いつか、叶えたい願いがある
いつか、たどり着きたい場所がある
そんな感じのものだった

そんな、あいまいなものを抱きながら
いつか作った、いつ使うかもわからない原稿に目を落とす
その原稿は読み込まれ、端が擦り切れ手垢がこびりついてはいたが
大切にされてきたことが一目で分かるものだった

その原稿を開くたび、仲間を思い出す
その原稿を開くたび、背筋が伸びる
その原稿を開くたび、心に炎がともる

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諸君、私はソックスが好きだ
諸君、私はソックスが好きだ
諸君、私はソックスが大好きだ

ハイソックスが好きだ 三つ折りが好きだ ルーズが好きだ ニーソックスが好きだ 足袋が好きだ リブハイソックスが好きだ トゥレスソックスが好きだ アンクレットが好きだ ブーツソックスが好きだ
家で 仕事場で 学校で 路上で 居酒屋で カフェで 車内で
この地上で履かれる、ありとあらゆるソックスが大好きだ

5121小隊の田辺真紀の白いハイソックスが好きだ
榊ガンパレで、血の付いたハイソックスを交換させようとした遠坂の気持ちを考えると心がおどる

式神の城の、結城小夜の足袋が好きだ
本編中にチラチラ見えるので視線が固定され、正直弾幕が避けられない

感情が高まり、ロンスカからミニスカとなったことによって見えた
絢爛舞踏祭のエステルの靴下が、実は未来な素材で出来た物だったことは感動すら覚える

青の章の飛子室アズサのスリークォーターソックスが好きだ
彼女の家事技能が高いせいで、毎日洗われてしまうであろうことはとてもとても悲しいものだ

整備主任の原さんのストッキングが好きだ
ハンターシナリオで、回収できなかったことは屈辱の極みだ

諸君、私はソックスを 最高のソックスを望んでいる
諸君、私と共にあるソックスハンター諸君 
君達は一体何を望んでいる?
更なるソックスを望むか? 
情け容赦のない悪魔の様なソックスを望むか?
一年履かれた我々を悶え殺す嵐の様なソックスを望むか?

「ソックス!! ソックス!! ソックス!!」

よろしい
ならばソックスだ

我々は満身の力をこめて、今まさに欲望をぶちまけようとするハンターだ
だがこの暗い闇の底で、四半世紀もの間風紀委員会に堪え続けて来た我々に
ただのソックスではもはや足りない!!

ソックスを!! 
一心不乱のソックスを!!

我らはわずかに数十人、百人に満たぬマイノリティーに過ぎない
だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している
ならば我らは、諸君と私で総兵力10万と1人の夢狩人となる

我々を忘却の彼方へと追いやり、眠りこけている連中を叩き起こそう
靴をつかんで脱がし、口を閉めて嗅がせてやろう
連中にソックスの匂いを思い出させてやる
連中に我々の、ハンターの高笑いを思い出させてやる
我々とソックスとの間には、奴らの倫理では思いもよらない事がある事を思い出させてやる
一千人のソックスハンターたちで、無名世界観を燃やし尽くしてやる

「いちソックスハンターより 全ソックスハンターへ」
目標、無名世界観全土!!

第一次ソックスハント【白の靴下】作戦、状況を開始せよ
逝くぞ、諸君

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読み終えた原稿を褌の中に押し込み、顔を上げる
そこにはたけきの藩国の玄関前広場が、遠くには田畑と山が広がっていた
平和な、やっと手に入れた風景だった

「ママー、屋根に褌の人がいるよー」
「あそこ?何も見えないわよ」
「え、ママ見えないの?」
首をかしげる子供と顔を背ける母親
「じゃあ、あれ妖精さん? 妖精さーん」
笑顔で手を振る子供、必死になって手を引く母親

満面の笑みで子供に手を振りかえしてやり、心に誓う
『ターゲット、ロックオーーン』

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その後の出来事は一瞬だった

藩王執務室のふすまを突き破り飛来するバット
褌から引き抜かれるソックス
今まさに衝突せんとする二つの得物の向こうに、視線と思考が交差する

『変・態・撲・滅』(藩王)
『イ・ヤ★』(摂政)

力の限り振り抜かれるソックス、万有引力の法則を打ち破り加速するバット
豪快にスカるソックス、メガネをぶち破り顔面へと到達するバット
背を向けガッツポーズを決める藩王、鼻血に放物線を描かせながら落下する摂政

そのとき、褌から原稿がひらりと空へ舞う
その空は青く、どこまでも広がっていた



満足げな雰囲気の藩王の隣でため息を一つつき、ひわみは告げる
「回収してきますね…」

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最終更新:2008年01月31日 22:38