芥辺境藩国@wiki

制服イベントに関連してフライング学校生活・霧原君編

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takanashi

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久々に書いてみました。
あれ?こんなキャラだったっけ?って感じで書いたのでいまいち自信がありません。
要望、変更点等あったら遠慮なくいってください。


『藩国は今日も平和』霧原君の場合


日の光が射し込み、少し湿気を含んだ風が吹き込む窓辺。
一人の少年がため息をついている。
その姿は中性的で美しくそのシーンを切り取れば立派な絵画になりそうな程だった。
少年の名前を霧原涼という。
霧原はクラスの中で最も年齢の低い一人だ。
しかしその知力は大人顔負けであり藩国ではI=Dの設計を手にかけている。
クラスでも有数の成績を誇っておりしばしば年上の生徒が勉強について質問にくるくらいだ。
「・・・・・はぁ」
もう何度目になろうかというため息、その姿をクラスメイトが心配そうに眺めていた。
「なあ、涼のやつ一体どうしたんだ?」
「・・・・わからん、どこか体調不良かもしれないな」
真剣な表情で話し合う瀧川と逢真、二人にとって霧原はまるで弟のような存在だった、ゆえにその心配もまるで本当の兄のように深かった。
互いに推測を交し合う二人、そこに双海が首を突っ込んだ。
「二人ともわかってない、ぜんっぜん分かってない!!」
「な・・・何がだよ?」
驚く瀧川をしり目に双海は何やら嬉しそうな顔を浮かべる。
そしてさんざんもったいぶった後ひっそりと話はじめた。
「・・・間違いないわ、あれはきっと恋の悩み」
「恋!?」
突然大声をだす瀧川あわてて二人に口をふさがれる。
霧原がこちらを向いたが苦笑いスマイルでごまかした。
「バカ!霧原くんにばれたらどうするつもり!?」
「わ・・わりぃ、でも話がいきなし飛躍したからつい・・」
「まぁたしかにそれは分からないでもないな、何故いきなり霧原の悩みが恋に結びつくんだ?」
もっともな逢真の質問、それに対し双海はため息をつく。
そしてまるで予備校の講師の如く説明を始めた。
「いい?まずあの霧原くんの切なそうな目、あれはきっと届かぬ思いを抱いている証拠、ほら見てみなさい」
言われるままに霧原を見る二人、言われてみればそう見えなくもない。
話を続ける双海、どこからかメガネを取り出してかけた。
「そしてあのため息、心の中で深い悲しみが渦巻いているサイン、ほら悲しそうでしょ?」
なるほど、確かにそう見えなくも無い。
だんだん話しを信頼してきた二人、さらに講義は続く。
「そして極めつけはあれ、時たま顔を赤らめる表情、きっと好きな人の事を思い出してるのね、実にピュアだわ」
再度確認してみる二人すると確かに霧原は顔を赤らめはにかんでいる。
これはもしかすると本当に本当なのかもしれない。
しかしまだ疑問の残る二人に双海は言葉をかけた。
「あんたたち霧原くんの兄貴分なんでしょ?だったら悩みくらいきいてあげたほうがいいんじゃない?」
どうやらなんだかんだ言って彼女も霧原が心配だったらしい。
霧原は実に恵まれた人物であった。
「分かった俺が話しを聞いて来る」
「お・・・俺も」
「あんた、こういうの向いてないから残りなさい」
厳しい双海の言葉、がっくり来てる瀧川を残して逢真は霧原の元へ向かった。


相変わらずため息をついている霧原、何故か回りに薔薇が咲きそうな雰囲気だ。
そこに逢真が現れ霧原の肩を叩いた後ジュースを渡した。
「オレンジでよかったよな?おごるよ」
「あ・・すいません・・・」
やはり元気がない、霧原は遠慮深い性格のためストレートに聞いても情報が出る確率は低い。
そこで逢真はカマをかけてみる事にした。
「なんかえらく落ち込んでるな・・・・もしかして『彼女』のことか?」
『彼女』の単語が出た瞬間ビックリする霧原、はずみで耳がピンとなる。
やがて少し困ったような顔を浮かべると観念したように話始めた。
「まいったな・・・そうです『彼女』の事で少し・・・」
もちろん逢真は『彼女』が誰なのか知らない。
しかしここで話を終わらせるわけにはいかないので上手く話しを合わせる。
「お前は『彼女』の事どう思ってるんだ?」
「僕は・・その・・彼女を見ていると癒されるって言うか・・・和むっていうか」
そう言うと霧原は恥ずかしそうに顔を伏せた。
後方より人の視線、おそらく瀧川と双海の二人だろう。
(上手くやれってか・・・少しは手伝えよ)
そんな逢真の思いをしり目に完全に観戦モードの二人。
諦めた逢真はそのまま話を続けた。
「それで、お前はこれからどうしたいんだ?」
「僕は・・・もっと『彼女』と仲良くなりたい・・・けど」
言葉を詰まらせる霧原、どうやらため息の原因はここにあるらしい。
「僕にはその勇気がないんです・・『彼女』に触れたい・・けど・・『彼女』の純粋な目を見るとどうしても怖くなって・・」
そう言い終わる霧原は瞳に涙を浮かべた、どうやら相当思い悩んでいたらしい。
逢真はジュースの中身を一気にあおった。
「そうだよな、怖いよな」
どこか遠くをみる表情の逢真、不思議そうに霧原が見上げる。
胸のペンダントが揺れた。
「でも怖がってたらいつまでたってもそのままだ、傷つきもしないがそこから進めない」
「逢真さん・・・・」
「だったら少し勇気を出してみないか?ツライかもしれないし上手くいかないかもしれない・・・けど」
「・・・・けど?」
「自分に嘘をつかないで済む」
その言葉に目を大きくする霧原。
しばらく何か考えた後いきなり走り出し教室を後にした。
「おい本当にアレで大丈夫かよ?」
「後はアイツしだいだ、俺達が心配する事じゃない」
少し成長した弟、二人の兄は優しい目でその後ろ姿を見送っていた。


霧原は走っている、まるで自分の迷いを断ち切るように。
その瞳には光が宿りもはや彼に恐れはない。
彼は決めたのだった、『彼女』と正面から向き合う事を、自分に正直になる事を。
足を止め息を整え霧原は扉の前に立った、『彼女』の待つその扉の前に。
(僕は・・もう迷わない。)
何を話せばいいかなんて分からない、どう振舞えばいいかも分からない。
それでも霧原は扉を開けた、確かな思いをその胸に抱いて。
『彼女』は部屋の中にひっそりと座っていた。
霧原は『彼女』の元に近づくと何も言わずにただ『彼女』を抱きしめた。
「あったかい・・・ずっとこうしたかった・・」
『彼女』はその澄んだ目で霧原を見つめる。
やがて霧原が腕を放すとピョンピョンはねながらエサを食べに戻った。
長い耳がゆれる。
『彼女』の名前はメルちゃん、メス二歳、ジャージーウーリー種でつぶらな瞳が特徴。
二ヶ月ほど前に学校の校門に捨てられているのを発見されそのまま保護される事となった。
実際はどこかの動物好きが学校のシステムに勝手に組み込んだプログラムなのだがそこはまあどうでもいい。
とにかく霧原はそのかわいい姿をいつも遠くから見つめていた。
しかしあまり動物と触れ合った事が無いせいか、いざ触ろうと思うとどうしても勇気が足りなかった。
その背中を押したのが逢真のアドバイスだった・・・・本人は全く違う意図で話していたが。
そして勇気を出した霧原は見事メルちゃんに触れる事に成功したのだった。
ちなみにこの後『霧原熱愛騒動事件』が起きるがそれはまた別の話。
今はただ幸せそうにニンジンを食べるメルちゃんを眺めている霧原であった。

教訓 うさぎは寂しくても死なない(これ教訓か?)
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