何!?脱走したアムロがジオンに亡命しただと!?pert1


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何!?脱走したアムロがジオンに亡命しただと!?

1 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/10(水) 00:19:28 ID:xlh/qew2
    内容:
    「ガンダムに乗ったままでか…何て事だ…!」
    「相手はどうやらランバ・ラルというジオンの将校らしいです!ど、どうしましょうブライトさん」

    「く…我が軍の最高機密がジオンに渡ったのか…これは歴史が変わるかも知れんな…!」


    …この続きを妄想するスレ


9 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/10(水) 06:45:36 ID:xlh/qew2
    アムロ「フラウ、君も僕と来るんだ」

    フラウ「な、何言ってるのよアムロ!?」

    ラル「お嬢さん、君の彼氏は男の選択をしたんだ。もう後には引けん。我々も彼をそう扱う。君も覚悟を決めるのだな」

    フラウ「…」

    ハモン「あなた」

    ラル「うむ。クランプ!本国へ連絡だ!連邦の白いモビルスーツを捕獲したとな!」


    …この暗号通信がホワイトベースに傍受されて>>1の展開になると


18 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/10(水) 11:45:02 ID:bSV5SfP0
    IDは違いますが1です


    コズン「本部からの正式な返答はまだです。
    かなり上(上層部)が白いモビルスーツの扱いに関してモメてるみたいですぜ」

    ラル「遅いな、本部からの指示を待ってはおれん。襲撃は予定通り行う。木馬に仕掛けるぞ」

    ハモン「あなた、もう少し待てば人員やモビルスーツも数が揃えられるのじゃなくて?」

    ラル「悠長にしていると機を逃す。白いモビルスーツを失った今、木馬の戦力は落ちている。
    今が攻め時なのだよ。一気に木馬も鹵獲する、な」

    アムロ「待って下さいラルさん」

    ラル「ん?何だ少年」

    アムロ「僕もホワイトベース・・・いや「木馬」襲撃に加えてもらえませんか?」


21 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/10(水) 12:08:59 ID:bSV5SfP0
    アコース「おいおいw」

    フラウ「何言ってるの!?ブライトさんやセイラさんや・・・大勢の人がたくさん乗っている艦なのよ!?
    アムロ!どうしちゃったのよアムロ!!」

    アムロ「僕が何もしなくてもこの人達はホワイトベースを襲撃するんだぞ!
    もしかしたら誰かが死んじゃうような事があるかも知れない!
    だから僕が行くんだ!モビルスーツを無力化して一気に艦橋を制圧すれば余計な被害を出さずに済む!」

    フラウ「だって・・・そんな・・・(泣く)」

    アムロ「これが一番、被害を抑える方法なんだ・・・!」

    ラル「本気か、少年」

    アムロ「僕の名前はアムロ・レイ。モビルスーツは『ガンダム』です」


23 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/10(水) 14:33:04 ID:bSV5SfP0
    コックピットを開けたまま対峙するグフとガンダム
    グフ後方には3機のザク

    アムロ「それでは手はず通りに」

    ラル「気は変わらんのか少年」

    アムロ「僕の提案を受け入れて下さって感謝しますラルさん」

    ラル「君に与えられた時間は5分。それ以上は一秒たりと待たんぞ?」

    アムロ「はい。僕はその間にホワイト、いや木馬の戦力をモビルスーツと共に無力化して見せます」

    ラル「・・・君がそれに失敗した場合、5分後に我々は総攻撃を仕掛ける。
    それと、君がもしおかしな行動を取ったと判断した場合、後ろからでも撃たせて貰う。
    その時はハモンの元にいるお嬢さんの命も、無い物と思え」

    アムロ「判っています。僕が木馬と通信を開始したらカウントダウンを始めて下さい」

    コックピットを閉じるガンダム。そのまま背を向けて歩き出す
    グフのコックピットを開けたままそれを見送るラル


27 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/10(水) 15:47:48 ID:bSV5SfP0
    マーカー「12時の方向に反応!距離2000!これは・・・」

    ブライト「敵か!?くそ、こんな時に!」

    オスカ「違いますこれは、ガ、ガンダムです!」

    ブライト「な ん だ と !?」

    口を押さえ、息を呑むミライ

    セイラ「回線開きます!アムロ?アムロなの!?返事をしてちょうだい!」

    夕日を背に漆黒のシルエットとなり
    ゆっくりとホワイトベースに近付いて来るガンダム
    刹那、その相貌がギラリと輝いた

    マーカー「ガンダムがスピードを上げました!突っ込んで来ます!」

    ミライ「様子がおかしいわブライト!」

    ブライト「戦闘態勢だ!MSを緊急発進させろ!」


30 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/10(水) 18:52:57 ID:bSV5SfP0
    セイラ「ガンキャノン発進完了。続いてガンタンク、どうぞ」

    ハヤト「無理ですよリュウさん!ガンダムに勝てるわけ無い!」

    リュウ「泣き言を言うな!アムロめ・・・!ガンタンク出るぞ!」



    ブライト「WBのエンジンはどうなってる!?」

    ミライ「調子悪いわね・・・出力が上がらなくて上手く高度が取れないの。
    ガンダムを振り切るのは多分無理ね」

    ブライト「クソッ!何でだ!何でこんな事に・・・!!」

    ミライ「ブライト、落ち着いて。みんなあなたの指示を待っているのよ?」

    ブライト「判ってる!手の開いているものは銃座につかせろ!弾幕を張ってガンダムを近づけさせるな!」

    マーカー「ガンダム距離200!」

    セイラ「ブライトさん!アムロから通信が入っています!」


31 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/10(水) 19:26:53 ID:bSV5SfP0
    WBのメインモニターにアムロの顔が映っている。
    画像はときたまノイズが混じりその音声と画像を不明瞭に歪み消した


    ブライト「アムロ貴様・・・!!」

    アムロ「ブライトさん。時間がありません。WBは速やかに武装を放棄してジオンに投降して下さい」

    ブライト「ふざけるな!そんな要求が呑めるとでも思っているのか!?」

    アムロ「僕はWBの皆さんにできるだけ危害を加えたくないんです。指示に従って下さい!」

    ブライト「ぬけぬけと・・・!自惚れるなよアムロ!ガンダム1機で何が出来ると言うんだ!」

    アムロ「・・・それをこれからあなたに証明して見せますよ!」

    セイラ「通信・・・切れました」

    オスカ「ガンダム、先行していたガンキャノンと接触!交戦開始した模様です!」


34 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/10(水) 20:14:52 ID:bSV5SfP0
    カイ「撃つぞ!本当に撃っちまうぞアムロ!!」

    至近距離で発射されたキャノン砲弾の下を掻い潜り、ガンキャノンを引き摺り倒すガンダム。
    砂にめり込むガンキャノン
    転倒の衝撃でカイのバイザーが割れ、カイはそのままコクピットで昏倒する

    アムロ「まずは一つ!残り3分12!」

    のたのたと近付いて来るガンタンクにバーニアジャンプで迫るガンダム
    空中のガンダムに向けボップミサイルを放つガンタンクだが、ガンダムは逆方向にバーニアを再点火して回避する
    そのままガンタンクに密着するように着地すると同時にビームサーベルを抜き、
    両肩の砲身とボップミサイル内臓の両腕を切り飛ばした。
    念の為にバルカン砲でキャタピラ部を破壊するガンダム
    これでガンタンクは動く事も攻撃する事もできない、はずだ
    上部コックピットのハヤトの顔が恐怖に歪んでいるのを、
    ガンダムのメインモニターは冷酷に映し出していた

    アムロ「二つ目!あと2分02!」


39 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/10(水) 23:32:12 ID:ZKgduoEI
    カモフラージュされた小高い砂丘の中腹から双眼鏡で様子を伺っているランバ・ラル隊


    アコース「す、すげえぜあのアムロって奴!瞬く間にMS2機をやっちまいやがった!」

    クランプ「残りは何分だ?」

    コズン「後…一分半ほどです!こいつあ…もしかするかも知れませんぜ!」

    ラル「…」


    次の瞬間、一同の口から異口同音に驚愕のうめき声が漏れた
    ガンダムがHBに取り付き、ビームライフルの銃口を艦橋に向けたのだ

    高度を徐々に下げて行くHB

    砂漠に堕ちた木馬は魂消える様にエンジンの火を落とし沈黙するしかなかった


    ラル「…行くぞ。木馬内部の制圧は我々が行なうんだ」

    それぞれのMSに搭乗する為に踵をかえすラル隊の面々
    コズンの手に握り締められた軍用時計は、残り15秒を示していた


40 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/11(木) 01:06:21 ID:A9r1juaR
    またID変わっちゃいましたが1です


    乗り込まれたラル隊によってHBクルーは次々と武装解除されて行く
    ブリッジメンバーも拘束され、全ての人員がHB前に集められ並べられた




    屈辱に震えるブライトをガンダムのコックピットでモニター越しにアムロが一瞥している

    アムロ(モノローグ)『どうですブライトさん、1人の犠牲者も出さずにHBを制圧して見せましたよ
    やっぱり僕が一番ガンダムを上手く使・・・』

    その瞬間!

    完全に沈黙したと思われたガンタンクの上半身が強制排除され、コアブロックが射出された!

    射出時にケガを負った血まみれのリュウがレバーををシフトさせると
    コアブロックは上空でコアファイターに変形
    急降下しながらガンダムめがけてバルカン砲を撒き散らす!


    リュウ「アムロォ!お前のやった事を断じて認める訳にはいかんのだ!!」


    呆然と銃弾を浴びるガンダム
    しかしガンダリウム合金のボディを貫くにはあまりにも非力過ぎる攻撃だった


    我に返るアムロ


    アムロ「だ、駄目だリュウさん!おとなしく投降して下さい!さもないと…!!」

    クランプ「野朗ッ!」

    反転し、ミサイル発射態勢に入ったコアファイターを
    周囲警戒中だったクランプのザクマシンガンが薙ぎ払う

    コアファイターはリュウを乗せたまま爆発四散し、一時の夕闇を照らす流星と化した


51 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/11(木) 19:40:09 ID:I7Id+j+B

    「そんな・・・リュウさあぁん!!」

    コックピットで絶叫するアムロ
    思わず両手で顔を覆うが、モニターを凝視する眼を閉じる事はできない

    馬鹿な。こんな筈じゃ無かった

    WBクルーの唯一人として傷付けずにこの亡命を成功させる

    それがブライトを始めとするWBクルーに自分を認めさせる手段だと思っていたのに

    結果的に自分勝手な行動がリュウ・ホセイという軍人を死に追いやってしまった


    やっぱり僕は役立たずな男なんだろうか


    「顔を伏せるなアムロ君!」


    深い心の闇に陥りそうになったアムロを正気に引き戻したのは
    モニターに映るラルの力強い叱責だった


52 :通常の名無しさんの3倍:2008/12/11(木) 19:52:58 ID:I7Id+j+B

    ラル「たったの5分足らずでMS1機を撃破し1機を無傷で捕獲!そして戦艦1隻を拿捕!
    まるで赤い彗星並みの戦果だ!
    宣言どおり君はやり遂げたんだ!胸を張りたまえ!」

    アムロ「ラルさん・・・でも僕は・・・誰も犠牲者を出さないつもりで・・・」

    ラル「おこがましいぞ!君はちっぽけな一人の人間に過ぎん!
    覚えておきたまえ!これが戦争だ!ゲームじゃないのだよ!!」

    アムロ「これが・・・戦争・・・」

    茫然と呟くアムロは、流しかけていた涙が止まっている事にも気付いていなかった


67 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/12(金) 20:54:49 ID:v9ssn7Sj
    「木馬捕獲セリ」

    その一報はジオンと連邦の両軍を稲妻の様に駆け巡った

    地平の彼方から轟音を響かせて飛来する3機の巨大爆撃空母ガウ
    ガウに付き従う数え切れない程のドップ編隊
    MSを満載した輸送機
    それら全てが地に伏すWBの元に続々と集結してゆく


    物々しい喧騒の中
    アムロを加えたラル隊が、捕虜として本国に送られる予定のWBクルーと対面している

    「アムロッ!貴様のせいでリュウは!リュウは死んだんだぞッ!」

    「おっと!大人しくしてな!」

    後ろ手を拘束されているにも関わらず、アムロに迫らんとしたブライトだったが
    マシンガンを手にしたアコースに乱暴に引き戻された拍子に後方の壁に背中を激しく打ちつけ、
    そのままずるずると床に腰を付ける羽目となった

    それでも顔を上げたブライトは、異様なまでに澄んだ瞳の色を湛えるアムロの瞳を見て慄然とした


    心が揺らいでいない


    こいつは、俺の知っているアムロなのか!?
    今までの奴ならこんな時、オロオロうろたえながら自分を見失っていた筈なのに・・・!


    「ブライトさん」


    静かなアムロの声に、ブライトは我に返った


68 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/12(金) 21:31:34 ID:v9ssn7Sj
    アムロ「僕は、自分の運命を自分で決めて・・・
    その結果を全部背負う事に決めました。後悔はしていません」

    ブライト「なん・・・だと・・・」

    ラル「・・・連れて行け」

    虚脱したブライトはアコースに連行されて行く。アムロの顔を呆けた様に見つめ続けながら・・・


    ラルは残りのWBクルーに向き直る

    ラル「さて諸君。我々はこの艦を接収する。だが正直手が足りんのだ
    君達は殆どが、成り行きでこの艦に乗り合わせたと聞いている。連邦に義理が無い者もいるだろう?」

    WBクルー達はそれぞれの表情でラルの言葉を聞いている

    ラル「単刀直入に言おう。この艦を運用する為に我々に協力して貰いたい。
    それなりの階級と待遇を用意する」

    くぐもったどよめき声が立ち込める

    ラル「もちろん強制はしない。だがその場合は南極条約に法り・・・
    捕虜としてジオン本国に送られる事になるがね。好きな方を選びたまえ」

    額と首に包帯を巻かれたカイが口を開く

    カイ「しばらく考えさせてもらえねえかな?」

    ラル「駄目だ。今、この場で選択するんだ」

    強い口調で即答したラルに、カイは押し黙った


74 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/13(土) 19:30:00 ID:AHr/gbnQ
    ハヤト(小声で)「何考えてんです!相手はジオンなんですよ?」

    カイ「うるせえな、黙ってろハヤト」

    薄く笑いながらラルを見ているカイは、クランプに顎で指示されたコズンが
    自分の横に静かに移動して来た事に気が付いていなかった

    ラル「では聞こう。我々に協力しても良いと思う者は、前に出て貰いたい」

    無言の一同。それぞれの表情に明らかな逡巡が見られるが、前に出る者は一人もいないかと思われたその時


    「どいて下さる?」


    今まで頑なまでに言葉を発せず、うつむいた姿勢を崩さず、表情をラルに見せていなかった
    金髪の女性が顔を上げ、他者の陰からするりと抜け出すと背筋を伸ばした姿勢でラルの前に立った


    ミライ「セイラ!?」

    ハヤト「セイラさん!?」

    信じられないものを見た様にWBクルー一同がどよめいた


75 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/13(土) 19:36:11 ID:AHr/gbnQ
    「むっ!?ま、まさか・・・!」

    目の前の美しい女性にラルの眼が驚愕と共に見開かれてゆく
    普段では見られないラルの狼狽ぶりをアムロは意外に感じていた
    眼を転じると他のラル隊の面々もポカンとした顔つきでラルを見ている

    「あなたはもしや、アルテイシア様では!?お忘れですか!
    ジンバ・ラルの息子、ランバ・ラルにございます!」

    「大尉、この場でその名前は無用です。手をお上げ下さい」

    片膝をつき拝礼の姿勢をとったラルは、ハッと気付いたように立ち上がると、
    横に控えたクランプにセイラの拘束を解く様に命じた


    「セイラさんが行くのか、ニャヒヒ、そんじゃ俺も・・・」

    軽口を叩きながら前に出ようとしたカイだったが、
    横から強烈に突き入れられたコズンの鉄拳がミゾオチにめり込み、
    悶絶しながらその場にうずくまる事となった

    「大尉!捕虜の中に体調を崩した者がいます!救護室に運んどきますぜ!」

    のんびりした口調のコズンにクランプが返す

    「ご苦労!手当てが済んだらそいつはそのまま捕虜として本国に送れよ!」

    ニヤリと笑ったコズンが嬉々として答える

    「了解であります!」


    襟首を掴まれて引き摺られて行くカイの耳にコズンが囁いた

    「テメエみたいな奴は、ラル隊にはいらねえんだよ!」


88 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/14(日) 18:56:24 ID:CUOX421S
    結局、セイラの他には一人としてラルに協力する意志を示した者はいなかった


    「あなたには、是非一緒に来て貰いたかったのだけれど」

    悲しげな顔でセイラに声を掛けられたミライは、やはり悲しげな笑顔で答えた

    「私は故郷に家族と親戚がいるもの。私の行動で迷惑を掛ける訳にはいかないわ。
    他のみんなもそう思っているはずよ」

    「ごめんなさい・・・」

    軽くうつむき小さな声で肩を震わせるセイラ
    ミライは、後ろ手を拘束されたままゆっくり近付くと、セイラの肩に軽く額を預けて小声で囁いた

    「何か事情があるのね。私には何も出来ないけれど、上手く行く事を祈っているわ。
    それから、アムロをよろしくね」

    顔を離したミライを驚いた表情のセイラが見つめる

    「それじゃね」

    セイラに親愛の笑顔を残し、ミライは連行されて行く。
    彼女の姿はやがてWBクルーの列に加わり見えなくなった


89 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/14(日) 19:00:04 ID:CUOX421S
    一同とは少し離れた場所でアムロとフラウが対面している


    「・・・君も行ってしまうのか」

    先に声を掛けたのはアムロの方だった

    「子供達がいるもの。私が付いててあげなくちゃ」

    悲しそうに笑いながらフラウが答える

    「そうか・・・そうだよな・・・」

    それに、間接的にせよリュウを殺した自分を、あの3人の子供達は決して許さないだろうとアムロには思えた

    「こら!しっかりしなさいよアムロ!」

    フラウの両方の掌で強引に顔を挟まれ正面を向かされたアムロは
    涙を流しながら怒っている表情のフラウに驚いた

    「あなたは自分のやった事に後悔しないって言ったんでしょう?
    そんな顔してちゃダメじゃない!」

    ああ、フラウに怒られるのはこれで何度目なんだろう
    いつも悪いのは自分だった
    でもフラウはどんな時も最後には優しく許してくれた
    今だって自分の身より僕の事を心配してくれている
    そんな彼女に僕は何を・・・

    「・・・!」

    突然のキスにアムロの思考は中断された


    ほんの一瞬だったが、2人は硬く抱き合い、その間世界は2人の他には何も存在しない様だった


100 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/15(月) 09:45:12 ID:dRDsTljJ
    アムロとセイラ、そしてラル隊の面々はWBのブリッジに集まった
    WBクルーを乗せたと思われる輸送機が今、飛び立って行く
    それをブリッジの窓から見ながらアムロは
    あれはどこに向かうのだろうとぼんやり考えていた
    しかし、ラルが語るセイラの素性は、アムロの思考を現実に引き戻していった

    「何ですって!?この方は、あの『ジオン・ダイクン』の娘さんなんですかい!?」

    クランプの驚きはラルとセイラを除く、その場全員の驚きだった

    「アルテイシア様とその兄上のキャスバル様はわしの父、
    ジンバ・ラルと共に地球に逃れて暫く過ごした事があるのだ
    最も、キャスバル様はすぐに家を出て行かれ行方不明となってしまわれたが…」

    「それにしても姫様、良くぞご無事で…」

    ラルの言を継いだハモンの言葉にセイラは顔をほんのり赤らめた

    「姫様なんてやめて下さい。私は今は『セイラ・マス』なのですから」

    「いいや!あんたは俺達の『姫様』だ!大尉!そう呼んで構いませんよね!?」

    コズンの嬌声にラルが重々しく、しかし、まんざらでも無さそうに答える

    「…許可する」

    拍手と歓声がWBのブリッジに響き渡った


    事情が良く飲み込めていないアムロだったが、一同の放つ歓喜のエネルギーに圧倒されると同時に
    輪の中心ではにかむ金髪の女性にこれまでには見られなかった「輝き」と言える様な物…
    が顕現している様に感じられてならなかった


984 :>>101修正版 まとめの人良かったら使ってね:2009/01/04(日) 19:49:25 ID:???
    ラル「何ですと!キャスバル様が生きていると言われるのですか!」

    セイラ「兄は今、ジオンで…『赤い彗星』と呼ばれています」


    オォッというどよめきとそれを上回る衝撃がブリッジを席巻した

    ラル「何という事だ…御屋形様のご子息が2人とも御健在だったとは…!」

    浮き立つラルの横でハモンが冷静に言葉を継いだ

    ハモン「あなた、『若様』は、ゆくゆくはザビ家を内部から突き崩すのが目的なのでは?
    そしてお父上の無念を晴らそうとお考えなのでは無いでしょうか?」

    ラル「何と…!」

    雷に打たれた様にラルは感慨する。その胸にはこれまでの自身の苦境がありありと蘇っていた

    暫くうつむいていたラルは顔を上げると決然とした表情で言い放った


    「諸君、暗闇で蠢いているしかなかった我々の前に、光が見えたぞ!道標は示された!
    まず我等は態勢を固め、キャスバル様を迎える準備を整えるのだ!」


102 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/15(月) 09:53:00 ID:dRDsTljJ
    ハモン「それと、この子の立場にはひと工夫必要でしょう、あなた?」

    ハモンはアムロを示す

    ラル「…そうだな。ザビ家の寵愛を受けるガルマ様を討ち取った憎き木馬の
    しかもガンダムのパイロットだからな…」

    ハモン「ザビ家は殆ど独裁国家…このままではこの子の命は風前の灯です」

    苛烈なザビ家のやり方は身に染みているラルだった。ハモンの言はその通りだと思える
    傍らのアムロはごくりと唾を飲み込んだ

    ハモン「ここは先の制圧時に犠牲となった唯1人のあの軍人に身代わりとなって貰いましょう」

    アムロ「リュウさんに?」

    ラル「身代わりだと?」

    ハモン「ガンダムの正規パイロットだったのは『彼』だったと上には報告するのです
    どう考えても状況的にもその方が自然でしょう?
    まさか正規軍人を差し置いて…
    戦闘訓練をした事が無い民間人の、しかも少年がガンダムを乗りこなしていたなどと…
    ふふ、そちらの方が非現実的な報告ですわ」

    ラル「な、成る程!」

    ハモン「アムロあなた、メカニックの真似事はできる?」

    アムロ「は、はい、得意です!」

    ハモン「結構。あなたは手が足りない木馬の軍人にメカニック助手として不当に拘束されていた事にします
    その扱いに不満を持っていたこの子は、軍人のスキを見てガンダムを奪い命懸けでジオンに亡命した…
    これはジオン国民にとって賞賛に値する行為でしょう。何せこの子は
    『WBに拘束させられていただけでこれまでの戦闘には一切参加していない』のですから」

    アムロは目を見張った。自分の過去が書き換えられて行く

    ハモン「もちろん木馬を手に入れたのは我々ラル隊の功績とします
    WBのクルー達は尋問でガンダムのパイロットはこの子だったと証言するでしょうが…」

    ラルがニヤリと笑う

    ラル「それは、全員で示し合わせた『アムロ憎し』の証言だと判断されるだろうな」

    ハモン「この子はこれからラル隊に入り、パイロット見習いとして働いて貰う事になりましたと上に報告すれば
    特にお咎めは無いでしょう。真正面からで無ければ抜け道はいろいろ見つかるものです」

    ハモンは妖艶に微笑しながら一同を見渡して見せた

134 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/15(月) 23:49:03 ID:dRDsTljJ
    「アムロ、こいつらをじっくりと読み込んでおけ」

    クランプからドサリと渡されたのはやたらと分厚いファイルが一冊と、記録ディスクの束だった
    両腕に余るほどのその量と重さにアムロは戸惑い、クランプを見上げた

    「これは?」

    「ジオン製MSのマニュアルだ。お前には今後これが必要になる
    だが、まあ、見ての通りこれがちょっとばかり厄介でな…」

    後ろ頭を掻きながら苦い顔になるクランプ

    「何せコクピット内の規格や操縦法がMSごとにテンデンバラバラなんだ。
    メーカーや製造時期によってある程度の傾向はあるが、
    それでも納入時には勝手に仕様が変更されてる場合が多い
    とりあえず、現在確認できるMSの資料をかき集めたら、まあ、そうなっちまった訳だ」

    アムロはもう一度手にした資料に目を落とした。ジオンの抱えた生の問題点を垣間見た気がする
    何という不合理なシステムなのだろう。
    これではジオンのMSパイロットやメカマンの負担は相当なはずだ

    「まあ現場の俺達はもう諦めちまってるがな。新型が配備されるたびにああ、また徹夜か…ってな」

    横から自嘲気味にコズンが口を挟んだ。しかしその表情はやはり苦々しい

    「これから俺達には多分新型が回されて来るとは思うが、正直どうなるか判らん
    念の為にどんな状況でも対応できる様にしておかんとな。
    まあ、大変だろうが自分の為だ。大尉の期待を裏切るなよ」

    アムロの肩に手を置きクランプは踵を返したが、ふいに振り返り思い出したように付け加えた

    「ああ、その資料の最後の方は実験機やMAの物だったな。実戦とは関係の無い機体だ。
    取り敢えずそれらは目を通す必要は無いぞ」

    軽く手を挙げて去ろうとしたクランプだったが

    「ラル大尉!友軍偵察機からの連絡です!どうやら連邦軍の部隊がこちらへ向かって来るそうですぜ!」
    というヘッドホンを付けたアコースの大声を聞いて
    キャプテンシートに座るラルの元に駆け戻った


150 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/16(火) 17:38:38 ID:I57RCGon
    「敵は真っ直ぐこちらを目指しているそうです。目的はこの木馬とガンダムの奪還だと思われます!」

    アコースの報告に冷静にラルが付け加える

    「奪還もしくは破壊、だろうな。連邦もなりふり構ってはいられんだろう」

    WBとガンダムは共に連邦の最高機密
    奪還できなければ破壊せよ、それは当然の作戦だろう
    「木馬」ブリッジの空気が張り詰めて行くのが判る。だがそこにピリピリした危うさは無い
    アムロは明らかに「WB」の空気とは違う、余裕の入り混じった緊張感に浸り
    そこに一種の心地良さを感じている自分を発見していた

    「敵部隊には少なくとも大型機と地上戦力が確認できません。
    爆撃機と輸送機で構成された中規模の航空部隊だと思われます」
    アコースは刻々と判明する敵情報を顕にしてゆく

    「ふむ。緊急発進で逃げ切れそうか?」

    「いえ、恐らく今の自分の操縦では無理です
    だいぶエンジンがヘタってるのに加えて、えらく出力調整がデリケートなんですよ
    この艦を操縦してた奴はよっぽど上手く取り回してたんでしょう。
    自分にはクセがまだ掴めていません。もう少し時間があれば、
    コイツを手足の様に飛ばして見せるんですが・・・」

    ラルの問いに操舵輪を握るクランプが悔しそうに答える
    アムロはふと、いつも背筋を伸ばした姿勢でWBを操縦していたミライの後姿を思い浮かべた

    「泣き言を言っても始まらん。諸君、迎撃の準備だ!全ての友軍機にもそう伝えろ!
    むざむざ木馬をやらせる訳にはいかんぞ!」

    激を飛ばしながら自らもキャプテンシートを降りたラルだったが

    「大尉!友軍のガウ3番機から通信入りました!大尉に代われと言ってます」というアコースの報告に
    「回せ」と答えながら手近なヘッドホンを片耳に当てた


151 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/16(火) 17:41:08 ID:I57RCGon
    スピーカーから聞こえてきたのは豪快な銅鑼声だった

    「久しぶりだなラル大尉!今回貴様らの直属護衛をしてやる事になった!
    光栄に思えよ!」

    不遜とも取られかねない挨拶にアムロとセイラは思わず顔を見合わせた
    だが、相手を察したラルは嬉しそうに相手に負けない大声で返す

    「恩に着る!貴様の愚連隊も一緒か!?」

    「愚連隊とは失敬な!突撃機動軍第7師団第1MS大隊司令部付特務小隊御一行様と呼んで貰おうか!」

    ガハハと笑うその声には、粗野の中に何とも言えない温かみが感じられた
    それには確かに、こういう緊迫した状況の中、聞く者の心を鼓舞する効果があるのだろう
    とアムロには思えた

    「そんな舌を噛みそうな名前で呼ぶのは御免こうむる!通り名の方で許せ!」

    「応!他でも無い貴様の頼みだ特別に許そう!」

    再度豪快に笑い飛ばした後、一拍おいた銅鑼声の主は誇らしげに言い放つ

    「ガイア大尉、マッシュ中尉、オルテガ中尉だ!『黒い三連星』推参!
    俺達が来たからには、何人たりとも御前達には指一本触れさせん!」


160 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/16(火) 20:06:34 ID:I57RCGon
    ガウ3番機から滑り出して来たのは三機の黒いモビルスーツだった
    ずんぐりした外観に似合わない俊敏な拳動で砂上を『滑って』ゆく
    全くフォーメーションを崩さないその機動にアムロは眼を見張った

    「待って下さい!敵の動きが止まりました!輸送機が次々着陸してます!
    どうやら地上部隊を降ろすつもりのようです!」

    緊迫のあるアコースの報告にもコズンはあくまで落ち着いていた

    「どうせナントカ式とかいう戦車の類だろう、三連星に任せとけば問題無いんじゃないのか?」


    その時―


    アムロは、脳裏に何か閃くものを感じた

    そして、それは例えるなら強烈な圧力とでもいうものを

    肉眼では見えていない筈の「敵」のいる場所を

    アムロは正確に察知し、睨み付けていた



    「・・・危険な感じがする・・・」
    思わず呟いたアムロの囁きは、隣のセイラに微かに届き
    彼女を振り向かせた

    「違います!戦車じゃありません!」

    なら何だという周囲の視線にアコースは驚愕の叫びで答えた

    「電送写真、送られてきました!
    不鮮明ですが・・・これは・・・ガンダムの群れにしか見えませんぜ!」


178 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/17(水) 02:04:35 ID:sD8NltNq
    「何ですって!?」
    「ガンダムの群れだと!?」

    アムロとラルは同時にアコースに駆け寄る
    アコースから写真を渡されたアムロは目を細めてそれを凝視する
    ラルも体を寄せて覗き込んだ

    「嘘だろ…連邦はもう既にガンダムの量産態勢を整えていたってのか…?」

    クランプの呟きは全員の代弁でもあった
    暫く前にアムロの駆るガンダムの威力をまざまざと見せ付けられているラル隊は
    あの「白い悪魔」とでも形容すべきMSが群れを成して襲い来る姿を想像して
    薄ら寒いものを感じざるを得なかったのである

    「待って下さい、断定はできませんが、これは少なくとも2種類以上のMSが
    混在した部隊のようです」

    アムロの指摘にラルが頷く

    「アムロの言う通りだ。この先頭の三機は確かにガンダムに似ていなくも無い
    が、後方のMSは頭部の形状が捕獲した木馬の赤いMSの方に似ているように思える」

    「もう一枚届きました!」

    アコースが更に写真を渡して来る。今度はやや俯瞰の写真だ。
    敵MS部隊のおおよその全体像が確認できる

    「敵MSは全部で9機…か?こちらの方が判り易いな。ガンダムもどきが3機、その他が6機だ」

    ラルは正確に敵の陣容を分析したが軽いショックは免れなかった

    「少なくとも連邦はMSの量産を始めているという事だ。
    これからの戦闘は、今までの様にはいかんという事か…」

    ラルの横で口には出さなかったがアムロには確信があった


    『特に危険なのは、このガンダムもどきの中でも左端に写っているコイツだ』という事を…


    オール回線になっていたスピーカーからガイアの声が響く

    「驚きだな!まさか連邦のMS部隊とは!だが心配はいらんぞ!俺達が先行して蹴散らしてやる!」

    ブツッと回線を切ったと同時に『黒い三連星』はフォーメーションを組み疾走を始め
    回り込みながら敵を襲撃する動線に乗った様だった。
    6機のザクが3機づつの隊列を組んでそれに続くがスピードが違い過ぎる為、
    『三連星』が突出した格好になっている
    アムロは焦りにも似た何かを感じた

    「ラル大尉!あの人達を援護しましょう!油断すると危険です!」

    「おいアムロ、そりゃガイア大尉達に失礼だ。連邦のヘナチョコ共にやられるもんかよ」

    「コズンさん!僕だってヘナチョコだったんです!
    でもガンダムのお陰でWBを制圧できたじゃないですか!」

    アムロは自分の能力よりも敢えてガンダムの性能の高さを主張した。
    その方がこの場合効果的だと思えたからである

    ぐ…と言葉に詰まるコズン

    ラルは必死の顔で訴えるアムロの進言を軽く見たりはしなかった。傍らのハモンを見る

    「ハモン、後を頼む。我々はこれより『黒い三連星』を援護し、敵を殲滅する!総員出撃だ!!」


199 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/17(水) 20:20:57 ID:CUSkKwOy
    「ラル大尉!僕もガンダムで出ます!」

    「駄目だ、それを許可する訳にはいかん!」

    飛び出しかけていたアムロは
    意外なラルの言葉に踏鞴を踏んだ

    「敵の狙いはガンダムだからな。お前に敵の狙いが集中するのは明白だ」

    ふと優しい眼でアムロを見たラルだったが
    周囲の視線に気が付くと咳払いをして言い直した

    「ガンダムが落とされたら我がジオン軍は折角手に入れた最重要軍事機密を失う事になるからな!
    それだけは何としても避けねばならんのだ!」

    やれやれと一同は首を竦めながら苦笑する
    ハモンも口を押さえてクスクスと笑っていたが、表情を正し、アムロに向き直った

    「それにアムロ、あなたは目立ってはいけません。『ガンダムの正式パイロットは死んだ』のですから・・・」

    心遣いは有り難いと思えたものの、アムロはラルが敵の戦力を
    まだ甘く見ている気がして心配になった。
    しかしそれは己等の実力に裏打ちされた物であるだろう事も理解していた。
    それに、この巌のような武人は一度口にした言葉は決して曲げないだろうとも思え、
    これ以上口を差し挟む事はとりあえず控えた

    「とりあえず今回お前はここで大人しくしてろ
    ラル隊と黒い三連星の共同作戦だ!
    姫様と一緒に大船に乗ったつもりでいればいいぜ!」
    アムロにそう言うなりコズンは親指を立ててブリッジを出てゆく
    ラル隊のメンバーもクランプを残しそれに続く

    急いでアコースが抜けたオペレーター席に滑り込みインカムを装着したセイラは決然と呟いた
    「私も、できる事をやらなくちゃ・・・」

    ラルはハモンとキスを交わしてからアムロを見、きびきびした動作でブリッジを後にしていった

    残されたアムロは―

    無言で手近な席に座ると、おもむろにクランプに渡されたディスクをセットし、
    内容を閲覧しながら分厚いファイルを開いた
    時間は、あまり残されていない様に感じられてならなかった。


200 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/17(水) 20:22:47 ID:CUSkKwOy
    「クランプさん、ここに運ばれて来ているMSで予備扱いの物はありませんか?」
    資料から眼を離さずアムロは聞いた。

    「さっき到着した部隊の中で輸送機が何機かあっただろう?
    あれはラル隊用の補充物資だ。MSも何体かあった筈だ。リストは・・・
    ほれ、これだ」

    投げよこされたリストを空中で受け取り急いで内容を確認するアムロ

    「補充MS・・・あったぞ。MS-06J・・・これはザクか・・・追加装備・・・・・駄目だ、これじゃない・・・
    MS-06Dも駄目だ・・・これじゃ『あの人達』に追いつけない・・・」

    ぶつぶつ呟きながら急いでリストを捲るアムロに興味深そうにハモンが近付く

    「アムロあなた、まさか出撃するつもりなの?」

    「はい。ガンダムは大尉に言われたとおり使いませんけどね」

    眼を上げずに答えるアムロにクランプが面白そうに笑う

    「おい!いきなり実戦はムチャだぞ!まあ、マニュアルをコックピットに持ち込んで
    カンニングしながら操縦するなら話は別だけどな!」
    がははと笑う

    「冗談だ冗談!取り合えず現物を見て来い!まずは慣れる事からだ!」

    「これだ!・・・これなら・・・!はい!クランプさん!行って来ます!」

    パッと顔を輝かせマニュアルを片手にブリッジを飛び出して行くアムロ

    「なんだあ?そんなにジオン製MSに触れるのが嬉しいのかね?」

    不思議そうに苦笑するクランプにセイラがぽつりと語りかける。

    「私、聞いた事があります。
    アムロは・・・サイド7で初めて乗ったガンダムにマニュアルを持ち込み、
    それを見ながらの操縦でザク2機を撃破した事があると」

    火の点いていない煙草がクランプの口からポロリとこぼれ落ちた。


228 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/18(木) 16:50:01 ID:ZLlC4+uo
    「まさかWB隊が敵に奪取されるなんて悪夢だ・・・
    運用してたのはシロウト集団だって噂は本当だったんじゃないだろうな・・・」

    RGM-79[G]・・・通称、陸戦型ジムのコックピットでミケル・ニノリッチ伍長は
    武者震いとは明らかに違う種類の震えを押さえる事が出来ないでいた

    「恐れるなニノリッチ伍長」

    前を行く同型の陸戦型ジムに搭乗したシロー・アマダ少尉から通信が入る。

    「念願のMSに乗れたんじゃないか。慌てずシミュレーション通りにやればいいんだ」

    「で、でも、模擬戦もロクに・・・・それに、本来なら自分達があの機体に乗るはずだったじゃ無いですか?」

    6機のジムを従えるように、大きなコンテナを背負ったガンダムタイプのMSが先導している。
    ミケルは、どう見てもジムより「強そうな」その3機のMSの事を言っているのだ。

    「アンタ何様のつもりだい!より能力の高い者がより良い機体に乗る!
    そんなのは常識だろうが!悔しかったら腕を磨いて実績をあげるんだね!」

    通信に割り込んで来たのはやはり陸戦型ジムに搭乗しているカレン・ジョシュワ曹長だった。
    ミケルの後方に位置している。

    敵の手に落ちたWBとガンダムの奪還。

    シロー少尉の所属する第08MS小隊は、迅速に作戦展開が可能な配備位置的な理由からこの指令を受け、
    それまでの作戦行動を全て破棄してこの地に駆けつけた。
    しかし、直前で他の部隊が合流、本部からの指令により搭乗する予定だったMSを急遽彼の部隊に譲り渡し、
    ワンランクダウンした性能の陸戦型ジムに乗せられる羽目になったのだ。
    MSの性能が生存率を決める以上、ある意味ミケルの憤りは当然とも言えるものであった。

    「任務によって戦場を渡り歩く『第11独立機械化混成部隊』か。
    俺達に配属される筈だったRX-79[G]・・・『陸戦型ガンダム』を攫って行ったその実力を見せてもらうぞ」

    静かな、しかし闘志を秘めてシローは呟いた

    回線は開いておいたので、3機の陸戦型ガンダムにシローの言葉は聞こえている筈だったが返事は無い。

    第11独立機械化混成部隊のリーダーを務める男は、あくまでも寡黙であった。


239 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/19(金) 02:04:03 ID:FY2L//Mn
    「だ…駄目です!敵MSの装甲にはマシンガンが全く効きません!・・・」
    「回り込めません!敵の機動力の方が上です!う、うわああああ!!・・・」
    「下がれ!敵の弾はこちらの胸部装甲すら打ち抜くぞ!・・・」

    断続した爆発音に途切れながら友軍のザクからと思われる悲痛な通信が届く
    味方が次々に撃破されてゆく幻影を振り払う様に、最大戦速で戦場へ急ぐラル隊だった。
    陣容は基本的な3機編成である。ラルがグフ、コズンとアコースがそれぞれザクに搭乗していた。

    「ラル大尉!どうやら味方は苦戦中のようですぜ!」

    「まさかな・・・俄かには信じられん。ガイア大尉達は一体どうしたのだ」

    コズンに答えたラルだったが、敵の戦力を完全に見誤っていた己を悔いていた。
    何しろこちらは手練れのラル隊と黒い三連星なのだ。
    例えどんなに敵MSの性能が高かろうと、練度の高い二隊が連携して攻撃すれば
    如何なる相手であろうと恐るるに足らない筈だったのだ。
    しかし今やジオン側の戦線は伸び切ってしまっており、出遅れたラル隊の位置からでは
    連携はおろか、各個撃破されているであろう仲間を助けに行く事もできない有様だ。
    戦場に到着するにはまだ数分掛かるだろう。恐らくその間に戦況は刻一刻と悪化してゆく。

    悔やみ切れないミスだった。この惨状の原因は全て自分にある。
    ラルは、ぎりりと奥歯を噛んだ。まさにその時・・・

    「ラル大尉!後方から接近中の友軍MSあり!す、凄いスピードです!」

    アコースは驚いていた。この砂上をこんな速さで移動できるMSは新型のドムしか無い。
    しかし、ドムは今回の作戦には「黒い三連星」の物しか搬入されていない筈だった。

    「何だと!一体誰が乗っているのだ!?まさかクランプか!」
    口には出したものの、そんな筈は無いという事は判りきっていた。
    あのクランプが無断で持ち場を離れる訳が無いのだ。

    「識別信号確認!コードは…MS-07H-2!これは、グフ飛行試験型と呼ばれる実験機です!
    データ送ります!」

    「実験機だと!?何故そんな物がここにいるのだ!?」

    「どうやら『グフやドム用のパーツ取り』が目的で今回の補給物資の中に紛れ込んでいたみたいです!」

    アコース機から送られて来たデータをモニターで確認しながらラルは唸った。
    脚部に強力な熱核ジェットエンジンを搭載し半ば強引に地面を滑空移動する、ドムの原型となったMS。
    確かに推力は高いものの、確認できる武装は両腕のマニュピレーターに装備された非力なマシンガンしか無い。
    こんな物で戦場に出るのは自殺行為だ。

    ラルの不審は消えなかったが
    みるみる迫って来た実験用MSは瞬く間にラルの駆るグフに並び、スピードを合わせて並走機動に入った。

    「ラル大尉!僕は一足先に友軍の援護に向かいます!」

    「アムロ!?それに乗っているのはアムロなのか!」

    スピーカーから聞こえて来た若々しい声は、ラル隊の面々を驚愕させるに相応しいものだった。


252 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/19(金) 19:21:56 ID:n2VhveEm
    「クランプさんに渡されたファイルの中に
    こいつの資料があったんです!ぶっつけですが、やれます!」

    「信じられねえ・・・お前本当にジオンのMS扱うの、初めてなのか!?」

    コズンの驚きは無理のないものだった。
    MS-07H-2は、クセの強いジオンのMSの中でも更にクセの強い「滑空移動系」の、
    しかも出力不安定な「実験機」なのだ。
    マニュアル操縦の場合、まるでスリックカートの様な動きを出力調整と
    二軸の体重移動でこなさなければ思った方向への移動もままならず
    相当に熟達しなければ実戦で敵へ攻撃を命中させる事など論外だろう。

    しかし、アムロが駆る目の前のMSはどうだ。

    不安定さなど微塵も感じさせないその拳動、時おり左右にリズミカルに機体を振る仕草は
    慣れないMSに乗り込んだ際、無意識の内に機体のクセを掴もうとするベテランパイロットに良く見られる行動だった。

    『こいつ・・・何てえ操縦センスしてやがるんだ・・・!』

    心の中で呟いたコズンはアムロの底知れぬ才能に舌を巻いた。

    アムロは一瞬、提案をラルに却下される事を案じたが、ラルは鋭い眼をアムロに向けて大きく頷いた。

    「うむ!頼んだぞアムロ!ワシ達もすぐ駆け付ける。なるべく敵を撹乱して時間を稼ぐのだ!
    判っていると思うが敵の正面には立つなよ?足を止めてはならんぞ!」

    「信頼して頂いてありがとうございますラル大尉!行きます!」
    晴れ晴れとしたアムロの声が響く

    ドン!という加速音を残すと、砂塵を舞い上げてアムロのグフは最大速度で戦場に向かう。

    小さくなってゆくその後姿にラルは何か呟いた様だったが
    砂塵にかき消されて誰の耳にも届かなかった。


274 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/20(土) 14:00:28 ID:3mOuIJDj
    ラル隊と離れ戦場に急ぐアムロは前方にくず折れているザクの残骸を発見して驚いた。
    前方に戦線が展開しているものの、まだ遥かにザクの射程には入らない距離だ。
    追い抜きざまに確認すると、胴体部分に貫通銃痕が見て取れる。恐らくパイロットは即死だっただろう。

    「長射程の武器で砲撃されたのか・・・!」

    「砲撃」では無く「狙撃」に近い運用をされている事に、まだ見ぬ敵の高い技量を感じ取る事ができた。
    しかも撃破されたのはブレード・アンテナ装備のザク中隊長機。
    指揮系統を乱された小隊はあわてて散開した筈だ。恐らくそのまま個別に敵陣営に突っ込んでしまい
    狙い済ました連邦軍による攻撃に晒されていると思われた。

    まず機動力の高い黒い三連星が先行し、敵の背面か側面を突く為に大きく迂回しながら接近する。
    その間にザク2部隊の6機が敵の正面に展開、敵の目を引き付けながら三連星の到着する時間を稼ぎ、
    敵の死角から現れた三連星が強襲に成功すると同時にザク部隊も突入、一気に制圧する。

    ・・・恐らくそういった作戦だったのではないかとアムロは思った。
    しかし、敵のMSの性能と、それを扱うパイロットの技量はその目論見をずたずたに引き裂いた。

    たぶん「あいつ」がやったのだ。

    やはりアムロには確信めいたものがあった。
    電送写真のガンダムもどきの中で「左端に写っていた、あいつ」・・・

    戦闘音が外部集音マイクからではなく直接コックピットに響く振動でそれと判った。
    アムロは静かに、そして自然に心が研ぎ澄まされてゆくのを感じていた。

    MS-07H-2は、遂に戦場に辿り付いたのである。


985 :>>281修正版:2009/01/04(日) 19:53:51 ID:???
    ジオンのMSより遥かに性能の良い索敵レーダーを装備した陸戦型ガンダムは
    ミノフスキー粒子をものともせずジオン迎撃部隊の展開をいち早く察知すると
    僚機のジムを率いて手近な岩場に拠点を構え、
    行軍して来るザクに対して180mmキャノン砲による遠距離攻撃を行った。
    3体の陸戦型ガンダムはそれぞれ別の標的に対して一斉に砲撃したものの、
    命中したのは隊長を務めるカジマ・ユウ機のものだけであった。
    しかし完全に機先を制した形に持ち込んだ連邦軍は、有利に戦闘を進める事に成功していたのである。

    部隊の前衛を勤めるジム隊のミケルは陸戦型ジムの性能に有頂天だった。
    なにしろ、敵のマシンガン攻撃はこちらに一切通用しないのだ
    対してこちらの攻撃はザクの装甲を紙のように易々と打ち抜いてゆく
    浮き足立った敵はミケルの攻撃をロクに回避する事もできず撃破されて行くのだった。

    「はははは!見たかジオンめ!隊長!やれますよ!このジム、凄い性能だ!」

    「浮かれるな!シールドをちゃんと構えろニノリッチ伍長!
    油断しすぎだぞ!」

    シローが叫ぶがミケルは構わず体勢を立てたままマシンガンを連射する
    左足が利かなくなり、尻餅をついた状態で必死で後ずさりするザクを完全に葬るつもりなのだ。

    「やめろミケル!奴はもう戦闘不能だ!無駄に兵士の命を奪う必要は無い!」

    「甘いんですよ少尉!ジオンめ!ジオンめ!ジオ・・・!」

    ドガッ!!

    「!!」

    その瞬間、ミケルの乗るジムの頭部が吹き飛び
    頭の無いMSの胴体は
    糸の切れた操り人形の様に
    それを見つめるシローの搭乗するジムの脇に
    まるでスローモーションの様にゆっくりと崩れ落ちた。


292 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/20(土) 20:21:10 ID:3mOuIJDj
    連邦軍側面から怒涛の勢いで迫って来たのは3機のMS
    その先頭を走る1機がミケル機を狙撃したのだった。

    「貴様ら!好き放題やってくれた様だな・・・!」

    ガイア大尉が押し殺したように唸る
    彼の駆るドムの単眼が、ゆらりと殺気を放つ
    その手には、白煙をたなびかせるバズーカが握られていた。

    想定していた作戦は大幅に狂った――
    敵の側面を突く目的で本体と離れ迂回していた三連星は
    同じ様に陸戦型ガンダム率いる本体を離れて
    密かにWBを直接攻撃する為に進軍していた3機の陸戦型ジムと鉢合わせしてしまったのだ。

    いかに性能が高い陸戦型ジムといえど三連星には敵うはずもなく
    ガイア達は全ての敵を撃破する事に成功はしたものの大幅に時間をロスしてしまった。
    その結果が・・・

    累々と転がるザクの残骸にそれぞれ苦渋の表情で黙祷を捧げると
    ガイアの合図で三連星は疾風の様に散開した

    「やるぞマッシュ!オルテガ!奴等を全員地獄の底へ叩き込め!
    一人も生きて帰すな!!」

    怒り狂う死神の群れ

    今の黒い三連星を形容するのにこれ程相応しい言葉は無かった。


310 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/21(日) 13:55:25 ID:UpgBPAQ8
    散開しながらガイア・オルテガ・マッシュ機は手近なジム目掛けて
    全く同じタイミングでバズーカを放った。

    それぞれが異なる方向へ高速で移動しながらの同時同位置集中攻撃である。
    避ける事など殆ど不可能であった。

    ターゲットとなったカレン機はミサイルランチャーを構えた右腕と
    コックピットをガードしてシールドを構えていた左腕、
    重心を掛けていた右足にそれぞれ被弾。
    片手片足の状態となり、もんどりうって大地に倒れ伏した。

    尋常なコンビネーションでは無い

    一蹴のうちに撃破されたジムを目の当たりにしたシローは
    冷たい汗が背中を伝うのが判った。
    マシンガンの銃口を敵MSに向けようとするのだが
    巧みに照準をずらされ引き金を引く事もできない。

    「マッシュ!オルテガ!ジェット・ストリーム・アタックを掛けるぞ!」

    ガイアの指示で集結した3機のドムは、離合集散を繰り返す様な
    不規則なフォーメーションで幻惑しながらシローの乗る陸戦型ジムに迫る。

    圧倒的な恐怖に抗いながらマシンガンを連射するシローだったが
    ザクは貫けたはずの弾丸がこの黒いMSには通用しない

    ドムの手にするバズーカが自分を照準に捕らえた事を感じたシローは瞬間マシンガンを捨て、
    体勢を低くしシールドを両手で構える完全防御姿勢を取った。

    一瞬後

    物凄い衝撃がコックピット内のシローを激しく揺さぶる!

    正確に敵のバズーカ弾がジムの構えるシールドの真ん中に命中したに違いなかった。
    歯を食いしばって耐えるシローの視界の隅で、1機のドムが離脱して行くのが見えた。

    更に衝撃が彼を襲う!

    恐らくは先程とほぼ同じ地点に二発目のバズーカ弾が着弾したのだろう
    シールドの一部が破損し捲れ上がっている。
    意識が朦朧となったシローは
    2機目のドムが離脱して行くのを他人事の様に見ていた

    そして3回目の衝撃!

    また同じ場所へのバズーカの一撃!
    シールドを装備した左腕とシローの意識は完全に消し飛び
    体ごと吹き飛ばされた陸戦型ジムは後方の岩場に叩き付けられ
    そのまま動かなくなった。

    トドメを刺そうと動かないジムに狙いを付けたガイアは
    後方から接近して来る3機の新たな連邦のMSを察知すると
    マッシュ、オルテガと共に体勢を立て直す為に一旦後方に下がった。


332 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/21(日) 20:08:28 ID:UpgBPAQ8
    ヒュウッというフィリップの口笛がコックピット内に響く。

    「参ったね、こりゃ。照合データ見てみなお二人さん!
    あいつら多分、レビル将軍をひっ捕らえた事もあるってえ「黒い三連星」だぜえ」

    「MSは新型ですね。データにはありません。しかし機体のカラーリングや
    先程の見事なフォーメーション攻撃を考慮するに、その推測は殆んど間違い無いでしょう」

    陸戦型ガンダム2番機に搭乗するフィリップ・ヒューズ少尉からの通信を
    同3番機を操るサマナ・フュリス准尉が緊張した声音で受ける。

    「大物が掛かったぜユウ!いっちょやったりますか!」

    「・・・」

    しかし、フイリップに話を振られた「第11独立機械化混成部隊」
    通称「モルモット隊」のリーダー、陸戦型ガンダム1番機に搭乗するカジマ・ユウ少尉は無言でそれに答える。
    この男は実に寡黙なのであった。

    「やれやれ・・・頼りにしてるぜ、ユウ!サマナちゃんもな!
    早いとこ終わらして基地近くのオネーちゃんがいるあの店で!
    もーあんな事やらこんな事やら・・・」

    「・・・フイリップさん。あなたには心底がっかりです」

    いつものやり取りにそれぞれの緊張がほぐれてゆく。
    これがこのチームのウォーミングアップ方法なのだった。

    軽口を叩きながらも3体はスピードを上げ散開してゆく
    それぞれの役割を完全に把握している3人は、
    誰の指示もなく速やかに所定のポジションを取る事が出来た。
    そしてそれは敵にとって戦闘状況によって変幻自在に形を変えてゆく「罠」と化すのだ。

    黒い三連星が「動」ならば
    彼らは「静」のフォーメーション攻撃を得意としていたと言えるだろう。
    前衛にシールドを構えたフィリップ機とサマナ機。後方に少し離れてユウ機。
    まず彼らはそう配置した。

    この布陣が敵の出方によって千変万化に姿を変える。
    加えて、こちらのMSは強力、高性能な陸戦型ガンダムである。
    そしてなんと言っても、こちらにはユウがいる。
    あの寡黙な男の非凡なる戦闘技術は、間近にいる自分が一番良く知っている。
    掛け値なしに連邦でNO.1の実力の持ち主だろう。
    後方に下がったドム3機が反転し、こちらに向かって来るのが見える。
    フィリップはちらとモニターで後方のユウ機を見やり、
    「頼りにしてるぜ」ともう一度呟いた。


346 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/22(月) 05:13:50 ID:Wja3Xcu+
    「マッシュ!オルテガ!あの白い奴らを叩くぞ!まずはフォーメーションBで行く!
    前衛の右端の奴だ、抜かるなよ!」

    「おう!」

    「了解だ!」

    ガイアの指示に二人が答え、3体のドムは突入姿勢を取った。
    陸戦型ガンダム3機も迎撃の構えで待ち受けている

    6体の巨人が生と死の狭間を越えようとしたその時
    右手に内蔵されたバルカン砲を敵陣に撃ち散らしながら、ドムに倍するスピードで
    ドムの進入経路に右斜め後方から強引に割り込んで来た見慣れないMSがあった。
    虚を突かれた「黒い三連星」は想定していたフォーメーションを放棄し
    散開して敵から距離を取らざるを得なかった。

    「な、何だ貴様!どういうつもりだ!」

    ガイアの怒号が飛ぶ。
    味方の攻撃を故意に妨害。到底許される事ではない。軍法会議物だ。
    いやそれ以前に、大事な攻撃のタイミングを逸してしまったのだ。
    この戦闘が終わったら俺がこの手で八つ裂きにしてやる。

    「お叱りなら後で受けます!」

    スピーカーから聞こえて来た若々しい声に
    怒髪天を突く勢いだったガイアは少々毒気を抜かれた。
    反転して来たMSはガイアのドムの横に並ぶ。

    「失礼しました!ガイア大尉!ランバ・ラル隊のアムロ・レイです!
    突入はもう少し待って下さい!あと数分でラル大尉達が到着するんです!
    それを待って連携攻撃を掛けた方が…」

    「必要ないぜ!」

    いらいらした様にオルテガが通信に割り込んだ

    「そうだ!あんな奴ら俺達だけで充分だ!
    他の奴らの手助けなんざいらねえんだよ!むしろ邪魔だ!」

    マッシュも続ける。

    「そういう訳だ若いの!今度俺達の邪魔をすれば貴様も撃つ!いいな!?
    マッシュ!オルテガ!もう一度やるぞ!ジェット・ストリーム・アタック!右の奴だ!」
    散開した三連星は再度突入の構えを見せる

    駄目だ・・・!さっきのフォーメーション攻撃は「あいつ」に一度見られている!

    そう、シローとガイア達の攻防の一部始終を、アムロは先程目撃していたのだ。
    間違いなく「あいつ」は相応の対処をして来る筈だ。このままではガイア大尉達が危ない
    直感でそう感じたアムロは捨て身で三連星の前に割り込んだのだった。

    しかし、青二才の自分ではこの誇り高い人達を止める事はできない
    アムロは悔しかった。自分を信頼して送り出してくれたラルの顔が浮かぶ。
    三連星以外のザク達は全滅した。自分は間に合わなかったのだ

    これ以上、犠牲者を出してたまるものか

    アムロは決意を凝縮させた面持ちで、三連星の後を追った。


403 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/23(火) 20:02:36 ID:SAO9R3tv
    「黒い三連星」は再度、ジェット・ストリーム・アタックのフォーメーションに入った。
    3機のドムはそれぞれが敵を幻惑する不規則な軌道で陸戦型ガンダムに迫って行く。

    先頭のガイアはちらとバックモニターを見やった。
    さっきの目障りなMSはどこにも見当たらず、後方にはマッシュ機とオルテガ機の姿しかない。
    「フン、シッポを巻いてラルの所に帰ったか・・・」
    軽く息を吐き出したガイアは
    自分達の攻撃を邪魔する存在が今度こそ周囲にいない事を改めて確認すると
    敵に視線を据え直した。


    しかし――


    その時、列の最後尾のオルテガは戦慄していたのである。
    全身の冷たい汗を抑えることができない。

    彼の駆るドムの真後ろに 奴 はいたのだ!

    姿勢を低くしたそのMSは
    影の様にぴたりと前を行くオルテガのドムに張り付き
    オルテガ機の複雑な動きを正確にトレースし続けているのだった。
    イレギュラーな拳動を入れてもみたが全く振り切る事ができない。
    『ここまで俺の動きに付いて来るとは・・・!』
    MS乗りにとって「後ろを取られる」とはこういう事だ。
    オルテガが得体の知れない恐怖を覚えるのは当然だと言えただろう。
    しかもそのポジションは完全に正面、つまり敵の位置から見ると
    オルテガ機に隠れる死角になる様に計算され尽くしている位置取りに違いなかった。
    『こいつ、何者だ、一体何をやろうとしてやがる!?』
    恐怖を抑えきれず叫び出したくなる衝動を必死に耐えていたオルテガは
    遂にガイア機が敵に向けてバズーカを発射した事で我に返った。
    マッシュ機も敵に狙いを付け終えている。マッシュの次は自分の番だ。

    「貴様が何を企んでいるのか知らんが、俺は俺のやるべき事をやるだけだ!
    邪魔だけはするなよ!」

    「了解!」

    短い 奴 からの返事を聞くと同時にオルテガのドムは攻撃態勢を取った。


404 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/23(火) 20:09:25 ID:SAO9R3tv
    迫り来る3機のドムをユウは冷静な目で見ていた。
    敵の変則フォーメーションは既に見切っている。
    もうその戦法は俺達「モルモット隊」には通用しない。
    その認識はフィリップとサマナも共通している。
    ユウの目がすっと細まった。


    計画通り仕留めるだけだ


    ガイアのドムがバズーカを放った

    あらかじめ構えられたシールドで、前衛のサマナ機がそれを受けると同時に
    素早く側後方に下がりつつ、離脱して行くガイア機に向けてマシンガンを掃射する。
    敵を倒す為の攻撃では無い。これは牽制なのだ。

    続いてマッシュ機がバズーカを発射する

    位置をチェンジしていたフィリップ機がきっちりとシールドでそれを受け、後方のユウ機を守る。
    フィリップは離脱して行くマッシュ機を追わない。
    もう一撃に備える為だ。

    ・・・≪次≫を落とす!!

    体勢を低くしてシールドを構えたフィリップ機に隠れるようにしていたユウ機は
    滑るように右側方に移動し身を起こした


    その時オルテガには
    後方に位置している筈の敵MSが別位置に忽然と現れた様に見えた
    そいつが両腕で構えるロングライフルの銃口が
    正確に自分の駆るドムのコックピットに狙いを付けている

    ドムのバズーカの照準はそいつには向けていない

    駄目だ やられる

    オルテガの脳裏に一瞬、ガイアとマッシュへの謝罪の言葉が浮かんだその時

    「させるか!」

    裂迫の気合と共に、アムロの駆る飛行試験型グフは
    爆発音の様な轟音を響かせドムの影から稲妻の様に飛び出した。


407 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/23(火) 20:12:46 ID:SAO9R3tv
    「・・・!!」

    ユウには一瞬何が起こったのか理解できなかった
    まるで敵MSが分身でもしたかの様に見えたのだ
    しかし彼は瞬時に自分を取り戻す。
    彼の冷静な状況判断は、予定していた敵への攻撃を中止し、
    新たに現れた敵に備える為にロングライフルを捨てる事を選択させた。

    最大推力で弾丸の様に飛び出したアムロは
    ホバー移動特有のカーブを掛けたループステップで陸戦型ガンダムに肉薄しながら
    両腕のバルカン砲を敵の抱えるロングライフルへと集中させる。

    陸戦型ガンダムがライフルを手放した瞬間、それはアムロの攻撃によって
    誘爆するのだった。

    「こいつ!やるな!」

    「・・・!」

    お互いが、お互いの力量を知った瞬間だった


    「ちいぃっ!」
    アムロの目論見は外れてしまった。
    大型ライフルの弾倉を誘爆させれば、それを持った敵のマニュピレーターに
    相当のダメージが与えられるだろうと踏んでいたのだ。
    手持ちの武器が使えないとなれば、敵の攻撃方法の幅は狭まるだろう。
    だが敵はあっさりと大事なはずの武器を捨ててしまった
    多分、接近戦には不利だからという単純な理由で。

    咄嗟にそう判断し実行に移せるなんて・・・!
    やはりこいつは只者では無かったのだとアムロは思う。

    ロングライフルを捨てた「ガンダムもどき」はビームサーベルを抜き
    こちらを迎撃する姿勢を取っている

    飛行試験型グフに装備された武器は両腕のバルカン砲しか無い
    これで敵MSの装甲を貫く事は不可能だと思える。

    しかし側面をアムロに抜かれた敵前衛の2機はまだこちらに対応できていない
    チャンスは今しか無いのだ。

    「ならば!もっと近付いてやる!」

    アムロは更に強く、フットペダルを踏み込んだ
    テスト機の為、推力だけはドムに倍するポテンシャルを持つエンジンが
    爆発音に似た轟音をあげてそれに答えた。


430 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/24(水) 19:44:56 ID:Dfr+XRYN
    武器の威力が足りないのならば、その分接近して敵の弱点を衝けばいい
    アムロの思考はシンプルであった。このMSならばそれが出来るはずだと。

    無手の飛行試験型グフとビームサーベルを構えた陸戦型ガンダムが交錯する!

    アムロは「ガンダムもどき」が繰り出すビームサーベルの切っ先を
    右足を軸にして体ごと回転するバックスクラッチスピンで回避し
    さらに半回転する事で完全に敵MSの後ろを取る事に成功した。

    回転中に伸ばした右手のマシンガンは「ガンダムもどき」の後頭部にぴたりと
    狙いを付けている。

    この距離ならば、威力の弱いバルカンといえど、無事では済むまい

    勝った!とアムロは心の中で快采を叫んだ
    青二才の僕と、この不完全な試験型MSがこの強敵をやったのだ
    これでラル大尉達は、僕を認めてくれるだろうか?

    勝利を確信したその時

    バルカン砲のトリガーを引き絞る寸前のアムロを襲ったのは
    ユウの駆る陸戦型ガンダムによってアムロの乗る飛行試験型グフに加えられた、
    ありえない方向からの一撃だった!


469 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/25(木) 16:45:03 ID:mW+N8iPU
    まるで大きなハンマーで打ち据えられたかの様に
    飛行試験型グフの後頭部はひしゃげ、モノアイのターレット部分は破損した

    メインモニターがブラックアウトする

    激しい衝撃に思わず悲鳴を上げたアムロだったが、
    弾き飛ばされて不規則に回転が掛かり、倒れそうになった状態の飛行試験型グフの体勢を
    右腕を地面に突き刺す事で軸とし、体の流れるベクトルを強引に調整した後
    腕を引き抜くと同時にホバーを全開に吹かしその場所から急激に離脱する事で
    間一髪、陸戦型ガンダムの射程距離から逃れる事ができた。

    更に距離を取る。体の震えが止まらない。
    サイドモニターに急速に離れてゆく「ガンダムもどき」の姿が映っている
    見ると背負った大きなコンテナから長いアーム状の物が真横に張り出し
    その先端の弾倉がつぶれているのが確認できた。アーム全体も歪んでしまっており
    収納する事が出来ない様だった。衝撃の大きさを物語っている。
    先程、アムロの飛行試験型グフをほぼ真後ろから襲った衝撃は
    「それ」によるものに違いなかった。

    「マシンガンの自動装填装置か・・・!」

    アムロの驚くのも無理はない
    完全に後ろを取られたユウは、真後ろにいる敵に「振り向く」愚を犯さず
    咄嗟にマシンガン用のマガジン装填装置である≪Bコンテナ≫を作動させたのだった。
    急速装填が可能な≪Bコンテナ≫のアーム部分は素早く展開し大振りなマガジンを横に振り出す。
    更に陸戦型ガンダムの体に捻りを掛ける事でマガジンは恐るべき打撃武器と化し
    想定外の角度からアムロのグフを打ち据えたのだった。

    荒い息をつき
    サブカメラの映像をメインモニターに切り替えながらアムロはひとり語ちた

    「なんて奴だ・・・シャアとは違う感じだが・・・強いな・・・」

    恐らく右手のマシンガンはもう砂が入っていて使えないだろう。
    無理をさせすぎたエンジンの稼働時間も残り僅かだ
    アムロはあの強敵にどう立ち向かえばいいのだろうと考え
    ふと、自分の心がまだ折れていない事に少しだけ胸を張った。


490 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/26(金) 17:15:02 ID:Z21hEg5r
    「大丈夫か!?やばかったなユウ!すまん!完全に抜かれちまってよ!」

    フィリップの陸戦型ガンダム2番機が大急ぎで駆け寄ってきた

    「で、でも流石ユウさんです!見事に撃退しましたね!」

    サマナ機もそれに続く。が、緊張は抜けない。
    先程のアムロとユウの攻防は、一瞬だったがそれ程凄まじいものだった。

    「・・・運が良かっただけだ」

    ユウがぶっきら棒に口を開いた
    同時に深く息を吐き出す。表情からうかがい知る事は出来ないが
    彼の体も冷や汗にまみれていたのである。

    紙一重の勝負だった。

    あの時倒れていたのは自分だったとしても何の不思議も無かった
    それ程「奴」は強かったのだ。
    使い物にならなくなった≪Bコンテナ≫を切り離しながらユウは思う

    ――もし奴が俺と同等の性能を持つMSに乗っていたら――

    果たして勝てただろうか、と。

    「新たに敵MSの増援と思われる機影が急速に接近中!3機です!」
    「やべえな、ちょっとばかし雲行きが怪しくなってきたぜ」

    サマナの報告にフィリップが心持ち真面目な声で答える
    無傷の黒いMS3機とさっきのすばしっこい奴が1機
    そして増援のMSが3機で7対3か。
    こちらの弾薬はもう心もとないし・・・
    チラリと3機の動かない陸戦型ジムを見る

    「要救助者もいるみたいだしな」

    彼にももう無駄口を叩いている余裕は無い様だった。
    ユウは迷わず上空に向けて一発の砲弾を放つ。

    砲弾は高空で爆散し、色付きの粉塵を撒き散らした。


    「信号弾!確認しました! 【作戦中断・一時撤退】です!
    ガンタンク隊は直ちに援護射撃を開始してください!」

    ミデア改の窓から双眼鏡でそれを確認したモーリン・キタムラ伍長は、
    急いで眼下に展開している部隊に指示を出した。
    それを受け、中空にて戦場の動向を逐一監視していた支援ヘリからの
    レーザー通信により座標を固定したガンタンク部隊は、
    速やかに120ミリキャノン砲による一斉砲撃を開始したのである。


491 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/26(金) 17:18:12 ID:Z21hEg5r
    戦場は大混乱に陥っていた

    いきなり敵の後方から激しい砲撃が始まったのだ。
    それは、「ガンダムもどき」の陣取っている岩場に敵を近づけさせないように
    見事に計算され尽くした長距離援護攻撃だった。

    「そこの若造!貴様も下がれ!早く下がるんだ!」

    砲弾が降り注ぐ中オルテガが叫ぶが
    途切れる事の無い轟音に遮られ、アムロの耳には届かない。

    アムロの飛行試験型グフは、片足を破損し動けなくなった僚機のザクを
    必死に引き摺り戦場から離れ様としていた
    ジェットホバーをOFFにして、2足歩行での移動である。
    重い物を引っ張る時はこちらの方が都合がいいのだ。
    しかしその足取りはオルテガからは亀の様に遅く見えた。

    「何やってんだ!残骸なんか放っておけ!」

    もどかしくオルテガのドムはアムロ機に近付き接触回線で怒鳴り散らした
    確かに一体分のザクを敵に鹵獲されるのは痛いが、今はそんな場合じゃなかろう。

    「中に生存者がいるんです!ハッチが破損して開ききらないから脱出できないみたいです!」

    見ると、確かに半分ほど開いたハッチから兵士が弱々しく手を振っている
    思わずアムロ機の破損した横顔を振り仰ぐオルテガ

    『こいつ、この砲弾の雨の中、自分はこんな状態のクセに逃げ出す事をせず、
    踏み止まって仲間を助けようとしてやがるのか・・・!』

    最近、甘ったれた新兵が多い事を嘆いていたオルテガは、自分の認識を
    少しだけ上書きすると共に、ツンとした物を不覚にも鼻の奥に感じた。

    「何をしているオルテガ!」

    敵の砲撃が始まると同時に着弾範囲から離脱していたガイアとマッシュが戻って来た
    もたついている若造など放っておけば良い。
    彼らチームは基本的にチームの事意外は無関心だった。それが彼らの流儀だったのである。
    しかしそれに反してオルテガが叫んだ

    「ぐずぐずするな!この若造に手を貸せ!仲間を助けるんだ!」

    ガイアとマッシュは顔を見合わせ呆気にとられた。
    砲撃は依然止まず、近くに着弾した砲弾に撒き散らされた砂粒が、
    激しく降り注いでドムを打った。


553 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/27(土) 17:05:59 ID:oR8om7yF
    ラルが到着した時、全ては終わっていた。
    嵐の様な砲撃が止むと敵の「ガンダムもどき」は敵生存者を回収して既に撤退を完了しており
    敵の輸送機もこちらの追撃を牽制しながら索敵範囲から離脱していったのである。

    結局この局地戦は壮絶な痛み分けで幕を閉じたのだった。

    アムロの搭乗する飛行試験型グフは、帰路においてノズルの砂詰まりと
    電気系統の不具合からまともに歩行する事が不可能になり
    アコースとコズンのザクに両脇から抱えられながらほうほうの体で帰還する有様だった。
    ラルのグフはアムロがぽつぽつと語る経過報告を雑音混じりの通信でじっと聞きながら
    無言で一行のシンガリを勤め、決して後方への警戒を怠らなかったのである。


555 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/27(土) 17:08:26 ID:oR8om7yF
    一行がWBに辿り着いた時には既に日が暮れ、夜の帳が下りていた。

    コズンに支えられるようにブリッジに戻ったアムロは流石に疲れ切っていた。
    力なくシートに腰を下ろすと同時に目を閉じる。体がまるで鉛の様に重い。頭の奥がジンジンする。

    「お、おい、大丈夫なのかよ・・・」

    ぐったりしたアムロを見てコズンがおろおろ心配そうに周囲を見回し声を掛ける。
    もう顔を上げる事も辛かったが、アムロはふと両の頬を両手の掌で包まれた気配を感じて薄く目を開いた。
    目の前あったのは眉根を寄せたハモンの顔だった。彼女はそのままそっと自分の額をアムロの額に付ける。
    アムロは心臓が爆発しそうになった。頭も朦朧としたまま何だか思考がまとまらない。
    これは戦闘終了後の疲れから来る一時的な興奮と混乱なのだろうか?

    「少し熱があるようですわ、あなた」

    ラルを振り向いた彼女は
    少しだけ厳しい声音と表情で告げた。

    「無理も無い。初めて乗った不完全なMSで実戦を戦い抜いたのだからな」

    腕組みしたラルが重々しく答える。
    彼の心にはいまだに悔恨があった。この少年に、ここまでギリギリの戦いを強いてしまったのは自分の責任なのだと。

    本来は自分達が果たすべき事を、この年端も行かない少年に全てやらせてしまった。
    ――情け無い――
    それはこの場にいるランバ・ラル隊全ての認識だったのである。

    「だ、大丈夫ですよ、このくらい何でも・・・」

    「ハモンさん。後は私が。医療関係の仕事に就いていた事があります」

    慌ててアムロが言いかけるが、それを許さず横からセイラがアムロの介護を申し出た。
    ハモンはしばらくセイラの顔を見つめていたが、なぜか可笑しそうにクスリと笑い
    宜しくお願いします姫様と軽く一礼してアムロの側を離れたのだった。

    「・・・ごほん。いやしかし、アムロ!お前は凄えな!
    本当にジオンのMSに乗ったのは初めてなのかあ?なあ、ウソでしたって言えよ!」

    アムロの頭をくしゃくしゃにかき回して陽気に茶化すコズンにクランプが乗っかる

    「全くだ。輸送機からあのMSが出て来たときゃたまげたぜ!
    そのまますっ飛んでいっちまうしよ!これじゃ『黒い三連星』も形無しだってな!」

    一同のひときわ大きな歓声と笑い声がブリッジにあがるが

    「誰がぁ!!」

    雷鳴の様な一喝に、ブリッジの空気は凍りついた

    「・・・形無しだと!?」

    殺気を孕んでブリッジの入り口に立っていたのは
    ガイア・マッシュ・オルテガの三人組。

    くだんの「黒い三連星」であった。


586 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/28(日) 02:16:47 ID:IW4/DbJ/
    「アムロってのはそいつか!?」

    怒気を孕んだ声でのしのしとオルテガがアムロに近付いてくる。凄い威圧感だ
    『お叱りなら後で受けます!』・・・
    あの時確かにアムロは彼らに向けてそう言ってしまっていた

    思わず立ち上がったアムロだったが、ゆらりとコズンとクランプが両脇から
    アムロの前に進み出た。ちょうどオルテガの行く手を阻んだ格好になっている。

    「何だ貴様ら!?どけ!!」

    オルテガが怒鳴り散らすが
    二人は飄々とした態度を一向に崩さない

    「すいませんね中尉、ここは動けないんでさあ」

    耳をほじりながらコズンがかったるそうに答える
    クランプも愛想笑いを浮かべながら口を開く

    「ウチのルーキーはちょいとヤワでしてね。
    中尉にちょっとナデられただけでもサイド3までふっ飛ばされかねないんですよ」

    口調は軽いがクランプの目は笑っていない。

    「貴様ら・・・上官に逆らうつもりか・・・!?」

    オルテガの顔が怒りのあまり赤黒く変色してゆく
    ガイアとマッシュの顔にも殺気じみた物が現れ始めた

    「オルテガ中尉、そしてガイア大尉、マッシュ中尉」

    落ち着いた声でラルが後方から声を掛けた

    「部下の非礼はワシが詫びる。・・・この通りだ」

    自分の為に深々と3人に頭を下げるラルを見て
    アムロはいたたまれなくなり前に出ようとするが、クランプに押さえられて動く事ができない

    「ラル大尉!大尉がその人達に頭を下げる必要なんてありませんよ!
    悪いのは僕なんですから!僕が、自分で責任を取ります!」

    「黙れ小僧ォ!!ワシはお前に自惚れるなと言った筈だ!!」

    「・・・!!」

    もどかしく叫んだアムロにラルは頭を垂れたまま横目で一喝する。体が硬直するアムロ。
    WB制圧の時の記憶がまざまざと思い出された。あの時も、僕は・・・

    「大尉の言うとおりだ。ここは俺達に任せて下がってな」

    クランプが囁きながらアムロの体を後ろに押しやり、オルテガに向き直った。
    この人達は強靭な肉体と精神力を以って、僕を守ってくれている
    それに比べて守られているだけの弱々しい自分は何だ
    MSに乗っていないリアルな自分はこうも無力だったのだ
    アムロは自分の中のややもすると増長しかけていた部分が粉々に砕けて行くのを感じていた。


637 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/29(月) 04:33:15 ID:l64a7upi
    黒い三連星と彼らを取り囲むランバ・ラル隊。互いに睨み合いまさに一触即発といえた。

    空気中の何かが今にも粉塵爆発でも起こしそうな緊張感に満ちている。
    たぶん無意識のうちにであろう、セイラがアムロの腕をぎゅっと掴んだ。
    だが、その雰囲気を一瞬にして吹き払ったのは、豪快なガイア大尉の爆笑だった

    「わはははは!もういいだろうオルテガ!それ以上若造をビビらすな!」

    「い、いや、俺は別に・・・!」

    腹を抱えて笑うガイアとマッシュ相手にオルテガは必死で弁解を試みるが
    かなりの口下手らしく、なかなかうまく言葉が出てこない。
    あっけにとられるアムロとラル隊。ガイアが涙を拭きながら口を開いた

    「脅かしてすまなかったな。こいつは腕っ節とMSの操縦は天下一品だが・・・それ以外はからっきしでな。
    相手に自分の意思を伝えようとすると、何故かいつも暴力沙汰になっちまう」

    「このデカイ図体とおっかない顔で迫るもんだから、意中の女にはいつも逃げられっぱなしだ。
    不器用な奴なんだよ、コイツは」

    「二人とも、そりゃないぜ・・・」

    可笑しそうに語るガイアとマッシュにオルテガは、か細い声で抗議する
    先程の恐ろしげなイメージから一転
    どこからどう見てもコミカル過ぎるやりとりに、思わずセイラは吹き出してしまった。
    ラルやハモンも目を丸くしている。

    「あー・・・俺達はな。貴様に。礼を。言いに来たんだ」

    あさっての方向を見ながら、
    オルテガがようやく言葉を搾り出した。

    「ぼ、僕にお礼ですって?
    でも僕は、皆さんの攻撃の邪魔ばかり・・・」

    アムロの言葉をガイアが手を挙げて遮った

    「言うな。貴様が突撃したお陰でオルテガが死なずに済んだのだ」

    アムロは瞠目した。自分の捨て身の行動の意味が彼らには判っていた
    しかし格下の相手にそれを素直に認め、礼を尽くすとは。
    おかしなプライドや、下らない虚栄心の塊の様な軍人を嫌と言うほど見て来たが、
    こんな高潔な人達もいたのだと。

    「『黒い二連星』にならずに済んだ。感謝する」

    今度はガイアを筆頭に、

    星の欠けていない「黒い三連星」が、深々とラル隊に頭を下げる番だった。


646 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/29(月) 11:39:04 ID:l64a7upi
    ささやかな酒盛りが始まった
    いまだWBは動く事ができず、厳戒態勢を解く事はできないものの
    当直の者を除き、ハモンは皆にとっておきのブランデーを少しずつ振る舞った。
    彼らにとってはほんの少し、まさにひと舐めで終わるだけの量であったが誰も文句を言う者はいない
    不謹慎だと喚きたてる者もいない。これが彼らの流儀なのだ。
    「仲間と酒を酌み交わす」それ自体が重要なのであって、それ以上はこの場では望むべくも無い。
    あちらこちらで談笑が続く中、肩を寄せてラルと酒を飲んでいたガイアは声を落として囁いた

    「どうだ。あの若造を俺達に譲らんか?
    鍛え方によっちゃ新たな『黒い星』になれるかも知れん男だぞ」

    「・・・そんな逸材をワシがみすみす手放すと思うのか?」

    満足そうに含み笑いをしながら答えるラルに
    ガイアは心底残念そうな顔をして天井を仰いだ

    「『黒い四連星』の夢は儚く消えたか・・・!」

    ラル隊を交えてオルテガとマッシュはアムロとセイラを囲んで
    ブリッジの床に直に座り車座になっている。
    アムロは荒くれ達に囲まれても物怖じせず、全く気取らないセイラの端麗な横顔を見て
    以前のとりすました姿より、こちらの方が何倍も生気に溢れて美しいなと感じていた
    セイラのこんな姿を見れただけでも、自分の行動は意味があったんじゃないかとすら思える。
    視線に気付いたセイラがアムロに目を向けると、アムロは何故だか心臓が飛び上がるのを感じ
    思わず眼を逸らしてしまう。
    顔が熱い。おかしいな。僕の飲んでいるのはジュースの筈なんだけど。

    「しかしお前が連邦のMSをジオンにもたらしたとはな・・・
    どうだ。連邦とジオン、両方のMSに乗った感想は?」

    マッシュの問いにアムロは少しだけ襟を正して答えた

    「基本的に連邦のMSはジオンのそれを参考にして作られたものですから
    根っこの部分は同じだと思います。でも今回の戦闘でいくつか気になった事がありました」

    その場にいた全員の視線がアムロに集まる。
    ガイアとラルも雑談をやめ、アムロの言動に注目した。

647 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/29(月) 11:39:46 ID:l64a7upi
    「すみません!その話、もっと詳しく聞かせてもらえませんか!?」

    不意に沸き起こった年若い少女の大声に一同は振り向く。
    アムロの目に入ったのは華奢な腰に両手を当て、ブリッジの入り口に仁王立ちしている少女の姿だった。
    どう見ても12~13歳ぐらいにしか見えない。その娘はあまりにも場違いに見えた。

    「何だお前は!民間人が何故ここに入り込めた!?」

    クランプの誰何に
    少女はぎゅっと体に力を入れて敬礼して答える

    「失礼致しました!今回の作戦で補給とメンテナンスを担当しております
    MS特務遊撃隊所属、メイ・カーウィンであります!」

    「おお、ダグラス・ローデン 殿の部隊の!それでは君がカーウィン家の御令嬢か!」

    ラルが思わず喜びの声を上げる。
    無理も無い。ダグラス大尉もまたメイの父親と共に親ジオン・ダイクン派であったためラルとは親交が深く、
    現在はザビ家に冷や飯を食わされている状況も似た物があったからだ。

    「若干14歳ながら、エンジニアとしても非凡な物があると聞いている
    噂では、目隠しでザクの整備ができるそうだが・・・」

    おぉ?という半信半疑のザワメキの中、メイは冷静に首を振った

    「それは話に尾ひれが付き過ぎです。私は照明が落ちたハンガーで
    MS整備を続けた事があるだけです。そんな事より・・・」

    それでも充分凄い事なんじゃないかと思うアムロだったが
    自分に据えられたメイの視線に真剣な物を感じ姿勢を正した。

    「さっきの話です。是非詳しくお話下さい!」

    床に座り込んでいるラル隊(含む黒い三連星)を蹴散らすようにやって来たメイは
    怖い顔でアムロの目の前に腰を下ろした。

    「うっぷ!お酒臭い!!」

    彼女の第一声に、その場の全員がコケた。


677 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/30(火) 01:14:22 ID:Cm5Sg9U7
    アムロはジオン製MSの操作関係で気になった事やシステムの問題点など
    こまごまとした指摘を思い付く限りメイに話す。
    メイはそれをいちいち感心しながら丁寧に手帳にメモして行く
    始めは面白半分で聞いていたラル隊や三連星の面々も、
    アムロの鋭い指摘にだんだんとその表情に真剣味が増してゆくのだった。

    「ソフト面に関しては以上です。しかし何より問題なのは、あれなんです」

    アムロはコンソールに積み上げられた資料の束を指差した
    それは彼がクランプに山盛りで渡されたジオン製MSの資料だった。

    「ジオン全体のMSにおけるシステムや操縦法をある程度統一して行かなきゃダメです。
    ガンダムやガンキャノンを見れば判る通り、連邦のMSは徹底した管理で同一の規格部品を使ってます。
    操縦方法もほぼ同一です。たぶんあの『ガンダムもどき達』もそうでしょう。
    これは戦場において兵の負担を減らし、練度に関係なくある程度の結果が出し易く
    メンテ部品も調達し易い、という事になります」

    「MSのシステムを統合する整備計画かぁ・・・
    ジオンのMSって作り手が職人気質バリバリで≪そういうものだ≫って何となく思い込んでいたから
    改めて部外者から言われると正直目からウロコだわ。プランを絞り込んで上に提出する価値はありそうね」

    メイは腕を組んだまま深く考え込んでしまった
    なにやら忙しく頭を回転させている様だ。

    「俺達ジオン兵のMSを扱う腕前は、連邦兵なんぞ足元にも及ばんぜ?」

    「残念ながらジオンの兵士が全員中尉みたいな操縦技術がある訳ではありませんから・・・
    それに戦争がもしも長引く様な事があれば、その差は顕著に戦力に現れると思います」

    口を挟んだオルテガにアムロが申し訳無さそうに答える。

    「そうだな。今回の戦闘でもジオン兵の練度は連邦のそれを上回っていた筈だ。
    MSの性能の差と言えばそれまでだが、こちらは6機ものザクとベテランパイロットを多数失った。
    これはいくらなんでも多過ぎる」

    ガイアの言葉に皆が頷く。ラルが続ける

    「アムロ、お前から見てどうだ。
    連邦のMSにあってジオンに無い物は何だ?」

    「まず、開発の理念が違うと思います。ジオンのザクは『対通常兵器』
    連邦のMSは『対ザク』を初めから想定したものでしょうから」

    周囲に重苦しい空気が垂れ込める。
    かと言って、いまさら戦線に多数配備されているザクを一斉に取り替える訳にも行くまい。
    しかし連邦があの「ガンダムもどき」の様なMSを今後どんどん量産化して各戦場に配備していくとなると
    ジオンの苦戦は避けられない現実となるだろう。

    「ひとつ手があります。それをすれば
    ジオンのザクが連邦のMSと互角とは言わないまでも
    少なくとも今日の様な事にはならず、ある程度は渡り合える様になる筈です」

    アムロはゆっくりと周りを見回した。
    周囲は固唾を呑んで彼の言葉の続きを待っている。


987 :>>722修正版:2009/01/04(日) 20:09:54 ID:???
    「ソフト面とハード面でひとつづつプランがあります。
    まずソフトの方ですが・・・」

    ごくりとコズンが唾を飲み込んだ

    「優秀なMSパイロットの実戦稼動データを一般兵の乗るザクのOSに移植するんです。
    そうすれば未熟なパイロットや新兵でも一定以上のMS運用が見込めるんじゃないでしょうか」

    一同は息を呑んだ。そんな発想は聞いた事が無い。

    「ガンダムに搭載されているコンピューターは教育型または学習型と呼ばれるもので
    パイロットの戦闘時における有益な行動がその後の戦闘に自動的にフィードバックされるようになっています。
    そのシステムを・・・」

    「なるほど、ジオンがそっくり頂いちまうという事か!」

    手の平で拳を打ち鳴らした
    ガイアの言葉にアムロは頷く

    「ガンダムのシステムを解析すれば、同じ物がいくらでも作れます。
    ジオンには優秀なパイロットが大勢いますから、それを搭載したMSに搭乗してもらう事で
    データ収集には不自由しない筈です」

    ふと、アムロの脳裏を赤いザクが横切った
    あの恐るべき相手も今は味方なのだと思うと、何だか不思議な感覚が広がってゆくのを感じる。

    「MS運用に関してジオンは連邦よりも一日の長があるはずですから。
    そして、戦闘を重ねるごとに、ジオンのMSはどんどん優秀になって行きます」

    「ただでさえ連邦よりも練度の高い兵に優秀なOSが搭載されたMSか。
    まさに鬼に金棒って奴だな」

    クランプが面白そうにニタリと笑う。

    「あ!そうだった!私ここのハンガーにあるガンダムに入ってたデータ見せてもらったんですよ。
    とても優秀なものでした。例えばあれなら充分に役に立つと思います。
    ガンダムのパイロットはお亡くなりになってしまったそうですが
    よっぽど優れた技術をお持ちの方だったんでしょうね・・・」

    メイの言葉に、何とも微妙な表情でラル隊の面々は互いに顔を見交わす。
    アムロも所在なく鼻の頭を掻いた。

    「あー・・・。もしそれをやるんだったら。さっきの。戦闘データ。このアムロのを。
    絶対使え。絶対。
    実験機なんだから。俺達のより詳しく。取れてんだろう?」

    たぶん自分の容姿でメイを怖がらせない様にであろう
    体をできるだけ屈めて、極めてたどたどしくオルテガがメイに話しかけた。
    その様子に苦笑しつつもガイアはその発言に驚いていた

    『プライドが高くMSの操縦に関して絶対の自信を持っている筈のこいつが
    自分を差し置いて他人を、しかもこんな子供を推挙するとはな・・・
    それだけこのアムロの実力を間近に感じたという事か』

    「判りました!まだ正式にそうすると決まった訳ではありませんが、後でチェックしてみますね」

    「・・・うむ」

    物怖じというものを全くせず、元気良く笑ったメイはオルテガに答え
    ちょっと意外そうな顔をしてオルテガは引いた。


723 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/30(火) 18:33:54 ID:Cm5Sg9U7
    「OSパワーアップてのは判った。で、ハード面の方はどうなんだ?
    こっちは即効性が無いと意味がないぞ」

    クランプが促す。アムロはそちらに向き直る

    「・・・簡単に言えば、≪シールド装備の徹底≫です」

    「な、何い?シールドだと!?」

    ドッとブリッジに溜息と笑い声が同時に沸き起こった。
    何を言い出すかと思えば、その程度だったのか。どの顔にもそう書いてある
    周りの反応にアムロはうつむき唇を噛んだ。
    その中でラルは腕組みをしたまま微動だにしない。

    「・・・いや、アムロの言い分は正しいかも知れん」

    一同の笑いをガイアが遮った
    「黒い三連星」の三人も、誰一人笑ってはいなかったのである。
    アムロは顔を上げた。

    「さっきの戦闘で俺達は奴らの内の一体にバズーカで連続攻撃を仕掛けた。
    しかしバズーカ弾を3発食らわせてもシールドを構えたそいつを完全に破壊する事はできなかったんだ」

    「シールドを構えていない奴は簡単に頭を吹っ飛ばせたからな。
    いかに盾が有効だったかという事なんだろうよ」

    ガイアとマッシュの言葉にその場の笑い声は完全に掻き消えた。
    MS-09ドムの持つジャイアント・バズの威力は
    ただの一発でザクを破壊するであろう事を知っているからであった。

    「ガンダムの持つビームライフルはコストの問題で量産は後回しなんだと思います
    だから当面の問題は、あの『ガンダムもどき』が持っていたマシンガンです」

    ガイア達三連星は敵MSの攻撃を思い出していた
    遼機のザクの装甲をまるで紙の様にずたずたに引き裂いていたあの威力。
    確かに、ザクの肩に付いている装甲版など何の役にも立っていなかった。
    連邦のMSと比べて何という違いだろう。

    「例え材質が多少弱くてもガンダムのシールドみたいに≪攻撃を真正面から受け止める≫んじゃなくて
    シールドの前面を曲面構成にしてマシンガンの≪弾の威力を逸らす≫形にすれば充分耐久性も上がると思うんです
    形を大型の楕円形にしてガンダムのシールドみたいな覗き穴を付けるとか、裏側に予備の武器を装備するとか」

    「うむ。汎用性を高めておけば例え今後新型のMSが配備されたとしても
    シールドの流用が可能だろうな」

    ラルはアムロを見ながら誇らしげに頷いた。


801 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2008/12/31(水) 22:18:24 ID:CKGNILHd
    「こんな感じかしら?」

    メイがさらさらとノートにスケッチしたイラストをアムロに差し出す。
    楕円形の大振りなシールドに覗き穴が付いているデザインだ。
    その横にラフなザクが描いてある。大体の大きさを示すつもりなのだろう。

    「うん。いいと思います。大きさも丁度いい」

    「だがまあ俺達のドムにはシールドなんざいらねえぜ?
    その為の重装甲なんだしバズーカ撃つには両手が使えなきゃだしな」

    メイの意外な絵の上手さに感心しながら答えるアムロに
    マッシュが横からスケッチを覗き込みながら口を挟んだ

    「左腕前腕部に取り付けるマウント式のシールドにしたらどうでしょう?
    バズーカを構える時に腕を曲げるとこう、
    ちょうどコックピットを守るポジションになる様に形と角度を調節するんです」

    実際にバズーカを構えるフリをしてみるアムロ。
    それを見たメイがまたノートに素早くスケッチを描きおこし「こんなの?」と見せる。
    今度は少し小型のシールドがMSの腕に付いている絵だ。
    これなら高機動時にも取り回しに不自由は無さそうだ。
    それを見たオルテガはぼそりと呟く。

    「どうせなら、そのまま敵をブン殴れるスパイクが欲しいな・・・」

    またまたメイがさらさらとペンを走らせ「こうですか?」と
    嬉しそうにオルテガに見せる。だんだんノッて来たらしい。

    視界の端でメイのスケッチを囲んだラル隊と三連星が寄ってたかって
    ああでもないこうでもないと大論争が巻き起こっているのを眺めながら
    ラルとガイアはまたグラスを傾けている。

    「これは俺の独り言なんだが・・・どうも、上の動きがキナ臭い」

    「・・・そうだろうな。非常時とはいえ、貴様がワシの援護に来るぐらいなのだからな」

    ガイアの言葉にラルは溜息混じりに答える
    これは公然の秘密だが、ジオンの命令系統は一本では無い。それが多くの将兵に負担となり
    ただでさえ多くは無い戦力を無駄に分散させていたのである。
    ラルとガイアはそれぞれが「対立」する陣営に属し、同じジオンでありながら
    通常は共同作戦など望めない立場である筈であった。その垣根が今回取り払われたという事は・・・

    「何かある。と、いう事だろうな・・・」

    苦虫を噛み潰した顔で呟くラルの言葉を待っていたかの様に
    WBのブリッジに通信のコールサインが鳴り響いた。


869 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2009/01/02(金) 11:44:01 ID:eDu6UAPa
    メインモニターに映し出された人物は顎鬚を蓄えた厳つい風貌の男であった。
    思わずメイが立ち上がる。

    「今作戦、貴艦のバックアップを担当するMS特務遊撃隊指令、ダグラス・ローデンである。
    久しぶりだなラル大尉!」

    「おお!ダグラス大佐!また世話をお掛けしますぞ!」

    旧友であり同士でもある漢との再会にラルの顔が思わず綻ぶ。
    ダグラスはモニター越しにWBブリッジの様子を見回しメイの姿を見つけると
    小さく息を吐き出してから静かに口を開いた。

    「メイ君。君はそこで何をやっているのかね?」

    メイは元気良く敬礼をしながら答える

    「はい!ジオン製MSの改善強化案と今後の展望を、
    現場の声を参考にしながら多角的に討論していた所です!」

    「そうか。それはご苦労」

    「えへへ」

    「ところで、私が君をそこに伝令に行かせた理由を覚えているかね?」

    「もちろんですよ!≪WBの機関部の仮調整終了。通常の70%の出力で巡航可能≫だという事を
    艦長のランバ・ラル大尉にお伝え・・・あぁっ!私、肝心な事を伝え忘れていました!ご、ごめんなさいっ!」

    本気で自分のドジに驚きながら、必死に時計回りに周囲に頭を下げまくるメイ。

    「私ったら・・・!MSの事になると、他の事が見えなくなっちゃうんです!
    ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・!」

    涙を浮かべて何度も謝罪する14歳。明らかに邪気は無く、なまじ可愛い顔をしているだけにタチが悪い。
    ガクガクとした脱力感がメイの周りから放射状に広がって行くのが感じられる中、オルテガが大きな体を縮めながら
    「いい。気にするな。お前は。悪くないから・・・」と、慌ててフォローしているのが微笑ましいと言えば微笑ましい。
    それに追随するように「そうだそうだ!」「どっちかっつーとアムロが悪い!」等と賛同する声があちこちで上がる。
    引き合いに出されたアムロは目をぱちくりした。


870 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2009/01/02(金) 11:44:49 ID:eDu6UAPa
    「すげえ・・・これが天然て奴かよ・・・」

    クランプが体に力を入れ直しながら搾り出すように呟く。
    この娘、少なくとも今までのラル隊の周辺にはいなかったタイプだ。
    下手したら連邦のMSなんかよりもよっぽど手強い。
    何しろむさ苦しいオッサン連中に全くこのテに対する免疫が無いのだ。
    まず撃墜されたのがオルテガか・・・ちらりと横目で彼を確認しながらタラリと汗が流れた。
    こめかみを押さえながらダグラスは謝罪の視線をラルに向ける。

    「・・・聞いての通りだ大尉。うちの者が無作法でいろいろと申し訳ない」

    「いやいや手をあげてください大佐。無作法なのはお互い様です」

    苦笑しながら答えるラルに思わず相好を崩しかけたダグラスだったが
    その表情を一転真面目なものに戻した。流石に年の功と言う奴なのだろう。

    「・・・聞いているか?」

    「はい。この戦艦と捕獲したMSをどうするかで上がモメているという事ぐらいは。
    しかし、それ以上はどこからも情報が入って来ておりません」

    「これは、まだ不確定な情報なのだが」

    一旦言葉を切ったダグラスは、ゆっくりと言葉を継ぎ足した

    「どうもドズル中将が倒れられたらしい」

    「何ですと!?」

    ブリッジに激震が走った。しかしその脈動は
    WBのエンジンが消えていた命の炎を再び点し、それがブリッジに伝わり始めたものだとも感じられた。


885 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2009/01/02(金) 14:28:48 ID:eDu6UAPa
    黒い三連星達は独自のルートから情報を収集すべくブリッジを退出し、
    それと入れ替わるようにダグラス大佐が金髪をアップに纏めた妙齢の女性を引き連れてWBに乗り込んできた。

    「挨拶は後だ大尉。彼女はジェーン・コンティ大尉、私の秘書官だ」

    「宜しくお願いしますラル大尉。早速ですが例の情報にはまだ確証がありません。
    ただ、さまざまな方面からの情報を総合すると・・・」

    「そうとしか考えられない、という事ですかな」

    「はい。それと、これは【風聞】の域を出ない事なのですが」

    言葉を選びながらジェーンが話しているのが判る
    ラルはじっと次の言葉を待った。

    「ドズル中将は今回このWBとそれに搭載させたMS、捕虜となった乗組員の類を全て
    ≪ガルマ様の仇討ち≫とばかりに全国民の見守る前で・・・」

    「まさか!?」

    「・・・あくまでもそういう主張だったという【風聞】です。
    通常ならば絶対にありえないような処遇ですが、ザビ家は実質的な独裁国家。
    黒い物でも白と言えば白になる・・・その可能性はゼロでは無いでしょう。
    ただ、連邦内部の機密情報や研究対象としての価値を鑑みた多方面からの反対意見も多く
    なかなか意見の統一ができなかったと。勿論これも【風聞】ですが」

    ラルはじっとジェーンの顔を覗き込む。
    ザビ家の内情にここまで詳しいこの女は何者だ。噂話を装ってはいるが、その信憑性は高いと思える。
    内乱とも醜聞とも言えるザビ家のそんな情報を我々に流すメリットとは何か。

    この女、敵か味方か。

    ラルがジェーンの正体を計りかねていると、それを察したダグラスは苦笑しながら口を挟んだ。

    「大尉、彼女の立場はちょっとばかり複雑でな。
    だが彼女は基本的に我々の味方だ。そこは心得ておいて貰って構わん」

    「は。大佐がそう仰られるのでしたら・・・」

    引いたラルだが探るような視線はまだ彼女に向けたままだ。
    それに気が付かないフリをしてジェーンは一度、髪をかきあげた。

    「話を続けさせて頂いて宜しいですか?」

886 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2009/01/02(金) 14:30:15 ID:eDu6UAPa
    「ドズル中将はあの御気性ですので、周囲から何と言われようが御自身の主張を
    頑として曲げ様としなかったと思われます。勿論これも【風聞】の・・・」

    うんざりしてラルは手を挙げ彼女の言葉を遮った

    「ジェーン大尉、それはもう宜しい」

    「失礼しました。掻い摘んでお話します。そして少なくともごく最近までは
    中将に体調的な問題があった等という話は聞いた事がありません。これは【風聞】でもです」

    ぎょっとしてラルはダグラスを見た。ダグラスも目で頷く。

    「まさか、中将が倒れられたというのは・・・!」

    「待て大尉。まだ迂闊な判断は危険なのだ」

    顎に手を当て考え込むラルだが
    ふいに顔を上げ、ダグラスに近付くと何事か小さく耳打ちした。
    暫くラルの話を聞いていたダグラスは一瞬目を見開くとアムロの隣に立つセイラを凝視した。
    ダグラスの視線を追ったジェーンはこの場にそぐわない金髪の美しい娘を見出し、少し意外な顔をする。
    見るとダグラスは感極まった様子で視線を外そうとしていない。一体何だと言うのだろう。
    ダグラスは大変な努力をしてセイラから目を逸らすと、冷静な声でラルに告げた。

    「取り敢えずの目的地はマ・クベ大佐から指令を受けている」


887 :1 ◆Zxk1AsrDG6 :2009/01/02(金) 14:32:18 ID:eDu6UAPa
    マ・クベ。あの暗い瞳をした「いけ好かない奴」かとラルは思った。
    無表情で血色が悪く、いつもガラクタを弄繰り回しているあの男。
    か細い声で奴の口から湧き出すのは、人を見下した嫌味ばかりだ。
    実働派のラルとはまさに水と油の関係と言って良いだろう。たぶん向こうもそう思っている筈だ。

    「我々はこれより一路バイコヌール基地を目指す。まずはそこでWBの完全修理と改修を行なう。
    そこで簡易任命式が行なわれ、諸君らは辞令を受け取り昇進する手筈になっている」

    「昇進ですか・・・そう言えばそんな約束でしたな」

    もともと「部下の生活の改善の為」に、この無謀な作戦を引き受けたラルだった。
    しかし今は新たな目的が生まれ、それに比べればドズル中将と約束した「二階級特進」など
    どうでもいい様にすら思える。が、目的の為には自分の立場は少しでも高くしておくに越した事は無いのだ。
    ラルはそう思い直してダグラスに問うた。

    「了解であります。ではその後、我々はどこに向かうのです?」

    「・・・判らん。バイコヌールへ行けの一点張りだ。
    恐らくそこで次の指令が言い渡されるのだとは思うが」

    歯切れの悪いダグラスの言葉にラルは嫌なものを感じて顔を曇らせた。
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