シェアワールド@霧生ヶ谷市企画部考案課

セカキュー日誌(其の4)

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タイトル:「全てを刈る影」

暴れようが狂おうが、しょせんは牛や鹿でしかない。
我らが『キリコのたて』面々は今日もはよから「金鹿の酒場」でたむろしながら持ち物確認をしていた。
「ねぇ、キリコちゃん。今日はどちらへ?」
すっかり顔なじみになった店主のあだな姐さんがキリコへ声をかけてくる。
「二階は制覇したしそろそろ三階かな」
店主の顔がすっと引き締まる。冗談口叩いているいつもの表情から程遠いそれにキリコもなにごとか察したようだ。
「姐さん、なにかあるの?」
「さぁね」
「さぁねって分かんない。それじゃ」
「二階までで胸に抱いた夢や野望を打ち捨ててエトリアから去った背中をたーくさん見てきただけよ」
「ふーん」キリコには「危機感」という言葉が生まれながらにして頭の中の辞書から欠落している。祖父がジョークで作ったビー玉サイズの中性子爆弾をオモチャにしていたと聞いて他人事ながら血が引いたものである。
「逃げることは恥じゃないって覚えとくのよ」
店主の言葉を背中に受けて我々は出発した。

地下三階層。
足を踏み入れた途端、感じたことのない、張り詰めた空気が全身を刺す。
殺気だ。混じり気のない殺気。
二階層までは穏やかなものだった。ねずみが地を駆け、うさぎが跳ね回り蝶々が舞う。のどかな、それはのどかな。
だが、ここは違う。何かが違う。
出会った瞬間、死を意味するような、
圧倒的な恐怖。
ひゅん。
ひゅん。
何かが空を切っている。
ひゅん。ひゅん。
f.o.e.だ。世界樹地図に早々と禍禍しい点が浮かぶ。しかも真後ろに!
「アラトくん。フロントガードッ!」
キリコの声に反応し僕は技を発動させ、相手と間をとった。
「かまきり?」
「カマキラスに一票」
「あたしもキリコ姐さんに一票」
「マスター、カマキラスの定義、入力してください」
「我輩、そんなことを言い合っている場合かと具申」
アクマロの言うとおり、ゴジラのライバルかどうかなんてこの場合、些細な問題に過ぎない。
「エネミーアピアランス」には「全てを刈る影」と表示されている。全てを刈る影、か。いぶし銀のように鈍く光を放つ外骨格は何物をも通さぬような金属質にみえる。
ひゅん。ひゅん。一対の鎌を振る音が空気を振動させ、我々を脅かす。事実、追いつかれていた。
「いっけー」
僕がまずスクラマサクスを奴の横腹に突き立て……立たない!
「そんな大鎌、当たらなければなんてことー!」
ヒナコがトリックステップを発動。
がしかし、そんな足止めさえも力技で断ち切り、まずアンジェーが切り刻まれた。アクマロのキュアも追いつかない。それどころか詠唱を唱えきるまでに腰斬された。
「フロントガード!」僕が唱える横で再度のトリックステップに挑戦するもの、返す鎌で宙を舞うヒナコ。そして僕もすぐその後を追った。キリコの背中が小さく見えた……。

「五振りよぉぉ~ぃ」
そう、キリコが管を巻いている通り、たった、鎌の五振りで我々は全滅の憂き目にあってしまったのだ。
今は、『キリコのたて』メンバーが額を付き合わせての戦術会議真っ只中である。さすがのキリコも危機感というか、ごり押し一辺倒では勝てぬと悟ったのかしきりに唸っている。
「カマキラスには物理的な攻撃は効果薄」
見てはいないがキリコの雷の術式は効いたらしい。そこでの結論はメンバー換え。
「誰か、そうだなぁ。バードの知り合いいない?」
ヒナコが自分を指差すがいまさら乗り換えもいかない。無念と呟きながらアンジェーの巻き髪を三つ編みに編みなおしたりしている。
「カラオケの達人でいいなら一人心当たりが」
リンタロウが手を挙げる。
「おし、リンタロウくん。お願いするわっ!」

後日。
倫太郎が式王子港市に帰って、僕らの目の前に連れてきたのは年齢不詳のおねえさんだった。
「初めまして。柏木未由と申します。歌って塗れるデザイナーです。ミュウって呼んでね~」
未由さんは倫太郎の映画友達なのだそうだ。なかでもホラァ映画がお気に入りで二人してレイトショーに突撃しているらしい。殺伐としたこの地には相応しい人材なのかも。
「それで未由さん、歌唱のほどは?」
「アニソンなら少々たしなんでおりますわ」
柔和な笑顔が更ににこやかになる。アニソンがカマキラス……全てを刈る影に通用するだろうか。
PCがないのをぶつくさ言いながらアンジェーに羊皮紙に書かせた目標がこれだっ!

(壱軍)
パラディン:アラト
防御陣形を覚える。
ダークハンター:アンジェー
アームボンテージで縛れ! 出来れば憤怒の力も。
メディック:アクマロ
医療防御まで頑張る。
アルケミスト:キリコ
電撃に磨きをかける。
バード:ミュウ
火劇の序曲まで覚えて火力アップ!

(ベンチ)
ソードマン:リンタロウ
一休み一休み
レンジャー:ヒナコ
不貞寝

……
「我輩、ミュウ殿の装備を揃える金子が足りぬと具申する」
誰もがキリコから目を逸らした。

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