芥辺境藩国@wiki

E98 偵察SS・2 作:辻斬燕丸 挿絵:霧原涼

最終更新:

takanashi

- view
メンバー限定 登録/ログイン
「ふう、緊張するなぁ。大丈夫かな」
偵察兵、霧原 涼はただいま任務真っ最中である。
フェイスペイントに迷彩野戦服、今となっては
他の世界でしか見かけない旧式の望遠鏡を手に持つ歩兵たちが、軍隊的な統制された陣形で歩いている。
サイドカバー、それも360度をカバーするように、戦いで練りに練られた陣形は、まさにここが戦場であることを示していた。

芥辺境藩国、猫歩兵隊は偵察以外何も役に立たなかった。機械が止められると分かっているからだ。
もともと白兵向けのアイドレスではない。白兵で役に立たないとなると偵察以外に出番がなかった。

「ポストマンなんて初めてだよ・・・危ないんだよね、先頭って」
彼、霧原 涼はポストマンとして前方誘導の任務についていた。綺麗な顔には似合わないフェイスペイントと、大き目の野戦服。
独りでつぶやいた。何かしてないと恐怖で潰れそうだった。怖い、機械を止めてくる奴らなんて。
でも、自分で志願したのだ。ポストマンをやる、と。
「自分でやりたいって言ったんだ、やるんだ。ヤガミに会うまで強くなるんだ」
やっとのことヤガミを呼べた涼は、ヤガミみたいになりたいと思っていたのだ。自ら傷つくのを恐れずたち向かう男(この辺ちょっと美化)に。

「大丈夫、ヤガミだって胃を痛めても頑張ってた、うん、大丈夫僕」

少し自分に笑ってみせる。大丈夫、困ったらヤガミが来てくれる。

手信号で指示を送りながら、少し笑ったが恥ずかしくて下を向いた。
「へへ、何言ってるんだろ僕。戦場なのに、緊張感足りないかな・・・」

そのまま顔を上げて、低い姿勢のまま再び周囲警戒にいそしみ始めた。

/*/

東堂という、何時も国にいないが毎回戦争には参加している男がいた。何時も歩兵、それも偵察の役が回ってくる。
「ふーよし、ちょっと元気になったみたいだ。よかった」
毎度毎度ぱっとしない(書き易いとも言う)を言うこの男はかなり、涼のことを心配していた。

「ヤガミにあってから張り切ってるからな・・・心配だ、へましないといいが」

右翼の警戒に当たっている彼は、ポストマンとして前方にいる涼のことが気になっていた。
心配性だといわれることもある。が、そんなこと言ってられない。思うのだ、一人くらいどんな時も何かを心配している奴がいてもいい、と。

前で涼が石につまづいて思いっきり転び、隣の松林ぼたんがクスっと笑った。
痛がってもぼたんに笑い返す様子をみて、杞憂かもしれんな、と思った。

文責:辻斬燕丸

タグ:

目安箱バナー