映画 『処刑人』 The Boondock Saints @ wiki

Director's Bible

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snao

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2003年頃、公式サイトに「Director's Blble」として、『処刑人II』の初期稿の一部が公開されました。
公開されたのは冒頭のほんの一部ですが、初期の構想では『処刑人』のラストシーンからそのまま繋がる形で続編を作る予定だったようです。
資料として興味深いので、こちらにその内容を載せておきます。


~ Boondock II ~
~ A Director's Bible ~
Page #1. This is the actual text from the sequel script. I gave you scene #2. It's pretty easy to figure from this that I am revisiting the final scenes of Boondock I (courthouse scenes) in the first minutes of Boondock II. I isolate each scene on a single page. Some are as short as EXT. FBI BUILDING, ESTABLISHING SHOT -- DAY. Say a scene takes 6 and 1/2 pages. I do it on seven and leave the last half page blank. This is just for filing the whole bible together, secretarial purposes.
You may notice the red boxes I drew in. These are shots I have to pick up that are important to me. What is written before them are shots I make sure I pick up before we move on to another scene. "They look to their stoic father" for instance. I'll set the brothers up in a two shot, catch the dialogue and have them turn to camera so we can see the "nervous-ness" on their faces as they look to their father.

1ページ目。
これは続編の脚本の本文そのものだ。ここではシーン2を紹介しよう。これを見れば、続編の冒頭では『処刑人1』のラストシーン(裁判所のシーン)を引き継いでいることが容易に分かるだろう。それぞれのシーンを、紙の片面を使って書き分けていく。中には、「屋外、FBIの建物、カメラは固定−日中」といった記述だけのものもある。一つのシーンに6ページ半を使っている。7ページ使って、最後のページの半分は空白にしているんだ。これは、「バイブル」のすべてをまとめてファイルする時、事務処理の都合上でそうしているだけなんだ。
俺が書き込んだ赤い四角に気付いたかな。これらは、俺にとって重要な意味を持つショットを抜き出したものなんだ。四角の前にある文章は、他のシーンに移る前にハッキリさせておきたいショットだ。「彼らは、彼らの厳格な父を見た」というのがその例だ。俺は兄弟をツーショットで映し、セリフをとらえ、彼らをカメラの方に振り向かせる……彼らが父を見た時の、「ナーバスな」表情がよく見えるように。

(1ページ目の画像)
屋内、警察バンの後ろ、同時刻

後ろには二卵性双生児のコナー&マーフィーのマクマナス兄弟(29歳)と、彼らの無気味な父親「Poppa"M"」がいる。青年たちはジーンズ、ブーツ、海軍のPコートと黒いサングラスという出で立ちである。

Poppa"M"は、まるで神のような佇まいで、ごま塩の口ひげと顎ひげをたくわえ、黒いトレンチコートと帽子をかぶり、真っ黒な影を身にまとっていた。

銃に弾を装填する時の音は、兄弟とPoppa"M"の気分を大いに奮い立たさせる。青年たちはトーラスの9mm銃を持ち、父は12口径ショットガンの銃把を握る。

マーフィー(強いアイリッシュ訛りで)
   心配か?

コナー(強いアイリッシュ訛りで)
   ああ、少し。

彼らは、彼らの厳格な父を見る。Poppa"M"はまさに静謐であった……彼がアイリッシュ訛りでラテン語の祈りを捧げている時も。 −−−暗転


Page #2. Here I put in the slug line from the scene at the top and have four categories. Story, Point, Notes, and If We Have Time. Let's take STORY: You'll notice I have not referred to the characters by name. I must place myself in the position of a person seeing this for the first time and what they will see is three guys loading weapons in the back of a meat wagon. After all the shots are executed I read this once again to make sure that I told this small story. You'd be surprised at how easy it is to get lost in "lighting, performance, gunfire" and all the fun stuff and realize only afterwards that you missed something quintessential to the telling of your story. Many longer scenes have longer stories, more intricate ones. POINT: This one's very important. What do I want to communicate to an audience during my little scene. You can show two guys getting up in the middle of mass and walking onto the altar, kissing the feet of Christ and leaving a church. But many of you said that scene was all you needed to know Connor and Murphy were brothers...and they had no dialogue in the church. My point was to try and communicate just that thing to you. NOTES: This is more structural. It includes sound concerns like Dad's Latin murmuring throughout the scene. This aspect, for instance, is something we would have to get 'on the day'. I have to translate a bunch of biblical shit into Latin, have everyone stand still, put a mic upto Billy and have him murmur about five minutes of stuff. This will be layered in to my satisfaction later on, in editing. There are similar "look and feel" concerns in my notes as well. IF WE HAVE TIME: This is a wish list. If I get all that other shit and still have time left over, we try and set up for the shot I've listed. Sometimes you get gold, sometimes you get shit.

2ページ目。
ここでは、そのシーンに大まかな注釈を付け加え、4つのカテゴリーに分けている。「ストーリー」「ポイント」「ノート」、そして「もし時間があったらリスト」だ。まず「ストーリー」から説明しよう。ここではキャラクターの名前を出していないことに気付くだろう。俺はまず、初めてこのシーンを観た人の気持ちになる必要がある。その人の目で見ると、それは3人の男が警察バンの後ろで銃に弾を装填している場面に見えるだろう。すべてのショットを撮り終えた時、俺はもう一度これを読んで、これを短い物語にまとめる。「照明、演技、銃撃戦」、そしてすべての娯楽的要素の中に埋もれて迷子になってしまうことがいかに簡単か驚くだろう。しかるのち、自分の物語について伝えるための典型的な何かを見失ったことに気付くだろう。シーンが長くなればなるほどストーリーは長くなり、複雑になっていく。「ポイント」これは非常に重要だ。この小さなシーンの間に、俺が観客に伝えたいことだ。君達は、2人の男が群集の中から立ち上がり、祭壇へと歩き出し、キリスト像の足にキスして、教会から去るシーンは知っているだろう。しかし、ほとんどの人は、このシーンはコナーとマーフィーが兄弟であることを知るためのものであり……そして彼らは教会の中では一言も発していないと言う。それこそが、俺が君達に伝えようとしたポイントなのだ。「ノート」この部分はより具体的になっている。シーンの間を通して呟く父親のラテン語のような、音に関する事柄も含む。これは、例えば、「当日」にできるようにならなければならない事だ。俺は聖書みたいな文句をラテン語に訳し、皆をじっと立たせたまま、ビリーにマイクを装着させ、およそ5分間たっぷり、呟いてもらわねばならない。この音は後で編集する時のため、俺が満足するまで蓄えられる。俺のノートにはまた、「ルック&フィール(見た目と感じ)」というのに似たようなことが書いてある。「もし時間があったらリスト」これはウィッシュリストだ。もし他のこともすべて成し遂げて、まだ時間が残っていたら、俺がリストに載せておいたショットにとりかかりたい。時にはそれは黄金であり、時には糞であったりする。

(2ページ目の画像)
屋内、警察バンの後ろ、同時刻

ストーリー:3人の男が車両の後ろで、武器に弾を装填している。2人はよく似た外見で、20代後半か30代前半のように見える。残る1人は、50代後半だ。

ポイント:言葉による説明無しで、3人の男が父親と息子たちであることをハッキリ分からせる。また、このシーンでは緊張感を持たせ、我々がある種の目的に関する意図を持っていることを匂わしつつ、深い信頼を示すシステムがここで演じられ、そして兄弟は明確にはその行動を取ってはいない。我々は、Poppa"M"がより堅固で確固とした信念を自分自身に持っていることを見せねばならない。

ノート:少し時間差を置いて、青年たちの横顔をクローズアップする。まったく同じ動作で武器を扱うところも見せる。父親のラテン語の呟きは、シーンを通して、バックグラウンドに流す。コナーとマーフィーが弾を込めて安全装置を起こした後、お互いの顔を見て話す。父親が「In Nomini Patri, et Fili, et Spiritu Sancti...amen.」と祈りを終えた時に、彼らは父親の顔を見る。彼は12口径を持ち上げ、息子たちを見る。あるいは、コナーとマーフィーが「Amen.」と続けて、同じ動作でPコートに袖を通す時でもいい。

もし時間があったらリスト:3人が、ロザリオを振り子のように揺らしながら警察バンに乗り込むところをスローモーションで見せよう。彼らは自分たちのジャケットと装備を運ぶべきなのだ。外に出ていく時、まるで彼らがきらびやかな勲章で飾られているかのように見せるために。サングラスがあればもっといい。


Page #3. This is my shot list. To get my point and story, I figure I need five, well executed shots. Though here I have chosen hand held photography, in many cases I'll do steadycam shots or dolly shots, even cranes sometimes, the way we did on the roof in BDSI when Connor jumped off with the toilet. I figure hand held here because we're in a moving vehicle and nothing is really "smooth" when you ride in cars. Also it just feels right.

3ページ目。
これがショットリストだ。ポイントとストーリーを作るために、俺は5つの完成されたショットが必要だと考えた。ここでは手持ちカメラを選択したが、多くの場合、ステディカムやドリーショット、時には『処刑人1』でコナーが便器を抱えて飛び降りた時の屋上のシーンのようにクレーンも使う。俺が手持ちカメラを選択したのは、ここは動く乗り物の中のシーンであり、人が車に乗る時というのはまったく「スムーズ」ではないからだ。それがまっとうな感覚だ。

(3ページ目の画像)
#1手持ちカメラ、時間差でズレた兄弟の横顔。彼らの一致した動作を取り上げる。

#2手持ちカメラ、ローアングルから、ラテン語を呟きながら12口径に装填するPoppa"M"を映す。

#3手持ちカメラ、3人が装填しているところを主に映す。

#4手持ちカメラ、会話する兄弟のツーショット。「Amen.」のセリフと、Pコートを着る瞬間を映そう。

#5手持ちカメラ、クローズアップで、取り外されたクリップ(挿弾子)に注目する。弾は装填された。父の手は実包の中に突っ込まれ、武器を動かし、弾と実包の箱は開かれている。


Page #4. This is something I call an "overhead". I make a rough sketch of the room, car, boat, "area" I'm shooting in and place the cameras. Each number correlates to the shot list. I also show the direction they shoot in with ">" and the characters are in circles, "M" for Murphy and so on.
Now, the last step has not been done yet. There will be five story boards, correlating to the five shots on the final page. We're doing that stuff later and I'll add it in then. Hope this helps you guys or gives you a little charge. Layta, T.Duff

4ページ目。
これは俺が「オーバーヘッド」と呼んでいるものだ。部屋、車、ボート、撮影している「エリア」の簡単なスケッチを描き、カメラを配置する。それぞれの番号はショットリストの番号と符合している。また、カメラが撮影している向きを「>」で表し、登場人物は丸で囲む。「M」はマーフィーといった具合だ。
さて、最後の段階はまだ終わってはいない。最後のページには、5つのショットに関連する5つのストーリーボードが記載されることになっている。後でこの作業にとりかかってから、俺はそれを付け加えるだろう。これが君達の助けになるか、あるいは少しの刺激になればと思う。
ではまた、T.Duff

(4ページ目の画像)
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