらいましたね、日本人の方。日本人、ノーベル賞だといっても、あれ、実際は国籍はアメリカ、帰化されてアメリカ国籍であれば、もう日本人じゃないんですよね。そうなるとやっぱり、そういう方々も、別に日本の国籍を失いたくはなかったけれども、そういう日本でアメリカの国籍を取ることと日本の国籍が、両方が維持することが難しいとなってやむなく選択された方もおられるんじゃないかと思うんです。
 そうなると、これからの時代というのは、規制する面は厳しく規制し、不正は断固きつい処罰をしなきゃならないんだけど、やっぱりいい方向でのフレキシビリティーというのを持たないと、国としてやっぱり逆に孤立していくんじゃないかという感じ、私するんですよ。
 そういう意味で、私はよく言うんですけど、結構私は国粋主義者だけど偏狭な国粋主義ではないと、国際的に開かれた国粋主義者でありたいと思っているんですけどね。それは、良き日本の文化、伝統を大事にしながら、やはり開かれた国づくりをすべきだと思いますんで、どうか大臣、局長を含めて、この二重国籍問題についてもこれからの課題として研究を続けていただきたいと。我々もいろいろなところで議論を重ねてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
 それから、最後の方になりますけれども、これは私も前から思っていたんですけれども、松野先生が既に細かく御指摘されましたんですが、胎児認知と生後認知ですね。これは、やはり私も、なぜこういう違いがあるのかなということを司法試験勉強していた段階から思っていたんですよ。だから、本当に古いんですよ。もう三十五年以上前から、何でこれあるのかなと。でも、覚えなきゃいかぬですから、おかしいなと思いながら暗記していたんですよ。それが三十五年たってやっと日の目を見たという議論なんで、非常に今日うれしかったんですよ。ですから、ここはやはり統一的に処理していくという方がいいんじゃないかと思いますね、いろいろ細かい理由をおっしゃいましたけど。
 これ、何か、何か独特の胎児認知という歴史的な、我々が知らないやっぱり重みというか、活用のされ方ということが特別これまであったためにこういう区別をされたんでしょうか。局長。
○政府参考人(倉吉敬君) これは、国籍法が、子供が生まれたときに父か母が日本人であれば日本人というのがまず原則でございます。それが国籍法の二条でございます。それから、生まれた後、認知されたときに届出にというのが三条になっているわけです。
 生まれたときにもう日本人と親子関係があれば日本人だということにしているわけですから、論理的に、胎児認知の場合は胎児のときに認知しています。そうすると、生まれたと同時に父親と親子関係ができる、法律上の。そしたら当然日本人であるという、こういう考え方でございます。
 それから、済みません、先ほどちょっと誤ったことを申しまして、司法制度調査会のプロジェクトチームと申しましたが、法務部会でございました。ちょっと訂正させていただきます。
○丸山和也君 それで、胎児認知というのは特別届けが要らぬわけですよね。実際、胎児認知をしたしないというのはどういう、いや、胎児認知していたよというふうなことを後から言うわけですか。まさかお腹の子に向かって、認知すると、こう言うわけじゃないですよね。
○政府参考人(倉吉敬君) これは戸籍法上の届出でございまして、胎児の間に認知したという届出を市区町村にするわけでございます。そして、市区町村にその届出を残しておいて、そして無事に生まれたということになったら、すぐ父親だということで戸籍の届出をすると、こういうことになります。
○丸山和也君 実際、現在、胎児認知というのはかなり行われているんでしょうか。統計的数字がありましたら、ちょっと参考までにお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思うんですけれども。
○政府参考人(倉吉敬君) 済みません、今ちょっと手元に統計資料がありませんので、後刻また御報告したいと思います。
○丸山和也君 終わります。
○山谷えり子君 自由民主党、山谷えり子でございます。
 本年六月四日に出された最高裁判決は国籍法規定を違憲と判断したものですが、日本国籍取得までをも認めたのは立法措置に等しく、国籍取得までは認めないという最高裁裁判官が十五人中五人おられたわけですね。
 私もこれに対しては非常に違和感を持っておりまして、この国籍付与というのは司法権の逸脱ではないかというふうに考えております。立法措置に踏み込んでいることにもう当事者すら、五人の裁判官がおかしいと言っている。これ、法解釈の限界を超えているという意見を述べた裁判官もおられた。
 違憲状態の解消は国会にゆだねるべきだと思います。これ、三権分立を侵しているんじゃないでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) ただいま委員御指摘のとおり、その点がこの判決の大きな論点になりました。
 委員御指摘のとおり、裁判官十五人のうち十人が原告に日本国籍の取得をもう直接認めるという判断をしたわけですが、反対意見が五人ありまして、このうち三人は元々合憲だという、根っこからの反対でございます。残りのお二人の方は、立法不作為の状態が憲法違反になっているにすぎないんで、そこが憲法違反だとしても、新たな規定を創設するということは司法の役割を超えると、だから国会の立法措置にゆだねるべきだといたしまして、元々合憲だと言われた三人の方も、もし違憲だとすればそういうことになるんだと、だからその意味でも多数意見はおかしいという意見を述べておりまして、だから委員と同じ御意見の方が五人おられたということにはなりますけれども、ただ、最高裁の大法廷の判決は多数意見で形成されておりますので、法務省としてはこれを重く受け止めて、今回の法案の提出に至ったということでございます。
○山谷えり子君 国籍取得というのは本当に立法措置だと思いますので、私は、良識の府参議院としては、一体そのようなことが最高裁の判断でできるのかということを本当に問題にしていっていただきたいというふうに思います。ですからこそ、慎重審議というものを求めていきたいと思います。
 現行の国籍法では簡易帰化制度もあります。判決では、家族の生活や親子関係に対するその後の意識の変化や実態の多様化を考えれば、この要件は今日の実態に適合しないとありますが、そうなんでしょうか。そうじゃないという方も本当にたくさんいらっしゃるわけですね。
 違憲判断に様々な問題点が含まれている場合、慎重に審議すべきだと思いますが、刑法二百条の尊属殺規定については、違憲判決が出てから多数の反対もあり、三十五年間改正されなかった。今回の判決も多くの国民が懸念を示していると思いますが、その辺の状況をいかが思っていらっしゃいますか。
○政府参考人(倉吉敬君) 最高裁である条項が憲法違反だという判決が出た場合の効力の問題でございますが、これはもう委員が当然それを前提として議論されていることを承知しておりますけれども、その事件だけにしか効力は及びません。ですから、今回の国籍法の三条一項が婚姻と嫡出子という要件を付けているところは憲法違反だという判断が出たわけですけれども、そのことによってその要件が法律から消えてしまうというわけではないわけです。現行法としてまだ残っている。
 ただ、ですから、その意味ではあとは立法府でどう対処するかという問題が残るわけですけれども、今回の原告らと、最高裁まで上告人の皆さんと同じような環境にある人が裁判を起こせば、それは、下級審の裁判官はそれは独立でございますけれども、ついこの間、大法廷の判決が出たばっかりだと、これが覆るとは思えないので、同じ判断をするということが多いと思います。
 そうすると、結局、訴訟によって同じような判断をされて救済されていくということ、そういうことにしないといけないのか、それとも、やっぱり国会がそれを受け止めて、その最高裁の判決の言っている限度で条文を改正していく、これが三権分立の上では正しいやり方ではないかと、こう思っているわけでございまして、法務省としても、それを閣法として法案を提出するのは、これは当然の責務であると考えているわけでございます。
○山谷えり子君 ですから、国籍取得までも認めてしまったからそういうことが起こるわけで、私はこれはフライングだと思いますよ。三権分立を侵していると思います。
 国籍は国家の根幹にかかわることで、国の尊厳、国の重さにかかわることであることを考えれば慎重な審議が欲しいんですけれども、国籍の取得というのは、差別の問題ではなくて、主権の問題、統治権の問題、つまり政治的な運命共同体のフルメンバーになるわけでございますから、国籍というのは主権の問題というふうにとらえてよろしいでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) ある人に国籍を与えるかどうか、つまり国家の構成員を決めるその仕組みでございますので、言わば主権者を決めるということではないかという御指摘はそのとおりだと思います。
○山谷えり子君 慎重審議を訴えますのは、今の改正案には懸念される事柄が多いからでございます。特に問題になるのは偽装認知をどう防ぐか、そのためにこの委員会のやり取り、随分ございましたけれども、偽装認知を防ぐために法務局の窓口ではしっかりといろいろなことをやるというふうに言っておられますが、ブローカー等が介在して組織的に巧妙に偽装が行われる心配がございます。
 全国に法務局どのくらいあって、窓口によってばらつきなくきちんとやっていくという担保を今どのような形で考えていらっしゃいますか。
○政府参考人(倉吉敬君) ばらつきのないようにと、それを一番我々も考えておりまして、もちろん今回の改正法に基づいてやるということになれば、私これまでもるる説明しております、法務局の窓口でこういうことをやりますというようなことを申し上げておりますが、今考えておりますのは、まず省令で窓口に来た人に提出してもらう書類というのをある程度明示していこうと。それから、通達を発しまして、このような調査方法を行うということを全国一律にやれるようにする、そしてこれを様々な研修の機会であるとか会同の機会等を通じて広く法務局の職員に徹底してまいりたいと思っております。
○山谷えり子君 法務局の窓口、幾つですか。
○政府参考人(倉吉敬君) 本局が五十ございます。そのほか支局が相当数、支局を入れて二百十四、そこが受付の窓口となります。
○山谷えり子君 手続の厳格化、法務省令が作られつつあると思いますけれども、可決されれば十日あるいは二週間後ぐらいにはもう省令ができてくると思うんですね。どんな書類が必要か、省令に盛り込むべきだと思いますけれども、いかがですか。
○政府参考人(倉吉敬君) 委員御指摘のとおりでして、どのような書類が必要かということを省令に盛り込んでいきたいと、こう思っております。
○山谷えり子君 申請の際に父親を原則同行させ、聴き取り調査をすべきではありませんか。
○政府参考人(倉吉敬君) 国籍取得届の届出人というのは基本は子供でございます。子供が十五歳未満であるときは法定代理人が届出人でございます。先ほど来申し上げておりますとおり、届出人は必ず窓口に来ていただきますが、普通は、認知をされただけだということになれば母親が法定代理人ということが多いと思います。父親は法定代理人ではないので、必ず来いということはそれは言えないということになるわけですが、法務局では父親に任意の協力を求めて、出頭してきてくれとか、それから、来れないということであればその父親のお宅にお邪魔をして、そして事情を伺うとか、いろんなことをしていかなければならないと思っております。
○山谷えり子君 過去に多数の認知した子供がいる場合のチェックのために、父の出生から現在までの父の戸籍謄本や父の住民票又はそれに類する父の住所を証する書面など必要と思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) ただいまの委員の御指摘もそのとおりでございまして、戸籍というのは古い戸籍は除籍ということになって表に出ないようになるわけですけれども、その父親がある年に達してから今までたくさん子供を認知しているというケースだとすると、これは非常に不自然だということになりますので、そこが全部分かるように過去のものも全部含めてそういう書類を出させるということは検討しているところでございます。
○山谷えり子君 認知に至った経緯の記述、聴き取りなど、調査の方法に万全な措置を講じてほしいと思いますけれども、現在どのように進めていらっしゃいますか。というのは、省令が出て施行日までそんなに間がないですよね。ということで、現在どうしていらっしゃいますか。
○政府参考人(倉吉敬君) 認知に至った経緯の記述それから聴き取り、これはきちっとやっていきたいと思っております。
 基本的には、これは余り内容を詳細に話すと手のうちを明かすということにもなりますのであれですが、かなり詳細な事項の質問事項を作ってそれを聴きながら、本人には申述書を出していただいて、それを照合して話がうまく合っているかというのが分かるようにしたいと。そして、その結果、例えば子供を懐胎した時期、例えば外国でお父さんと一緒になって懐胎したんだということであれば、そのときに父母が同じ国に滞在していたのかどうかとか、そういうことについて疑義が生じたというような場合には、先ほど来申しておりますが、関係機関とも連絡を密にして更なる確認をするというようなことをいたしまして不正の防止に努めてまいりたい。このことは通達にもできるだけきちっと書いていきたいと思っております。
○山谷えり子君 国籍は大変重うございます。日本には簡易帰化制度があります。国民の心配、懸念は本当に大きいものでございます。悪意か悪意でないか、認知がですね、見極めるのも難しい。組織的犯罪が起こる心配があるわけですから、半年ごとに委員会に、どのぐらいの届出があったのか、件数やケース、どこの法務局の窓口でどうだったと、こういう報告はしていただけますか。
○政府参考人(倉吉敬君) 半年ごとということでございますが、委員会の求めがあれば、それは当然にやるべきだと思っております。
○山谷えり子君 是非、ではそのようにしていただきたいというふうに思います。
 国籍がなくても現在は生活保護を受けることができますけれども、国籍を取った場合のプラスというのはどういうことでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 例えば、国籍を取るか取らないかで変わるというのは、公的資格を得られるかどうかというような問題があります。公務員になるためには日本人でなければならないとか、そういう要件が定められている場合とか、それから選挙権等、そういうところが大きく変わってくるだろうと思います。
○山谷えり子君 私がさっき三権分立を侵しているのではないか、司法権の逸脱ではないかと言ったのは違憲判決に対して言っているのではなくて、国籍取得という、それが立法措置に踏み込んでいるというような考え方も成り立つのではないかということを言ったんですね。
 なぜそのようなことを言ったかというと、報道によれば、フィリピン人と日本人の間の子供が五万人ほどいると言われております。しかし、今回の改正で対象となる子は年間六、七百人ぐらいとも言われています。そしてまた、訴えを今起こす、あるいは起こしている可能性がある人が百人以上いると言われているんですけれども、これはそれぞれのちょっと数字がよく、本当に事実かどうか分からなくて、その辺を教えていただけますか。
○政府参考人(倉吉敬君) まず、六月四日に最高裁の判決がありまして、それから昨日までに、この国籍法が最高裁の判決に沿って変わるであろうということを期待して既に届出が出ております、全国の法務局、地方法務局に。この届出については取扱いを留保した形にして置いてあるわけですが、それがたしか昨日までで百二十七件、最高裁の判決後ですよ、新しく出ている届出がたしかそれだけあったと思います。
 それから、あと具体的にどれくらいこういう届出をするという人が出てくるのであろうかと。これは推計によるしかないわけですけれども、日本国民である父と外国人である母との間に生まれて、生まれた後に父親から認知された子がどのくらい存在するのかという話になりまして、これを正確に把握することは困難でありますけれども、本年の六月以降、日本人男性が外国人である二十歳未満の子を認知した旨の届出がされた件数を調査したものから年間の件数を推計いたしました。それから年間の、夫婦になってしまう、結婚して準正が起こる、準正による国籍取得者数を引き算をしてやれば、残りがその対象者ということになります。その残りの数は年間六百名から七百名という、概算でございますが推計値が出ました。この人たちが要するに国籍取得届出まで行くかどうか分かりませんけれども、対象者となり得るということでございます。
○山谷えり子君 本当に、現実はそういういろいろな数でいろいろな申出が行われていると。
 そうしますと、可決されて、公布されて、省令が出て、施行されると。これは可決されてから何日後ぐらいになるんですか。
○政府参考人(倉吉敬君) 施行期日は、公布から二十日後を予定しております。
○山谷えり子君 そうしますと、この委員会でも、本当に偽装認知防止の担保が十分かどうかというまだまだ不安があるわけでございますから、やはりまだまだ早いと思いますので、慎重審議を引き続きお願いしたいというふうに思います。
 個人ではなくて組織的に偽装認知ビジネスをしているような者、ブローカーなど悪質な者に対してはどのような罰則規定ございますか。
○政府参考人(大野恒太郎君) 個人的な場合であれ組織的な場合であれ、市町村役場に虚偽の認知届をした場合、これを例に取りますと、刑法百五十七条の公正証書原本不実記載罪が成立するということでは変わりはありません。
 ただ、実際の刑事手続の運用について申し上げますと、一般的に申し上げて、組織的にこれが、犯罪が行われた場合には、量刑に当たりまして悪質な犯情というようなことで考慮されることになることが考えられます。したがいまして、検察としては、組織的に偽装認知のような事案が行われた場合には、そうした犯情を踏まえて法と証拠に基づいて厳正に対処するというように考えております。
○山谷えり子君 申請の際に父親を原則同行してほしいと思うんですけれども、これ認知してから行方不明になっている父親は無理ですよね。そういう場合はどのような書類、また写真という話もありますけれども、どのようなことを考えていらっしゃいますか。
○政府参考人(倉吉敬君) 認知した父が行方不明というのはかなり我々にとっても深刻な問題ではございますけれども、その場合には、どうして行方不明になったのかというその理由等について関係者から事情聴取を行うと。行方不明であるということが本当に事実かどうか確認をしていく、そして必要に応じて、先ほど来の繰り返しになりますが、関係機関とも連携をして不正の届出の防止に努めたいと思っております。
 いろんなケースがあると思うんですけれども、例えば、まず認知をしているわけですから父親の戸籍謄本が出ます。その付票を見れば最後の住所が分かるわけですね。そこの住所の方を当たってみると。そして、その住所地にひょっとしたらいるかもしれませんから文書を送ってみる。それが転居先不明で返ってくるということであればその周辺のところを聴いてみるとか、あるいは親戚の人がいるかもしれない。それから、その御本人、母親に、行方不明になったというのは何か事情があるのかとか、今まで文通をしていたんだけれども急に手紙が来なくなったとか、いろんな事情があるかもしれません。そういうことを聴き取りながら対処していきたいと思っております。
○山谷えり子君 国民は、国の尊厳、国籍の重さ、尊いものと思っている、そしてまた、虚偽認知、どのように担保されるのかと、防ぐために、心配しているわけでございます。その辺の委員会のやり取りをお聞きになられまして、森大臣から御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(森英介君) ただいまの問題につきましては、衆議院でも参議院でも法務委員会で大変多くの方から御懸念が示されました。法務当局としても、調査というか、そういうことが起こらないように万全を尽くすということを申し上げておりますけれども、いずれにしても運用が極めて大事だと思いますので、そういったことを含めて、皆様の御懸念が払拭されますように督励をしてまいりたいと思います。
○山谷えり子君 終わります。
 ありがとうございました。
○木庭健太郎君 一昨日に引き続いての質疑になります。
 法案について様々な心配もあるようですが、いろんな点も含めて、確認の意味も込めて質問をしていきたいと思います。
 まず最初に、当局に御確認ですが、最高裁判決を受けて、当時の保岡法務大臣に、八月七日の日でございましたが、公明党として特に留意すべき点の要望をいたしました。その中の一つが、国籍法第三条第一項の要件から父母の婚姻、これが削除する、削除した場合、更にこれに代わる新たな要件を設けないことを私どもは要望いたしました。
 これは、新たな差別なり、そういう問題も含めた意味での御要望でございましたが、今回の法案を見ますと、まさに新たな要件を設けない方向でやられているようでございますが、このことについて、どう要件を設けるか設けないかを含めてどのような検討がなされたのか、議論があったのか、そして最終的に設けないこととした理由について御説明をいただいておきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) 御指摘のとおり、新たな要件を設けるかどうかということは一つの論点になりました。
 これは、もう委員は御承知のとおりでありますが、最高裁判所の十五人の裁判官のうち、多数意見を形成しております十人の裁判官のうちのお一方の裁判官が、立法政策として、日本国内において一定期間居住していることや、あるいは日本人の父親が扶養している事実といったことを我が国の密接な結び付きの指標となる要件だということで、婚姻に代わるものとして国籍法三条一項に設けることということも選択肢になり得るんだと、こういう意見を述べておられます。
 そこで、法務省においても、そのような要件を新たに付け加えるということはどうだろうかということを検討を行ったわけでございます。
 しかし、最高裁判所の多数意見を精査してみますと、生まれた後日本国民から認知された嫡出でない子と父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した子との間には、我が国との結び付きという点において差異があるとは言えないというくだりがございます。
 そうすると、そのようなほかの要件を設けるということになれば、改めてその子供たち、つまり準正されていない子供たちだけに設けるということになると差別だということになりかねないので、それじゃ両親が結婚している子供たちにもそういう要件を付けなきゃならなくなる。そういう要件をそちらにも付けるということになると、今まではそんなものなくて届出で国籍取得できたのが、何でそんな要件が要るんだという新たな議論を呼ぶということで、これは大方の理解を得にくいであろうというふうに考えたわけでございます。
 そこで、単に準正の要件を削除するにとどめたということでございまして、なお、多数意見を形成しております裁判官の中の一部の方の中には、そういう要件を付けることはやはり選択肢としても相当ではないんだという趣旨の意見を述べておられる方もおられます。
○木庭健太郎君 仮装認知の防止についても、罰則の新設の問題、実務の運用面における防止策、重要になるということはもう論議をまたないんですけれども、法務局での受付状態等は前回お聞きしましたが、実際に運用をしていく際には国籍取得に関する基本通達によって取り扱うということになってくるんだろうと思います。
 その中でこういうのがあります。届出を受け付けた後に、届出書というんですか、又はその添付書類の成立又は内容について疑義が生じたときは、届出人若しくは関係者に文書等で照会し、又は届出人若しくは関係者宅等に赴いて事情聴取する等して、その事実関係を調査するものとする、いわゆる受付後の調査という問題でございます。
 そこで、どのような場合にこのような調査になっていくのかということなんです。全件についてこれを行うのかどうかということもあるんだと思います。この辺どうなのかということをまずきちんと御説明をいただきたいし、さらに、先ほどから御指摘があっておりましたが、十一月二十五日の読売新聞の夕刊で省令改正や通達の方向が書かれておりました。このとおりなのかどうか、どんな方向でその省令改正、通達というのを考えていらっしゃるのか、この際御説明を委員会でいただきたいというのが二点目。
 そして、三つ目ですけれども、先ほどこれも御指摘をいただいておりましたが、この届出人、本人又は本人が十五歳未満の子である場合にはその法定代理人、つまり、必ずしも国籍取得の届出には父が同行することにならないわけですよね。ただ、局長は答弁では認知した父に協力を求めたいということを何度もおっしゃっている。じゃ、この求めたいということについて、これどんなところで担保をしようとなさっているのかということ。
 以上三点、局長から伺っておきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) まず、先ほど来の読売新聞の記事ですが、あれは、私どもも、省令に添付すべき書面をちょっと書いていく、それから通達にも調査の方法を、様々の最近の議論、先生方の議論を踏まえまして書いていくということを検討はしておりました。しかし、ああいうふうに決まったとかどうこうであると断定的なことは全くございません。今も検討しているというところでございます。
 それで、一番最初の御質問で、基本的な通達に今書かれている疑義が生じたときというのはどういうときだということでございますが、これは一義的に書くのは非常に困難でございます。
 それで、委員の皆さんに御参考になるかと思いますが、これまでの例でどんなものがあったかということをちょっと御紹介いたしますと、届書の添付書類の記載から、どうもほかの男性が父親なんではないかということが疑われたと、こういう事案がございました。それから、提出された書類にちょっと筆跡の違うところがあって、改ざんの痕跡があったというようなものがございました。そのほか、私が幾つか申しております、同じ人が何回もやるとか、それに近いようなケースもあるようでございまして、そういうような場合には疑義が生じたということになります。
 そこで、そのような場合にはきちっと基本通達にあるような対処をしていきたいと。それを踏まえた上で、先ほど来から答弁しておりますような、今回の届出に伴うものとしてもう少しきめの細かいことを決めていこうと思っているわけでございます。
 その具体的な内容については現在まさに検討中でございまして、省令に一定の書類の提出を求めるというようなことを書けないかということを検討しております。それから、父親が届出人になっていない場合にもその協力を求めるというもう方針は既に決めておりますが、それを通達に規定するか、どういうふうに決めていくかということについても現在検討しているところでございます。
○木庭健太郎君 是非、これ省令含めてこの後きちんと最終的に出てくるんでしょうが、きちんとそういうのが決まり次第、皆さん御心配されているわけでございまして、今回の場合はそういったことが決まるなら決まったことをきちんと皆さん方に通知を分かるようにしていただきたいということを思っておりますが、いかがですか。
○政府参考人(倉吉敬君) 御指摘のとおりにいたしたいと存じます。
○木庭健太郎君 ドイツの話が衆議院でもありましたし、また、これ一応確認の意味で、どう考えるのかというのをお尋ねしておきたいと思うんです。
 ドイツの例というのは何かというのは、偽装結婚で戸籍を売ったりというようなブローカーがいるという問題にかかわる問題なんですけど、ドイツが一九九八年、これは親子法というんですか、親と子供の法、この改正によって、父親の認知宣言と母親の同意だけで父子関係の認知が成立することになりました。ところがドイツでは、この制度を悪用して滞在法上の資格を得ようという事例が現れてまいりました。不法就労のための問題なんだろうと思うんですけど。
 例えば、滞在許可の期限が切れて出国義務のある女性がドイツ国籍を有するホームレスにお金を払って自分の息子を認知してもらう、この認知によって息子は自動的にドイツ市民となって、その母もドイツに滞在できることになる、こんな問題が現実に起きたわけでございまして、ドイツでは、こういう制度の悪用を防止するために、今年の三月、親子関係の認知無効のための権利を補足する法律といたしまして、その認知そのものを認めないといったわけじゃないんです、何を変えたかというと、民法を変えられまして、民法改正によって、父と子供の間に社会的、家族的関係が存在しないのに認知によって子や親の入国、滞在が認められる条件が整うケースに限って父子関係の認知無効を求める権利が所轄官庁にも与えられるというような、こういう制度をつくられたと伺っております。
 こういった事例を、まあある意味じゃドイツではこういう方策をその後お取りになられたということですが、こういった問題について法務省としてどう認識をするかという見解を伺っておきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) ドイツの法制の詳細については実はきちっとは把握していないわけでありますけれども、御指摘のような改正法が既に施行済みであるという情報には接しております。
 もちろん、各国の法制度というのは各国の実情に応じて設けられるべきものでございまして、現時点で我が国に同様の制度を設けようという考えは持っておりません。と申しますのは、我が国では現在でも、偽装認知であるということが刑事手続ではっきりすれば、認知についての戸籍の記載を訂正するという実務的な対応をしております。つまり、改めて民事の手続を取ってそれを取り消して、あるいは無効であることを確認してというようなことはするまでもなくやっておりますので、我が国ではそれで十分に対処できると考えているわけでございます。
○木庭健太郎君 是非、先ほどもちょっと御指摘があっておりましたが、今後いろんな問題でこの海外の動きというのは、まさに最高裁判決であったときのように、つまり世の中の状況の変化、国際関係の変化の中で様々こういった問題もいろいろ指摘をされているわけであって、特に国籍とか基本にかかわる問題のいろんな国際間の動き、そして各国はどういう対応をしているかということについては様々な面で、それが日本にすべて適用しろとは私も申しません、日本は日本としてできることもあるわけですから、しかしやはりそういったことも掌握をしておいていただきたいという要望でございます。
 次に、認知の件でお伺いするんですが、日本人の父親が外国人の母との間に出生した子を認知する場合、認知の要件を満たすことを証する書面の提出を求めるわけでございますが、この外国人の母の本国が公的証明を発行しない場合もあるということも伺っております。このような場合においても、法務局が市町村の戸籍窓口と連携して認知要件の有無の判断を適切に行うということが必要なんだろうと思いますが、この辺、なかなか難しい問題ですが、当局の見解を伺っておきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) 民法七百七十九条の規定でございますが、「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。」とされております。つまり、認知の対象となる子供が嫡出でない子であることが必要になるわけでございます。
 認知される子供が外国人である場合に、嫡出でない子であるということの要件審査のためにいろんな書類を提出していただくわけですけれども、この場合、原則として母親の本国の官憲が発行した、実務上、独身証明書と呼んでおりますが、この独身証明書等が出していただきまして審査を行っております。母の本国に独身証明書の発行制度がないとか、それから独身証明書を入手することができないやむを得ない事情があるというような場合もあるところでございまして、このような場合については、その独身証明書が得られない理由であるとか、それからその子供は嫡出でない子であるという旨を明らかにした申述書等を出していただきまして、当該認知届の受否を総合的に判断しているところでございます。
○木庭健太郎君 もう一つ、これも好意認知という問題、先ほど白眞勲君からお話があって、認知の問題でお話があっておりました。僕らもこんなことがあるのかなというのをよく知らなかったんですけれども。
 つまり、これは日本の民法では、自分の子供でなくても認知をという男性が出てきたら、血縁のない父親であってもその子供に養育責任を持つ父親に与えた方がいいという政策判断からこういう認知を認めているというか、こういう可能性が生じるということなのかどうか。その辺をちょっと御説明をいただきたいのと、外見上ですよ、そうすると、そうやって好意認知というものがあるとするなら、外見上だけ見ると、虚偽の認知と外見上は全く一緒でしょう、全く。その辺、どんなふうにしてこれ考えればいいのかということをもう一回ちょっと御説明をいただいておきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) 先ほどの私の説明が不十分だったのかもしれませんが、好意認知であろうといわゆる偽装の悪意の認知であろうと、父子関係がないのにそういう認知をするというのは無効でございます。無効でございますが、いわゆる普通の日本人同士の間でそういうことが行われた場合というのは、およそ国がそういうことを知るなんてことはあり得ないわけでありまして、しかも親族間でそれでいいでなあなあでやっているんだったら、だれも文句を言う人がいないのでそのままになっていくと。法律的にそれが非常に望ましい状態だと考えているわけではございません。しかし、それはそれで一つの家族のありようなのかなと言っているだけのことでございます。
 しかし、国籍取得の場面になれば違います。幾ら好意認知で、本当にその子を自分の子供ではないんだけれども育てたい、そして日本国籍を与えたいという本当の熱意があったとしても、それは血の関係がないんだったら駄目ですよということを、国籍取得届が出してきたときに法務局に分かった場合にはそれを言います。そして、そういうときはちゃんと本来の養子縁組の手続を取ってくださいと、このように指導しているということでございます。
○木庭健太郎君 分かりましたというか、なるほどそうなっているんですねとこれは言うしかない問題でございまして、いずれにしても、そういったいわゆる血縁関係というか血統主義でいくと、そういうのがなければそれは認知としては認めていないんだということを明確にした上で、そういったケースが出た場合、好意認知のような話が出た場合はそれが分かるわけですから、先ほどおっしゃるように養子縁組の話をするんであり、それが虚偽であれば、まさに虚偽の認知であれば、それはそれで調べた上で適切に処分するなりという方向になっていくというふうに区別というか認識をしておけばいいということなんだろうと思います。
 そしてもう一つは、この問題でずっと御指摘されている中で大事なのは、周知徹底の重要性なんだろうと思います。その意味で、先ほどこれは松野委員の方から御指摘があった経過措置の問題含めて整理してもう一回その経過措置についての御説明を伺うとともに、この改正法が施行するに当たって、実際に届出が行われる方々の立場に立った場合、とにかくこういう改正法ですよということを徹底して知らせるとともに、法を知らないということから届出期間を経過してしまうというようなことが起こる危険性もあると思うんで、このためにどのようなことを検討しているか、この辺も含めて、どうこの法が成立した場合周知徹底していくのかということについて当局に確認をしておきたいと思います。
○政府参考人(倉吉敬君) まず、経過措置の内容について御説明申し上げます。
 先ほどもお答えしたところですが、最高裁判所の判決において、平成十五年当時には違憲であると、こう判断されたわけでございます。それを踏まえて適切な経過措置を設けたということでございまして、まず附則第二条において、改正法施行日の前日までに現行法第三条一項の要件のうち父母の婚姻の要件以外の要件を、これをすべて満たして国籍取得の届出の行為をしていた方、これを従前の届出と呼んでおりますが、それをしていた方については改正法の施行日から三年以内に届け出ることにより日本国籍を取得することができると、これが原則でございます。特に、最高裁判所判決後の六月五日以降ですが、届出をしている方がいるというお話しました。この人たちはもう日本国籍を取るという意思が明確でございますので、改めて届出をする必要はないと、こうしているわけでございます。
 それから、国籍取得の時期についてでありますが、最高裁判決により違憲とされた平成十五年以降に従前の届出をしていた方については、この事件の原告の方々と同様に、当該従前の届出のときにさかのぼって日本国籍を取得するものとする必要があります。そこで、そのように処置をいたしまして、そして逆に平成十五年より前に従前の届出をしていた者は改正後の再度の届出のときに国籍を取得することとして分けたわけでございます。
 それから、国籍法三条の届出は二十歳までにしなければなりません。改正法施行前に二十歳に達するまでに認知された方のうち、改正法の施行時に既に二十歳に達してしまっている方、それから施行日後三年以内に二十歳に達する方であっても、改正法の施行の日から三年以内は届出により日本国籍を取得することができるというふうにしてあります。
 以上のように配慮をしているということでございます。
 今回の改正法の周知についてでありますが、もちろん広く一般に改正法の趣旨、内容を周知しなければいけません。具体的な方法としては、法務局、地方法務局や地方自治体にポスター、リーフレットを配付すること、それから、もちろん法務省のホームページに掲載いたします。政府広報も利用したいと思っております。それから、外国の方にも制度を知っていただく必要があるということになりますので、外国語のポスターやリーフレットも用意すると。それから、外国在住の方に対しても同じでございますので、これは外務省に協力をお願いいたしまして、在外公館を通じて周知が図られるようするということにしております。
 経過措置によって届出による国籍の取得が認められる方の届出については、これらの届出がいずれも国籍取得という重大な効果を生じる、それから、国籍法第三条第一項が違憲であったという状態を解消することなどを目的として設けられることを考慮いたしまして、附則の第六条におきまして届出期間の特例を設けまして、届出人の責めに帰することのできない事由により期間内に届出ができなかった場合には、その届出をすることができるようになった後三か月の猶予を認めると、こういうふうにしております。
○木庭健太郎君 例えば、これ、局長、従前に届出をしている人は認めるわけですよね、従前に。例えばこんな方でどれくらいの方がいらっしゃって、掌握をしていて、そういう意味ではこうやって周知徹底ができるんだというような体制はおありになるんですかね。
○政府参考人(倉吉敬君) 私どもの方で把握している限りでは、平成十五年より前ですね、前の方にこういう届出をしていたという方は三名おられるようでございます。それから、平成十五年以降、この前の、十五年以降の人は一人でございます、最高裁の判決がされるまでの間ですね、そこには一人こちらで把握している限りではおられます。だから、それほど多くの方はいないのではないかというふうに考えております。
○木庭健太郎君 そうすると、逆に言うと、松野委員が指摘されたように、届けなかったという形になったと、結果的に。こういう人たちがいるという問題につながっていくところもあるんですね。その辺は是非いろんな意味で、まずは最高裁判決に従って、それに基づいていろんな手段をなさるわけですが、その辺、本当に救済の方法はないのかどうかも含めて少し御検討をされたらいかがでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 先ほども申しましたように、経過措置でどこまで認めるかというのは、これはもうすぐれて立法政策の問題でございます。どの時点で切るかということは、先ほど御説明したとおり、いろいろなことを考えて決めたわけでございまして、あとは実質的な問題でございますけれども、それほど古い方であれば、日本にいれば当然簡易帰化の要件が整って帰化しているだろうし、外国にいれば某外国の生活になじんでいて新たに日本国籍ということもないのではなかろうかということもるる考慮いたしまして、今度のような改正の経過措置の仕切りとした次第でございます。
○木庭健太郎君 最後に、大臣にお伺いしておきたいと思います。
 私は、この最高裁判決を受けたこの改正は、国内にとどまらず国際的にも非常に大きな意味が私はあると思っておりますし、これからの法務行政においても重要な意味があると思っております。ある意味では、適法にこの国籍を取得すべき方の妨げにならないようにきちんとした処置もしていただきたいし、また逆に、不法に国籍を取得しようとする者を許さないという、こういうこれからの国籍の事務が求められると考えておりますが、その実現へ向かって法務省全体を挙げて是非お取り組みをいただきたいし、大臣としてその決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(森英介君) 委員御指摘のとおり、極めて大きな意味を持つ改正案であると思います。
 今お話しのとおり、その趣旨を生かし、かつ不正を許さないように、法務当局を督励いたしまして、皆様方の不安が払拭できるようにきちんとした国籍事務を実施させたいと思いますので、また今後ともよろしくお願い申し上げます。
○木庭健太郎君 終わります。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 我が党は今回の改正案に賛成でございます。
 今回の改正案は、日本人の父から生まれた子でありながら、これまで日本国籍を取得できずに、いじめや差別を受けて、あるいは基本的人権の保障などを受ける上で重大な不利益を被っているという、そういった実態に対して、最高裁大法廷の違憲判決を受け、現行法から婚姻要件を外して法の下の平等を保障しようとするもの、そういった意味で、部分的な救済ではありますが、一歩前進であるというふうに受け止めてございます。
 あわせて、国際人権規約B規約、あるいは子どもの権利条約における子供の差別禁止規定や、子どもの権利条約には子供の国籍を取得する権利も規定をされておるわけでございますし、女子差別撤廃条約、そういった国際人権法の趣旨に基本的にかなう方向、そういったものとして前向きに受け止めております。
 その趣旨は、前回、最高裁判決を法務省あるいは大臣としてどのように受け止めていただいているのかということを中心に質問させていただいたところでございますので、今日は、まず偽装認知、いわゆる偽装認知防止のための対応策と今回の改正案で削除するという御提案があっている婚姻要件、この関係がどうなっているのかというところからまず伺いたいと思うんですね。
 局長、よく質問聞いていただきたいんですが、まず最高裁判決との関係からお尋ねしたいと思います。前回の質問の最後にこの点少し局長とやり取りをさせていただいたんですが、会議録も見まして、つまり、局長の前回の御答弁は、婚姻要件を削除した上で、偽装認知の問題は別問題なんだからそれは考えなさいというふうに最高裁は言っているのではないか、そういう御答弁をされていると思うんですが、そういった理解でよろしいですか。
○政府参考人(倉吉敬君) 最高裁の判決があそこのくだりでどういう表現をしていたか今ちょっとよく覚えていないんですが、偽装認知の問題というのは婚姻要件を外すかどうかと直接関係がないというか、そういう表現であったのではないかと思いますが、ちょっと言っていただければ。
○仁比聡平君 その部分の最高裁判決を改めて紹介をしておきますけれども、「仮装認知がされるおそれがあるから、このような仮装行為による国籍取得を防止する必要があるということも、本件区別が設けられた理由の一つであると解される。しかし、そのようなおそれがあるとしても、父母の婚姻により子が嫡出子たる身分を取得することを日本国籍取得の要件とすることが、仮装行為による国籍取得の防止の要請との間において必ずしも合理的関連性を有するものとは」言い難いというふうに判決理由は述べているわけです。そのとおりですね。
○政府参考人(倉吉敬君) そのとおりでございます。
○仁比聡平君 つまり、現行法の婚姻要件、これが偽装認知防止の要請との関係で必ずしも合理的関連性を有するものとは言い難いというふうに最高裁は多数意見で判断をしているわけです。
 今日、他の先生の御質問に対する答弁で、この婚姻要件がどのような役割を果たしているのかという議論がありまして、これが削除されることによって抽象的には偽装がやりやすくなっていくという趣旨の答弁をされたと思うんですね。この抽象的にはというのは、つまり、これまでは認知とそれから婚姻の届出、ここの二つの局長の表現で言えばハードルがあったと、これが一つになるという意味だろうと思うんですけれども、抽象的にはそういうことになるかもしれませんが、具体的にそういった偽装のおそれが高まるといった立法事実、そういうのはあるでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 具体的には、例えば外国で、これは制度も事情も違うんで完全に並べることはできないんですが、そういうことが起こったというふうな話はございます、先ほどのドイツの例なんかがそうなるのかなと思いますが。
 今、日本で具体的にそれがあるのかというと、まだやってないわけですから分からないということにはなりますけれども、先ほどの婚姻プラス認知ということが認知だけでよくなったという、ハードルが一つ減ったというだけではありませんで、婚姻を偽装しようとすると、やっぱり婚姻の実態を偽装しないといけないんですね、入管当局などが摘発するケースというのはよくそれが多いんですが。だから、ある程度男性と女性が一緒に暮らす外形をつくるとか、そういうこともしないと婚姻の実態がないということで偽装婚姻だとやられる。認知の場合には、認知という意思表示だけでそれでできてしまうという、そこも、もう比較の問題でありますけれども、やりやすくなると。そういう意味ではそういう偽装認知が起こるという懸念はあるという意味で申し上げました。
○仁比聡平君 私も懸念があることそのものを否定しようというつもりはないんです。私も、偽装認知や、あるいはよく指摘をされているようなブローカーあるいはまがいのそういった違法というのは、これは正すべきだと思っております。ただ、そういった懸念がどれほど具体的な事実によって、いわゆる立法事実によってこの婚姻要件と結び付けられているのかということを今お尋ねしているつもりなんですね。
 二つおっしゃいました。一つは、ドイツの問題では、これ局長も前提にされましたけれども、制度がそもそも我が国とは違うわけですね。その下で、今日午前中お話を伺いました中央大学の奥田教授は、このドイツの法改正、これを日本でそのまま当てはめるというようなものではないはずだという趣旨の陳述であったと思うんです。それはどうですか。
○政府参考人(倉吉敬君) それは制度の実情が違うわけですから、私も先ほど、ドイツのようなあの制度を取り入れるべきかと言われれば、それは日本では違うということは先ほど答弁したとおりでございます。
○仁比聡平君 入管の在留管理との関係でのお話がもう一つの点なんですけれども、先ほどのお話でいいますとね。在留資格との関係という御答弁だったんでしょう。違いますか。
○政府参考人(倉吉敬君) 先ほど申し上げたのは、婚姻までも偽装しようとすれば、ただ届出だけでは終わらないので婚姻の実態まで偽装しなければならなくなると、それが入管の摘発事例なんかからはうかがわれるということを申し上げました。
○仁比聡平君 ですから、入管の摘発事例との関係で、婚姻の実態があるかどうかがそういう意味では問題になり得るのであって、届けの段階では、区役所に婚姻届を出すときに一緒に暮らしているかどうかを区役所の窓口、確かめないじゃありませんか。違いますか。
○政府参考人(倉吉敬君) それはもちろんそのとおりでございます。
○仁比聡平君 過去の偽装認知と言われる件数が三件だというのは先ほどから御答弁があっているとおりなんですが、違いますか。でしょう。ですから、そういった中でどういった偽装が婚姻要件と結び付いているかということは、これは具体的なケースや事実としてはなお明らかではないと私は思うんですよね。
 こういった中で、今日もこの婚姻要件の削除が人身売買奨励法であるという批判がなされましたけれど、私はその批判には根拠があるとは思えないんですが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(森英介君) ちょっと十分理解できてないのであれですけれども、私は直接関係ないというふうには思いますけれども、直接的にはですね。
○仁比聡平君 つまり、婚姻要件が現行法に存在することが偽装を防止するために極めて重要な役割を果たしているということが具体的なケースにおいて明らかであるというのであれば、これを削除するという今回の改正案が、この偽装との関係で改正案そのものが議論されるというのもあり得ることかと思うんですけれども、そういった事実はないのではないかと私は思うんですよ。懸念はもちろんありますよ。そこをよく、提案を受けて審議をしている私どもは、冷静にといいますか、この国籍法の改正そのもの、それ自体が法律としてどういう意味を持っているのかということをよく受け止めなければならないのではないかと思っております。
 制度の悪用、あるいはましてブローカーは許されないというのはもう申し上げたとおりで、これは私の弁護士活動の中で、国籍ではありませんけれど、戸籍制度を悪用、濫用して、養子縁組をもう考えられない十数回も繰り返して、姓あるいは本籍、これをごまかし偽って悪用するというこのケース、事案に取り組んだことがございます。実態は戸籍の売買だったのではないかという、そういうケースが現実にあるわけですね。これが組織的に行われている、これを食い物にしている、そういうやからがおるというのは、これは厳格に取り組まなければならない問題だと思うんです。
 そこで、法務省が、今日も出ていますけれども、国籍取得届に対してどのような対応をこれからされようとしているのか。これ通達の規定ぶりというのは検討中というお話ですから、そこはもう結構ですので、考え方として、もう一回まとまった形で局長に御紹介いただきたいと思うんですが。
○政府参考人(倉吉敬君) 偽装認知ということがしかも組織的に行われるということになれば、これは大きな問題でございます。現実にそれがどれぐらいの確率で起こるのかと言われると、そこはこれからのことであるので分かりませんが、少なくとも懸念はあると。すると、それに対しては十分な対処をしておかなければいけないと思っております。
 そこで、法務局の窓口に届出人が、普通は母親が来ることが多いと思いますが、法定代理人として、その人に対していろんな事情を聴く。それから、母国で取ったいろんな書類であるとか、それから父親の戸籍であるとか、そういったものを客観的な書類を出していただいて、そして、その父親と知り合った経緯、いつどのような交際をしたのか、子供が生まれるまでの経緯はどうか、それから、今父親は同居して一緒に暮らしているのか、そうでないとすればその事情は何なのかとか、そういったことをるるお尋ねをいたしまして、それと客観的な書類との間に矛盾はないか等々を検討をして、少なくとも偽装認知だけは防ぐということを対処していきたいと思っております。
 これは、これまでの通達でも、疑義があるときはきちっと関係人から事情を聴いて、そして書類を集めて云々ということはあるわけでございまして、基本的にはこれまでの基本通達の線をより慎重に進めていこうというものでございます。
○仁比聡平君 これまでの御答弁でいいますと、その中で犯罪性を認識するということがあれば捜査機関との連携をするということかと思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(倉吉敬君) そのとおりでございます。捜査機関だけではなくて、入管等の情報交換等も含めて関係機関と連携してやってまいりたいと思っております。
○仁比聡平君 そうした法務局での取組は、これちょっと理屈っぽいですが、法律に基づく行政行為、その中での言わば法の適用に当たっての事実認定の問題だというふうに私は理解したんですが、そのとおりでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) そのとおりでございます。その国籍取得届をするに当たっての国籍取得の、国籍法三条一項の要件がきちっとあるかということを審査するということでございます。
○仁比聡平君 その審査に当たって、もちろん今回問題になっています偽装認知を防止するという、この角度はお持ちになるのが当然だと思うんですが、元々国籍取得という重要な法的地位にかかわる事実認定なわけですね。この事実認定において、真実の認知が保護されると。真実の認知が排除されることは本末転倒だと私は思います。
 日本の家事あるいは人事の裁判でも、あるいは審判や調停でも、子の福祉を最優先に、あるいは子の最善の利益を最優先にというこういった考え方で、手続の土俵が、みんながそこを向いて、関係者がそこを向いて設定されて運用されていると思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) 真実父子関係があり、真実日本国籍が欲しいということで届出をしている人、そういう人たちの権利や利益が損なわれないようにする、あるいはそういう人たちにつらい思いをさせると、そういうことがないようにするというのはもちろん大事なことだと思っております。
○仁比聡平君 そこで、DNA鑑定を義務付けるか否かという問題がございまして、これも今日いろんな形で局長から御答弁があっているんですが、改めてDNA鑑定を義務付けることは非常に難しい問題だといった御答弁をこれまでしておられると思うんです。その理由を少しまとめてもう一度御答弁いただきたいと思うんですが、今日、大臣からも科学は万能ではないという御発言もありましたし、あるいは今日午前中の参考人からも、実務として厄介な問題を抱えることになるなり、あるいはそもそも必要ないというような御意見もあったところなんですが、局長、いかがですか。
○政府参考人(倉吉敬君) 先ほど来申し上げているとおりでありまして、一つは、日本の親子法制といいますか家族法制に好ましくない影響を与えるのではないかということがございます。
 それからさらに、基本的に認知が問題でございますので、本来DNAを取るとすれば、最初の市区町村の認知の窓口のときではないかということが当然問題になってくると思うんです。そうすると、外国人を認知するという場合にだけDNAを要求するというようなことになりかねない、それは外国人に対する新たな差別を生むのではないかと、こういうこともございます。
 それから、DNAについては、一定の負担と、それからもちろんDNAを機関のところに行って受けるための手間が掛かります。そういう負担を一部の人だけに掛けさせるということでいいのかという問題もあろうかと思いますし、それから法務局においても、検体が同一性がきちんと確保できているのかとか、検体のすり替えがないのかとか、そうしたことについてきちんと担保できるだけの能力というのは、それはなかなか難しい問題もあるといったような事情でございます。
○仁比聡平君 衆議院の答弁を拝見をいたしますと、今おっしゃられた点に加えて、現代の科学水準に合わせたきちんとした鑑定ができているのか、あるいはだれだれが鑑定したとなってはいるがそれが偽造ではないか、そういったことが窓口では判断できないという問題があるということ、あるいは鑑定に相当の費用が掛かるというお話がありますが、それらも理由ですか。そういったことも局の理由ですか。
○政府参考人(倉吉敬君) それも理由でございます。
○仁比聡平君 この国籍取得届が要件を満たすかのこの事実認定において、Aという証拠がなければ、要件がある、要件事実が存在するということを認定しないという、ちょっと専門的な用語で言うと法定証拠主義と言うのだろうと思うんですけれども、つまり、この件に照らしますと、DNA鑑定がなければ要件があるとは絶対に認めないというようなルールは、行政が行う事実認定においても、あるいは裁判における事実認定においても、我が国の事実認定の在り方にはなじまないし、これまでそういったルールはないのだと思いますが、いかがでしょう。
○政府参考人(倉吉敬君) 少なくとも、特定の事実をこの証拠だけで認定しなければならないと、そのような制度はないのではないかと思います。
○仁比聡平君 加えて、不誠実な父親ということを考えたときに、検体の入手がその子供あるいはその法定代理人である母にとっては不可能であると。実際に日本人の父との間に生まれた子であるんだけれども、間違いないんだけれども、だけれども今その日本人父から検体を入手するということは不可能だという、そういう場合は十分あり得ることだと思うんですよね。あるいは、先ほど写真というお話がありまして、これは今後の具体化のお話でしょうからこだわるわけじゃないんですが、これ、あれば別ですけれども、ないものを出せと言われてもこれは不可能を強いるということになるかと思うんですよ。
 民事局としてもあるいは大臣としても、そういった国籍取得の届出を行う子供、法定代理人に対して不可能を強制しようという、そういうおつもりはないと思いますけれども、いかがです。
○政府参考人(倉吉敬君) もちろん、先ほど来提出してもらう書類というものをきちっと決めていこうというようなことも考えておりますけれども、これは、その書類が提出できないときは提出できない事情を書いた、理由を書いた紙を出してくれというようなことにしていかないといけないと思っております。
○仁比聡平君 そういった意味では、国際人権法の言葉で言いますと、国籍を取得する権利あるいは国籍の重要性ですね、これをしっかり保障する、受け止めるということと、それから偽装を防止するということと、これ大変大事な取組が現場で行われるということになると思いますし、これが人権侵害的な形で運用されるということになれば、これはまた裁判だったりというようなことになりかねない。そんなことは、こうした最高裁判決も受けてせっかくの法改正をしようというわけですから、そんなことがないように頑張らなきゃいけないと思うんですが、大臣、御感想ありましたらいかがですか。
○国務大臣(森英介君) 極めてごもっともな御指摘だと思います。先ほど来申し上げていますように、やはりしゃくし定規じゃなくて、やはり事例に応じて、しかし総合的にまた厳正にという、非常に難しい何といいましょうか作業が要求されると思いますけれども、そういったことをしっかり運用面をきちんとできるように十分に研究し、また実施に当たりたいというふうに思います。
○仁比聡平君 最後に局長にお尋ねしたいと思うんですが、今日も、例えば胎児認知の問題をめぐって、現行法、つまり今回改正対象になる以外の部分の条項について、現行法以上に要件を付することもあり得るのではないか、どうなのかといった議論もあったんですけれども、これは国籍の重要性やあるいは国籍を取得する権利という国際的な人権法との関係でいいますと、現行法以上に要件を厳しくしていくという方向は、その国籍を取得する権利との間で抵触を起こすのではないかという問題がこれは起こり得ると私は思うんですけれども、それはいかがでしょう。
○政府参考人(倉吉敬君) 先ほど答弁申し上げました住所要件とか、そういった問題のことでございますね、そうですね。
○仁比聡平君 あるいは、胎児認知も届出を要するか。
○政府参考人(倉吉敬君) 胎児認知も届出を要するとか。それは国籍の本質に反するかどうかということをやると問題でございますけれども、少なくとも新しい差別と申しますか区別というか、新しい要件を付加することによってこれまで以上に負担を増すということになるのであれば、それが説明できるだけの、まさに最高裁がいろいろ言っています、嫡出子と非嫡出子との間でこういう区別を設けることが立法目的に照らして合理的な関連性があるのかということが絶えず問われるということにはなろうかと思います。
○仁比聡平君 終わります。
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。
 今日は朝の十時からの質疑でありまして、いささかくたびれておりますが、あと二十五分、最後のお付き合いをいただきたいというふうに思います。
 私も、おととい申し上げましたけれども、六月の最高裁判決、ついに出たというふうに思っておりまして、この判決に従って速やかに法改正を行うべきであると、こういう立場でありますので、今回の法案については賛成をしたいと、こういうふうに思っております。そういう立場で今日も質問をさせていただきたいと思っております。
 両親の法律上の婚姻があるかないか、こういう多様化する家庭、家族関係によって何の責任もない子供の福祉が害されるようなことがあってはならない、これが六月の最高裁大法廷判決の精神であり、今回の法案の精神、趣旨ではないかと、こういうふうに思っております。
 その上で、偽装認知、今日も本当に何度も出ております偽装認知のような違法行為が許されない、これはもう言うまでもないことでございます。今ほども御紹介がありましたように、六月の最高裁判決はこの偽装認知についてこういうふうに言っています。仮装認知のおそれがあるとしても、父母の婚姻により子が嫡出子たる身分を取得することを日本国籍取得の要件とすることは、ちょっと略しますけれども、必ずしも合理的関連性を有するものではないと、こういうふうに明確に述べております。つまり、今回の改正内容と偽装認知とは直接関係はないということなんだろうというふうに思っています。
 このこと、偽装認知については、公正証書原本不実記載とか、あるいは今回の法案の中で新たな罰則もありますし、あるいはこれが全体として人身売買という形で行われるということであれば、この国の刑法には、第三十三章で略取、誘拐及び人身売買の罪、こういう規定がびっしり規定されております。だから、そういう人身売買的な意図を持ってやるということであれば、先ほどの言わば公正証書原本不実記載などというそういうことよりも、むしろ人身売買の罪という形でそれは厳正に対処をされるわけですよね。
 ですから、私は、今回のこの法案が人身売買を誘発するという、ちょっと聞いて驚いたんですけれども、そんなことにはならないだろうと。よりきめ細かく、こういうことができないような、そして、かつ、故なく国籍を取得できない、そういう法の谷間に落とされている子供たちをやっぱり救済する、そういう大きな、人権保障にとってやっぱり大きな一歩をしるすそういう法案ではないかと、私自身はそういうふうに思っております。
 大臣にお聞きしたいんですが、法案の審議が偽装認知の問題に非常に私は偏っているのではないかというふうに思っておりまして、外国人母の子供の戸籍取得が国民から疑いの目で見られるような、そういう状態を招くようなことがあってはならないというふうに思っております。立法府あるいは政府には冷静な良識的な対応をお願いしたいというふうに思っております。大臣は人権行政の最高責任者でもあります。このことについて、大臣、どのように受け止められておられるのか、所見を伺いたいというふうに思います。
○国務大臣(森英介君) 今委員が言及されました最高裁の判決は、ちょっと裏返して言うと、要するに、偽装認知が起こりやすくなるからといって婚姻要件を付さなきゃいけないというものじゃないということだと思うんですね。というふうに私は理解するんですけれども、その結果として、今お話があったとおり、偽装認知の問題がクローズアップされて、かなり委員会での議論がそれにウエートが割かれているというのは事実だと思います。
 確かに、そういう問題は最高裁の判決でそこまで触れられておりませんので、むしろ事務当局においてそれはきちんとそういったことを防止するような方策を講じなきゃいけないんだと思いますけれども、そういう意味で、先ほどから民事局長などから御答弁申し上げているとおり、様々な手法をもってそういう偽装認知を防ぐことには努力をしたいと思います。
 さはさりながら、確かにおっしゃるように、本当に純粋に日本国籍を得たいという極めて真っ当な思いでもって国籍を取得しようとする方の方がはるかに多いわけでございますので、それはやっぱりそういった女性並びに子供が間違ってもそういう偽装認知の一味ではないかというふうなことが、疑いが持たれないように、そこのところはきちんと配慮して個別のケースに臨まなければならないと思います。
 いずれにしても、この改正法の趣旨を踏まえまして法務当局にはしっかりと対応するように督励をいたしたいと思います。
○近藤正道君 偽装認知を防止するために、届出人本人、法定代理人が付くわけでありますが、この届出人本人が法務局に出頭して国籍取得届を提出する際にいろいろ事情を聴かれる、父親の戸籍謄本、あるいは父親の出頭、あるいは両親と子供が一緒に写った写真などの添付を求める、そういう方針であるというふうに、法務省がそういう方針を持っているという、そういう読売新聞の記事、私も見まして、先ほど議論になりました。
 局長は、これはまだ確定したものではないんだと、これから今まさにこれを議論しているところであると、こういうふうに答弁をされました。しかし、答弁の端々から、読売新聞が報じたということは全くこれはガセネタということじゃなくて、ああいう方向で議論がされているということはどうも間違いないと私は思っているんです。
 問題は、偽装認知を防止する、それは分かるんだけれども、それが行き過ぎて、過度になって、新たな、何というかな、ハードルといいましょうかバリア、これをつくることになってはやっぱりいけない。今日午前中の二人の参考人も、偽装認知の防止ということのために新たな不合理な制約を設けることがあってはならないと、こういうことをお二人ともおっしゃっておられました。
 そこでちょっとお聞きしたいんですが、そもそも一般の認知届の市町村への提出は、本人の出頭は求められておりません。郵送でも可能であるのに、国籍取得届の提出は本人の出頭を国籍法の施行規則で定めております。これについては、今日午前中、参考人で出られました奥田先生は、行政手続法三十七条に抵触するんではないかと、行政手続法が原則なのに何で国籍取得のときにこんなにたくさんの過重な要件を課するんだと。つまり、父親の戸籍謄本だ、あるいは父親を連れてこいとか、あるいは写真等を求める、こういうものは憲法十四条が許容する合理的な区別の枠の中に収まっているのか、もしかするとこれ、はみ出しているんではないか、行政手続法三十七条の原則に少し抵触するんではないかと、こういう懸念を持っているわけでございます。
 倉吉局長は、DNA鑑定については、外国国籍の子供を認知する場合にのみDNA鑑定を義務付けるとすれば、それは外国人に対する不当な差別になるおそれがあると、こういうふうに答弁をされておりますが、これは結構なんですが、偽装認知は許されないけれども、そのためにいろんな小難しい要件を求めて、ああでもないこうでもないという形で様々に、ないものも求めるということがもしあるとすれば、これは別の意味で、確かに婚姻要件はなくなったとしても、別の意味でこういう外国人母に対して、あるいは子に対して様々な制約を課することになりはしないか。
 とりわけ写真のことについては、さっきも議論があったけれども、多くのケースは、生まれるとすぐ言わば父親が姿くらますケースが多いわけですよ。そうすると一緒に写った写真なんていうのはないことだってたくさんあると思うんですよね。そのときに、いや、写真がなきゃ困るとかということをやられるとやっぱり困ると。それはやっぱり、さっき大臣もおっしゃったように、しゃくし定規にやるんではなくて、まさにケース・バイ・ケース、そして本当にやっぱり温かい心で子供たちをこれ救済をすると。こういう気持ちでやっぱり本当にきめ細かく、愛のある通知、通達をやっぱり出していただかないと困るというふうに思うんですよ。
 ちょっと抽象的な、情緒的な言い方で恐縮でございますけれども、改めてこの省令、通達、これが新たな言わば障害、あるいは新たな差別を生み出さない、本当の意味で合理的な制約の範囲内に収まるというものであってほしいという立場で質問をいたしますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(倉吉敬君) まず、届出についての出頭主義の関係でございます。これは確かに奥田参考人とは我々当局が見解を異にするということになるわけですけれども、国籍取得届というのは、事実上の効果として、それによって国籍を得られるという重大な効果を発生するものでございます。国籍というのはまさに日本の国の構成員を決める、そういう大事な手続ですので、そこはやっぱり慎重にやるべきだということが一つ言える。
 それから、出てきていただいて本人を確認しなければいけないということがあります。これは法定代理人が出てくれば、お母さんですけれども、この人に間違いないと。それは国籍ということですから、そういうことで国際的にもおかしなことになっては困るわけですから、そのために出頭主義を取っている。その結果、いろんなことを審査しなければならない、その要件について事情を伺うということをしているわけでございまして、それは間違ったことではないと思っております。
 それで、先ほど来問題になっている偽装認知の問題でございますが、これはやっぱりきちっと、その点は法務局できちっと審査をしているということを示していかないといけないと思っておるんです。それで、先ほど委員がおっしゃいました、本当に真の親子関係がある外国人の母親と子供、その人たちがつらい思いをさせるようにしちゃ駄目じゃないかと、そうおっしゃった。そのとおりでございまして、法務局できちっとした審査をしている、だからその法務局の審査を終えた人たちはまさに偽装認知なんかじゃない、ちゃんとしたきちんと届出をして新しく日本人になってくる人なんだと、そういうふうにしたいわけでございます。
 ですから、委員のおっしゃっていることもよく分かりますけれども、そこはそれほど委員のお考えと私どもの考えが違っているとは思っていないところでございます。
○近藤正道君 私もそういうふうに思っておるんですけれども、そもそも、さっき午前中の奥田先生自身は、これはやっぱり行政手続の原則からいくとかなり問題があるよと、こういう指摘をされております。
 皆さんは、言わば国籍という日本国の構成員の範囲を確定することなんだから、一般行政とはちょっと違って厳しくなるのはやむを得ないと、こういう御答弁です。それも分からぬわけではありませんけれども、そもそものところでいろんな議論も出ておりますので、ゆめゆめ行き過ぎということが起こらないように、かつしゃくし定規にならないように、つまり一律という形でならないように、是非心のこもった通達、省令、いわゆるガイドラインといいましょうか、そういうものになるように心掛けていただきたい、これ強く要望を申し上げておきたいというふうに思っています。
 これはDNA鑑定について関連してお尋ねいたしますけれども、認知裁判などでは外国人母の婚外子の場合にDNA鑑定を求められることが多いんですが、費用が非常に掛かるという問題点が実務的に時々議論になっております。もしDNA鑑定が求められるような場合であったとしても、法律扶助などの支援によって費用負担の軽減が図れないかと、こういう話が時々実務で出ているんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(深山卓也君) 日本司法支援センター、法テラスの民事法律扶助についてのお尋ねですけれども、御案内のとおり、資力の乏しい国民だけではなくて、在留資格を有する外国人の方にも民事法律扶助事業を法テラスでは行っております。
 お尋ねの認知の裁判につきましても、国民又は在留資格を有する外国人からの援助の申込みがあった場合にはこの扶助事業の対象と当然なりまして、資力要件がありますけれども、御指摘のDNA鑑定費用についても現に立替えをしております。相当数の実績もございます。
 また、民事法律扶助制度は原則として立替えの制度ではございますけれども、生活保護を受けている方やそれに準ずるような生計が苦しくて収入の道がないという方の場合には、立替金の全部又は一部の免除の制度もございます。
○近藤正道君 日弁連は六月の最高裁判決を、国際人権基準に従って違憲と断じた画期的な判決であると高く評価をしています。現在、弁護士会では、国際人権基準に関する研修、教育が大変活発に行われておりまして、実務でもこの国際人権基準を基に訴訟を提起するケース、これがどんどん増えております。
 しかし、裁判所でこれがその判断基準として採用されたりあるいは引用されるケース、これは下級審も含めて非常に少ないと、私はそういうふうに思っておりまして、日本が批准をした国際人権規約、これはやっぱり裁判規範としてももっと積極的に裁判所の中でやっぱり生かされるべきだと、こういうふうに思っておるんですが、そこで最高裁にお尋ねをしたいというふうに思っています。
 裁判官に対する国際人権法、人権規約、あるいは子ども権利条約も含めまして、この国際人権規約の研修とかあるいは教育はどういうふうになっているんでしょうか、お聞かせください。
○最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 裁判官の研修につきましては司法研修所が担当しておりますが、そこでは、新任の裁判官、新任の判事補等でございますが、に対する研修を始めといたしまして、各種の研修におきまして、これは毎年でございますが、国際人権問題を専門とする大学の先生あるいは国際機関の職員の方、こういった方々を講師としてお招きしまして、今お話のありました国際人権規約、その他国際人権に関する諸問題、これをテーマとしてお話をいただく時間を設けまして、裁判官に対する周知に努めているところでございます。
 今後とも、こういった点に十分配慮して研修等を実施していきたいと、このように考えております。
○近藤正道君 今日もそうでありますし、おとといの日も、この法案に関連をいたしましてDNA鑑定の活用を求める質疑がたくさんなされました。そしてまた、皆さんのところもそうだと思いますけれども、連日、議員会館へ行きますと大量の、DNA鑑定を入れろという、採用しろという、こういうファクスが寄せられております。
 私はこの法案には賛成なんですね。ですから、DNA鑑定を入れなければこの法案に賛成できないと、こういう意見にはくみしないんですけれども、しかし、おととい、今日、そしてまた全国から寄せられるファクス見てみますと、国民の間にはDNA鑑定に対する信頼が本当に広範に形成されているなと、そういうふうに思っております。
 こういう中で、離婚後三百日以内に生まれた子を前夫の子とみなす民法七百七十二条問題で、法務省は昨年五月の七日、救済対象を離婚後妊娠に限定する民事局長通知を出しました。しかし、その法務省の推定によれば、離婚後三百日以内の出産の中で離婚後に妊娠したのはわずか一割程度、こういうふうに言われております。
 あくまでも子供の福祉を中心に考えるのが大前提でありまして、DNA鑑定によってそれまで成立してきた幸福な親子関係、家族関係を覆すべきではないというのはそれは言うまでもありませんけれども、先日来の委員会でも民事局長から、科学的な証明だけで親子関係を決めるというような誤った風潮になってはいけないと、こういう答弁がありましたけれども、私自身もこの点については異論はございません。また、鑑定に技術的な問題が伴うことも承知しております。
 しかし、実際に離婚後三百日問題などで、母親が子供の幸せを考えて、子供の本当の父親はこの人だ、前の夫ではありませんと、こういうふうに訴えているときに、DNA鑑定で決するという運用も考えていいんではないかと。これだけ、まあこの法案に対する賛否とは別に、DNA鑑定は物すごく意味がある、これは必要だと、こういうふうにおっしゃっているんだから、むしろDNA鑑定、問題のないところにはどんどん適用すればいいではないか。
 ならば、少なくとも、私はこの法案の中に入れるということについては賛同はできないんだけれども、例の三百日問題についてはこれはDNA鑑定を入れたらいいんではないかと。こういう改善策について、つまりDNA鑑定を入れるということについては与党のPTの中でもいろいろ議論があったというふうに私聞いておるんですが、法務大臣、このことに、三百日問題についてはむしろDNA鑑定を入れて救済すると、こういうことは考えられぬでしょうか。
○国務大臣(森英介君) この問題については、与野党を問わず、それぞれに様々な御意見があることは十分承知しておりまして、なかなか御意見が収れんしていかないところだと思いますけれども、いずれにしても、今、この国籍法の場合と同様に、仮にDNA鑑定の結果、科学的に血縁上の親子関係が否定されたことによってむしろ嫡出推定が覆されるという制度を採用いたしますと、かえって法律上の父子関係をいつまでも確定しないで子の福祉に反するようなことも起こり得るというふうに思います。
 また、いろいろ実際問題として、鑑定の方法がなかなか容易じゃないとか、そういったことも含めて、私、私というか、現時点においてはDNA鑑定を判断材料とすることはなかなか採用し難いというふうに考えております。
○近藤正道君 いや、私はこの法案については採用するということについては異論があるんですが、例の三百日問題については採用するということを考えてもいいんではないかと、こういうふうに申し上げているんですよ。もう一回、どうですか。
○国務大臣(森英介君) 今申し上げましたとおり、三百日問題におきましても、やっぱり民法上の親子関係という意味においては必ずしもDNA鑑定はなじまないんじゃないかというふうに考えます。
 いずれにしても、DNA鑑定によって、むしろ子の福祉に反するようなことが起こったり、様々な事態も想定されますので、やっぱりもうちょっと議論を深めていただいた方がよろしいんじゃないかと考えているところです。
○近藤正道君 大変看過できない御発言を大臣はされておりますけど、もう時間であります。このことについてはまた別のところで議論をさせていただくことにしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
○委員長(澤雄二君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十九分散会