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SS:織姫彦星コンテスト

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その、「織姫・彦星コンテスト」のチラシを持ってきたのは刀岐乃だった。
当然、RANKと一緒に出るつもりだったが、自分たちだけでは気恥ずかしいような思いもあって、クレージュに話を持ちかけた。
クレージュ自身は二つ返事で承諾し、七海が興味を示してきたのをこれ幸いとばかりに七海とクレージュでエントリーすることにした。

「着物はどうしましょう?」
「どうせなら、コンテスト用にデザインしてもらって新しく仕立てない?」
「さんせー! 七海、あんまり着物持ってないし」
「それだと、コンテスト終わったら着られないぞ」
俺は着る気は無いが、という言葉を飲み込むRANKに構わず他の3人は、普段着に仕立て直すだの、いっそ礼装にするだのとはしゃいでいる。

絵心に長けた朱居まりあと鴻屋心太に相談すると、華やかだが普段でも着られる着物を仕立てた上で、コンテスト用に羽織や飾り物を着用しようということになった。

翌日、早々に手配された反物見本を手に、盛り上がる刀岐乃とクレージュの姿があった。
「七海ちゃんにはこのつつじ色なんてどう?」
「こっちの淡紅藤も似合いそうですよ~。それより刀岐乃さま、さっきの若紫あわせてみましょうよ~」
「えー、私には派手よぉ。あ、この薄萌葱もいいわね」
RANKと七海も同じ部屋にはいるものの、七海は二人に着せ替え人形よろしく次から次へと見本の反物をあわせられ、何語を話してるのかすらワカランと言いたげなRANKは部屋の隅で寝転がっていた。
「RANKさまにこの紺藍はいかがですか~? 若紫の色と並べばいい感じになると思いますよ~」
「そうねえ。それなら……」
刀岐乃の言葉を最後まで聞かず、RANKは足音を立てないように細心の注意を払いながら、その部屋を抜け出した。

数日後。

淡紅藤に白菫色で小花の刺繍が入ったものは刀岐乃。
鉄紺一色できりっと仕立てられたのはRANK。
若紫を基準に、紅紫と梅紫へのグラデーションがデザインされたのは七海。
青藤色に藍白で大きく図案の入ったものがクレージュ。

4着の着物が仕立て上がり、4人の手に渡ると、刀岐乃の提案で早速試着することになった。

「お、なんだRANK。ずいぶんと渋いじゃないか」
真新しい着物に身を包んだRANKに、声をかけるものがあった。
「ああ、摂政さま」
声のほうを振り返ると、黒埼が書類を抱えて足を止めていた。
「例の七夕のコンテストですよ。なんていうか…、押し切られて出ることになっちまって」
「ははは。それで衣装の試着というわけか」
「そうです」
「早く見せて来い。刀岐乃が惚れ直すぞ」
「せ、せ、せっしょ、なを、なに、なにをおうう」
うろたえるRANKの姿を高らかに笑い飛ばしながら執務室へと歩き去る黒埼だった。

「準備できましたか、RANKさま?」
黒埼と入れ替わりにクレージュが声をかけた。彼もまた、手にしたばかりの着物を着こなし、なかなかの風情を演出している。
「おお、いい感じだな、クレージュ」
「ありがとうございます~。そろそろ女性陣も着替え終わった頃でしょうか」
話しながら一緒に廊下を歩き、刀岐乃と七海が着替えているはずの部屋に向かう。
障子越しに声をかけると、すぐにいいよーと、七海の元気な返事が聞こえた。

二人が障子を開けると、七海が刀岐乃に着付けの仕上げをしてもらっているところだった。
「お二人ともお似合いです~」
クレージュが素直な感想を口にする。
「ありがとう」
笑顔で応じた刀岐乃が、RANKに目線をおくると、RANKは真っ赤になって横を向いていた。こっそりガッツポーズをしていた、というのは後からクレージュから聞いた話だが。

「どうしました?」
七海が自分をじーっと見ているのに気づき、クレージュが声をかけた。
「そっちがいい」
「へ?」
「そっちの着物着たい」
「ええ~?」

七海の突然の発言と、面白がった刀岐乃の全面的な協力とで、結局クレージュの織姫と七海の彦星がコンテストに出場することになった。





そして、クレージュ織姫は越前藩国で絶大な人気を誇るようになるのだった。

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