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武術大会SS「逢真対常世」

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takanashi

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武術大会開始

歩露 「では、最初にルールを説明させていただきます。
1対1の真剣バトル、基本的に得物は、殺傷力の皆無のものを使っていただきます。 しかし、お互いが認め合えば真剣、実銃もありのバトルです。
……まあ、使う人以内と思いますが……
そして、勝敗はどちらかが降参するか、戦闘不能になるのどちらかです」

真剣等はあまりにも危険では?という意見も出はしたが
互いに認め合えば、そんなに危険はなかろうという考えもあり
ある意味、いい模擬戦にもなるだろという案もあり
結局は認められる事となる。
……まあ、そんなことやる変人はいないだろう、というのがほとんどの意見だったが。
しかし、そんな意見はすぐに楽観した考えだと思わされることとなる。
歩露 「では、Aグループ第一試合を始めたいと思います。
まずは、那限逢真選手の入場です!」
会場の一部から逢真コールが上がる。
本人はあまり、気にしてはいないが芥藩国の人気者(弄られ役ともいう)だ。
小太刀サイズの木刀を持って試合場に姿を現す。
逢真 「……まさか、いきなり当たるとは……運がいいのか、悪いのか……」
誰にも聞こえないぐらいの声で逢真が呟く。
そんな逢真の呟きが聞こえない歩露は対戦相手の名前を読み上げる。

歩露 「そして、対戦相手は……
逢真選手の友人であり、仮の師弟関係にある
常世知行選手です!」
そして、常世が姿を現したとき会場内がどよめきだす。
なぜなら、常世の得物が日本刀、しかも竹光ではなく真剣だったからだ。
逢真 (……やはり、本気でやりあう気か、あいつ)
常世を良く知る逢真は一目見ただけで、理解する。

歩露 「……あの……常世選手?その刀って、真剣ですか?」
常世 「もちろんその通りです」
歩露 「しかし、真剣を使うとなると相手の承諾も必要と……」
歩露が言い終わる前に、
逢真 「ああ、いいよ。真剣でも当たらなければどうということじゃない」
逢真が簡単に承諾してしまう。
逢真 「では、こちらも真剣でやろう」
といい、小太刀サイズの木刀を投げ捨て、腰の後ろに水平に差してある
忍者刀とクリスリーブナイフを取り出す
常世 「もちろん、逢真にも本気で来てもらわないとこちらも困りますから」

歩露が確認を取る前に常世が承諾する。
歩露は
歩露 (いいのか、これ!? 下手すれば死猫がでるぞ!)
などと考えていたが、荒川の
荒川 「二人ともー、殺しはするなよー。
それと、出来るだけ峰打ちでやれよー」
という言葉が後ろから聞こえてきて
覚悟を決めなくてはならなくなった。
……いや、本人たちもそうだけど、藩王も
止める気無い様だし、一司会者で、一審判員の
歩露にこれ以上何が出来る?
歩露 (……コトラ持ってくればよかったなー……)
歩露も諦めつつ、今度こういうことがあったら
I=Dを(無断で)持って来ようと心に誓った。

歩露 「(気を持ち直して)で、ではAグループ第一試合(死合い)を始めます」

高らかに宣言する歩露、試合場の真ん中で向き合うように
構える二人、まだざわめきが落ち着かない観客。
そして、
歩露 「始め!!」

歩露の声と共に、
常世 「はあ!」
逢真 「ふっ!」
常世は突きを放つが、逢真はわかっていたとばかりに
常世の突きを持っていた忍者刀で受け流し、ナイフで常世の肩を突く
常世はかわし切れないと思うと両手で持っていた刀の右手を離し
振り子のように勢いを付けて身体を回転させる。
ついでに、左手で持っていた刀もそれに合わせて振る。
体勢が崩れている一撃だが、逢真にしてみても
攻撃を仕掛けたばかりなので急ぎバックステップをして
避けるのが精精になる。
常世は独楽のように回転するが、何とか踏みとどまり
体勢を立て直す。

常世 (やはり、ダメでしたか……)
逢真 (あいつ、無茶するなー……)
常世 (さてと、どうしますか)
逢真 (やれやれ、どうするか)
      二人とも似たようなことを考えて

常世 (まあ、なるようになるか)
逢真 (無茶をしないことを祈るか)

同時に相手に向かう
逢真の忍者刀を常世が刀で受け止める。
そこにナイフの一撃が来るが
常世は刃を滑らせ柄でナイフを止める。
ナイフを止めた後、妙な鍔迫り合いをするが
常世が力で逢真を吹き飛ばす。
が同時に逢真も後ろに飛ぶ。
二人の間合いはまた開く

常世 (……あれ、やってみますか……)
このままやっても逢真に決定打は与えられず、ジリ貧になるのは
目に見えている。
なので、一種の賭けに常世は出る。
常世 (逢真……俺に殺されるなよ)
そして、常世は集中する。
ただ、目の前の相手を倒すことを考えて。

一つ訂正をしておくと
常世は考えるのが苦手なのだが、考え無しということではない。
そして、集中力がものすごく高い。
これまでの戦いではその集中力はいつもは、身体を動かすことに
使われていた。
常世 (感情を止めて、ただただ考えろ。目の前の相手を倒すことに!)
自己暗示をかけるように自分に言い聞かせる。
その変化に逢真も、
逢真  あいつ、雰囲気が……変わった……?)
漠然とながら常世の異変を感じ取る。

常世 「…………」
逢真 「常世……? おい、どうした?」
常世 「…………」
逢真の問いに答えず常世は刀を構え、
逢真に向かい駆ける。
常世 (逢真は不意打ちなどの攻撃は効かない)
常世 (故に、そこが突破口になりうる)
常世は逢真に向かう途中に砂を拾い
逢真に投げる。
が、逢真も常世のやることがわかり目をつぶる。
逢真が目をつぶった時、常世は最後の一撃となりうる
逢真が投げ捨てた小太刀サイズの木刀を拾う。
すかさず、腰の後ろに差して、逢真に気付かれないようにする。
逢真は常世が真っすぐ自分に向かってくるというのが、気配で分かり
更に、後ろに下がる。

逢真 (あいつがこんな手段をやってくるなんて
いつもの拘りを捨てたのか!?)
常世は不意打ちなどをしたことは数える程しかなく
本当に命の危機を感じない限りまずやらない。
本人が嫌がり、使いたがらないからなのだ。

逢真 (それだけ、本気という事か……やっかいだな……)
常世 (バックステップした、なら次に攻撃を仕掛けてくる)
逢真 「まったく、オレの精神コマンドに手加減はないんだぞ!」
常世 (まず、忍者刀で切りかかってくる。左の逆手だから、狙いは
右肩或いは右腕、ないしは右手)
逢真の謎の発言も完全スルーで常世は考える。
常世 (俺が勝つには逢真をこのまま後方に追い込み、隙を作ること
そして、一撃を入れること。それで片がつく)
逢真 「はあ!」
予想道理、右腕への一撃を刀で流し、そのまま柄で
逢真の心臓へ突きを入れる。
逢真 「ぐっ!」
常世 (柄が入った。ならばこのままタックルをして吹き飛ばす)
ついで、タックルを食らう。逢真は後ろに吹き飛ぶ。

逢真 (やばい、何か嫌な予感がする)
吹き飛ばされながら、逢真は短期予知を発動する。
逢真 (吹き飛んだ先に……落とし穴!?そして、オレがかわしたところに
木刀の一撃か!)
常世 (これで決める)
常世は追い討ちをかけるために逢真に向かう。
逢真 (ならば!)
常世は刀を振りかぶり逢真に対して振り下ろす。
逢真は落とし穴がわざと避けずに少しだけ落ち、忍者刀を突き刺して
落下を止める。
常世の一撃は空振りをする。
そこを逢真は壁を蹴り、落とし穴から脱出する、
常世は振り下ろした刀が構えなおすのに時間が掛かると判断して
刀を手放し、木刀を抜き逢真に一撃を入れる。
が、逢真は木刀に蹴りをいれ、弾くと常世の後頭部をナイフの柄で殴り
落とし穴へ落とす。

逢真 「……まったく……恐いことするなー、あいつは……」
常世は落とし穴の中で気絶をしていた。

歩露 「常世さーん!大丈夫ですかー?生きてますかー?」
逢真 「まあ、後頭部を殴ったからな……死んじゃいないだろうが
気絶はしてるかもな」
歩露の眼をしても常世が動き出す様子は無い。


歩露 「医療班の方、すぐ来てくださーい!!」
そして、常世は落とし穴から救助され医務室に運ばれる。
歩露 「常世選手、戦闘不能とみなし、逢真選手の勝利です!!」
歩露の高らかな声に会場から歓声があがり、一部では
逢真コールが起こる。
逢真は常世の刀と自分の忍者刀と木刀を回収して、医務室へ向かう。
逢真 (やけに疲れたな、今回は……)

~~~医務室~~~

逢真がちょうど医務室に着いたとき中から声が聞こえた

常世 「……あれ……ここは……」
逢真 「医務室だ」

常世の問いに答え、逢真はイスに座る。
常世 「……逢真さん……?」
逢真 「他の誰に見えるんだ、オレが?」
常世 「……ハーレム築いてる誑しの方……」
逢真 「OK,今すぐ送ってやるよ」
常世 「冗談ですよ。……それで、何でこんなとこ……に……!?」
逢真 「思い出したか?」
常世 「そうですか……また負けたんですか。俺……」
逢真 「まったく……途中から本気で殺されるかと思ったぞ、オレ」
常世 「殺すつもりは無かったんですけどね……信じてはもらえないと思いますが、 それに……」
逢真 「それに?」
常世 「逢真さんなら止めてくれると信じてましたから」
迷いの無い目で逢真を見る

逢真 「……まあ、信頼に答えられて良かったよ」
常世 「…………」
逢真 「お前も疲れたろ、ゆっくり休め」
常世 「はい、そうします」

逢真は立ち上がり、医務室から出て行く。
逢真が医務室から出て行くと、

常世 「そうか……負けたのか……」
常世 『……ぅぅ……ぅぁ……」

常世は人知れず泣いていた。
全力で戦って、そして破れた。悔いはないのだが、
ただただ、自分の力が及ばなかった。
その事実が何より、常世が辛かった。
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