映画 『処刑人』 The Boondock Saints @ wiki

Rosengurtle Baumgartner

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soi

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Deleted Scene: Rosengurtle Baumgartner

このカット・シーンは、冒頭、教会での早朝ミサが終わった後、マクマナス兄弟が精肉工場に出勤し、新人女性ローゼンガートル・バウムガートナーを紹介される場面で始まります。本編では大幅にカットされ、オープニング・クレジットに数場面が使用されているのみです。

精肉工場で監督官のマクガーキンを演じているのは、アイルランド出身でカナダのトロントに移住したシンガー・ソングライター、ビル・クレイグ (Bill Craig)。映画ではドクのバーという設定でロケに使われたトロントにあるアイリッシュ・バー『マクヴェイズ』 (ロケ地参照) のレギュラー出演ミュージシャンでもあります。以下に引用したビルの回想録によると、ロケに訪れた監督トロイ・ダフィーとマクヴェイズで飲んでいるうちに、どうやらその場の成り行きで出演に至ったようです。

巨漢のレズビアン、ローゼンガートルを演じるのは、女優として活躍する傍ら、撮影当時は女子アームレスリング界の世界チャンピオンでもあったドット・マリー・ジョーンズ (Dot Marie Jones) (または ドット・ジョーンズ Dot Jones とも) 。彼女は2006年に敗れて引退するまで、実に15年連続で女子アームレスリング世界選手権女王の座に君臨していた伝説的な人物。1987年のシルヴェスター・スタローン主演のアームレスリングをテーマにした映画『オーバー・ザ・トップ』にももちろん出演しています。

なお、股間を蹴られたコナーに駆け寄り、ローゼンガートルに奴隷呼ばわりされた女性二人のうち左側のブロンドの女性はトロイの母親マリー・ダフィー (Marie Duffy)です。

Bill Craig の回想録から引用 (1999年1月)


[レコーディング先である北アイルランドのベルファストから、1998年の]8月にトロントに戻ってきて、ある水曜の夜マクヴェイズでプレイしてる時に、トロイ・ダフィーと映画『処刑人』の出演者たちに出会ったんだ。みんなで一緒に歌ったり飲んだりすごく楽しい一夜だったよ。トロイのバンド "The Brood" もそこにいて、彼らも演奏したんだけど、素晴らしかったね。そしたら、僕がこの映画のある役(ボストンの精肉工場の監督官マクガーキンの役)にぴったりなんじゃないかってトロイが言い出してね、その役を演じてくれないかって頼まれたんだよ。次の日、撮影が終わると、役になりきったままスタジオの食堂を後にしたんだ。台本を片手に、それから僕の大好きな俳優のひとりウィレム・デフォーの隣に座ったという不思議な体験を胸にね。ウィレムは映画ではFBI捜査官の役を演じていて、ビリー・コノリーとかショーン・パトリック・フラナリーやノーマン・リーダスも出演するんだ。
演技をするのはとても楽しいことだったね。それに映画がどうやって組み立てられて行くのか見てるのも興味深かった。自分用の予告編を見て大笑いだし、ビリー・コノリーと一緒に遊ぶ機会も持てて大騒動だし。それからギャラもなかなか良かったよ。ありがとうね、トロイ。あ、それとドット・マリー・ジョーンズにもスペシャル・サンクスだね。僕は自分のシーンで彼女とは一番近くで一緒に演技してたからね。彼女は本当にプロでね、緊張をほぐすのを手伝ってくれたり、撮影セットでの楽しみ方を教えてくれたりしたよ。映画はこの春か初夏には上映されるはずだよ。(追記、ヨーロッパの映画祭で最近ダイジェストが上映されて、『この映画は最高だ!』って評論家たちは言ってたよ)



US版DVD特典 "Rosengurtle Baumgartner" より


[場面: マクマナス兄弟の勤務先の精肉工場。監督官のマクガーキンが新人女性のローゼンガートルを二人に紹介する]

マクガーキン: こちらが、ローズバウム・ガート……、ガートル……
ロージー  : ローゼンガートル・バウムガートナーです
マクガーキン: ああ、そうだった。お前たち、今日は彼女に仕事を教えてやってくれ。よろしくな
C&M    : アイ (注1)
コナー    : [握手をしようと手を差し出しながら] はじめまして、よろしく、ロージー

[ロージー: 無言で“UNTOUCHED BY MAN”「男には触れられたことがない」
と彫られた自分の喉元のタトゥーを指さす]

ロージー  : 男どもにはローゼンガートルって呼んで欲しいね
コナー    : そ、そうだよな……。じゃあ、まぁ、始めようか……

[コナー: ロージーを作業場へ連れて行く]

マーフィー  : うわっ!あんなデカイ女、初めて見たよ
マクガーキン: 実はな、これは俺たちが自主的に始めた差別是正措置なんだよ。俺たちがデカくてデブでブスのレズビアンを雇えば、俺たちがデカくてデブでブスのレズビアンの左翼団体の権利を侵害してないって、連中はそう思うだろ?
マーフィー  : ふ~ん、監督って差別是正主義者 (注2) なんだね。良いことだよ。
マクガーキン: お前は半分も分かっちゃいないな。連中のせいで営業停止に追い込まれることだってあるんだぞ。脅迫されただとか精神的苦痛や被害を受けたとか、そんなクソみたいなことで徹底的に訴えられるんだ
マーフィー  : そっか
マクガーキン: ああ
マーフィー  : じゃあ、デブのレズビアンを雇ってる以上、監督のマーにも電話して来てもらわなきゃね

[マーフィー: マクガーキンの頭を軽く叩く]

マクガーキン: こら!さっさと行け、マーフィー!

[コナー: ロージーに作業の手順を教える]

コナー    : 今からやることは、まず脂肪を出来るだけ取り除いて、まぁつまり、親指の法則 (注3) に従うとここでの目安は……
ロージー  : ちょっと、待ちな! 親指の法則だって?!
コナー    : そうさ、親指の法則だよ
ロージー  :[大声で] みんな、この言い回しがどっから来たか知ってるかい?
コナー    : 知らねぇよぉ……
ロージー  : 1900年代 (注4) 初めはね、男どもが妻を棒で殴るのは合法だったんだよ、それが親指よりも太くなければね!

[コナー: 訝しそうに自分の親指を見つめる]

コナー    : こんなんじゃそれほど痛かないぜ、だろ?本当なら手首の法則なんじゃないのか?
[棒を振る動作をしながら]こんくらいのさ、かわいい棍棒がさ、要るよな、ロージーの手首サイズなら。ハハハ!

[コナー: マーフィーの元に歩み寄る]

コナー    : よぉ、マーフィー
マーフィー  : ん?
コナー    : 電球をハメるのに何人のレズビアンが必要だと思う?(注5)
マーフィー  : 何人?
コナー   : 二人だよ!一人には電球をハメて、もう一人のへんてこりんなチビのレズビアンには俺のクソチンポをしゃぶらせるんだよ!ハッハッハッハッハッ!俺が自分で現場監督しながらさ!ハッハッハッ!

[ロージー: 二人の元へ寄って来てる]

ロージー  : あんたらゲス野郎があたしを困らせようとしてんのはもう分かってんだよ!あたしが女だからって難癖つけやがって!あたしは男支配のたわごとなんて受け入れないよ!
コナー    : ちょっとからかってみただけじゃねぇか。そんだけさ
マーフィー  : コイツは君の緊張をほぐしてあげようとしてたんだよ
ロージー  : [マーフィーに] うるさいよ、クソったれ! [コナーに] お前もだよ!
マーフィー  : まぁ、やめろよ、今日は聖パトリックの日だぜ。一緒に楽しもうぜ
ロージー  : [マーフィーに] あんたには“バウムガートナー”って名字がアイルランド系に聞こえんのかい? このクソ面め!
コナー    : ローゼンガートル、リラックスしなよ。ちょっと落ち着けよ……

[ロージー: コナーの顔面にパンチ]

コナー    : ロージー、そんな攻撃的な態度は抗議デモのために取っとけよ……

[ロージー: コナーの股間を蹴り上げる]
ロージー  : クソったれ!

[コナー: 床に倒れ込み悶絶。女性従業員が二人コナーを助けようと屈み込む]

ロージー  : [女性従業員たちに対して] あんたらもクズ奴隷だね!男の欲望に媚びへつらってさ!立ちな!さっさと立ちなよ!コイツなんかほっときな!

[ロージーが振り返った瞬間、マーフィーが彼女の顔面にパンチ、ロージーは床に倒れる]

マクガーキン: [頭を抱えて] なんてこった……

…………………………………

(特典映像ではここまでですが、オリジナル・スクリプトによると次のマーフィーの台詞でこのシーンは締め括られています)

[マーフィー: 倒れたロージーの元に立ちはだかり彼女を見下ろす]

マーフィー  : これでそのタトゥーの文字を変えなきゃいけなくなったな、ロージー

…………………………………


[注1] aye = yeah。アイルランド、スコットランド、北部イングランドなどで用いられる表現。アイルランド英語では "yes" よりも軽めのニュアンスを持つ。
[注2] politically correct … 直訳すると『政治・政策的に正しい』。人種・宗教・性などに関して、世の中に差別や偏見があってはならないという思想的運動から生まれた表現。
[注3] rule of thumb … 理論ではなく経験則に基づいたやり方、近似的な法則、大雑把な目安。語源については諸説ある。ローゼンガートルが言うように、親指を基準として、それ以下の太さであれば、夫が妻を棒やムチで殴るのは合法であるというかつてのイギリスの慣習法に由来すると主張する人もいる反面、昔は様々な職業の職人が作業過程で親指を基準にして物の長さを測定していたため、単にそこから由来したものに過ぎないという説もある。 (参考 メリーランド大学 女性問題研究に関するスレッド)
いずれにせよ、『親指を使って測る方法』が転じて『経験に基づく目安・やり方』という意味になった。なお、日本版本編では字幕・吹替とも『男のやり方』と訳されている。
[注4] nineteen-hundreds … 1900年代。日本版本編では字幕・吹替とも『19世紀』と訳されている。
[注5] "How many ~ does it take to screw in a light bulb? (電球を取り付けるのに何人の~が必要か?)" という所謂 "Light-bulb joke (電球ジョーク)" の応用。


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