芥辺境藩国@wiki

スーパー逢真大戦ss・3

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takanashi

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部屋を出た二人は、キキョウの部屋へと行き、
試着を開始する。

サヨコ「姉さん、この服、着方がわからないよ」
キキョウ「大丈夫。これがあるから」

と、取り出したのは、
「浴衣の着方マニュアル」
という本だった。

サヨコ「……姉さん? 何処から持ってきたの?」
キキョウ「荒川さんの部屋からよ?」
サヨコ「……手際いいのね……」
キキョウ「そう? ありがとう」
サヨコ(褒めたつもりは無かったんだけど……)
キキョウ「それで、どっちの浴衣を着るの?」

荒川からパク……借りた浴衣は2種類。
一つは、全体が暗めの青で染められていて、朝顔の花が描かれている
もう一つは、白を基調に桃の花が描かれている。

サヨコ「……こっちがいいかな」

そう言って、朝顔が描かれた浴衣を選ぶ。

キキョウ「それじゃ、着てみましょう。
     私はこっちを着てみようっと♪」

と言って、桃の花が描かれた浴衣を手に取る。

サヨコ「って、何で姉さんまで着るの?」
キキョウ「着てみたいから」
サヨコ「……そうなんだ……」

あまりの簡潔な答えにサヨコは納得するしかなかった。

~着替え中~
……。
…………。
……………………。
~着替え終了~

サヨコ「これでいいのかな?」
キキョウ「そうね、これでいいと思うわよ?」

鏡の前でおかしなとこが無いかチェックする二人。
そこへ、
コンコン。
ドアがノックされる。

キキョウ「はい、どなた?」
双海「双海ですが、よろしいでしょうか?」
キキョウ「ああ、ちょうど良かった、どうぞ中に入ってください」
双海「失礼します」
海堂「失礼します」
サヨコ「……え、ちょっと姉さん!」
キキョウ「大丈夫よ、サヨコ」
双海「……あの、お取り込み中ならまた時間を置いて来ますが」
キキョウ「気にしないで、入って下さい」
海堂「……(大丈夫かな? 環?)」
双海「……(大丈夫じゃない? 入ろ)」

サヨコの声に二人は不安になるが、
キキョウが入っていいといっているので、部屋内に入る二人。
そして、浴衣を着ているサヨコとキキョウに目が行く。

双海「…………」
海堂「…………」

二人は、扉を閉めた状態で固まってしまった。

サヨコ「あ、あのね、これは、その……」
キキョウ「どうかしら、変なところは無いかしら?」

サヨコはわたわたしながら、何とか誤魔化そうとして、
キキョウはその場でくるっとまわる。
最初に反応したのは、双海だった。

双海「お二人とも、良く似合ってますよー!」

二人に駆け寄る双海。

海堂「……。えっと、良く似合ってますよ。
   一瞬、誰かわからなかったぐらいに」

海堂も二人に近づく。

双海「どうしたんですか? 浴衣着てるなんて」
キキョウ「それはねー……」
海堂「環、今日は花火大会があるから、多分そのためじゃないかな?」
キキョウ「玲ちゃん、正解!」
双海「しかも、サヨコさんまで浴衣を着てるーー!
   すごーーい! きれーーい!!」
サヨコ「あ、ありがとう。双海」
キキョウ「環ちゃん、それは違うわよ」
双海「え? 違うって?」
キキョウ「今日の主役は、サヨコなんだから!」
海堂「……もしかして、逢真さんとデートですか?
   サヨコさん?」
キキョウ「玲ちゃん、またまた正解!」
サヨコ「え、あ、う……うん」

海堂の『デート』という言葉を聞いて赤くなりながらも、
サヨコは頷く。

キキョウ「それで、どうかしら?
     おかしなところはない?」
双海「玲はキキョウさんをチェックして。
   私はサヨコさんをチェックするから」
海堂「わかったわ。
   キキョウさん、失礼します」

こうして、双海・海堂による浴衣チェックが入る。

双海「サヨコさんは特におかしな所はないですねー」
海堂「キキョウさんもありませんね」
キキョウ「良かったわね、サヨコ♪」
サヨコ「……うん」
双海「あ、でも……。
   ……うーん、問題無いかなー?」
海堂「環?」
双海「うーーん、いや、髪型も変えた方がいいかなー、
  って思ったんだけど……。
   お二人とも、髪、綺麗だし問題ないよねー」
海堂「……でも、デートするなら髪型も変えた方がいいと思うよ?」
双海「そうだねー、上の方で纏めてみようか」
海堂「キキョウさんはポニーテールにしてみましょうか?」
サヨコ「え? 纏める?」
キキョウ「そうね、お願いできるかしら?」
双海「任せて下さい!」
海堂「それでは失礼して」

~髪型セット中~
……。
…………。
~セット終了~

双海「かんせーーい!」
海堂「こんな感じですがどうでしょう?」
サヨコ「……髪型変えるだけで、こんなに雰囲気違うんだ……」
キキョウ「変わるものねー」
双海「二人とも、似合ってますよ!」
海堂「……私も浴衣着たくなってきたなー」
キキョウ「……そういえば、二人とも、何か用事があったのでは?」
双海「ああ、終わったんで大丈夫ですよ!」
海堂「荒川藩王に二人が身支度で戸惑ってると思うから、
   手伝ってあげてくれるかな? と言われて来ましたので」
キキョウ「そうなの? ありがとう!
     荒川さんにもお礼言わなくてはね」
海堂「それでは、伝言しますね。……それで、
   お二人はお時間よろしいのですか?」
サヨコ「え? 時間?
    まだ、だいじょう……ぶ……の……」

時計を見てサヨコの言葉が徐々に小さくなって、

サヨコ「って、もうこんな時間ーーー!?」

大きい声を上げる。
思ったより身支度に時間が掛かったようだ。
只今の時刻、4時45分。

サヨコ「い、急がないと!」
キキョウ「はい、これ」

キキョウが準備をしておいてくれたようだ。

サヨコ「あ、ありがとう、姉さん!
    それじゃ、行って来ます!」
キキョウ「転ばないように気をつけなさいねー」
サヨコ「はーーい!」

サヨコは逢真の部屋へと向かって急ぎ足で向かう。
三人はそれを見送る。

双海「サヨコさん、想いが通じるといいんだけど……」
海堂「大丈夫。今日は七夕だもん。通じるよ、きっと」
双海「……でも、相手は『あの』摂政様だよ?」
海堂「……だ、だいじょうぶ、だと……お、思いたい、なー……」

そういう海堂の言葉はどんどん自信が無くなっていくようだった。

キキョウ「そうねー、これで気付かなければ……。
     逢真さんを襲うしか手段が無くなるわねー」
双海「き、キキョウさん、襲うって……(汗」
海堂「……凄い事言いますね、キキョウさん(汗」
キキョウ「でも、そうするしかないと思わない?」
二人「…………(汗」

反論が見つからない二人だった。

キキョウ「さてと、私も行こうかな」
双海「行くって……、常世さんの所にですか?」
キキョウ「……何で、常世が出てくるの?」
双海「いえ、お二人が楽しそうに話してるのを何回か見ているので……、
   だから、キキョウさんも浴衣着てるとばかり」
海堂「それは、私も思いましたよ? キキョウさん」
キキョウ「……そんなに、常世といるかなー??」
双海(……もしかして、キキョウさん……)
海堂(……自分の気持ちに気付いてない……の?)
キキョウ(うーん、そんなに常世と一緒にいる時間多いかなー?)

キキョウが考え込む。
が、すぐに終わる。

キキョウ「うーん……、まあいいや。
     お散歩行って来よう!」

またしても、自身の気持ちにたどり着く前に気持ちを切り替える。
そして立ち上がり、扉へと向かう。

キキョウ「二人とも今日はありがとうね。
     荒川さんにもお礼を伝えていただけるかな?」
海堂「はい、お伝えします」
キキョウ「ありがとう。それじゃ、またねー♪」

キキョウは部屋を出て行く。
残された二人は、

双海「ねえ? 玲?」
海堂「何? 環?」
双海「この国って、鈍い人多くない?」
海堂「……考えちゃ負けだよ、環」
双海「……そうだね……。藩王様のとこ、行こうか」
海堂「そうだね、行こう」

二人も部屋を出て、荒川の部屋へと向かう。
多分、荒川はまだ、服を選んでるはずだから。

サヨコは逢真の部屋に向かっている。
ちょうど、常世も逢真の部屋へ向かう。
が、逢真の部屋へ向かうサヨコを見つけたので、尾行を開始する。

常世(気は乗らないが仕方ないか……)

そして、サヨコは逢真の部屋に着く。

サヨコ(お、遅れてないよね!?
    時間大丈夫だよね!?)

確認すると、ちょうど5時になった。

サヨコ(お、逢真……、中にいるよね。きっといる)

と考えていると、中から逢真が出てくる。
逢真がサヨコを見つける。

逢真「ああ、いたのかサヨコ。いつも時間前には来るから、
   少し、心配したぞ?」
サヨコ「ふ、ふん!女性は身支度に時間が掛かるのよ!」
逢真「そうなのか?」
サヨコ「そ・う・な・の!!」
逢真「まあ、いいか。 それじゃ行くぞ」
サヨコ「ちょ、待ちなさいよ、逢真!」

逢真は見事に浴衣と髪型が違うサヨコに気にもせず、歩き出す。

サヨコ(ちょっとは気付いてよ……。 鈍感!)
逢真「ああ、サヨコ?」
サヨコ「え!? な、何よ!?」
サヨコ(気付いてくれた!?)
逢真「この時間に出ると、花火始まる前にオアシスに着くぞ?
   何処か寄るとこあるのか?」
サヨコ「……ゆっくり、歩けばちょうどいいでしょ!!」
サヨ(逢真の馬鹿!! 気付いてよ!!)
逢真「まあ、その服じゃ歩きにくそうだしな。ゆっくり行くか」
サヨコ「……そ、そうよ! 判ってるじゃない!」
サヨコ(気付いてるなら、少しは言ってくれてもいいじゃない、
    似合ってるとか……き、綺麗だ、とか……。
    それとも、似合ってないのかな? 浴衣……)

補足しておくと、サヨコの浴衣姿はかなり似合っている。
その証拠に、すれ違う男は誰もがサヨコを見ている。
何故、逢真が反応しないかというと、
……逢真が気にしないだけである。
……ゲドーあたりが見たら、写真をとって、ポスター(等身大サイズ)に引き伸ばし、
部屋に飾るぐらいの事はするだろう。

逢真「サヨコ、途中で何か食べるか?」
サヨコ「え?」
逢真「この時間だと腹減るだろ? 軽く食べよう」
サヨコ「……じゃあ、鰻が食べたい!!」
逢真「まあ、いいが……。 太らないか?」
サヨコ「鰻食べた程度で私の体重は変わらないわよ!」
逢真「じゃあ、行くか」
サヨコ「よーし、食べるわよー!」
サヨコ(多分……、いえ、必ず邪魔が入るからしっかり食べないと!)

サヨコは逢真の腕に自分の腕を絡める。
デートは始まったばかりだ。
その後を追う常世は、

常世「……これは、成功するかな?
   サヨコの告白……」

と、かなり甘い考えを浮かばせる。
そう、甘すぎたのだ。
常世のこの考えは。
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