親父、お袋……死に場所を見つけたよ。
「ボクに謝れ、謝れよちくしょう!」
 ギリギリと首を絞められて、俺――吾妻晋太郎は両親に別れを告げた。
 このばか女、イトコの遥は子供の頃から実家の空手道場で鍛えているため、果
てしなく強い。はっきり言おう、俺じゃ勝てない。しかも加減というものを知ら
ないのだからタチが悪い。
「あのアイスはなあ、ボクが稽古の後に食べようと思って取っといたんだぞ! 
なんで食べちゃうんだよ? なんでだよこのやろう!」
 知るかよ。山があったら登る、アイスがあったら食う。常識だろうが。
 ああ、そろそろ意識が……
 だが俺は負けるわけにはいかん。気合いで意識を繋ぎ止める。
 何故に俺がここまで頑張ってるかというと、ショートの髪も口調も名前も、全
部が男みたいな遥の唯一女らしい部分が俺の後頭部に当たっているからだ。
 つまりは――オッパイだ。
 中々に大きく弾力のあるポヨポヨーン、さらにその上こいつは「窮屈でヤだ」
とか言ってブラジャーを着けていない。最高だ……最高の感触だ。
 俺は負けない。一秒でも長くこの感触を楽しむために。
 うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………ぉぉ……ぉ…………



「ゴメン、ほんっとにゴメン」
「ああ、別にいいって」
 ふざけろクソッタレ飯食って出直してこい、と言いたいが遥が今にも泣き出し
そうなので、ぐっとその言葉を飲み込んでおく。
「ボク、いつもやりすぎだよね……ゴメン……反省してる」
 あの後、落ちてしまった俺が意識を取り戻すと気持悪いくらいに遥がしおらし
くなっていた。
「いいって言ってるだろ? 俺も悪かったしさ」
 我ながら寛大だ。
「うん、そうだよね! あんたも悪かったんだからおあいこだよね!」
 一転して明るい声で言う遥。何だそりゃ。もう一度言うが何だそりゃ。
「……まあ、そうだな」
 俺が言ったことだが、なんか……なんか……
「よし、じゃあ仲直りってことで一緒にアイス食べよう! あんたのおごりで」
「俺? 俺のおごり?」
「だってボクお金無いもん」
「無いもん、じゃねえよ! ふざけろクソッタレ!」「クソッタレェッ? 言ったなこの野郎!」
 遥が跳ぶ。回転しつつ伸ばされた足は正確に俺のミゾオチを捉え――…………



「ゴメン、今度ばっかりは本当の本当にゴメン」
「もういいよ。いいからちょっと休ませてくれ……もう、疲れた……」

おわれ

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最終更新:2007年10月08日 19:37