映画 『処刑人』 The Boondock Saints @ wiki

Boulevard of Broken Dreams

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Boulevard of Broken Dreams


アメリカの映画・音楽エンターテインメント系ケーブル/サテライトTV局 E! で放映されているドキュメンタリー・シリーズ "Boulevard of Broken Dreams" の第7回前半で、“処刑人”の監督トロイ・ダフィーが特集されました(2007年3月3日初回放送)。

日本での放映も期待されるところですが、未だそのような情報も聞かれないので、せめて日本語の超訳だけでもこちらに載せておこうと思います。番組本編の訳のついでに、番組公式サイトに掲載されている本編からカットされた未放映インタビュー・ビデオの日本語訳もページ下部に載せてあります。

見どころとしては、トロイのインタビューでは2007年6月現在で最新のものという点と(但し、残念ながら続編に関する本人のコメントは一切ありません)、大変珍しいことにショーン・パトリック・フラナリーも僅か二言だけですがインタビューに応じて“処刑人”についてコメントしているところでしょうか。また、トロイの栄光と挫折を追ったドキュメンタリー映画 "Overnight" とは違い、直接トロイ側の口から事の顛末が語られているのがポイントです。

このシリーズは、ハリウッドの映画・音楽業界人の挫折を描く30分間のドキュメンタリー番組で、1回につき2人ずつフィーチャーされており、トロイ編は正味約15分です。内容は、トロイ本人を始め複数の関係者への個別インタビューを軸に、ドキュメンタリー映画 "Overnight" からの映像を断片的に織り交ぜた構成になっています。


インタビュー出演者:
トロイ・ダフィー … “処刑人”監督・脚本
クリス・ブリンカー(以下、CB) … “処刑人”共同プロデューサー、トロイの旧友
ショーン・パトリック・フラナリー(以下、SPF) … “処刑人”出演者、コナー・マクマナス役
ビリー・コノリー … “処刑人”出演者、イル・ドゥーチェ役
テイラー・ダフィー … トロイの弟、トロイのバンド "The Brood" の元ギタリスト
マイケル・レクトシャッフェン(以下、MR) … "The Hollywood Reporter"誌



"Boulevard of Broken Dreams" トロイ編 番組本編より


[オープニング・ナレーション]
天国とハリウッドの狭間、そこは“砕け散った夢の大通り”
その物語はハリウッドの歴史と共にある ―― “おごれる者は久しからず”


トロイ: 俺の名前はトロイ・ダフィー。“処刑人”の脚本家、監督だ。
MR : “一夜にして得た成功”なんてものはあり得ません。それはハリウッド最大の作り話に過ぎないのです。ところがそのせいで、『私は良い脚本を持っている、アイディアを持っている、歌がある、バンドがある ―― だから簡単に名声と富を手に入れることだって出来る』と考える人が後を絶たないのです。


[ナレーション]
1990年代半ば、トロイ・ダフィーはある目的があってロサンゼルスに移り住んだ。

トロイ: 俺はロック・スターになるためにハリウッドに来たんだ。理由はそれだけだった。音楽とギターを弾くことにしか興味がなかったね。それだけさ。J. Sloan's というのは、俺が働いていたバーのことで、俺にとっては特別な場所だったんだ。俺はドリンクを作ったり、用心棒として働いた。その後、弟がやって来て、一緒にバンドを組んだんだ。
テイラー: 僕たちのやってた音楽は……、そうだな、良かったよ。僕たち自身が作ったものだったからね。誰だって、自分の手で作った曲は最高だと思うでしょ?


[ナレーション]
しかし、トロイの夢は音楽での名声だけではなかった。

トロイ: 同時に、俺は用心棒としてバーの入口に立ちながら、日々、自分で考えた脚本をノートに書き溜めて行ったんだ。
MR : ハリウッドでは誰だってズボンのポケットに脚本を忍ばせているものです。ゴミ収集の人だって映画脚本を書いていますよ。みんな自分の書いたものが特別だと思い込んでいるようですね。これで自分が脚光を浴びるって。
CB : 僕が映画会社で働いていた時、トロイのバーに行ったんだ。その時、トロイはカウンターの向こうでバーテンダーをやっていたよ。『ヘイ! 最近はどうしてるんだい?』って訊くと、彼が『脚本を書いて音楽をやってる』って答えてね。で、僕が、『脚本を書いてるだって? ちょっとその話、聞かせてくれよ』と尋ねたんだ。


[ナレーション]
“処刑人” ―― 二人の兄弟の復讐の空想物語で、部分的にダフィーのハリウッドでの体験に基づいている。

CB : 彼は僕に脚本を送ってくれて、それを一晩で読んだんだけど、たまげたよ。『これは凄い! 将来プロデューサーとしてのキャリアをスタートさせるのに、これに関わりたい』と思ったよ。
トロイ: 脚本はほぼ瞬時に受け入れられたよ。“処刑人”のプロジェクトはすぐに立ち上がったね。
CB : 僕は脚本をあるマネージャーに手渡すと、彼はそれをハーヴェイ・ワインスタインにファックスしてくれたんだ。
MR : ハーヴェイは非常に影響力のある人物でした。ハーヴェイとミラマックスが……、つまり、ジョン・トラヴォルタのキャリアを単独で復活させたのは、ミラマックスと『パルプ・フィクション』のクエンティン・タランティーノだったのですから。
CB : ハーヴェイは脚本を買い取りたがっていて、飛行機に乗ってハリウッドにやって来る予定だったんだ。すると今度は、ニューライン・シネマが脚本の買い取りを決定してね。
トロイ: 要するに、その二社の間で争奪戦になったって訳さ。映画化のために俺にすべてを与えるって。
MR : 本当に狂った時代でしたね。
トロイ: ハーヴェイ・ワインスタインに初めて会って、奴が一言目に口にしたのは、『この映画を手に入れるには私は何をしたら良いかね?』だった。俺は、『1,000万ドルとキャスティングの決定権をくれ』と言ったんだ。それからリストを挙げて行って、『俺はこれこれが必要なんだ、ハーヴェイ、実現させてくれ!』と。
MR : ハーヴェイは乗っていたリムジンをバーの前に止めさせ、中に入って行きました。そして、トロイの横に座り、東海岸のバーはどんなに素晴らしいかと思い出話を始めたんです。

[Overnight より: 1997年の NBC ニュースの映像、J. Sloan's からの中継]
リポーター: 伝説の女優ラナ・ターナー[訳注:“郵便配達は二度ベルを鳴らす”で好評を博した1930~60年代に活躍した女優]はソーダ売り場のカウンターで見い出されたという話はみなさんもご存じだとは思いますが、それが酒場であってはいけないのでしょうか?ここは、ハリウッドで最も新参の“ワンダー・キッド”がキャリアをスタートさせたことで知られる場所です。ミラマックスの社長ハーヴェイ・ワインスタインは、ダフィーと交渉するため、このバーにやって来ました。ところが、それに止まらず、彼はダフィーのためにバーを買い取ることで合意し、ダフィーはそのオファーを受け入れました。

MR : メディアがそのことを聞きつけるや否や、話題は“処刑人”のことではなく、ハーヴェイがトロイのためにバーを買い取るということに焦点が移って行きました。
テイラー: 一瞬のうちにあらゆることが変わったよ。兄貴は音楽に夢中でバンドを成功させることに没頭する子供みたいな奴だったのに、全く違った方向に行き始めたんだ。
トロイ: ある日、銀行口座を見たら、突然30万ドルが振り込まれていたんだ。その前の日まで口座には3ドルしかなかったのにな。
CB : “処刑人”は至る所で記事になったんだ。“USA トゥデイ”でも、“ワシントン・ポスト”でも、“ニューヨーク・タイムズ”でも、“ハリウッド・リポーター”でもね。みんなこのプロジェクトのことを知っていた。とんでもない宣伝になったね。


SPF: みんなが“処刑人”の話をしていて、『これはびっくりするほど素晴らしい作品だ』って言ってたね。みんな参加したがっていたよ。

[Overnight より: パトリック・スウェイジー、ビリー・ゼイン、ヴィンセント・ドノフリオ、
マシュー・モディーン、ジェフ・ゴールドブラム、ジェイク・ビジーの各々がトロイと会談している場面]

ビリー: 何か魅力的な感じだったね。まるでラジオで何か良い曲を耳にした時のような感じだったよ。『おっ、これは何だ? これは誰だ?』ってね。他のものにはない、ちっぽけだけど特別な何かだったんだ。新たな生命を吹き込むようなものだった。
CB : まるでハリウッドからの軍事突入を受けたような有様だったね。エージェント、弁護士、プロデューサー、映画会社幹部、俳優といった人たちが続々とやって来ては、この映画に関わりたがっていたよ。

[Overnight より: ジョン・グッドマン、マーク・ウォールバーグがトロイと談笑している場面]
マーク・ウォールバーグ: トロイ、君の脚本は信じられないくらい凄いねぇ。


[ナレーション]
ハリウッドへ移り住んで以来、ダフィーはハリウッドの方から自分の元に来るべきだと頑なに考えていた。そして今やバーを非公式なキャスティング事務所代わりに使っていた。

ビリー: 『こういう男が映画を作る予定で、彼は君とメルローズのパブで会いたがっている』という話を聞かされて、『えっ、パブなんかに行かなくちゃいけないのか? 映画の打ち合わせなのに夜の9時半にバーに行くのか?』って思ったよ。
MR : 話が漏れて次に何が起きたと思います? みんなが映画脚本を手に期待しながら、マーク・ウォールバーグやハーヴェイなんかに会うのを目的にバーにたむろし始めたんです。だから、しばらくの間は、そこが街の人気スポットになっていましたね。
トロイ: 『俺たちはやったぞ!』という凄い感覚があったね。『俺はまだ25歳だけど、世界は俺のものだ』ってね。毎夜パーティーをやって、昼間は一生懸命働いたよ。二度と取り戻せない人生の一時みたいにね。魔法のようだった。


トロイ: 俺はレコード契約を手に入れるため、映画ビジネスで得た名声を利用したんだ。

[Overnight より: バンド・メンバーにレコード契約について発表する場面]
トロイ: ハリウッドの歴史で初めて、まだ姿形も知られぬバンドが契約を手に入れたぞ!


[ナレーション]
1997年、巨体のトロイ・ダフィーは遙か上へと昇りつめた。彼の脚本は驚異的成功を収め、ロック・スターへの夢は手の届くところまで近づいた。すべては二人の友人[訳注:マーク・ブライアン・スミスとトニー・モンタナ]の希望によりドキュメンタリーとして撮影され、彼がハリウッドの歴史を築いて行く様子が記録された。

トロイ: 俺たち全員、彼らに俺たちをカメラで追うがままにさせたんだ。俺たちの友達だったからな。彼らがドキュメンタリーを撮りたいってアイディアを出したんだ。俺はそのドキュメンタリーの表看板みたいなものさ。そうして、俺たち全員が契約書にサインして、彼らに思う存分撮影させたって訳だ。

[Overnight より: 電話をしている場面]
トロイ: 俺はキアヌ・リーヴスが大嫌いなんだよ! イーサン・ホークは才能のないただのアホだ!

[Overnight より: 某プロデューサーと電話で話している場面]
トロイ: これがハリウッドで最高のプロジェクトだと誰もが知ってる。脚本を読んでくれた役者たちはみんな『これは凄い!』と言ってくれてるんだ。

[Overnight より: トロイ側エージェントと会話をしている場面]
トロイ: ジョージ・クルーニーは地球の表面をぶらついてただけの最高につまらない奴だな。

[Overnight より: トロイへのインタビュー映像]
トロイ: クリエイティヴなものを任された時はいつも、自慢しようとは思わないし、困難をやり遂げたと大袈裟に言うつもりもない。俺は牛乳屋が毎週日曜だって2回も配達をするようにきちんと約束を果たすだけさ。


テイラー: 沢山の人が彼にこう言うのを聞いたよ。『君は最高だ、次代を担う期待の星だ、失敗を恐れちゃいけない』って。こんなことは誰であれどんな人に対しても言うべきじゃないよね。でも、結局、起こってしまったからね……。
MR : 彼にも健康的な自我はあったと思います。ところが、彼が手にした成功が彼自身を滅茶苦茶にして、最悪の行き過ぎた行為に走らせたんです。
CB : トロイがミラマックスの幹部のひとりに会ったんだけど、ミーティングは不調に終わったんだ。トロイとその人はお互い気が合わなかったんだよ。その人はハーヴェイの右腕のひとりだったんだけどね。


[ナレーション]
舞台裏ではドキュメンタリーのカメラが回り続け、トロイが自己抑制を失って行く様が捉えられた。

[Overnight より: 映画科学生相手のゲスト講義を思い出しながら仲間に講釈を垂れている場面]
トロイ: 俺たちはやってやるぜ。あいつらに見せつけてやるさ! お前は自分のことをしっかりやれよ、馬鹿たれ!

CB : トロイはぶしつけだけど、的を射た発言をする。彼流のやり方はどうしてもアメリカのビジネス社会では受け入れられなかったんだよ。

[Overnight より: タレント・エージェンシーに電話で怒鳴りつけている場面]
トロイ: 俺のこと嘘つき呼ばわりするんじゃねぇよ! あんたは自分で何の話をしているのか分かってんのかよ?!


CB : ミラマックスとの交渉はすぐにダメになり始めたんだ。
MR : ハーヴェイは『ひょっとすると私たちはとても怖い人間と手を組んでしまったのではないか』と恐れを抱き始めたんだと思います。

[Overnight より: マーク・ブライアン・スミスとトニー・モンタナに借金を頼まれ激怒している場面]
トロイ: お前らがどう思おうが俺には関係ねぇんだよ! 失礼ながら言わせてもらうぜ、“くたばれ!!”


[ナレーション]
1997年、“処刑人”の脚本のお陰でダフィーはハリウッドで最もホットな若手監督に祭り上げられた。しかし、それも長くは続かず、やがてプロジェクトは頓挫した。

[Overnight より: 某プロデューサーと電話で話している場面]
電話の声: 君たちは彼女[訳注:ミラマックスの敏腕プロデューサー、メリル・ポスターのこと]に、僕がトロイと一緒にやってるって話したのか? 彼女は電話を取らなかったぞ。
トロイ: そりゃ最高だな……。

MR : エージェントが折り返しで電話を掛け直して来たり、電話を取りすらしないというのは、たいてい良い兆しではないですよね。
CB : ハーヴェイは結局、この映画を製作しないことに決めたんだ。彼は西海岸で起こっているこの状況を聞いて、この先災難になると感じたんだろうね。ハーヴェイに責任があると思うかだって? ノーだね。
トロイ: 俺たちはミラマックスに捨てられたんだ。弁護する機会も何もなかった。俺のエージェントが電話を掛けて来て、『もうおしまいだ』って言ったんだ。当然、俺はあのバーを二度と手に入れることが出来なくなった。
CB : 確かに、悪い状況がしばらく続いたよ。ある時点では、『一体次は何が起こるんだ?』ってずっと考えてたね。
トロイ: レコード会社[訳注:マーヴェリック・レコード]との契約もなくなったって聞いた。先方に行ったら、担当者は不在だと言われてね。彼らにしてみれば、『お前たちとはサウンドトラックを作るはずだったのに、肝心のミラマックスとの映画製作契約を失ったじゃないか。だからレコード契約もなしだ』ってことさ。
CB : 映画製作契約に関してもレコード契約に関しても、オフィスで一生懸命に交渉している最中にこれが起こったからね。本音を言うと、あまりにヒド過ぎて嘘かと思ったよ。


テイラー: 僕は長いこと兄貴に憤りを感じていたんだ。彼が全部ひとりで仕切っていたし、しかも、あのプロジェクトの最中でも崖っぷちを走っているように僕には思えたからね。

[Overnight より: 映画が危機に瀕しテイラーがトロイに音楽に専念してくれるよう懇願している場面]
トロイ: 今までずっと俺ひとりでやって来た。俺が全部やって来たんだ。行き場がなくなったのは俺の映画キャリアの方だ。おしまいさ。だから、お前は口出しするな。くたばれ! くたばれってんだよ! 知ったこっちゃねぇよ!
テイラー: [神妙な面持ちでうつむいて] あんたは俺の兄貴だ……。愛してるよ……。でも、もう我慢の限界なんだ。兄貴はもの凄く変わってしまった。もうポジティヴな方向でものは言えないよ……。

MR : 辞書で“最悪の敵”という単語を引いたら、そこにはトロイの写真が載っているかも知れませんね。
テイラー: [ため息をついて] はぁ……。あの最悪な時期のことを思い出してしまうな……。うん、辛いよ。あの時のことを思い起こすのは本当に辛いね。
CB : そう、新婚旅行とでも舞踏会とでも、どう言ったって構わないけど、そんなお祭り騒ぎは完全に終わったよ。
トロイ: みんな確実に意気消沈してしまったな、バンド・メンバーも映画プロジェクト側もみんな。ミラマックスに放り出されて、ゼロからのスタートよりも悪い最悪な状態になってしまったよ。あらゆる扉が閉ざされてしまった。


CB : 『よし、じゃあ、袖をまくって映画を作らなくちゃ!』って感じになったね。
トロイ: そういう時には、選択肢はふたつしかない。ミルクを欲しがって泣き叫ぶ赤ん坊のように駄々をこねるか、それとも、立ち上がって男になるか。俺は後者を選ぶことにした。
CB : 映画に資金を出してくれる新たなスポンサーを探さなくちゃいけなくなったんだ。
トロイ: 俺たちがすべてを失った時、当時俺のエージェントだったウィリアム・モリスとミーティングをしたんだけど、俺はそのミーティングで強いところを見せて、『俺はくじけないぜ。素晴らしい脚本だってあるし、やりたがっている俳優だっている。今の状況を打開するにはどうしたら良い?』って言ったんだ。


[ナレーション]
映画製作を決意し、ダフィーはある独立系のプロデューサー[訳注:フランチャイズ・ピクチャーズのエリー・サマハ]から資金を調達した。1998年、彼は再スタートを切り、2ヶ月後、彼のバンドはアトランティック・レコードと契約を結んだ。

トロイ: 二度目にして俺たちは映画製作でもレコード契約でも救われた。これは前より現実的なものに感じられたよ。『バーを買ってやるから、さあ、始めよう、坊や』なんてセンセーショナルな言葉はなかったけどね。
CB : 僕たちは『もう二度とこんなマネは出来ないな』って言い合ったんだ。つまり、4ヶ月間パーティーの連続だったし、“見たままが現実だ”ってな風で、人は僕たちの振る舞いを悪行と思っていたしね。『そろそろ初心に戻って映画を作る時だな』って。
トロイ: 俺が主に目指していたものは、この映画を撮影することだったんだ。だから、何をすべきかは分かっていた。俺はシーンごとに俳優たちの意欲をうまく刺激して、俺の頭の中で描く通りに彼らに演じてもらう必要があった。
ビリー: あれはトロイにとっては大きな試練だったね。大事な時だったと思う。雰囲気で何となくそうだと感じ取ることが出来るよね?
MR : 彼は多分こう思ったでしょうね、『映画が出来たら、ハーヴェイがとんでもないミスを犯したと証明してみせる。映画は何千万ドルもの収益を上げる。俺たちには賞の嵐が吹き荒れる』ってね。それに、その時点ではまだ彼は名声と富への切符を手に入れることが出来ると思っていたのではないでしょうか。


[ナレーション]
3年に渡る紆余曲折を経て、トロイ・ダフィーはようやくプロジェクトを完成させた。しかし、ハリウッドではほんの一握りの人々しか関心を示していないようであった。

MR: トロイ・ダフィーの件については、ひとつの重要な教訓と言えます。『上り調子の時には、他人に対しての接し方に気を付けなさい。落ちぶれた時に再び会うこともあるのだから』という昔のセリフの通りです。


[ナレーション]
アメリカでは配給会社がひとつも見つからず、ダフィーは身銭を切り[訳注:実際はインディカン・ピクチャーズが配給元となりトロイは費用の一部を自費で負担した]、5つの映画館で“処刑人”を一度だけ上映することになった。しかし、映画はわずか3万ドルの収益しかもたらさなかった。

トロイ: その後、長いこと絶望のどん底に沈んでいたね。ビリー・コノリーが上映会の時にやって来て俺に話し掛けてくれたんだけど……。
ビリー: 私はこう言ったんだよ、『この映画の人気がどの程度になるかは分からない。けど、きっと成功するよ!』って。
トロイ: その時、俺はまだ落ち込んでいたから、彼の言うことは信じなかったんだ。


[ナレーション]
事実、観客や批評家はトロイ・ダフィーを評価し始めた。しかし、映画製作過程を記録したドキュメンタリー "Overnight" が公開されると、その評価は大きく後退し、トロイの悪評が固まってしまった。

トロイ: あのドキュメンタリーか……、俺はまだ見ていない。今後も見る気はない。自分の歴史を振り返るのは最後でいいさ。反吐が出るぜ。


[ナレーション]
トロイのキャリアは終わったと思われた。しかし、ボストン出身[訳注:実際の生まれ育ちはコネチカット州とニューハンプシャー州でボストン居住歴はない]のバーテンダーは戦いに尻込みはしなかった。

CB : ハリウッドの一部特定の人たちの中には、『トロイはもう終わった。映画を一回作って、もうそれでおしまいさ』と考えてる人もいたよ。
トロイ: 彼ら[訳注:大手レンタルビデオ・チェーン "Blockbuster" のこと]は名前を見て、『ああ、あのバーの人か! ハーヴェイ・ワインスタインとの!』って気付いてくれて、俺は『あの駄作を“ストレート・トゥ・ビデオ”[訳注:劇場公開やTV放映を経ずダイレクトに映像ソフトとしてリリースすること]にしたいんだけど、どうだい?』と尋ねた。彼らは何があったのか知らなかったんだ。
CB : “処刑人”は大成功を収めたよ。アメリカではDVDの消費者セールスのランキングでトップ10に入る大ヒットを記録した。超大ヒット映画が並ぶランキングでだよ。
ビリー: 口コミだよ! 口コミだったんだ。そういうパワーがあの作品にはあったんだよ。
CB : 映画会社の最高幹部たちと話をしたんだ。彼らはこんな感じで言ってたよ、『ただの映画ではこんなの起こり得ない』ってね。


[ナレーション]
“処刑人”はDVDで3,000万ドル以上の売上げを記録し、挫折を味わったこの映画製作者は映像ソフトで名誉を挽回した。このDVDの成功にも関わらず、トロイ・ダフィーは今もなお名声の奪還に向けて行動し続けている。

MR : 結局、トロイの最大の敵は自分自身だったと思います。彼はこの大きな“ハリウッド・ドリーム”の渦の中に巻き込まれてしまったんです。彼は若くて、純真で、感受性豊かでした。今は当時より10歳年を取っているのだから、10歳分賢くなっていて欲しいと思いますね。
トロイ: もし、かつての俺のようにうるさいガキが間違ったことを何度を言い、間違ったことを何度もやり、無礼な振る舞いをして、人と争い、人を傷付けたとしたら、多分、俺もそいつとは一緒に仕事をしないな。ハリウッドのせいには出来ないよな。
MR : 言わせてもらえば、この15分間は最高の時間でしたね。されど、これは多くの人が手に入れることの出来ない15分間なんです。
トロイ: そこから学んだのは、友達に自分をカメラで追い回させるなってことだな。

[Overnight より: “処刑人”撮影中の場面]
トロイ: カット!


[キャプション]
トロイ・ダフィーは、しばしば映画科の学生たちに招かれ、自分がハリウッドで犯した失敗について講演を行っている。そして、彼は目下“処刑人”の続編を計画中である。


[END]



"Side Trip from Boulevard of Broken Dreams" 未放映インタビュー


[オープニング・ナレーション]
ある映画製作未経験の監督が自制心を失ったエゴでハリウッドを震撼させ、自身のキャリアを危機に陥れました。今回の Vine 独占 "Side Trip from Boulevard of Broken Dreams" は“処刑人”の監督トロイ・ダフィーです。


[トロイ・ダフィー未放映インタビュー]
いいや、俺は誰にも謝罪する気はない。

どんなことでもアーティストが何かをする時ってのは、常に世界を変えるつもりでやってると俺は思うんだよ、それが本当に重要な意味を持つ心の奥底ではさ。

例の一件はあの最中から大いに楽しんでたよ。

ミラッマクス、つまり、ハーヴェイ・ワインスタインは俺には衝撃的だったね。ハーヴェイは俺の脚本を1ページごとファックスで受け取り、ロサンゼルスに向かうジェット機の中で着陸する前には読み終えていた。それで、到着すると誰かに電話を掛けて、『この若造に今晩、今すぐに会って話をしたい』って言ったんだ。

奴が『この映画に使いたい役者はどうするんだ?』って訊いて来たんだ。だから、俺は自分が望む夢のような全俳優リストを一気に書き出して、『彼らはやってくれないな』とか『あいつらにやって欲しいな』ってな風に話を進めて行ったんだ。話が行ったり来たりして、『彼はまあまあだ』とか『こいつが凄い、あいつが凄い』ってやってると、最後には奴はこう言ったよ、『もし君が私に“処刑人”をよこさないとなったら、君が今挙げた役者を全員私の映画に使うぞ。そうしたら、君は彼らを誰一人として起用出来なくなるんだからな』って。

俺たちの関係がおしまいになった本当の原因はと言うと、ミラマックスに関して言えば、単にキャスティングで意見の違いがあったからだよ。いくつか原因はあるけど、そのひとつが事態を大きく変えて、俺たちはミラマックスから放り出されたような感じになったんだ。ミラマックスの言いなりにキャスティングしてたら、とんでもない目に遭うぜ。

扉は文字通り閉ざされて、誰も耳を貸そうとしなかったね。

ハーヴェイについては……、今言ったように、俺は奴のこと初めは気に入っていたんだけど、それだけさ。奴はマフィアのような策略を俺に仕掛けて来たんだよ。多分、奴だって自分が望めば人と摩擦を起こすような態度に出られるんじゃないか、と言うか、実際確かにそういう輩だったな。俺たちはお互いに摩擦を起こしてたと思う。

でも最後にはやっぱり俺が正しかったね。“処刑人”がその後どうなったか考えてみなよ。俺が下すことになったクリエイティヴな決断は全部正しかったよ。まさに正しい決断だったね。とは言え、この業界には駆け引きってものが必要だと今は実感してる。これからは俺も駆け引きをして行くさ。

手厳しいレッスンだったけど、直に終わらすよ。


[エンディング・ナレーション]
この後も、Vine 独占 "Side Trip from Boulevard of Broken Dreams" をご覧下さい。


…………………………
番組公式サイト 掲載の番組未放映インタビュー・ビデオ "Side Trip from Boulevard of Broken Dreams" より



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