シェアワールド@霧生ヶ谷市企画部考案課

となりの天空のモロモロの宅急便が崖の上の墓で紅のモロモロをすませばモロモロ姫と神隠し

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となりの天空のモロモロの宅急便が崖の上の墓で紅のモロモロをすませばモロモロ姫と神隠し 作者:あずさ

 

  テレビやゲームばかりで最近の子は外で遊ばない。
 そんなことを言う大人もいますが、決してそういうわけではなく、中だろうが外だろうが楽しいものは楽しい。そう思うわけです。



「ねえ、見た!? 昨日のテレビ見た見たー!?」
 朝から元気に教室へ飛び込んできた、一ノ瀬杏里さん。柳川爽真さんが慌てて声をかけようとしたのですが、気付かない杏里さんは興奮したまま私に飛びついてきました。反射的に腕を回して私も笑顔を向けたのですが、……あら、少々視線が突き刺さってきます。ちらと見ると、爽真さんはすぐに視線を外してしまいました。相変わらず素直ではありません。耳はあんなにも赤くなっていますのに。
「ねえってば、ほのかも見たっ?」
「ええ、もちろんです」
「あ、杏里、俺も! 俺も見たぜ!」
 私たちの返事に、杏里さんはにっこりと笑顔。可愛らしいことです。
 一体何を見たのか。それは恐らく、このクラスのほとんどが分かっていることでしょう。昨日やっていて注目に値すべき番組といえば簡単に絞られます。現に私たち以外でもその話題で持ちきりのようでした。
「『となりの天空のモロモロの宅急便が崖の上の墓で紅のモロモロをすませばモロモロ姫と神隠し』! とうとう最終回だったね、ドキドキしちゃったぁ」
「そうですね……最終回にふさわしい盛り上がりだったと思います」
 にっこりと頷けば、そうでしょそうでしょ、と身を乗り出してくる杏里さん。隣では爽真さんがしきりに同意しています。
 『となりの天空のモロモロの宅急便が崖の上の墓で紅のモロモロをすませばモロモロ姫と神隠し』。早口言葉ではありません。れっきとしたアニメです。霧生ヶ谷ケーブルテレビ局がオリジナルに作った物語で視聴者の注目を一心に集めていたのでした。それが昨日をもってとうとう最終回。見逃すわけにはいきません。録画もばっちりです。
 一度話し始めれば、そこは元気な小学生。止まるはずがありませんでした。幸いにも本鈴はまだ。私たちはここぞとばかりに、輪になってさらに盛り上がりました。
「モスカが『人がモロモロのようだ!』って叫んだときは鳥肌が立ったぜ」
「うんうん、本当にモロモロみたいだったね」
 確かにあれは、うじゃうじゃいて気持ち悪いほどの細やかな描写でした。
 それにしても真っ先に口を開いた爽真さんは、きっと杏里さんと話したくてうずうずしていたのでしょうね。微笑ましいとでもいいましょうか。つい私も笑顔になってしまいます。
「飛べないモロモロはただのモロモロだーって飛び立っていったときはカッコ良かったー!」
「モロモロが空を飛ぶなんて感動だよな。しかもアニメのくせに相変わらず動く動く」
「でもさ……飢えてるときに『モロ子! それモロ団子やない……金のモロモロや』って、うぅう」
「金のモロモロを売って生き延びることができて良かったよなぁ……!」
 あらあら、どうやらお二人とも涙もろいようです。そっとハンカチを手渡すと杏里さんは笑顔で受け取ってくれました。爽真さんは袖でぬぐったようですけれど。意固地ですね。
「あとあれだろ、主人公の両親がモロモロにされちゃって」
「あー! マラマラの中に放り込まれて、おまえの両親を当ててみろってやつだね!」
「あれ難しかったな。俺分かんなかったし」
「あの中には本物がいなかったんですから分からなくても当然かと」
「ぐっ……そういう瑞原は探してみなかったのかよ」
「いいえ? 共にハラハラとしながら探してみましたが」
「……そんな笑顔であっさり言われても勝った気になんねえ」
 ぶつぶつ言いながら、爽真さんは溜息を一つ。
 それにしてもマラマラの登場。あれには私も驚かされました。マラマラとはそもそも、モロモロのいわゆるパチモンというやつです。だというのに、まさかあのアニメはそれを逆輸入してしまうとは。底が知れません。
「何はともあれ、最後はモロモロから人間になったヒロインに相手役が『結婚しよう』とプロポーズ、ハッピーエンドで良かったですね」
「うん! 私泣いちゃった」
「女ならば一度くらい、あのように直球で告白されてみたいものですね」
「そうだね、きっとドキドキしちゃうもん」
「――爽真さん、顔が赤いですよ?」
「っ、瑞原お前、分かっててやってんだろ!?」
 さて、何のことやら。分からないことを責められても悲しいばかりです。
「あああ何だよその顔! 俺が悪いのか!? おい!?」
「いえ、私は何も」
「目で語るなチクショウ!」
「どうしたの、ほのかも爽真くんも」
 騒がしい人です。が、そこが爽真さんのいいところでもあるのでしょう。彼の激しいまでの一途さは私も知っているつもりです。肝心の杏里さんには残念ながら伝わっていないようですけど……まあ、私にはどうしようもありませんから見守っていることにしましょう。
「ねえねえ、そういえば『となりの天空のモロモロの宅急便が崖の上の墓で紅のモロモロをすませばモロモロ姫と神隠し』って今度実写化するらしいよ?」
「まあ」
「マジで? ……あれを実写?」
「楽しみだよねー」
「そうですね。是非見たいものです」
「しかもしかも! あれって実話に基づいて作られたって噂があるらしいの!」
 ――実話、ですか。あの摩訶不思議な物語が。
 杏里さんは目を輝かせ、爽真さんは顔を引きつらせました。杏里さんが何を考えているのか如実に分かったのでしょう。
「だからね、」
 まあ、あくまでも噂の域を出るものではありません。ですが、だからこそ想像の幅も広がるというわけでして。それはきっと、ワクワクと楽しいものになるわけで。
「不思議探検ツアー、出発だよ!」
「ええ、了解しました」
「え゛っ……お、俺だって!」
「わーい、二人ともありがとう!」

 私たちはテレビもゲームも楽しみますし、外で動き回るのも楽しみます。楽しいものは楽しいのですから、どちらかだけを選ぶ必要なんて、ありませんものね。


「なあ、『となりの天空のモロモロの宅急便が崖の上の墓で紅のモロモロをすませばモロモロ姫と神隠し』の次にやる番組って『モロットモンスター』だろ? 楽しみだよなあ」
「『モロモロゲットだぜ!』ってか? でもさー、あれ、原作だと伝説のモロモロが増えすぎててちょっとなー。価値が薄れてるみたいな。俺は初期の方が好き」
「大人の事情ってやつだろ、いいじゃん楽しけりゃ」
「まあそうだけど。あ、昼休みサッカーやるか?」
「あー、やるやるー!」

 皆さんの楽しげな話し声や笑い声。それらをかき消すような本鈴の音を聞きながら、私はおっとりと笑みを浮かべました。
 今日も蛙軽井小学校は平和です。

 

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