この世では無い世界…この世に近い世界…この世と同じで…




…違う世界…




「ねーカルト。明日テストが有るんだけどさぁ。教えてほしい教科があるんだよね~」
「ん~?何?」

「保健体育!」

「ぶっっ!!…ゲホッゲホッ…なっ!?」

事の始まりは帰宅時。幼なじみの一言だった…。

隣を歩くのは『鬼ノ部 ヤケル』。長身で、髪を短く切り揃えている。『美男子?』とよく言われるボーイッシュな女の子だ。
バスケ部所属の何時も笑いを絶やしたところを見たことが無い。僕より背が高く、幼なじみ(腐れ縁か?)ということもあって、一つ下でもタメ口で話しかけてくる。

「けほ…なんで僕なんだよ!学校で友達に聞けばよかっただろ?!」

歩きながら飲んでいたミルクティーを思わず吹いてしまった。…あーもったいない…

口を拭きつつ睨みながら問い返す。悪びれる事なく、笑いながら彼女はその問いの答えを返す。

「さっき思い出したんだよね~、明日テストあること。ほら、アタシ携帯持ってないからさ。授業も体育の次だから、疲れて爆睡だたしぃ。それに…」
「それに…?」

ゴクリッ…まさか、ゲームみたいな展開が、今僕の目の前で?そんな事が脳裏を過ぎる。
ほのかな期待を胸にして彼女答えを待つ。

「それにさぁ、カルトのお母さん、アタシの学校の養護教諭でしょ?もしヤケルがわかんなくても、聞く相手いるしさ♪」

あー、どーせそーだと思ってましたー。
うなだれながら足を進める僕を見て、ヤケルはにこにこしながら首を傾げついてくる。
期待していた僕が馬鹿だったよ…。

「で?内容は少しでもわかってるの?」
横目でヤケルの事を見る。
こいつには異性から教えてもらうことに恥じらいは───

「全然?ページ数だけしかしらなーい」

無い以前の問題か…

「はぁ…わかる範囲は教えてやるよ。制服着替えてから僕の家来なよ。」

「あは、ラッキー♪助かったよ。あ、アタシんちこっちだから。後でね~。」
そういうと、手を振りながら去って行く。

大きな脱力感とひそかな期待を胸に、僕は家路へと着いた。

『墓森』の表札を掲げた玄関を開けると予想通り家は無人だった。

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最終更新:2008年10月20日 19:57