芥辺境藩国@wiki

ゲドー戦記03

最終更新:

takanashi

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無名世界観の構成要素の8割はラブっぽいですよ?

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ゲドーは吏族仕事に使う書類を抱えながら王室の廊下を歩いていた
正面からサヨコが歩いてくるのが見える
手を振り挨拶をする

「ゲドーちょっと良いかしら?」

パタパタとサヨコが駆け寄ってくる

「何でしょうか,サヨコさん」
「チョコ作るんだけど」

それは青天の霹靂!稲光がゲドーの心の中で鳴る
んでもって嵐が訪れて雨風がごうごうびゅうびゅう!
んでもって嵐は止み,花が咲き鳥のさえずりが響く光り輝く春が訪れた!

「父さん母さん.ついに私の愛も報われる日が」
「オーマに渡すやつなんだけど?」
「こねえじゃん!」

ゲドー持っていた書類を床にたたきつける

「で,これなんだけど作り方とか分かる?」

構わず言葉を続けるサヨコ
週刊誌のチョコ特集のページを指差してみせる
ゲドー散らかった書類を集めながらその雑誌を見る

「はい.これなら先日アンジュと作りましたねぇ」
「へぇ,アンジュちゃんと・・・」

サヨコの第六感が少し唸った

「誰に渡すかとか聞いてない?」
「私に渡してくれましたよ.いやぁあのときの表情はかわいかったなぁ!写メ見ます?」
「ふぅーん・・・」

ゲドーのアンジュ自慢を軽くスルー
考えるような仕草をしてゲドーを見る

「では,行きましょうか」
「・・・」
「どうしました?考え事など貴方らしくもない」
「あのね.あんた私のことなんだと思ってんのよ」
「ツンデレ」

サヨコ,ゲドーを思いっきり殴る

「ちょーいてー!」

ぎゃあぎゃあ言って地面を転がる
そんなゲドーを見てため息をつく
そして,もう一つため息をつく

「・・・私よりいい女なんて幾らでもいるのになぁって思ったの」
「いやいや,貴方は至高だ.他の追随を許しませんよ」

また軽口叩くんだから,とサヨコは頭を押さえる

「・・・だったら,オーマが振り向かないわけ無いじゃない」

拗ねるように唇を尖らせて呟く

「なら,言い方を変えましょう.貴方は健気だ,あなたの心の輝きは何よりも美しい」

今度はゲドーがため息をつく,すると目がどろりと濁る

「この世はね,ウソばかりだ.文字も言葉も全部ウソだ.言葉は誰かをだますために用いるものだ.だから心を操るペンは,人を切り裂く剣よりも強い.
そしてペンは,誰か一人の心によって力を発生させるものだ.そう思うとね,この世は暴力にあふれているんですよ.やな世の中でしょう?
みんな無自覚に誰かの意思に振り回されてるんですよ.自分の言葉は誰かの借り物でしかなく,信じているものは誰かの作り出したものだ.この世のどこに,オレがいる?」

サヨコは黙って話を聞く

「でもね,そんなものはどうでも良かったんですよ.貴方を見てそう思いました」

ゲドーは楽しげにニヤニヤと笑うと,書類を放り投げ廊下の窓から顔を出して大声で叫ぶ

「うわはははは!!好きだーーーーーーーーーーーー!!!」

いきなりの奇行に体を強張らせるサヨコ,二度目をやろうとするゲドーを見てばたばたと取り押さえる

「ば,バカじゃないの?やめなさいよ」
「いやあ,恥ずかしかったぁ!でもスカッとしたあ!」

頬に紅葉のできたゲドーは満足げに笑う

「好きって気持ちの輝きはね,ものすごいんですよ!」
「はあ?」

サヨコは肩で息をしながら聞き返す

「それだけで,世界の中心に立てる.サヨコさん.あなたはね,それを私に気付かせてくれた」

貴方は,さながら星のようなものだ.そう言って言葉をつむぐ

「ちょっと待って,私頭が痛くなってきたわ・・・」

舞い散る書類の雨を背景に,またもや頭を押さえるサヨコ

「そうですか?」

もちろんこの後,双海環と小鳥遊に怒られまくるゲドーだった

「ささ!調理場へ行きましょう」
「あなたはそれでいいの?」
「チョコはメチャクチャほしいですが,あなたの笑顔が見れるほうが百倍うれしいです」
「・・・私,答えられないわよ」
「私は臆病者です.あなたのことをもう少しだけ見つめていたい.ではダメですか?」
「バカね・・・」
「お互い様ですよ.さあ,とびきりのチョコを作ってオーマさんをメロメロにしちゃいましょう」
「・・・うん」
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